プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 『一流に学ぶハードワーク(DHBR2014年9月号)』―「失敗すると命にかかわる製品・サービス」とそうでない製品・サービスの戦略的違いについて
Prev:
prev 『一流に学ぶハードワーク(DHBR2014年9月号)』―「グダグダ銀行」が日本電産を成長させた、他
2014年09月18日

『一流に学ぶハードワーク(DHBR2014年9月号)』―単純化するアメリカ人、複雑なまま理解する日本人(モチベーション理論を題材に)


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 09月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 09月号 [雑誌]
ダイヤモンド社

ダイヤモンド社 2014-08-09

Amazonで詳しく見る by G-Tools

○成功志向型か、失敗回避型か 挑戦欲で動く人、責任感で動く人(ハイディ・グラント・ハルバーソン、E・トーリー・ヒギンズ)
 幸いなことに、性格の特質に基づいて人々を大別し、パフォーマンスをも予測する方法がある―制御焦点理論がそれで、モチベーションのタイプを「促進焦点」(promotion focus)型と「予防焦点」(prevention focus)型に分けるものだ。(中略)

 促進焦点型の人は自分の目標を「獲得」や「進歩」の追求ととらえ、目標を達成した際に得られる利得に焦点を当てる。彼らは意欲的であり、攻めの姿勢で行動する。すすんでリスクを取って仕事を手早く進めたがり、大きな夢を描いたり、創意工夫に満ちた考え方をしたりする人が促進焦点型であると言っていいだろう。(中略)

 これに対して予防焦点型の人は、自分の目標を「責任」としてとらえ、「安全」を第一に考える。自分が一生懸命やらなかったり、十分な注意を怠ったりすると、どんな問題が起きるかと気を揉む。用心深く、失敗を避けるために行動し、自分が持っているものを守り、現状を維持しようとする。
 モチベーションの源泉は多様なのだが、それを2つに簡略化してしまうあたりがいかにもアメリカらしいと感じてしまった。アメリカ人は複雑な世界を単純化するモデルを考案し、そのモデルに現実世界の方を合わせようとする。そして、そのモデルによって、世界のことを全て知り尽くしているかのように振る舞う。だから、別の論文「一瞬一瞬を大切にすれば結果は変わる いまマインドフルネスが注目される理由」の著者であるエレン・ランガーが次のように述べても、アメリカ人はにわかに受け入れがたいと感じるかもしれない。
 仕事をする時は、自分がその場にいて、自分自身で物事に気づく必要があるのです。私はその次に、どんな目的地でもそこに到達する道は1つではなく、実際のところ、自分の選んだ道が目的地に続いていると確証は持てないという話をします。何事も視点が変われば違って見えるものなのです。

 リーダーの皆さんには、知らないことは悪いことではないとお伝えしています。リーダーが何もかも知っているかのように振る舞い、その他の人々もリーダーは全知全能だというふりをして過ごす。これでは居心地の悪さや不安しか生みません。それよりは、私も知らない、あなたも知らない―という状態のほうがよいのです。
 日本人は、複雑な現実をできるだけ複雑な状態のままで理解し、目の前に現れる問題に応じて現実的かつ最善の解をその場で選択する。日本人の頭の中には、「この場合はこうする、あの場合はこうする、そうでない場合はこうする」といった具合に、非常に長く複雑な条件分岐が格納されている。そして、プロフェッショナルと呼ばれる人になればなるほど、持っているパターンが豊富で多彩になる。それがよく解るのが次の2つの日本人の論文だった。

○天皇陛下の執刀医は自然体であり続ける 平常心があれば集中力は生まれる(天野篤)
 手術中の平常心を保つためには、自分の引き出しを1つでも多く持っておくことが欠かせない。そのための準備として、私は手術に臨む前のシミュレーションを念入りに行う。

 手術の前日には、検査結果の数値や画像診断の写真を見て患者の状態を把握し、過去に扱った類似の手術を思い浮かべる。どうしても気になる部分は、それまでの自分の手術記録をひっくり返しながら、確認したことを頭のなかにしっかりと刻み込む。

