プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年08月08日

『一刹那正念場(『致知』2014年8月号)』―勝つためには守りを固めよ


致知2014年8月号一刹那正念場 致知2014年8月号

致知出版社 2014-08


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 バスケットの試合はトータル40分間です。攻撃側は30秒(現在は24秒)以内に一度シュートをしなければならないというルールがありましたから、単純計算すると半分は攻撃して、半分は守っていることになりますよね。なおかつ、プレーヤーは5人ですので、1人がボールを持って攻撃する時間はたったの4分、試合全体の10分の1しかありません。そのための練習に2時間も3時間も割いていた。これは効率的ではないなと。そこで1日の練習の半分は徹底的にディフェンスをやることにしました。

 負けた次の年のインターハイでは5試合を通じて、失点をすべて40点台に抑え、日本一に返り咲くことができました。以来、ディフェンスを強化していけば、相手チームのほうがレベルが高くても勝つチャンスはあると思うようになりましたね。実際、その後は選抜6連覇をはじめ、10年連続で全国の頂点に立ち続けることができたんです。
(井上眞一、小川良樹「【対談】かくて全国連覇の強豪高校は生まれた」)
 全国大会での優勝回数が54回にも上る桜花学園高等学校バスケットボール部監督・井上眞一氏と、大山加奈、荒木絵里香、木村沙織など多くの日本代表を輩出した下北沢成徳高等学校バレーボール部監督・小川良樹氏の対談記事から、井上氏の言葉を引用。このディフェンス重視の姿勢は、最近はバスケットボールだけでなく、他のスポーツにも見られるような気がする。

 例えば、今年のサッカーW杯は、「GKの大会」と言われた。「負けた国のGK」がFIFA公式のマン・オブ・ザ・マッチに5回も選ばれたのがその象徴的な出来事だろう(メキシコのオチョア、アメリカのハワード、コスタリカのナバス、アルジェリアのライス、イタリアのブッフォン)。

 逆に、攻撃的なサッカーが特徴だったスペインはグループリーグで早々と敗退し、世界に衝撃を与えた。日本のサッカーも、スペインのレベルには遠く及ばないのだろうが、ポゼッション重視で細かいパスをつないでいく方針をとっていた。ところが、かえってディフェンスが疎かになり、グループリーグで1勝も挙げられなかった。ベスト16入りを果たした前回の南アフリカ大会は、むしろディフェンスからのカウンターで勝ち上がった印象がある。

 私が大好きな野球は、「ホームランが華」とよく言われるけれども、実際には守り重視のスポーツである。どんなにチーム打率がよくても、チーム防御率が悪ければ優勝できない。チーム防御率が悪かったのに優勝できたのは、2001年の近鉄ぐらいしか私は知らない。この年の近鉄は、チーム打率が.280と絶好調だったが、チーム防御率は4.98でリーグ最下位であった。

 最近は広いドーム球場が増え、また反発係数が低く抑えられた統一球の採用によって、守り勝つ野球がますます重視されるようになっている。中日を球団史上初の連覇に導いた落合博満元監督は、「プロ野球は0点に抑えていれば絶対に負けない」と主張し、徹底的に守備力を上げた。打線が1点、2点しか取れなくて負けが込んだら、普通の監督は打線にもっと奮起を促すだろう。しかし、落合氏は「打線が1点、2点しか取れないならば、投手はそれ以下に抑えるのが仕事だ」と投手陣にさらなる奮起を求めていた。

采配采配
落合博満

ダイヤモンド社 2011-11-17

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 確かに、打線は水物と言われるように、どんな選手であっても1年を通して見れば打撃には好不調の波がある。これに対して、守備力にはそれほど波がない。また、投手は野手に比べてポジションの数の割に選手の数が多いので、好調な投手から優先して起用することもできる。こうした事情から、落合監督は徹底的な守備力重視を打ち出したのだろう。

 打線の好不調は、ある意味運である。運がよければ、多少投手陣が悪くても勝つことができる。肝心なのは、打線が不調の時にどれだけ勝ちを拾えるかである。打線が1点、2点しか取れない日が続いた場合に、10の勝ち星を拾えるか、10の負けを積み重ねるかでは貯金が20も違ってくる。通常、優勝争いをするには貯金が20必要と言われる。ということは、優勝できるかどうかは、ひとえに僅差のゲームをいかに拾えるかにかかっていると言っても過言ではない。そして、僅差のゲームの戦い方にこそ、守りの実力差が最もよく表れる。

 経営でも、勝つ=持続的に利益を上げるためには、守りをもっと重視するべきなのかもしれない。経営において攻撃とは、売れる製品を製造したり、有望な顧客を開拓したりすることだろう。だから、どんな企業でも製造現場は強い力を持つし、営業部門やそれを支えるマーケティング部門には優秀な社員を配置したがる。しかし、攻撃だけでは片手落ちであるように思える。

 では、経営における守りとは何か?コスト削減は間違いなくそこに含まれるだろう。だが、もう少し考えてみると、「売上や利益に直接的な影響はないかもしれないが、企業という組織・コミュニティを存続させるために必要不可欠な業務や行動」も守りとして重視すべきではないだろうか?具体的には、あいさつをする、お礼を言う、職場をきれいに保つ、時間を守る、お互いに助け合う、約束を破らない、嘘をつかない、隠しごとをしない、誰にでも公正に接する、などである。

 要するに、「人間として当たり前のことを当たり前にやる」ということに尽きる。もちろん、戦略の有用性を否定するつもりは毛頭ないけれども、ヒット製品が生まれるかどうか、いい顧客にめぐり合えるかどうかは、運に左右される部分もある。運があればどんな企業でも勝つことができる。しかし、運がなくなった時こそが本当の勝負である。そういう状況でもしっかり利益を確保できるかどうかは、普段から守りがどれだけ徹底されているかにかかっている。運頼みの経営をしてきた企業は、ひとたび運が尽きると、坂を転げ落ちるように転落していく。

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