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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年12月22日

「ASEAN情報マップ」最新版(国際機関日本アセアンセンター作)の説明会に行ってきた


 国際機関日本アセアンセンターは、ASEANの加盟10か国(ブルネイ、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス)の各種データを横串で比較できる「ASEAN情報マップ」というものを公表している。

 「『国際機関』とは何ぞや?」と思っていたのだが、ASEAN加盟国政府と日本国政府の協定によって、1981年に設立された組織だそうだ。ASEAN諸国から日本への輸出の促進や、日本とASEAN諸国間の直接投資、観光および人物交流を促進するために、ASEAN商品の展示会、各種セミナーの開催、ミッションの派遣・招聘、人材育成、文化紹介イベント、出版物の発行および情報提供など、多岐にわたる事業を実施している(HPより)。その日本アセアンセンターが、最新のASEAN情報マップの公開に伴い、説明会を実施したので、参加してきた。

 (1)ASEANの人口は2030年に7億人になると予想されている。ただし、シンガポール、タイ、ベトナムは少子化が進む。人口ピラミッドがきれいなピラミッドの形をしているのはフィリピンのみ。

1_ASEANの人口推移と2030年予測

2_ASEAN各国他の人口推移

 (2)ASEANのGDPは、2019年の予測では日本の半分だが、PPP(購買力平価)ベースで見るとほぼ同じになる。購買力平価とは、ある国である価格で買える製品が、他国ならいくらで買えるかを示す交換レートである。例えば、ある商製品が日本では200円、アメリカでは2ドルで買えるとすると、1ドル=100円が購買力平価である。GDPのデータに基づけば、2019年のASEANの物価は日本の約半分ということになる。

3_ASEANのGDP・PPP推移と予測

 (3)日本の貿易相手国の割合を見ると、ここ30年ぐらいずっと15%前後で推移している。これに対し、ASEANの貿易相手国を見ると、日本のプレゼンスが低下している。代わりに、ASEAN域内の貿易と、対中貿易が増加している。

4_ASEAN・日本の主要貿易相手国・地域

 (4)ASEANの域内貿易をさらに分析すると、2000年はシンガポール、マレーシア、タイへの輸出が目立つが、2013年になるとインドネシア、ベトナムへの輸出が増加している。東アジアと世界の貿易を分析すると、2000年にはASEANと中国には中間財が多く流れ込んでおり、ASEANと中国が生産拠点となっていた。これに対し、2013年には、ASEAN、中国とも、流入する中間財の割合が減っている。これは、ASEANや中国の消費市場が成長したことを意味する。

5_ASEAN域内の部品貿易

6_東アジアと世界の主要地域との貿易のフロー

 (5)ASEANに最も多くの直接投資を行っているのは日本である。ASEANへの累積投資額は、対中投資のそれを上回る。日本からASEAN各国への直接投資額を見ると、直近では、タイ、シンガポール、ベトナムの順番となる。直接投資の累積額では、タイとシンガポールが拮抗している。タイは自動車関連企業が多数進出していること、シンガポールにはアジアの統括拠点が設置されていることがその理由である。累積額ベースではベトナムはまだまだ少ないが、これは、チャイナ・プラスワン戦略の候補としてベトナムが注目され始めたのが最近であるためだろう。

7_日本からASEANと中国への直接投資額

 (6)原材料の現地調達率をみると、裾野産業が育っていない国では日本からの輸入の割合が高くなる。海外に生産拠点を設置すると、安価な労働力と原材料がすぐに手に入ると思われがちだが、原材料はなかなか現地調達できないと思った方がよい。ネジ1本にしても、現地のよく解らない企業のものを、自社の大事な製品に組み込むのは勇気がいる。よって、当初は日本から原材料を調達しながら、徐々に地場企業を探していくことが必要である。

 タイでは日系企業の52.7%が現地調達を行っているが、その内訳を見ると、現地に進出している日系企業から調達している割合が55.7%と高い。それだけ、タイには日系企業の産業集積ができ上がっているということである。

8_原材料・部品調達率

 (7)失業率を見ると、タイは完全雇用に近く、若年労働者の雇用が困難である。日本アセアンセンターの担当者によれば、ここ数年で製造業が進出しやすくなったのがフィリピンであるという。人件費はベトナムの2倍ぐらいするものの、失業率が高く仕事がないこともあり、一度採用すれば簡単には離職しない。インドネシアは人口の多さに仕事の方が追いついていない。ジャカルタ以外の地方では、かなり人が余っているらしい。

9_失業率

 (8)都市化率(都市部に人口の何割が住んでいるか)を見ると、タイとベトナムはわずか3割である。都市部と地方では物価が全く異なるため、販売する製品・サービスを変えなければならない。日本において、東京の給与を100とすると、鳥取は70だから(あくまでも例です)、タイの地方では都市部の7割ぐらいの価格で販売すればいいだろうという感覚で臨むと失敗する。地方では10分の1の価格でないと売れないこともある。エースコックは、都市部を捨てて、地方に特化することで成功している。即席めんの売上高は、海外と日本でほぼ肩を並べるまでになっている。

 逆に都市部の富裕層は、可処分所得が多い上に、物価が日本より安いことから、自由になるお金の割合が日本人より多い。マレーシアではメイドを3人雇ってもお釣りがくる。日本人のライフスタイルをASEANの都市部の富裕層に当てはめて考えるのは間違いである。

10_都市人口率

11_平均世帯可処分所得の格差

 (9)ジニ係数は、0.4を超えると暴動が起きると言われているが、ASEAN諸国はほとんどが0.4を超えている。それでも暴動が起きないのは、「富裕層は5倍豊かになったが、一般庶民も2倍豊かになったから、ここは我慢しようや」という心理が働いているためではないかと思われる。ちなみに、日本のジニ係数は、所得再分配前が約0.5で、暴動が起きるレベルである。様々な社会保障による所得再配分のメカニズムが機能しているため、現実のジニ係数は0.3まで下っている。ASEAN諸国は、社会保障制度を整備することが今後の課題である。

12_GINI係数

 (10)ベトナムは親日国である。ASEAN各国に「ASEANにとって現在の重要なパートナーはどこですか?」という質問をすると、大部分のベトナム人は「日本」と答える。親日派が多い理由の1つは、ベトナムの歴史教科書に求めることができるだろう。ベトナムは社会主義国なので、歴史教科書は国定である。中国や韓国の歴史教科書が日本のことを徹底的に批判しているのに対し、ベトナムの歴史教科書は日本に肯定的である。

 ベトナムの歴史教科書は中ソとの戦争のことが大部分を占めるが、日本のことも3回登場する。ⅰ)明治維新、ⅱ)太平洋戦争、ⅲ)戦後の復興、の3回である。ⅱについては日本に否定的であるものの、ⅰとⅲに関しては「日本に学べ」というメッセージが打ち出されている。すなわち、ⅰに関しては、フランス領だったベトナムは、明治維新を通じて自力で近代化に成功した日本に学ばなければならないとしている。また、ⅲに関しては、アメリカに大敗し、しかも資源に乏しかった日本がどうやって経済発展を遂げたのか、成功要因を学ぶべきだとしている。

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