プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年06月10日

『最強の組織(DHBR2014年6月号)』―阪神とソニーの関係者に読んでもらいたい特集(後半)


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 06月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-05-10

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 (前回からの続き)

○【インタビュー】変化への対応が企業を強くする 一流企業であり続けるために(古森重隆)
 富士フィルムホールディングスの代表取締役会長兼CEOである古森重隆氏のインタビュー記事。この記事はソニーの関係者に読んでもらいたい。
 これまでにない勢いで縮小すると読んだ主力事業は、設備や組織などを大胆にリストラしなければ生き残れないと結論づけました。世界中に巨大な生産設備があり、これらをそのまま放置する選択肢がないからです。

 しかし、主力事業のリストラだけでは縮小均衡に陥るだけです。それを避けるために何をするか、企業としてこの先も成長し続けるために最適な新規事業は何か。そうした側面も同時に読んでいかなければなりません。
 富士フィルムやソニーと、私がいた前職のベンチャー企業を同じ土俵の上で論じるのはおこがましいかもしれないが、「リストラをする時には必ず成長戦略がセットでなければならない」というのが、前職で学んだ重要な教訓の1つである(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第19回)】真綿で首を絞めるように繰り返されるリストラ」を参照)。リストラはこれ以上の赤字を防ぐための応急処置であり、言わばマイナスをゼロ付近にまで戻すに過ぎない。ゼロから再びプラスに持っていくためには、成長戦略を描く必要がある。

 リストラをすると、残った社員にはリストラされた社員の分まで仕事が回ってくる。リストラされた社員が一番苦しいのはもちろんだが、残った社員も苦しみを味わうことになる。その苦しみを癒してくれるのは、成長戦略というかすかな光である。今の苦しい仕事を乗り越えれば、再び事業が軌道に乗るかもしれないという希望があれば、社員も何とか頑張ることができる。逆に、そういう一縷の望みもないままに、ただひたすら忙しいだけの仕事をさせられたら、社員のモチベーションは下がる一方であろう。そうすれば、待っているのは更なる業績の悪化と追加リストラである。

 ソニーからは成長戦略が見えてこない。『週刊ダイヤモンド』2014年4月26日号には平井一夫CEOのインタビューも掲載されていたが、「誰をターゲットに、どんな顧客価値を提供するのか?」という戦略の基本的なところが全く伝わってこなかった(もっとも、ソニーを貶めたい編集部の悪意(?)がはたらいて、敢えてそういう構成になっているのかもしれないが)。さらにたちの悪いことに、ソニーは自社ビルを売却するなど資産の切り売りによって、何とか延命を図っている状況である。挙句の果てには、ソニー生命の吸収によって黒字化を図ろうとしていたのだから、もはや経営ではなく錬金術の世界である(これには金融庁から待ったがかかったらしい)。

週刊 ダイヤモンド 2014年 4/26号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2014年 4/26号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-04-21

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 メーカーの場合、技術力が最も重要かつ強力な経営資源です。技術力という経営資源で将来に渡ってその事業分野でコンペティターに勝ち続けていけるだけの基盤力があるか、マーケットがあるか、そういう製品を開発することができるかを重視しました。その結果、新たな成長戦略として6つの事業領域を選択したのです。
 ソニーは2000年度からの約15年間で、実に8回ものセグメント変更を行っている(「ソニーがまた「セグメント」を変更(1年9ヶ月ぶり8回目)|市況かぶ全力2階建」を参照)。もちろん、戦略の変更に伴って柔軟に組織を変えているのであれば評価に値するであろう。しかし、ソニーの場合、よく見るとセグメントの本質的な部分はほとんど変わっていないように感じる。経営不振の企業は、何かにつけて組織変更をしたがる。「改革を進めている」と対外的にアピールできるからだ。だが、そのような組織変更は何の利益も生み出さない。組織変更自体が目的になっているのは、組織衰退の証である。

 ソニーは今までやってきた事業にこだわりすぎており、幅広い視野が持てなくなっているのではないだろうか?富士フィルムのように市場が急速に消えているわけではなく、なまじ市場自体は残っていることが、ソニーにとっては災いしているように思える。ソニーの関係者は、「まだ市場はあるのだから、我々が巻き返すチャンスがあるはずだ」と思い込んでいるのかもしれない。だが、ここは一歩引いて、ソニーのコア技術とは一体何なのか?その技術で実現できそうなことは何なのか?それに対してどの程度のニーズがありそうか?といったことを、既成概念にとらわれずに広く洗い出す作業が必要ではないかと思う。

 ソニーの社員は優秀なので、2つ目の問いまでは比較的簡単に答えられるだろう。だが、一番肝心なのは、ありきたりなことではあるが3つ目の問いである。実は、ソニーの創業理念は技術を重視しており、井深大が起草した「設立趣意書」には技術という言葉が頻繁に登場する。逆に、顧客重視の要素が薄い。この点を指摘したのは、『ビジョナリー・カンパニー』の著者であるジェームズ・コリンズであった。コリンズは同書の中でソニーをビジョナリー・カンパニーとして扱っており、「企業理念には顧客第一主義は必ずしも必要ない」と述べていた。

 ところが、同書が出て以降のソニーの苦境を見るにつけ、やはり顧客重視の姿勢は経営に欠かせないものであると思う。その技術は誰が喜んでくれるのか?どのくらい喜んでくれるのか?(ちょっとだけなのか?それとも目玉が飛び出るほど喜んでくれるのか?)なぜ喜んでくれるのか?(何か日常生活で困っていたことが大幅に改善されるのか?顧客の暮らしを大幅に豊かにする生活体験を与えてくれるのか?)ということを愚直に問い続けることが、ソニーをマーケティング重視の企業に変えていくのではないだろうか?

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