プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年09月05日

久繁哲之介『商店街再生の罠』―補助金漬けにされている商店街の実態


商店街再生の罠:売りたいモノから、顧客がしたいコトへ (ちくま新書)商店街再生の罠:売りたいモノから、顧客がしたいコトへ (ちくま新書)
久繁 哲之介

筑摩書房 2013-08-07

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 著者の久繁哲之介氏は地域再生プランナーで、日本におけるスローシティの提唱者である。本書では、「大型店に売上を持っていかれている」という商店街の被害者意識と、その補助金漬けの体質を厳しく批判している。
 あらゆるビジネスは消費者の視点から評価すべきで、そこから導かれた課題を解決することで成長が可能になります。商店街の多くが衰退する理由は、ここにあります。つまり、商店街再生施策の視点と目的が、実は消費者のニーズでなく、商店主や公務員の都合にあるのです。自分の意欲と能力の低さを隠蔽するために「大型店に店を奪われた」と言う幻想的な視点から導いた課題は「前提となる視点が正しくない」ので、何をやっても効果が出ないのです。
 今、商店街の補助金依存は全国に蔓延しています。商店街は補助金を投入しても、なかなか活性化しません。むしろ、補助金への依存が強まるほど、衰退する商店街が増えています。商店街が衰退した一番の理由は、大型店やインターネット通販などライバルとの差別化などを怠る商店主の努力不足にあります。

 しかし、商店主の努力不足を「自治体の(予算を獲得したい)都合」が加速させたのも事実です。端的に言えば、商店街の衰退は、自治体の補助金ばらまき施策が引き起こした産物なのです。
 商店街に対しては、国、都道府県、市区町村がそれぞれ補助金を交付している。国、東京都、そして私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会・城北支部の管轄エリアである板橋・荒川・練馬・台東・北区の主な補助金事業を一覧化してみた(表1)。実は、これ以外にも”隠れた補助金”が存在する。例えば、中小企業診断士協会からは、中小企業診断士が全国に派遣されて経営コンサルティングを実施している。国から中小企業診断士協会に対して補助金が出ているおかげで、商店街の負担はゼロで済む。これも、商店街に対する一種の補助金と言えるだろう。

 この一覧を基に、板橋・荒川・練馬・台東・北区の1商店街あたりの平均補助金交付額を算出してみた。(国の補助金÷全国の商店街数)+(東京都の補助金÷東京都の商店街数)+(各区の補助金+各区の商店街数)で算出した金額が表2である。

<表1>
商店街向け予算一覧

<表2>
城北の1商店街あたり補助金金額

 板橋区が1,000万円超と突出しており、それ以外の4区も600~700万円台となっている。国の補助金は補正予算で実施されているものが多いため、金額が上振れしていると思われるかもしれない。しかし、民主党政権に代わる平成21年度までは、毎年本予算で100億円超の補助金が計上されていたので、商店街はだいたい毎年このぐらいの金額を受け取っていたと考えてよいだろう(民主党政権の3年間だけは、事業仕分けのためか予算がごっそりと削られている)。

 1商店街の平均店舗数は約50とされる。商店街の1店舗あたり平均売上高という統計は見つからなかったのだが(平均売り場面積や空き店舗数の統計ばかりで、なぜこの統計を取っていないのか不思議である)、平成19年商業統計表によると、小売業の年間商品販売額は、従業員規模2人以下の場合1,439万円、従業員規模3~4人の場合4,706万円である。商店街の店舗は、店主を入れてせいぜい3名前後で経営されていることがほとんどであるから、1店舗あたりの平均売上高は2,000~3,000万円程度と思われる。

 すると、商店街全体の年間売上高は約10~15億円という計算になる。年商10~15億円の組織が毎年600~700万円の補助金を受けているのは、はっきり言って異常だ。しかも、それだけ補助を受けているにもかかわらず、商店街が衰退しているというのだから、何のために税金を使っているのか?と言いたくなる。

 商店街向けの補助金事業は、大きく(1)イベントの実施、(2)街灯のLED化などの環境整備、(3)空き店舗を活用した地域コミュニティの形成という3つに分けられる。しかし、イベントをやったところで、一時的には顧客が増えるだろうが、日常的な顧客増につながるか疑問である。商店街でイベントをやると、たいていどこの店舗も道路に臨時の売り場を出し、飲食物やイベント用の雑貨などを販売する。ということは、裏を返せば、イベントで呼び込む顧客がほしがる製品やサービスが普段の商店街にはないということであり、商店街の品揃え不足を露呈している。

 街灯のLED化も投資対効果が不明である。そもそも、多くの商店街は夜になると閉まる店が多い。商店街の店舗は、店主を含め限られた人員でオペレーションを回しているから、大手チェーン店のように長時間営業ができない。朝10時に開店しても、夜7時ぐらいまで働くのが限界なのだ。だから、LED化しても、LEDの恩恵にあずかる顧客がいない。

 空き店舗の活用にしても、集客力がないから空き店舗になったのであり、そこに地域住民を呼び込むことは、並大抵の努力では実現できない。だいたい、地域コミュニティの形成などというきれいごとを簡単に口にしてほしくない。個々の店舗がしっかりと利益を上げられるようになってから、利益の質を高めるために社会貢献を行うというのが本筋である。社会貢献は経済的な失敗の免罪符ではない。自分のこともろくにできない人に、他人の世話などできるはずがない。

