プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年09月17日

『一流に学ぶハードワーク(DHBR2014年9月号)』―「グダグダ銀行」が日本電産を成長させた、他


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 09月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 09月号 [雑誌]
ダイヤモンド社

ダイヤモンド社 2014-08-09

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○ポジティブに働くためのコンセプト ワーク・エンゲイジメント:「健全な仕事人間」とは(島津明人)
 本号の特集は「ハードワーク」であり、一見するとダイヤモンド社がワーカホリックを推奨しているかのように思えるのだが、ハードワークとワーカホリックは明確に区別されている。それが最もよく解るのがこの論文である。
 ワーク・エンゲイジメントとは「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の3つがそろった状態であり、バーンアウト(燃え尽き)の対立概念として位置づけられている。(中略)これまでの研究をまとめると、ワーク・エンゲイジメントが高い人は、心身の健康度が高く、組織に愛着を感じやすく、仕事を辞めにくく、生産性が高いことがわかっている。
 島津氏は、「活動水準」と「仕事への態度・認知」という2軸でマトリクスを作成し、ワーク・エンゲイジメントと類似する概念の整理を行っている。

 ・活動水準=高、仕事への態度・認知=快・・・ワーク・エンゲイジメント
 ・活動水準=高、仕事への態度・認知=不快・・・ワーカホリズム
 ・活動水準=低、仕事への態度・認知=快・・・職務満足度
 ・活動水準=低、仕事への態度・認知=不快・・・バーンアウト

 ワーク・エンゲイジメントを、「高いモチベーションで熱心に働き、高い生産性を上げている状態」と言い換えるならば、島津氏の整理はモチベーションと満足度を区別していることになる。しばしば、「社員満足度を上げると、組織の業績が上がる」と言われる。だが、この議論は満足度とモチベーションを混同しているような気がしてならない。モチベーションは将来への意欲であるのに対し、満足度は過去の仕事や職場環境などに対する評価であり、時間軸が全く逆を向いている。

 個人的には、満足度を上げても実は業績向上にはつながらず、業績向上と関連があるのはモチベーションなのではないかと思っている。モチベーションと満足度を区別すると、モチベーションは高いが満足度は低いという状態もありうることになる。例えば、今の自分の成果に納得がいかず、もっとうまくできるのではないかと腐心するようなケースである。私は、下手に現状に満足し安住している人よりも、こういう人の方が組織への貢献度が大きいのではないか?と考える。

 《参考》
 「幸福感」と「モチベーション」の違いがよく解らない印象を受けた―『幸福の戦略(DHBR2012年5月号)』
 反証をぶつけて科学的研究の厳密さに迫るHBRのインタビュアーが秀逸―『幸福の戦略(DHBR2012年5月号)』
 『アナリティクス競争元年(DHBR2014年5月号)』―グーグルでも「社員満足度向上⇒利益増加」の説明は困難

○持続的エネルギーの源泉は何か 【インタビュー】仕事のストレスは仕事で癒す(永守重信)
 当社は、創業から十数年間、地元の地銀さんにお世話になりました。そのおかげで会社を成長させることができたのですが、当時はなかなか融資を認めていただくことができませんでした。こちらの事業説明に、納得していただけないのです。

 「グダグダ銀行」信頼していたからこそ、こっそりとそんなあだ名をつけました。それほど事業説明に入る突っ込みが多かったのです。しかし、地銀さんから「グダグダ」言われた事業ほど成功しているのですから不思議です。むしろ、こちらの説明を聞いて「素晴らしい」とすぐに融資に応じてくれた事業は、ほとんどがうまくいきませんでした。
 今月頭の記事「創業補助金の書面審査をして感じた7つのこと」で、創業に必要な資金は親族から簡単に借りるな、面倒でも金融機関に事業計画をきちんと説明して、金融機関から融資を受けた方がよい、と書いたばかりであったから、この記述には深く共感した。やはり、金融機関を事業成功のパートナーとみなして、上手につき合うことが重要なのだろう。だが、とある金融機関出身のベテラン中小企業診断士の方の話によると、最近は顧客企業の事業計画や財務諸表を深く読み込むことができる行員が減っているのだという。何とも残念な話である。

