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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京から実家のある岐阜市にUターンした中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。ほとんど書評ブログ。たまにモノローグ。双極性障害Ⅱ型を公表しながら仕事をしているのは、「双極性障害(精神障害)の人=仕事ができない、そのくせ扱いが難しい」という世間の印象を覆したいため。

 中長期的な研究分野は、
 ①日本の精神、歴史、伝統、文化に根差した戦略論を構築すること。
 ②高齢社会における新しいマネジメント(特に人材マネジメント)のあり方を確立すること。
 ③20世紀の日本企業の経営に大きな影響を与えたピーター・ドラッカーの著書を、21世紀という新しい時代の文脈の中で再解釈すること。
 ④日本人の精神の養分となっている中国古典を読み解き、21世紀の日本人が生きるための指針を導くこと。
 ⑤激動の多元的な国際社会の中で、日本のあるべき政治的ポジショニングを模索すること。

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年08月25日

私の仕事を支える10の価値観(これだけは譲れないというルール)(1/3)


 現在、創業希望者を対象としたキャリア開発のセミナーコンテンツを製作中である。その中で、「自分がよりどころとしている価値観」を棚卸しするワークショップを開発しているのだが、そのワークに沿って、改めて私自身の価値観を見つめ直してみた。価値観とは、仕事をはじめとする人生の中で自分が大切にしているルールや、これだけは絶対に譲れないという原理原則、何らかの重要な意思決定を下す際の判断基準のことである。

 人は、何か重要な出来事を経験すると、自分が大切にしている価値観に気づくものである。その出来事は自分自身に降りかかったものでなくてもよい。他人の出来事、特に他人の失敗から学ぶことも多い。他人の失敗から学ぶことのメリットは、教材が身の回りにたくさん転がっていること、そして自分は痛手を被らなくてもよいことである。

 私の価値観については、以前に旧ブログで何度か書いたことがある。今回再整理した価値観は、それと重なるものもあれば、新たに追加されたものもある。

 年明けということで、改めて自分の価値観を棚卸ししてみた
 創業半年超でようやく形になりつつあるオフィス・エボルバーのビジョン
 オフィス・エボルバーのビジョン(ドラフト)の補足(1)(2)
 いたずらに新しさを追求することに果たして意味はあるのか?という疑問―創業1周年に寄せて(1)
 「日本らしい経営」を探求する必要性~創業1周年に寄せて(2)
 人材の採用に対する私の考え方~創業1周年に寄せて(3)

(1)努力に惚れるのではなく、成果が出る努力をする。成果が出なければ努力を諦める。
 以前のホンダのCMで、「頑張っていれば、いつか報われる。持ち続ければ、夢は叶う。そんなのは幻想だ」というメッセージがあり、痛く共感した覚えがある。努力と成果は必ずしも比例関係にない。それどころか、努力していれば、多少成果が出なくても免罪されると考えている人がいるのは非常に残念なことだ。シリーズ「【ベンチャー失敗の教訓(全50回)】」で何度も書いたが、私の前職の企業の人は、そんな幻想にとらわれた人ばかりであった。

 彼らは、何年経っても利益が出ない研修サービスに拘泥していた。開発責任者だったマネジャーは「何でこんなに頑張っているのに、数字がついてこないのだろう?」とよくこぼしていた。しかし、私に言わせれば「努力の方向性が間違っていたから」に他ならない。研修コンテンツを修正してばかりでいつまでもサービスとして完成しないし、何よりも修正の仕方が独り善がりで顧客のニーズを反映していなかった。

 講師は講師で、プロモーション目的と称して人事担当者向けに体験セミナーを開催していたが、何年も受注につながっていなかった。途中からマーケティング業務を兼務した私は、成果が出ていないならそんなセミナーはやめた方がいいと提案した。ところがその講師は、「セミナーをやっていれば自分の勉強になるから」と言って聞かなかった(私が中止したセミナーを、影でひっそりと復活させていたこともあった)。一体、何年自分の勉強を続ければ気が済むのだろうか?

 ある中小企業診断士の先輩に、「プロフェッショナルとは『正しい努力』を『怠らずに継続する』人のことだ」と教えてもらった。単に継続するだけでは、およそプロフェッショナルとは言えない。そして、もう1つつけ加えるならば、努力の方向性が正しくないと解った時には、潔くその努力を放棄することも、プロフェッショナルの必須条件である。サンクコスト(埋没費用)に心を奪われているうちは、いつまで経っても新しい道に進むことができない。

(2)自分が愛する製品・サービスを顧客に提供する。
 これも「【ベンチャー失敗の教訓(第10回)】自社ができていないことを顧客に売ろうとする愚かさ」で書いたことだが、顧客に自社の製品・サービスを勧めるためには、まず自分自身がその製品・サービスの熱心なファンになっていなければならないと思う。売り手が効果や性能に疑問を抱いている製品・サービスを顧客に売りつけるのは、詐欺行為以外の何物でもない。

