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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年09月03日

平成27年度経済産業省概算要求 中小企業関連政策についての雑感


 昨日の記事「平成27年度経済産業省概算要求 中小企業関連政策のポイント」の続き。

 (1)ここ2年ほど補正予算で実施されていた「創業補助金」が本予算に組み込まれている。予算規模は25億円で、以前の記事「「開業率アップ」を掲げながら創業補助金には及び腰になった中小企業庁」で試算した”適正規模”からするとちょっと少ないように感じるが、まずはこのくらいの規模から始めるということなのだろう。

 ただ、私が創業補助金の書面審査をやらせていただいた中で感じたことは、国はどうやら、創業すれば何でもよいと考えているのではないか?ということである。先ほどの記事の中でも書いたことだが、国が創業率アップに躍起になっているのは、1人あたりGDPの額を伸ばすためである。ところが、提出された事業計画を見ても、小粒な案件が多い。将来的に雇用を増やす予定がなく、創業者の報酬も低く設定されているような、あまり夢のない案件が散見される。

 個人的には、設備投資を伴う製造業での起業がもっと増えてほしいと思う。そうすれば、マクロ経済にもプラスの影響が出るだろう。また私は、20世紀が自動車産業中心であったのに対し、21世紀は医療・介護が中心になると考えている。自動車業界は、最終メーカーを中心として、川上には多数の部品メーカーが、川下には多数のサービス業者がいる。医療・介護業界も、これと同じように広い裾野産業を必要とするはずだ。そういう裾野を担う企業がもっと現れてほしい(残念ながら、私が審査した中では、製造業や医療・介護業界での起業は、ほとんど皆無であった)。

 (2)日本再興戦略におけるKPIの1つに「今後5年間(2017年度まで)で新たに1万社の海外展開を実現する」というものがある。現在、輸出をしている中小製造業が6,000社前後、海外に直接投資をしている中小企業が約5,500社であるから(「中堅・中小企業の海外展開における国際連携動向調査」を参照)、かなり野心的な目標である。

 私は、海外展開を推し進めることは、海外からの日本進出を促すこととセットだと考える。日本は、先進国の中でも海外直接投資は多いが、海外からの国内直接投資は少ない。このアンバランスは、いつまでも続くものではない。「日本企業は海外市場を積極的に取りに行くけれども、海外企業が日本市場に入ることは認めない」というロジックは、諸外国には通用しない。

 だから、日本が海外展開を推進することによって、将来的には多数の外国企業が日本になだれ込むと予想される。日本企業が1万社海外に進出するならば、海外から日本市場に1万社入ってくると考えた方がよい。今まではグローバル化と全くの無縁だった企業でも、ある日突然外国勢と競争しなければならなくなる。「海外展開1万社」という目標は、「チャンスが大きい海外市場への展開をサポートしますよ」というプラスのメッセージであると同時に、「国内の中小企業をグローバル競争に巻き込みますよ」という脅しが入っていると解釈している。

 (3)いくつかの補助事業では、「認定支援機関」からの支援を受けることが補助金交付などの条件となっている。認定支援機関制度は2012年から始まった制度で、現在は全国で2万以上の組織が認定されている。国は意地でもこの制度を使い倒したいようである。しかし、認定支援機関の評判はあまりよろしくない。

 認定支援機関の大半は税理士である。これは、TKCグループが傘下の税理士に「認定支援機関になれ」とハッパをかけた結果である。ところが、彼らは税務のプロかもしれないが、経営のプロではない。会計処理はできても、経営支援に関しては十分な知識がない。いや、私がいろいろと話を聞く限りでは、帳簿をつけたり書類を作ったりという最低限の仕事もできていないのではないか?と疑いたくなることが多々ある(もちろん、全ての税理士がそうだとは言わないが)。

 例えば、ある中小企業の事業再生プロジェクトに参画した中小企業診断士の先生は、その企業の顧問先であった税理士の会計処理があまりにもずさんであったため、会計処理を全てやり直さなければ経営の実態が把握できないと嘆いていた。借方と貸方が逆になっているというような、初歩的なミスも含まれていて唖然としたらしい。税理士が知らない間に”粉飾決算”に手を染めているというケースは、本当によく耳にする。

 また、最近の中小企業向け補助金は、認定支援機関が中小企業の事業計画を事前に確認し、採択後は事業計画の遂行を支援することが要求される。認定支援機関は「確認書」という書類を作成して、中小企業が提出する事業計画書にそれを添付しなければならない。だが、ある公的機関の関係者は、認定支援機関は本当に事業計画書を確認したのか首をかしげたくなる、とこぼしていた。補助金の公募要領などに記載されている形式要件を満たしておらず、審査の初期段階で失格になる事業計画書が非常に多いのだという。

 それでも国が認定支援機関にしがみついているのは(「失敗を簡単に認めたくない」というお役所的な心理も働いているのだろうが)、本来は中小企業を支援する立場にあるはずの我々中小企業診断士が知名度も実力もなく、みっともない状態にあるからなのだろうと思う(以前の記事「認定支援機関制度で岐路に立たされる中小企業診断士」を参照)。最近は「よろず支援拠点」なるものまでできて、いよいよ我々の肩身が狭くなってきた。もっと頑張らないと、本当に中小企業診断士という資格そのものがなくなるかもしれない、と改めて危機感を持ったところである。

 (4)個人的に1つ注目していたのは、ここ2年ほど創業補助金と同様に補正予算で実施されていた「ものづくり補助金」が本予算に組み込まれるかどうかであった。結論から言えば本予算には取り込まれなかったのだが、私は内心ちょっと安心した。というのも、以前の記事「「開業率アップ」を掲げながら創業補助金には及び腰になった中小企業庁」で述べたように、ものづくり補助金は規模が大きすぎて、単なるバラマキになっているのではないかと感じていたからだ。

 補助金に詳しいある関係者は、「補助金漬けになっている人たちというと、第一に農家、第二に商店街が思い浮かぶが、最近は第三のグループとして中小製造業が急浮上している」と語っていた。また別の関係者は、採択された企業のレベルがだんだんと落ちていることを嘆いていた。「こんな事業計画で1,000万円ももらえるのか?」と驚くことが多々あるそうだ。

 ただ、来年度は消費税が10%に上がる予定であり、かつ中小企業向けに外形標準課税の導入が検討されている。よって、中小企業の景気対策とガス抜きのために、補正予算で何らかの補助金が組まれる可能性が高い。先ほどの関係者は、「過去の経験からして、同じ補助金が4回以上実施されることはない」と述べていた。これは、裏を返せば、同じ補助金でも3回までは実施される、ということだ。ものづくり補助金も、最後の1回が来年行われるのかもしれない。

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