 初めて取り組む手術であれば、その内容が記述された文献やアップデートされた教科書から、標準的な治療方法をよく理解する必要がある。そのうえで、執刀する患者のケースに照らし、応用が必要な場面を想像しては対応策を準備しておく。手術中に起こりうるあらゆるアクシデントを想定し、その回避策と対応策を考え尽くす。そして、最もスマートに終わる理想形をイメージしておくことが重要な手続きだ。
○変化を恐れず、変化を楽しむ 棋士のピークを超えて勝ち続けるには(森内 俊之)
 大局観など経験から得られる部分を伸ばすだけでなく、40代を迎えた棋士は将棋のスタイル自体も変えていかざるをえなくなる。多くのベテラン棋士は自分の得意な形をいくつか持ち、そこに誘導して戦っていくのが主流となっている。(中略)

 しかし私はまだ、新たなスタイルに移行していない。いま自分のスタイルを絞り込んでしまうのではなく、まだ間口を広くとっておきたいと考えているからだ。(中略)スタイルを絞り込まないことは効率が悪いと思われるかもしれないが、さまざまな未知の局面に挑んでいくことは棋士の醍醐味の1つでもある。研究課題が増えることを負担に思ったことはないし、これが本業なので効率の悪さはまったく気にならない。
 話がやや逸れたが、以前の記事「『強い営業(DHBR2012年12月号』―「モチベーションのダイバーシティ」に基づく報酬体系の必要性」で述べたように、人の動機の源泉は多種多様だ。その理解を少しでも楽にするために、いろいろな性格診断が生み出される。先日紹介した「エニアグラム」(人の性格を9つに分ける性格論)もその1つである。

 だが、エニアグラムでは、性格のパターンを9つのうちから1つに完全に決めつけてはならないとされる。そうではなく、誰もが9つの性格の要素を多かれ少なかれ持っていると考える。だから、相手を効果的に動機づけるには、状況に応じて相手は今9つの性格のうちどの性格が最も強く表れているのかを察知することが必要である。部下の動機づけが上手なマネジャーは、紋切り型の方法に頼るのではなく、あれやこれやと手を尽くして部下に接することだろう。

 最後に、天野篤氏の論文から「引き際」について引用。
 私が医師を引退する時の条件は明確だ。それは同じようなエラーを2例つづけた場合である。同質のエラーをして命を失わせてしまったら、それは犯罪者だ。犯罪者は、どうあってもリタイアするしかない。
 旧ブログで「プロフェッショナルの条件とは「辞めさせる仕組み」があること」という記事を書いた。天野篤氏は自ら引退の条件を定義しており、かつその定義は非常に厳しい。まさにプロフェッショナルという感じである。翻って自分のことを考えるとどうだろうか?コンサルタント、中小企業診断士を辞める基準を明確にして自分を律することができているだろうか?


《2014年10月12日追記》
 私は基本的に、経験豊富な年上の方々のことを尊敬しているのだが、たまに困ったタイプの方に出くわすことがある。例えば、私が「こういう場合はどうすればよいですか?」と相談すると、「それはいろいろなケースがある」と前置きした上で、この時はAという方法がよい、ただしこうなった場合はBとCの方がいいかもしれない、しかしこうなることもあるので、その場合はやっぱりBは捨てた方がよい、などと要領を得ない話を長々とされてしまい、結局何をすればよいのか解らないことがある。その人の頭の中では、条件別の解決法が整然とまとまっていないのだろう。これでは実践的な知とはおよそ言いがたい。

 私の本業は研修サービスなのだが、研修でケーススタディなどをやってもらうと、年配の受講者はなまじ情報をよく知っているためか、ケーススタディの前提条件を勝手に変えて、自分にとって都合のいいように議論を展開しようとすることがある。このタイプは、自分がよく知っているパターンには非常に強い反面、自分が知らない分野の話になると途端に発言が少なくなる。こういう受講者がいると、グループの他のメンバーの満足度にまでマイナスの影響を与えてしまう。

 極めつけは両者の混合型である。つまり、「いろいろなやり方が考えられる」と言いながら、自分の成功事例に異常なまでに執着する人だ。こういう人にケーススタディをやってもらうと、「本当はいろいろな方法がありうるのに、前提条件となる情報が少なすぎて考えようがない」とこぼし、自分の知っている情報の範囲内で独善的な解を導き出そうとする。本当に考える力がある人というのは、与えられた条件がたとえ未知であったとしても、自分の既存の知をあれこれと応用して、最善の解を導き出すことができるものである。


  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like