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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年11月15日

「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」の運用改善に関する私案


 平成25年度補正予算「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」は、昨年の「ものづくり補助金(ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金)」に比べ、細かいルールがいくつも追加されて、非常に複雑になった印象を受ける。ただ、枝葉末節にこだわりすぎて、制度の本来の目的から逸れているのではと感じることもある。

 ものづくり補助金の元々の目的は、「中小企業が自ら主体的に新しい試作品を開発し、その機能・性能を客観的に評価する取り組みをサポートすること」であると解釈している。今日の記事では、私の周りで採択企業を支援している中小企業診断士からいろいろとうかがった話をベースに、本来の目的に立ち返って制度の運用を改善できそうなポイントを列記してみたいと思う。もっとも、来年度もまたこの手の補助金があるかどうかは解らないのだが・・・。

 (1)設備投資型
 新ものづくり補助金、ものづくり補助金ともに、マシニングセンタなどの機械装置を購入するだけの「設備投資型」という類型がある。アマダやキーエンスといった工作機械メーカーは、中小企業が補助金を活用して自社の製品を買ってくれるよう、かなり積極的な営業攻勢をかけているという。ただ、個人的には、この類型がどうして認められているのか不思議に思うところがある。

 というのも、公募要項などには、「主たる技術的課題の解決方法そのものを外注または委託する事業」は補助対象外と明記されている。そして、この要件を金額面から具体化したルールとして、「外注加工費と委託費の合計が補助対象経費総額の2分の1を超えてはならない」と定められている。ところが、機械装置の購入は、言い換えれば加工技術を外部から購入することであり、このルールをすり抜けて技術的課題の解決を外部に丸投げしているようにも見えてしまう。

 後述する「設備投資+試作開発型」や「試作開発のみ型」では、機械装置費以外に、原材料費、直接人件費、外注加工費、委託費、専門家謝金など多くの費目があり、それぞれの費目に関して実際にかかった経費のエビデンスを揃えると、下のような分厚いキングファイルが必要になる。ところが、「設備投資型」の場合、必要なのは機械装置費だけであり、しかも購入点数が1点だけであるから、揃えるべき証憑類も非常に少なくて済む。それなのに、「設備投資+試作開発型」などと同じ金額の補助金がもらえるというのも、何だか不公平な気がする。

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 実際には、工作機械を買うといっても、機械メーカーの標準カタログを見て、「これをください」と注文するだけでは済まない。自社の製品や製造ラインの特性に合わせて、カスタマイズを依頼するのが普通である。工作機械を導入すると、メーカーの技術者が操作方法をトレーニングしてくれるが、社員は教えられた通りに使うだけでは不十分だ。自分の業務に合わせて操作方法を工夫し、オリジナルのマニュアルを作成する。トヨタではよく、「カタログエンジニアにはなるな」と言われる。カタログに書いてある通りの使い方しかできない技術者にはなるな、という意味である。

 そして、当然のことであるが、新しい機械を使って何種類かの試作品を作り、機械の性能を評価するはずである。その際には、新しい治具やバイトなどの道具も開発する必要もあるだろう。こうした機械装置の導入に関する一連のプロセスを踏まえると、単に購入関係の書類だけではなく、例えば以下の書類も追加で提出を要求してはどうだろうか?そうすれば、提出書類のボリュームも多くなり、他の類型との不公平感も多少は緩和されるに違いない。

 ・機械メーカーに依頼したカスタマイズの仕様書。
 ・機械メーカーが作成した、特注部分に関する図面、仕様書、操作マニュアル。
 ・自社で作成したオリジナルの操作マニュアル。
 ・機械装置導入前後の製造プロセス比較図。
 ・機械装置で製作した試作品の図面、写真、品質評価の結果。
 ・新たに開発した治具やバイトなどの道具の図面、写真。

