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2014年09月15日
エニアグラムのタイプ別に見たモチベーションの上げ方(私案)
エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ) ドン・リチャード リソ ラス ハドソン みやもと あきこ 角川書店 2001-10-19 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
9つの性格 エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係 (PHP文庫) 鈴木 秀子 PHP研究所 2004-01-06 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「エニアグラム(enneagram)」とは、人を動機の種類によって9つのタイプに分ける性格論である("ennea"=9、"gram"=図という意味)。9つのタイプにはそれぞれ以下のような名前がついている。我々は、9つのタイプ全ての要素を多かれ少なかれ持ち合わせている。その中で一番強く傾向が表れるもの、無意識のうちに行動に表れやすいものが基本タイプとなる。なお、9つのタイプには優劣はない。各タイプの定義については、以下のリンクが参考になる。
エニアグラムの九つのタイプの特徴|NPO法人日本エニアグラム学会
自分がどのタイプに該当するのかを判断するアセスメントはインターネットにたくさん転がっている。ただ、本家の診断は100以上の設問から構成されており、やるのが大変なので、手軽にできる簡易版を作ってみた(簡易版ゆえ、精度はそれほど高くない点はご了承いただきたい)。
リソ=ハドソン エニアグラム性格タイプ診断テスト(無料サンプル版)|エニアグラム研究所[日本]
簡易エニアグラム診断|未来創造塾 クエスト総合研究所
エニアグラム 無料診断|コミュニケーションラボ
エニアグラム タイプ診断簡易テスト~2つの質問でわかる9つの性格タイプ|シープラスエフ研究所
エニアグラム改 性格診断×適職診断|Enneagram Personality
エニアグラムは自分の性格を知るために活用されることが多いが、他人のタイプを知ることも可能だ。冒頭で述べた通り、エニアグラムは動機の源泉を明らかにするものであるから、相手のタイプを知れば、相手をどのように動機づけるとよいのかが解る。営業担当者を部下に持つケースを想定して、効果的な仕事の与え方、コミュニケーションの取り方をタイプ別に整理してみた。
(1)改革する人
新しいことへの挑戦意欲が強いため、新規顧客や新製品の担当をさせるとよい。その仕事が難しければ難しいほど、本人は燃える。また、理想主義者であり、現実とのギャップを何とか埋めようとしたがる。よって、顧客の課題に深く入り込み、顧客にとってのあるべき姿をデザインして、それを実現するためのソリューションを提案するコンサルティング営業にも適性がある。心に響く言葉は、「この製品で世の中を変えてみないか?」、「社会にインパクトを与えてみないか?」
(2)助ける人
他人を支援すること、他人の役に立つことに喜びを感じる。よって、情緒的な人間関係が重視される既存顧客の担当や、アフターサービスの担当にするとよい。その際、担当顧客をあまり変えず、特定の顧客と長く仕事ができるようにする。このタイプは、スマートな営業方法よりも、人間力で勝負しようとする。営業担当者をサポートする営業事務などでも実力を発揮するだろう。心に響く言葉は、「あのお客様を助けてあげてほしい」、「あのお客様はあなたを必要としている」
(3)達成する人
営業担当者に最も多いのがこのタイプだと言われる。定量的で明確な目標を設定するとモチベーションが上がる。チャレンジ精神が旺盛という点では(1)改革する人と共通だが、(1)改革する人が変革の”質”を重視するのに対し、(3)達成する人は”量”を重視する。心に響く言葉は、「今月は○○円の受注を達成しよう」、「新規顧客数を前年度比で○○%に増やそう」
(4)個性的な人
創造的な手法で物事を進めることを好むタイプである。アーティストなどに多いタイプだとされる。独創性を重視する反面、他人との違いや他人からの評価に敏感な部分もある。心に響く言葉は、「○○さんはこういうやり方でやっているから、あなたは違うやり方を工夫してほしい」 そして、単に好きなようにやらせるのではなく、「そばで見ているぞ」というメッセージを送るとよい。
(5)調べる人
物事の全体像をとらえ、本質を深く追求しようとする。顧客の経営課題を深く分析する提案営業などで力を発揮する。この点で(1)改革する人と似ているが、(1)改革する人はあるべき姿と現状のギャップの大きさに燃えるタイプであるのに対し、(5)調べる人は調べるという行為そのものに楽しみを見出す。営業企画のスタッフにも向いている。心に響く言葉は、「あのお客様の潜在ニーズを分析してほしい」、「どうやったら我が社の製品が○○社に勝てるのか検討してほしい」
(6)忠実な人
いわゆる「組織人」、「会社人間」であり、企業の方針に忠実に従う。組織を回す上ではこのタイプの人が欠かせない。だから、他のタイプの人と組ませると面白いだろう。このタイプは、自ら方向性を打ち出すことは苦手だが、方針ややり方をしっかりと示せば、それに沿って真面目に仕事をしてくれる。よって、このタイプの人に仕事をさせる場合には、あらかじめ計画やマニュアルを整備することが必要である。心に響く言葉は、「会社のために一肌脱いでほしい」
(7)熱中する人
(4)個性的な人と同様、独創的なやり方を好む。(4)個性的な人が他人の目を気にするのに対し、(7)熱中する人は他人のことは気にせず、自分の好きなことを好きなようにやりたがる。よって、全面的な裁量を与えて、新規顧客の開拓などをさせるとよい。ただし、飽きっぽい一面もあるため、担当顧客を定期的に変えるといった工夫が必要である。新製品開発プロジェクトに参画させても面白いだろう。心に響く言葉は、「あのお客様のことはあなたに全部任せた」 そして、任せた以上は必要以上に介入しないことが大事である。
(8)挑戦する人
(1)改革する人はどちらかと言うと”市井のリーダー”という感じだが、(8)挑戦する人は”権力”に頼る傾向が強い。組織の上の方のポストになると、このタイプの割合が高くなる。(8)挑戦する人は、権力意欲をくすぐる言葉にめっぽう弱い。心に響く言葉は、「この仕事で成功したら昇進が待っているぞ」、「○○円の予算を与えるから、あなたの権限で好きに使っていいぞ」、「今回の商談では、○○部門(マーケティング、製造、技術など)の人間を自由に使っていいぞ」
(9)平和をもたらす人
一言で言えば平和主義者である。他人との争いを好まず、平穏な状態を好む。人間関係を尊重するという点では(2)助ける人と共通だが、(2)助ける人は他人の役に立つことを重要視するのに対し、(9)平和をもたらす人にとっては、自分の言動が実際に相手の役に立ったかどうかはあまり関係ない。むしろ、心理的に”つながっている”という状態に満足を覚える。このタイプはクレーム処理など、相手の心に深く寄り添う必要がある仕事で実力を発揮する。心に響く言葉は、「あのお客様の話をじっくり聞いてあげてほしい」、「穏便に事を進めてほしい」