 前職の会社ではいろいろな研修メニューがあったが、私が5年半の在籍期間中に顧客に提供したのは、ビジネス・プロセス・エンジニアリング(BPR)研修だけである。これは、入社直後にあるメーカーの設計部門を対象に実施したBPRのコンサルティングの失敗経験が元となっている。

 当時の私にはBPRの知識が十分備わっておらず、苦汁を舐めた。自社の研修メニューにBPR研修というものがあることを知ったのは、プロジェクト終了後であった。私は研修の有用性を実感するとともに、プロジェクト前にこの研修を知っていたら、もっと上手く仕事ができたのにと後悔した。この体験があったからこそ、この研修を多くの人に知ってもらいたいと思うようになった。

 ちなみに、BPR研修は、単に業務プロセスを描くだけの研修ではない。経営ビジョンや事業戦略を整理してビジネスモデルをデザインする、業務プロセスを支えるITや教育・評価制度などといった仕組みを構築する、施策の効果を定量化してモニタリングする、といった内容が含まれる。言い換えれば、経営全般を上流から下流まで一貫性のある形で俯瞰することができる研修であった。これを現場社員向けに実施すると、短期的な現場の視点からではなく、中長期的な経営の視点から物事を考えることが可能になる。

(3)自分の実力を120%出さないとできない仕事を引き受ける。
 1流の営業担当者は、自社の実力を100%出さないとできない仕事を受注する。だが、それだけでは自社の強みをそれ以上磨くことができず、成長が止まってしまう。そこで、超1流の営業担当者は、自社の実力を120%出さないとできない仕事を受注してくる。あるコンサルティング会社は、自社のコンサルタントを育成する目的で、敢えてトヨタ自動車の案件を狙ったことがあるそうだ。トヨタ自動車はお金にも品質にも異常なまでに厳しい。それでも、報酬以上に得られるものが大きいと判断した結果である。

 これに対して、3流の営業担当者は、自社の実力とは無関係に、顧客に言われるがままに何でも受注してくる。超1流と3流の違いは紙一重である。その違いは、自社の組織能力に対する厳しい自己認識があるかどうかだ。自社のケイパビリティがどのレベルにあるのか解らなければ、受注を目指している仕事が自社の能力を何%ぐらい必要とするのか判断することができない。その判断ができない3流の営業担当者は、顧客の要望を安請け合いして、社内を混乱させる。

 前職の企業では、自社の研修メニューに存在せず、かつ自社サービスとシナジーが薄い営業研修などを無理やり受注してくる営業担当者がいた。自社ではどうしようもないので、営業担当者が外部の研修会社に頼み込んで、研修を実施してもらっていた。これでは、前職の企業は研修会社と顧客の間に入り込んでいる単なる中間業者であり、何のバリューも発揮していない。むしろ、前職の企業が1枚噛んでいることで、顧客に余計なマージンを請求していることになる。

 また最近も、エクセルの統計処理が全く解っていないのに、大規模な市場調査案件を受注してきたコンサルタントがいた。結局、後から私がその案件に入って分析作業をしたのだが、もしも私がいなかったらどうするつもりだったのだろうか?中小企業診断士の中には、国や都の補助金の中身を十分に理解しないまま、中小企業に補助金を勧める人がいる。後になって、補助が受けられると思っていた経費が補助対象外と解り、トラブルになったという話をしばしば耳にする。

 (続く)


《2014年9月13日追記》
 (2)に関連して、『致知』2014年10月号の記事「対談 老舗の志を継ぎ和食文化を後世に」(村田吉弘、高津克幸)から、菊之井3代目主人・村田吉弘氏のエピソードを紹介したい。
 その頃、親父の友達の京料理・たん熊のご主人が時々寄ってくださっていました。いつもカウンターの端に座ってビールを2本ほど飲みながら、「適当に何か出してみいな」とおっしゃるんです。春先だったので木の芽和えを出して「それ甘ないですか」と聞いたところ、「甘いと思ったら、甘ないもん出さんかい」と。

 「それ親父のレシピで作っているんです。親父と同じようにやらへんかったら、菊之井の味にならんと思いまして」と説明しかけたら、「お前はアホか」と怒られましてね。「自分がうまないと思っているものを人に出してどうする。自分がうまいと感じたもんを出して店が潰れるなら納得いくけれども、うまないと思っているものを出して立ちいかんようになったらどうするねん」と。この一言には目が覚める思いがしました。
致知2014年10月号夢に挑む 致知2014年10月号

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