プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年08月15日

『行動観察×ビッグデータ(DHBR2014年8月号)』―利害関係者全員とまともにつき合う必要はない、他


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 08月号Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 08月号

ダイヤモンド社 2014-07-10

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 (前回の続き)

○成長には何が必要か 新規事業が頓挫する6つの理由(ドナルド・L・ローリー、J・ブルース・ハレルド)
 この論文で挙げられている6つの理由は以下の通りである。

 (1)経営陣が新規事業に対して正しい監督・監視を行わない。
 (2)新規事業を最も優れた、経験豊かな人材に任せない。
 (3)チーム編成を誤り、すぐに人員を増やす。
 (4)既存事業と同じ方法でパフォーマンスを評価する。
 (5)新規事業の運営と予算管理の方法を知らない。
 (6)既存事業のケイパビリティを活用できない。

 新規事業のマネジメントをめぐってよく問題になるのは、「新規事業は既存事業から切り離すべきか?」、「新規事業と既存事業は別の指標で評価すべきか?」である。ドラッカーは一貫して、イノベーションのための新規事業は既存事業から切り離し、評価指標も全く別物にすべきだと主張していた。一方、P&Gのように、イノベーションの立ち上げ期には既存事業から切り離したプロジェクトチームとするが、一定のレベルにまで達したら既存事業に統合する、というケースもある。

イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)
P.F.ドラッカー 上田 淳生

ダイヤモンド社 2007-03-09

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ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばすゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす
A.G.ラフリー ラム・チャラン 斎藤 聖美

日本経済新聞出版社 2009-05-23

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 結局のところ、新規事業のパターンに応じて考えないから、こうした混乱が起きてしまうのだと思う(自分で勝手に混乱していただけだが・・・)。アンゾフの有名な「成長ベクトル」をベースに整理すると、次のようになるだろう。まず、新規事業が「既存製品×新市場」に該当する場合は、例えば関東で販売していた製品・サービスを関西でも販売する、というパターンであるから、新規事業を既存事業から切り離す必要性はほとんどない。ケイパビリティも評価指標も既存事業のものをそのまま使うことができる。ただし、地理的に離れているという理由で別組織にすることはある(関東本社に対して関西支社を立ち上げる、など)。

 新規事業が「新製品×既存市場」に該当する場合は、新製品と既存製品で製品ライフサイクルのステージが異なり、R&Dやマーケティング、生産などに対する注力度合いも異なるので(成熟期にある既存製品はリテンション・マーケティングに注力するが、導入期にある新製品はR&Dに注力しなければならない、など)、組織も評価指標も分けた方がよい。ただし、例えばA製品事業部とB製品事業部が同じ顧客に対して個別にアプローチするのは非効率であるとの理由で、営業部門だけは統合する、という方法も考えられる。

 新規事業が「新製品×新市場」に該当する場合は、既存事業と重なり合う部分がほとんどないため、ドラッカーが主張するように組織も評価指標も完全に切り離した方がよいだろう。ただし、「新製品×新市場」型であっても、既存のケイパビリティと全く無関係な領域に進出することは考えにくい。どんなに異質な新規事業であっても、何かしら既存事業とシナジーがあるはずだ。よって、新規事業が既存事業のケイパビリティを活用できる仕組みを整備する必要があるし、新規事業に対する既存事業の貢献を適切に評価する制度も作らなければならない。

○いかにして指揮統率と権限委譲を両立させたか チリ落盤事故の奇跡:33人を生還させたリーダーシップ(ファイザ・ラシッド、エイミー・C・エドモンドソン、ハーマン・B・レオナード)
 協力者の確保にはもう一つの側面がある。戦力となりえる人々や手法を迎え入れるのと同時に、戦力外の人々や手法を排除することも重要なのだ。混沌とした状況下ではリーダーみずから線引きをして、労力を割いても無意味と思われる人々を積極的に排除しなければならない。ソウガレット(※救出活動の責任者)はサンホセ鉱山の現状を把握すると「立入禁止」区域を設置し、技術的な専門性や実行可能なアイデアの持ち主にだけ、出入りを許可した。
 より多くのイノベーションを迎え入れるため、リーダーたちが外部へと手を伸ばしたのと同様、作戦が成功する可能性を高めるには内部の守備固めも必要である。境界線を明確に引くことにより、人々が考え、計画し、実験し、振り返って分析するための余裕がもたらされる。そう認識していたので、作業員の家族や報道陣が救助隊に直接接触することを禁じた一方、最新情報を毎日みずから彼らに伝えた。
 2010年8月に起きたチリ鉱山の落盤事故を題材にした論文。落盤事故には作業員の家族、鉱山企業とその協力会社、事故に関する専門家、報道陣、チリ政府、協力してくれる諸外国の企業や政府など、様々な利害関係者が関与している。こうした多種多様な利害関係者とのつき合い方について、1つヒントを得ることができた。

 以前の記事「利害関係者は自分の想定の”2倍”いると覚悟しておいた方がよさそう」で、どんな仕事でも自分が思っている以上にたくさんの利害関係者が関与しているものだと書いた。しかし、この論文で追加的に学んだのは、「利害関係があるからと言って、全ての利害関係者と交渉する必要はない」ということである。利害関係があることは認めつつも、むしろ交渉を断った方が賢明な利害関係者もいる。具体的には、目指すゴールの実現にあたって、実質的な影響力を及ぼすことができない利害関係者である。

 チリ落盤事故の場合、作業員の家族や報道陣は、「33人の作業員を無事に救出する」というゴールの実現には何ら貢献することができない。家族がどんなに心配したところで、また報道陣がどんなに熱心に現場の様子を伝えたところで、救出の成功確率が上がるわけではない。だから、ソウガレットは敢えて彼らとの接触を限定した。とはいえ、彼らも事故に強い関心を持つ利害関係者であることは間違いないから、彼らに対する説明責任だけは果たすことにした。

 企業経営にも様々な利害関係者が関わっているが、チリ落盤事故における作業員の家族や報道陣にあたる利害関係者、言い換えれば、「持続的に利益を上げる」という企業のゴールに対して実質的な影響力を及ぼすことができない利害関係者は誰かと言えば、それは株主ではないかと思う。確かに、株主は議決権を持っており、取締役の選出など重要事項を決定することができる。しかし、企業の利益の大半は、株主の影響力が及ばないところで決まる。よって経営陣は、株主が経営に介入する余地をできるだけ小さくし、説明責任だけはきちんと果たすという関係を構築するべきであろう。全ての利害関係者との交渉に自ら首を突っ込む必要はないのだ。

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