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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年11月12日

「横浜型地域貢献企業」(ノジマなどが認定)―横浜市がCSRに積極的な企業を認定する制度


 いつもは東京都で理論政策更新研修を受けるのだが、今年はちょっと浮気して神奈川県の研修を受講してみた。正直な感想を言うと、神奈川県の研修の方が面白いと思った。東京都の研修は、1.5時間と2.5時間の2コマ構成なのだが、1.5時間のコマは、Webで調べれば解るような中小企業支援施策の説明に使われるし、2.5時間のコマは時間が長すぎて聞いているのがつらい・・・。その点、神奈川県の研修は4時間で3コマなので、1コマあたりの時間がちょうどよい。さらに、1コマは必ず中小企業の経営者が登壇するから、経営に関するリアルな話が聞ける。

 今日は、私が受講した研修の中で紹介された「横浜型地域貢献企業」という取り組みについてまとめておきたいと思う。この制度は、横浜市民を積極的に雇用している、市内企業との取引を重視しているなど、地域を意識した経営を行うとともに、本業およびその他の活動を通じて、環境保全活動、地域ボランティア活動などの社会的事業に取り組んでいる企業を認定するものだ。

■制度の運営主体:
 横浜市経済局、横浜市大CSRセンターLLP、NPO法人横浜スタンダード推進協議会、横浜商工会議所、横浜企業経営支援財団(IDEC)の5団体。

■認定された企業数:
 2008年度の導入以来、2014年5月1日現在で286社が認定されている。
 <内訳>
 ○規模別・・・小規模(9人以下)55社、中小(10~300人)212社、大規模(301人以上)19社。
 ○業種別・・・製造42社、建設130社、造園17社、電気工事17社、不動産7社、サービス36社、情報通信6社、小売・卸16社、廃棄物処理9社、その他6社。
 (※建設業の認定数が多い理由は、後述の「認定企業のメリット」を参照)

■評価項目:
 (A)地域性評価・・・地域でのCSR活動の内容、取り組み数を10の項目で評価。
  <必須>
  (1)コンプライアンス・・・法令順守宣誓書、納税証明書、許認可。
  <重要>
  (2)地域社会貢献・・・地域ボランティア、文化事業への積極的な参加など。
  (3)地元活用・志向・・・取引先を地元企業から優先的選定、地元ブランドの販売など。
  (4)雇用・・・女性の社会的進出の促進(よこはまグッドバランス賞認定など)、出産育児サポート、介護サポート制度、高齢者・障害者積極採用など。
  (5)環境・・・認証取得(ISOなど)、地域環境活動参加、リサイクルなど。
  (6)品質・・・認証取得(ISOなど)、高齢者対応製品、健康に配慮した製品など。
  <一般>
  (7)財務・業績・・・黒字決算、出納と帳簿作成の分離、会計参与の設置など。
  (8)労働安全衛生・・・認証取得(OHSASなど)、健康・労務相談窓口の設置など。
  (9)消費者・顧客対応・・・顧客対応窓口の設置、顧客対応の教育・訓練制度など。
  (10)情報セキュリティ・・・Pマーク取得、厳重な文書・データ管理、顧客情報管理など。

 (B)システム評価・・・CSR活動を行うための経営の仕組み(システム=PDCAサイクル)が構築されているかを評価。
  <評価項目例>
  ・経営者はビジョン(経営理念、社是・社訓)を策定しているか?
  ・社員の教育・訓練を実施しているか?
  ・ステークホルダーからの苦情や要望を文書に残しているか?
  ・文書や記録が作成・保管されているか?
  ・内部監査の手順を定め、実施しているか?
  ・ステークホルダーの反応を分析し、評価しているか?

■評価ランク:
 地域性評価の10項目のうち、クリアできている項目数によって3段階に分けられる(認定されるためには、これに加えてシステム評価をクリアしている必要がある)。

 ○標準・・・(1)コンプライアンスは必須、(2)~(6)の重要項目を1つ以上クリアし(うち1項目は(2)地域社会貢献、または(3)地元活用・志向を含むこと)、全体で3項目以上クリア。
 ○上位・・・(1)コンプライアンスは必須、(2)~(6)の重要項目を2つ以上クリアし(うち1項目は(2)地域社会貢献、または(3)地元活用・志向を含むこと)、全体で5項目以上クリア。
 ○最上位・・・(1)コンプライアンスは必須、(2)~(6)の重要項目を3つ以上クリアし(うち(2)地域社会貢献と(3)地元活用・志向は両項目必須)、全体で7項目以上クリア。さらに、直近3期以内に1回は黒字であること。

■認定企業のメリット:
 (1)認定マークの利用(例えば、横浜市に本社を置くノジマのWebサイトを参照)。
 (2)横浜企業経営支援財団、横浜市のWebサイトなどによる企業PR
 (3)経営革新に向けた専門家派遣制度「経営コンサルティングメニュー」の利用料の一部優遇(3~12回の派遣で、通常は1回1万円だが、認定企業は3回まで無料となる)。
 (4)認定企業対象セミナー(無料)、認定企業交流会(一部有料)。
 (5)低利融資制度「成長支援資金(公的事業タイアップ型)」の利用(融資額:2億円以内、利率:2.1%以内、保証料率:0.1125~0.4750%。最上位認定の企業には、融資額5,000万円を上限に保証料率の3/4を助成)。
 (6)助成制度「中小製造業設備投資等助成」利用の資格要件の緩和
 (7)横浜市の公共工事におけるインセンティブ発注(公共工事の入札の際に、認定企業であることを参加条件とする。この条件があるために、建設業の認定数が多い)。

 横浜市の取り組みは非常にユニークであり、他の自治体でも類似の制度を導入するところが増えているという。ただ、評価項目を見ると、CSRとの関連性が見えにくものも含まれている印象を受ける。例えば、顧客対応の教育・訓練制度や出納と帳簿作成の分離などは、普通に事業を行っていればまず間違いなく実施することであり、これらの活動が果たしてCSR活動と言えるのかどうかは若干の疑問が残る。

 CSR活動の目的は「企業が地域社会に根を下ろしながら持続的に事業を行うこと」である。そのために必要なのは、「顧客の無理難題に付き合わないこと」と、「社員や取引先に無理な注文をつけないこと」の2つではないだろうか?この2つの視点から評価項目を定義すれば、もっと精度の高い仕組みになるような気がする。

 前者に関して言えば、顧客からの厳しい要求に真面目に応えると自然環境の破壊や地域資源の浪費につながる恐れがある場合には、その取引を停止する勇気が必要であろう。これだけではまだ受動的・消極的な反応にすぎないが、より積極的な企業は、顧客が環境や地域資源に配慮した製品へのニーズを持つよう、顧客の啓蒙活動に注力するに違いない(評価項目の中の「顧客対応の教育・訓練制度」がそういう意味合いならば納得できる)。

 後者については、まずは昨今問題視されている社員の使い捨てや下請けいじめをやめることが第一である。ただし、これだけではまだまだ消極的だ。もっと前向きな取り組みとしては、例えば社員に高度なトレーニングを行って、自社で長期間自律的に働けるようにしたり、取引先への技術支援(具体的には、環境負荷の低減や地域資源の節約につながる技術の支援)を通じて、取引先の競争力向上や持続的経営に貢献したりすることが考えられる。そのような活動を評価する制度にするのが望ましいだろう。

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