 旧ブログの記事「他人からのアドバイスにはどのくらい耳を傾ければいいんだろうか?―『リーダーへの旅路』」でも書いたが、私は他人からの批判やアドバイスについて、「批判の対象」と「批判をした相手」という2軸からなるマトリクスで捉えている。

 アドバイスの対象が「計画や施策などの内容」であるケースで、相手が身内の場合というのは、実はそのアドバイスはあまりあてにならない。身内であるがゆえに視野が狭くなっており、計画などに穴があっても気づかないことが多いからだ。こういう場合は、第三者からのアドバイスの方が有益である。日本電産が取引銀行からのアドバイスで事業を成功させられたのは、取引銀行が身内と呼べるような近い関係ではなく、第三者的な立場に立っていたからではないだろうか?

 アドバイスの対象が「本人の性格、資質」というケースもある。端的に言えば人格攻撃だ。この場合、先ほどとは逆に、相手が第三者であればそのアドバイスを聞く必要がない。第三者が本人の性格を深く知っていることは少ないからだ。よく国民は、「あの政治家は人格的に問題がある」などと言って政治家の資質を責めるが、この言葉は政治家にとってあまり意味がない。

 一方、身内から人格攻撃を受けた場合は、真摯に耳を傾け、しかと受け入れなければならない。人格攻撃は人間関係を破壊する恐れがある。そのリスクを冒してまで敢えて言わなければならないということは、本人の性格によっぽど大きな問題があると考えられるからだ。

 もう1つ、永盛氏のインタビューで共感した部分を引用。
 自分で自分を動機づけできる人間は少なく、せいぜい3%がいいところでしょう。だからこそ、経営者がそうした環境をつくるべきです。
 採用においては、「能力」と「熱意」のどちらを取るかが問題になる。松下幸之助は、「才能がなくても熱意がある者を採用せよ。熱意があれば努力によって才能を獲得できる」と述べているが、私はどうも賛同できない。「能力はあるが熱意はない人」と「能力はないが熱意はある人」がいたら、私は前者を採用する。よく、採用面接では、「なぜこの業界を志望したのですか?」、「当社に入社したら何がしたいですか?」と意欲を尋ねる。しかし、私にとってはあまり重要ではない。むしろ、これまでどういう仕事をしてきて、何ができるのか?といったことの方が関心がある。

 能力はそれほど簡単に変わらないのに対し、熱意は周囲の環境などによって簡単に変わる。乱暴な言い方だが、社員のモチベーションは経営者やマネジャーが”操作”できる。能力はあるが熱意はない社員に対し、マネジャーは能力が活かせる仕事を与え、快適に仕事ができる環境を整える。すると、もともと一定の能力はあるので、次第に成果が出せるようになる。自分が出した成果を目の前にすれば、本人は仕事の面白さが解り、モチベーションも徐々に上がる。

 これに対して、熱意はあるが能力はない社員に仕事を与え、環境を整備しても、能力は簡単には伸びないため、いつまでも成果が出ない。成果が出なければマネジャーから叱責され、同僚からは冷たい目線で見られる。すると、当初の熱意は失われてしまい、能力も熱意もないというお荷物社員に成り下がる(私はそういう人をたくさん見てきた)。「好きこそものの上手なれ」と「下手の横好き」という相反する2つのことわざがあるが、私は後者を強く信じる。

 一言つけ加えておくが、企業は社員の能力開発を放棄してもよいということではない。企業が要求する能力を100%備えている人などほとんどいない。だが、能力が20%か30%ぐらいしかない人を採用するのは明らかに失敗である。60%か70%ぐらいは能力がある人を採用し、教育研修で80~90%ぐらいに引き上げる。そして、現場に出た後はチャレンジングな仕事を与えて、本人の能力を120%まで引き出すことが重要であると思う。

 (続く)

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