 (2)設備投資+試作開発型、試作開発のみ型
 この類型は、「設備投資型」とは違って原材料費など多くの費目があり、証憑類を揃えると膨大な量になることは先ほど述べた。特に、直接人件費が大変であり、賃金台帳、給与明細、週報、出勤簿、源泉税納付書、会議の議事録、作成した図面など、ありとあらゆる書類の提出が求められる。購入したモノが物理的に残る原材料などと異なり、直接人件費の場合は補助金が何に使われたのかが解りにくく、しばしば不正が起きることから、ルールが厳しくなっていると思われる。

 補助金のことをよく知っている中小企業は、面倒な直接人件費を外して、例えば「原材料費+機械装置費+外注加工費」といったパターンで申請してくるそうだ。ただ、これも「中小企業が自ら主体的に新しい試作品を開発し」ていると言えるかどうか怪しい部分がある。技術的課題の解決はほとんど外部のメーカーに委ねられており、自社は仕入れた部品を組み立てるだけであれば、主体的に試作品を開発しているとは言い難い。

 普通に試作品開発をしていれば、原材料の品質を評価したり、社内で部品を加工したり、外注先に提出する図面を引いたりと、必ず直接人件費が発生するはずである。仮に自社では組立しかしないとしても、その組立工程に何らかの重要な技術的課題があって、その課題の解決のために直接人件費が発生する、というのでなければおかしい。パソコンメーカーのデルは自社では組立しかやらないが、組立技術の開発に注力しており、特許もたくさん取得している。

 「設備投資+試作開発型」、「試作開発のみ型」の場合は、その企業が主体的に試作品開発を行っているという意思表示をさせるために、直接人件費を必須としてはどうだろうか?

《追記》
 本論からは逸れるが、直接人件費の申請にはリスクが伴うことを指摘しておく。中小企業の場合、社会保険に未加入、もしくは加入しているが保険料が未払いというケースがよくあるが、そのような企業は補助金が受けられないと言われている。就業規則がない企業も同様である。また、提出されたタイムカードを見ると、非常に多くの時間外労働が見られるにもかかわらず、給与明細上では残業代が支払われていない場合も、国から何らかの指導が入る可能性がある。法律違反を犯している企業には補助金を支給できない、というわけだ。

 (3)革新的サービス型
 新ものづくり補助金で追加された「革新的サービス型」は、サービスの範囲が広すぎて、何が革新的サービスなのかは私もよく解っていない(汗)。特に問題となるのが、サービスの評価をどのように行うか?である。前述のように、この制度での試作品開発には「機能・性能を客観的に評価する」ことも含まれる。製造業であれば、自社にある測定機などを使って品質評価を行うだろうし、産業技術研究センターのような外部の公的機関に評価を依頼することもできる。

 ところが、サービスは評価が非常に難しい。サービスの生産と消費が分離している場合、例えばソフトウェア開発であれば、完成したソフトを社内のテスト仕様書に従ってテストした結果が出るので、製造業と同様に客観的な評価をしたと言えるだろう。困るのは、サービスが生産されると同時に消費されるケースである。例えば、新しいヘッドスパサービスを提供するために頭皮マッサージ機器を導入し、社員が新しいマッサージの施術方法を習得したという場合、サービスの品質をどうやって測定すればよいのだろうか?

 結局のところ、そのようなサービスを評価するのは顧客でしかない。新ものづくり補助金は、あくまでも試作開発に対する補助金であり、テスト販売は例外的にしか認められていない。しかし、サービスの場合は、サービスの評価も責任を持って実施させるために、テスト販売をむしろ必須にすべきだと思うのである(ただし、テスト販売を通じて得られた収益は補助金から減額する)。公募の段階でテスト販売を事業計画書に盛り込み、補助事業終了時の報告書にはテスト販売の結果(売上・収益と顧客の声)を入れるようにする。

 現在の「革新的サービス型」の報告書は、経営革新計画に倣った5か年計画(経常利益、付加価値額の伸び)を記載するようになっている。しかし、そのような長期的・マクロなプランよりも、もっと足下のミクロな数字を重視した方がいいのではないだろうか?

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