プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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マネジメント・フロンティア
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2014年05月07日

『LINE全解明(『週刊ダイヤモンド』2014年4月19日号)』―経営資源の中で「情報」だけレバレッジが検討されない謎


週刊 ダイヤモンド 2014年 4/19号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2014年 4/19号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-04-14

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 「若者たちのSNSのトレンドが、フェイスブック的な『ストック型』からLINE的な『フロー型』に移っている。これは世界的な傾向だ」と、野村総合研究所社会ITコンサルティング部の山崎秀夫シニア研究員は指摘する。フェイスブックに限らず、ツイッターやmixiなど、多くのSNSは日常の出来事を記録する「ストック型」のサービスだ。一方で、LINEやワッツアップは、チャットや通話をメインとした「フロー型」のサービスといえる。
 この記述を読んで、facebookやtwitterは今やストック型に位置づけられるんだ、と思ってしまった。旧ブログの記事「Twitterはブログを駆逐するのかねぇ?」を書いた時、私は明らかにtwitterをフロー型として意識していた。そして、ストック型のブログとフロー型のtwitterはうまく共存するであろうと考えていた。

 個人的には、twitterもfacebookもタイムラインで投稿がどんどん流れて行ってしまうことから、フロー型だと思っていた。ところが、さらにフロー型の特徴が強いLINEやワッツアップの前では、twitterやfacebookさえもストック型になってしまうらしい。どうやら、SNSの世界では、フロー型のサービスに対して、さらにフロー的なサービスが登場することで既存のフロー型をストック型に追いやり、市場の空白地帯を獲得する、という事象が起きているようだ。

 こうしてフロー的な情報がネットの世界に増殖するにしたがって、困った問題が起きている。改めて言うことでもないが、企業が分析対象としなければならない情報量が爆発的に増えているということだ。実は、奇妙なことに、人・モノ・カネ・情報・時間という経営資源のうち、情報だけはレバレッジを利かせる、つまり、少ない投入量で最大の成果を得ようという発想に乏しい。

 人材に関しては、例えば営業部門の営業成績を2倍にする場合、単純に営業担当者を2倍にしようと考える経営者はいない。多少は営業担当者を増やすかもしれないが、既存の営業担当者の生産性を引き上げることで、部門の目標を達成しようとするだろう。

 トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一は、ある自動車の立ち上げ時に、エンジン担当の課長に「5千台を100人以下で作るように」と指示をした。すると2~3か月後に課長が、「80人で5千台作れるようになりました」と報告した。その自動車が非常によく売れ、エンジンも増産することになった。大野は課長に、「1万台は何人でできるか?」と聞いたところ、課長はすぐに「160人です」と答えたものだから、大野は激怒した。課長の計算は単なる「算術の経営」にすぎない。倍の台数をより少ない人数で作る「忍術の経営」でなければならない、と大野は説教したのである。

トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉 (PHPビジネス新書)トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉 (PHPビジネス新書)
若松 義人

PHP研究所 2013-06-19

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 モノについては、財務分析で在庫回転率が経営の効率性を図る重要な指標となっていることからも解るように、少ない在庫で多くの売上高を上げることが望ましいとされる。また、エリヤフ・ゴールドラットが提唱したTOC(制約理論)では、工場はできるだけ在庫を持たずにスループットを最大化することが求められる。逆に、在庫回転率が急に悪化している場合は、経営効率が悪くなっただけでなく、粉飾決算が疑われる。在庫回転率の急激な悪化と粗利率の改善がセットになっているケースでは、架空在庫による粉飾決算の可能性が高い。会計の世界では、「粉飾の第一歩は在庫の水増しから始まる」と言われている。

