プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年06月13日

東京商工会議所が実施する3つの専門家派遣(主に中小企業診断士)サービス


 中小企業が無料で受けられるコンサルティングサービスとして、「専門家派遣」というものがある。中小企業の支援をミッションとする公的団体は、どこもたいていこの手のサービスを提供している。私が知る限り、東京都で利用できるサービスには以下のようなものがある。

 ミラサポ(中小企業庁が運営するポータルサイト) 専門家派遣
 中小企業基盤整備機構 専門家派遣(起業支援)
 東京都中小企業振興公社 専門家派遣(通常枠)
 東京都中小企業振興公社 専門家派遣(中小企業金融円滑化法対策特別枠)
 東京都工業団体連合会 専門家派遣

 これ以外にも、各区にある産業振興公社、もしくはそれに相当する組織が専門家派遣事業を行っている。ただ、サービスがいろいろとありすぎて、各サービスの違いを把握するのは容易ではない(私もクライアントに違いを的確に説明できる自信がない・・・)。先日、たまたま東京商工会議所の方にお会いする機会があって、東京商工会議所の専門家派遣事業について話をうかがうことができた。東京商工会議所では主に以下の3つのサービスを提供している。

(1)新・経営力向上TOKYOプロジェクト
 ■概要:独自のチェックシートで自社の経営状況をチェックし、経営指導員(東京商工会議所の職員)と中小企業診断士が経営力向上のためのアドバイスを実施。

 ■サービスの流れ:
 【①経営者による自己診断】「中小企業経営力向上チェックシート」を利用して、自社の状況を自己判断。運営管理・マーケティングなどの6つの分野・70項目で診断を実施。
 【②専門家によるアドバイス】最大2回まで中小企業診断士を無料で派遣。経営指導員と中小企業診断士がタッグを組み、経営課題の「気づき」から課題解決の実行支援までをサポート。
 【③課題解決に向けた診断報告書を発行】チェックシートを基に、中小企業診断士が経営診断を実施。結果を「診断報告書」(SWOT分析、改善に向けた提案などを含む)にまとめ、役立つ公的施策を紹介。

 ■専門家派遣回数:最大2回。

 ■補足:診断受診企業は、販路開拓のための東京都助成金「展示会等出展支援助成金」が利用可能。展示会出展については上限100万円、カタログ作成については上限20万円まで助成。

(2)エキスパートバンク
 ■概要:小規模事業者(常用の社員が、商業・サービス業の場合は5名以下、それ以外の事業は20名以下)・創業予定者を対象に、中小企業診断士・税理士・社会保険労務士などの専門家がアドバイスを実施。相談テーマの例・・・経営計画・資金繰り計画の作成、事業の転換・多角化計画の作成、商品・サービスのマーケティング、広告・PR・販売促進、人事・労務制度の改善、HPのアクセス向上、ネットショップの立ち上げ、店舗の内外装やレイアウトの改善、輸出入の取引、創業時のビジネスプランの作成、など。

 ■サービスの流れ:
 【①申込】東京商工会議所専門指導センター、または東京商工会議所の各支部に問合せ。
 【②専門家の選定・派遣】企業の相談内容に応じて、東京商工会議所専門指導センター、または東京商工会議所の各支部が専門家を選定・派遣(企業による専門家の指定は不可)。

 ■専門家派遣回数:最大3回。

(3)経営変革アシストプログラム
 ■概要:複数年にわたって計画的に取り組むべき経営課題を抱えた中小企業に対して、専門家を年間10回を限度に派遣し、①中期経営計画「企業変革プラン」(概ね3~5年程度)の策定、②計画の実行支援を行う。「企業変革プラン」では、経営状況を多角的に分析し、中長期ビジョンとこれを実現するための実行計画・支援スケジュールを明らかにする。

 ■サービスの流れ:
 【①相談】経営指導員や東京商工会議所に在籍する専門家(コーディネーター)が中小企業からの相談に対応。
 【②経営課題抽出】相談内容から計画的に取り組むべき課題がある場合は、アシストプログラム事業の活用を提案。
 【③専門家の選任】経営課題に適した専門家(ディレクター)をコーディネーターが選任。
 【④アシストプログラム】ディレクターが最大10回まで派遣され、企業変革プランの策定・実行を支援。ディレクターが有する専門知識以外の分野については、必要に応じてアドバイザーをつけることが可能。

 ■専門家派遣回数:最大10回。

《私見》
 この記事をアップしておきながらこんなことを書いたら関係者から怒られるかもしれないが、個人的にはこの手の専門家派遣サービスはあまり好きではない。例えば、新・経営力向上TOKYOプロジェクトの場合、顧客企業訪問と報告書作成の時間を合わせて2人日に収めないと、とてもではないが報酬(顧客は無料でサービスを受けられる代わりに、東京商工会議所が中小企業診断士に対して報酬を支払う)に見合った仕事にはならない。他の専門家派遣事業もだいたい同じで、専門家の派遣回数の数字と、中小企業診断士が割く工数(人日)の数字は同じになる。

 では、2~3人日の作業で中小企業の経営課題を解決できるかというと、私はノーだと思う。私は以前、5回の専門家派遣サービスというのを何度かやったことがあるが、5回(5人日)でも厳しい。私の実力不足も一因かもしれないが、5人日では経営課題を整理できない。ましてや解決策を提示して、その実行フォローをするなんてことは不可能だ。結局、私がお世話になった顧客企業の中には、直接コンサルティング契約を締結して、サービスを継続したケースがあった。私の感覚では、経営変革アシストプログラムのように、10回派遣して(10人日費やして)ようやくコンサルティングサービスとして形になる、という印象である。

 乱暴な言い方かもしれないが、2~3人日の作業で中小企業の経営課題を解決しようというのは、あまりにも中小企業を小バカにしている。中小企業の経営者が日々頭を悩ましてそれでも解決できない経営課題を、中小企業診断士なら2~3日で解決できますよ、と言っているのと同じだ。つまり、新・経営力向上TOKYOプロジェクトなどは、ハナから中小企業経営者の経営能力が非常に低いことを前提としているのである。

 新・経営力向上TOKYOプロジェクトは、事前診断で中小企業の経営課題を包括的に捉えようとしている。それを体系的に整理し、解決策を導き出し、施策に優先順位をつけて、実行計画を立てるという一連の作業は、私の経験則に従えば2人日では絶対にできない。2~3人日でできることと言えば、HPのレイアウトを変えるとか、工場をきれいに整理・整頓するとか、店舗の内装を改善するとか、その程度しか思いつかない。そして、これらはおよそ経営課題とは言いがたい。

 専門家派遣サービスを検討している中小企業経営者も、上記の点を念頭に置いた方がいいだろう。無料で、しかも短期間でコンサルティングサービスを受けられるからといって、安易に飛びつくのは危険だ。うかつにサービスを受けようものなら、期待したほどの成果が得られなくてがっかりすることだろう。中小企業経営者を悩ませる課題は、経営者が夜も眠れなくなるほど根深いものであり、かつ長期にわたって経営者を苦しめているに違いない。その課題が一朝一夕で形成されたものではないのと同様に、その課題は一朝一夕には解決できない。

 中小企業経営者は、経営課題とじっくり向き合い、解決策の実行を丁寧かつ中長期的にフォローしてくれるコンサルティングプランや中小企業診断士を選んだ方がよい。その場合は、ある程度身銭を切ることも覚悟しなければならない。初期投資こそかかるものの、結果的にはその方が得られるリターンも多いと私は思う。

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