 こういう補助金で儲かるのは商店街ではなく、イベント運営会社や工事会社である。こうなるとほとんど公共事業と変わらない。また、「補助金の申請業務を請け負います」という「補助金コンサルタント」も暗躍する。彼らは補助金の一定割合をフィーとしてピンハネする。本書では、こういう補助金コンサルタントの実態も暴露されている。

 私も商店街向けのイベント会社の人に会ったことがあるが、「商店街の人は忙しくてイベントの企画・運営ができないでしょう?ならば、我々がその業務を全て請け負います」と触れ回っているらしい。この理屈ははっきり言っておかしい。商店街が外部業者に丸投げするイベントが成功するわけがない。商店街の人は、せっかくイベント目当てに集まった人たち、つまり潜在的な新規顧客を、日常業務に追われながらただ眺めているだけなのだろうか?

 本書では、商店街に観光客を呼び込んだり、商店街でまちおこしをしたりするのではなく、地域密着型を貫くことが提案されている。私もこれに賛成である。商店街で観光というのは、どうもイメージが湧かない。商店街が全国にあまたある観光地と戦えるとは到底思えない(もちろん、中には観光で勝負できる観光地もあるが)。マスコミや評論家は派手な成功例を好むので、観光型の商店街に着目したがる。しかし、近隣に住宅が集積しているという地の利を生かして、地域密着型を目指した方が、地味ではあるが確実に成功できるはずだ。

 そのためには、まずは必需品を提供する店舗を核と位置づけることである。商店街は、周囲のスーパーやコンビニを敵対視する傾向がある。しかし、むしろ彼らを味方につけて、一定数のスーパーやコンビニを呼び込んだ方がよい。商店街に人が来てくれないことには話にならないからである。また、最近空き店舗にクリニックが入ることを嘆く商店街関係者がいるが、これも間違いだと思う。地域密着型を目指すならば、商店街にクリニックがあることは何ら不自然ではない。

 飲食店などは、全部が同じような営業時間で足並みを揃えなくてよい。先ほど述べたように、商店街の飲食店は大手チェーンのように長時間営業ができない。だが、取りこぼしている夜の顧客は獲得したい。となると、考えられる手は1つである。すなわち、昼を中心とする飲食店と、夜を中心とする飲食店に分けるのである。そうすれば、夜は人通りが全くないという寂れた風景はなくなるだろう。街灯のLED化も少しは報われるに違いない。

 商店街組合のあり方も変える必要がある。商店街組合は、イベントの企画屋になってはいけない。各店舗の売上高や利益が増えるよう、積極的に経営支援をするべきである。ショッピングセンターでは、運営会社がテナントに対して経営支援を行う。というのも、運営会社がテナントから得る家賃収入の一部は、テナントの売上高と連動しているからだ。テナントが経営不振に陥ることは、運営会社の収入が減ることを意味する。商店街はこの仕組みに倣うところがあるはずだ。


《2014年9月13日追記》
 『致知』2014年10月号に、香川県高松市の高松丸亀町商店街振興組合理事長・古川康造氏のインタビュー記事が掲載されていた(「地元の底力で商店街再生に挑む」)。高松丸亀町商店街は、ピーク時には商店街全体の売上高が260億円、通行量が1日3万5千人だったのだが、一時期は120億円、9千5百人にまで落ち込んでしまった。しかし、古川氏が主導する改革によって、現在の売上高は180億円まで回復しているという。古川氏の改革は、生活に必要なものを全部集めるという点に特徴がある。
 単に物の売り買いをするだけの場所ではなく、要は昔の商店街のように、たくさんの人が生活をする場所に戻ろうということです。そのためには、医療と食べ物と住まいを充実させて、必要なものを正しく配置していく必要があります。

 昔は八百屋さんもお医者さんも銭湯も、全部このエリアにありましたから、何の不自由もなく生活できたんですが、人が住まなくなって次に起こったのが業種の偏りでした。具体的には洋服屋さんばかりになってしまいましてね。一度業種の再編成をする必要があったんです。
致知2014年10月号夢に挑む 致知2014年10月号

致知出版社 2014-10


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《参考リンク》
○予算関連
 ①国(北海道経済産業局の資料がよくまとまっていたので、そのリンクを貼りつけ)
 http://www.h-chuokai.or.jp/contents/information/2013/february/PDF/syoutengai.pdf
 ②東京都
 http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2014/02/DATA/70o2i105.pdf
 ③a.板橋区
 http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/059/attached/attach_59084_6.pdf
 ③b.荒川区
 https://www.city.arakawa.tokyo.jp/kusei/zaisei/yosan/h260206yosan.files/h26_shuyoujigyou.pdf
 ③c.練馬区
 http://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/zaisei/yosan/h25/h25tosho/yosansetumeisyo.files/05sangyoukeizaihi25.pdf
 ③d.台東区
 http://www.city.taito.lg.jp/index/kusei/zaisei/yosan/26.files/2-3saisyutu.pdf
 ③e.北区
 http://www.city.kita.tokyo.jp/docs/digital/1032/atts/103217/attachment/attachment.pdf

○商店街数
 ①国
 http://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq22_kouri.htm#q1
 ②東京都
 http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/monthly/chusho/shotengaijitaichosaH22.pdf
 ③板橋・荒川・練馬・台東・北区
 http://seenfromtokyo.blog94.fc2.com/blog-entry-73.html

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