 カネに関しても、少ない投資で多くの利益を上げることに経営陣は苦心している。カネをたくさん投資すればするほど儲かるのであれば、金融機関からお金を借りまくって投資すればいい。しかし、そんなうまい話はどこにも転がっていないことは誰もが解っている。だからこそ、経営者の手腕が問われるわけだ。経営陣の元には、毎日部下からいろんな案件が持ち込まれる。部下は自分の案件によってどのくらい会社に利益がもたらされるのか、ROI、DCF、NPVなどの手法を用いて投資対効果を計算している。経営陣は様々な案件の投資対効果を見比べて、投資対効果が高く、かつ投資対効果算出のシナリオに納得感がある案件に投資をする。

 時間は、万人に平等に与えられた経営資源である。その反面、貯蓄することができず、常に減っていく一方の残酷な経営資源でもある。ドラッカーは著書『経営者の条件』の中で、「時間をマネジメントできる者こそがエグゼクティブ(経営管理者)である」と宣言した。人・モノ・カネに比べて、時間は実際に目にすることも、財務諸表上で値を確認することもできない。だからこそ、もっと注意を向けるべき重要な経営資源である、とドラッカーは強調したのである。ドラッカーは同書の中で、どの仕事にどのくらいの時間を費やしているのかをこまめに記録し、ムダな時間を省き、重要な仕事にはまとまった量の時間を投入しなければならないと述べている。

ドラッカー名著集1 経営者の条件ドラッカー名著集1 経営者の条件
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 このように、人・モノ・カネ・時間については、その投入量をできるだけ抑えようとする。ところが、情報だけはそういう考え方にならない。情報が増えたのであれば、ビッグデータという流行のキーワードに表れているように、増えた情報を全て分析対象に加えて、ITの処理能力で強引にカバーしようとする。ノーベル経済学賞を受賞したハーバード・サイモンは、1971年に、「情報は受け手の注意力を衰えさせる。このため、大量の情報は注意力の欠如を引き起こす」と述べた。情報量が増えれば、意思決定の質が上がるとは限らない。
 デジタルアーツの調査によると、男子高校生で53%が、女子高校生で74%が3時間以上スマホを使い、特に女子高校生では調査対象の17%が9~15時間利用しているという結果が出た。注目すべきは、スマホを所持する子ども全体で29%が、その使用をやめようと思いつつもやめられずに苦しんだ経験を持つという結果だ。

 「子どもにとって、LINEで友達とだべるのは、トイレに行きたくなくても一緒にトイレに行くのと同様の”付き合い”によるものが多い。本当はもう自分は会話から抜けたいのにやめる口実が見つからずずるずる続けるケースが多い」(兵庫県立大学・竹内和雄准教授)
 これは高校生のケースであるが、最近では増え続ける情報を追いかけることに必死になっているビジネスパーソンが増加していることは容易に想像がつく。彼らは、もうこれ以上情報を収集・分析しても仕方ないと思っているのに、新しい情報が次から次へと入ってくるから、作業を止められなくなっているかもしれない。情報は、意思決定を下すための材料である。ところが、情報を集めたり分析したりすること自体が目的となってしまい、肝心の意思決定がおざなりになっているケースがあるのではないだろうか?

 ビッグデータが一つの流行であるというのならば、敢えてその逆のことを提案してみたい。つまり、「情報を捨てよ」ということである。情報のチャネルを絞り、チャネルから流入する情報の量も制限する。人はより完璧な決断を下そうとすると、より多くの情報を集めたくなる。しかし、サイモンが「限定合理性」という言葉で説明したように、所詮人間は完全に合理的な意思決定を下すことなど無理なのである。だから、情報をくまなく収集・分析しようというのは幻想だ。

 情報に溺れると集中力が下がる。逆に、情報を絞れば、集中力が保たれる。だとすれば、限られた情報であっても、高い集中力を発揮することで、ビッグデータを利用した場合よりも良質な意思決定を下すことが可能となるのではないだろうか?今はビッグデータがもてはやされているが、数年後にはビッグデータへの投資を見直し、組織全体で情報(と情報システム)の取捨選択を行って、効率的な意思決定を行っている企業事例が出てくるような気がする。そして、「情報の生産性」を測定する指標(例:「1ギガバイトあたり利益」?)が開発されるのではないだろうか?

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