プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年12月05日

「神奈川県中小企業診断協会」の理論政策更新研修に行ってきた(テーマは「ものづくり」)(1/2)


 今年2回目の理論政策更新研修(※中小企業診断士が資格を維持するために、5年間で5回受講しなければならない特定の研修)は、前回(以前の記事「「横浜型地域貢献企業」(ノジマなどが認定)―横浜市がCSRに積極的な企業を認定する制度」)に引き続いて、東京ではなく神奈川で受けてきた。テーマは「ものづくり」。最近、製造業のクライアントが増えてきたことから、何か仕事のヒントを得ようと参加した。今日の記事は、個人的に勉強になったことのまとめ。

 (1)1コマ目は、関東経済産業局の職員による中小企業政策の解説であった。従来、中小企業政策の立案の現場では、ものづくりが非常に狭く捉えられていた。すなわち、ものづくりとは製造業における製造現場のことである、という見方である。しかし、最近ではその概念が広くなっており、製造業における開発、購買、販売現場もものづくりに含まれるようになった。

 加えて、サービス業にも、ものづくりの概念が拡張されている。サービスの生産現場(例えば飲食店が調理をする、ソフトウェア会社がプログラムを開発する、など)はもちろんのこと、サービスの開発、購買、販売現場もものづくりに包摂される。要するに、製造業もサービス業も、あらゆる業務がものづくりであり、企業活動の本質はものづくりである、ということになる。

 政策立案者の視点の変化には、東京大学の藤本隆宏教授の理論が大きく影響している。藤本教授は、ものづくりを「設計情報の創造と転写」と定義する。設計情報の創造とは、企業で言えば開発のことである。また、設計情報の転写には、ⅰ)媒体への転写(生産)、ⅱ)顧客への転写(販売)の2段階があるという。設計情報とは、いわゆる図面である必要はなくて、大まかに言えば、顧客のニーズに応えるために必要な機能、性能、価値、デザインなどに関する構想のことであり、それを確実に製品・サービスに反映させていくことをものづくりと定義しているわけである。

 (2)関東経済産業局の職員からは、補正予算がどのようにして組まれるのか、面白い話を聞くことができた。8月になると、各省庁は財務省があらかじめ示したシーリングの枠内で概算要求を行う。ところが、その枠外で各省庁が自由に施策や事業を提案することがある。それが「優先課題推進枠」と呼ばれるものである。実は、補正予算が組まれる場合、この優先課題推進枠から施策が選択されることが多いというのである。つまり、次年度の予算で実施する予定だったものを、前倒しで実施しようというのが補正予算なのである。

 平成27年度の経済産業省・中小企業庁の概算要求で挙げられた施策のうち、優先課題推進枠として計上されているのは、以下の11施策である(カッコ内は優先課題推進枠の金額)。

 ・小規模事業対策推進事業(63.9億円)
 ・ふるさと名物応援事業(23.0億円)
 ・ふるさとプロデューサー育成等支援事業(4.0億円)
 ・創業・第二創業促進補助金(25.0億円)
 ・中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業(25.0億円)
 ・革新的ものづくり産業創出連携促進事業(112.0億円)
 ・商業・サービス競争力強化連携支援事業(9.9億円)
 ・中小企業・小規模事業者情報プラットフォーム活用支援事業(9.0億円)
 ・地域課題解決ビジネス普及事業(2.0億円)
 ・企業取引情報等に基づく地域活性化事業(2.2億円)
 ・事業計画策定・実行支援事業(15.0億円)

 衆議院が解散したため、来年以降の政治の動きが見えにくいのだが、2014年7-9月のGDPがマイナスであったことを踏まえ、来年1月には景気対策として2~3兆円の補正予算が組まれる見込みである。予定されている施策の中に「地域商品券」があるが、これはまさに「ふるさと名物応援事業」を先取りしたものである(この施策に対しては、10年前の「地域振興券」の失敗を忘れたのか?と非難の声が強いが・・・)。関東経済産業局の職員の言葉は嘘ではないようだ。

 研修の内容からは脱線するが、最近よく「平成26年度補正予算でものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)はやるのか?」と聞かれる。読売新聞が11月18日に報じた補正予算の原案を見ると、ものづくり補助金はやらないようにも見える(「補正で経済対策2兆円、地方創生充実…政府原案」読売新聞2014年11月18日)。

 一方で、ものづくり補助金の運営を国から受託している全国中小企業団体中央会の鶴田会長は、自民党に対してものづくり補助金の継続を要望している(「鶴田会長、自民党中小企業・小規模事業者政策調査会懇談会にて今後の中小企業政策を要望(2014.11.11 全国中央会)」)。こういう要望を出すと比較的通りやすいので、そういう意味ではもう1回やるのかもしれない。個人的には、全国にある約40万の中小製造業のうち、ここ2年でその6%にあたる約2万4千社に補助金を支払ったから、もう十分なのではないか?と思うのだが・・・。

 (3)2コマ目は、中小企業診断士による中小製造業の支援事例の紹介であった。正直に言うと、このコマが一番退屈だった(苦笑)。講師の診断士はSWOT分析を使って3社の事例を解説したのだが、「診断士って本当にSWOT分析が好きだよなぁ」と思ってしまった。SWOT分析からは事業戦略は導かれないことは、以前の記事「飯田順『目指せ!経営革新計画承認企業』―中小企業診断士が策定する戦略に対する5つの疑問(前半)」でも書いた。

 いきなりSWOT分析をさせられても、外部環境や内部環境の何を対象として分析すればよいのか解らない。また、強みと弱み、機会と脅威を分ける基準もはっきりとしない。強み・機会のように思えることが、見方を変えると弱み・脅威にもなることはよくある。要するに、SWOT分析は分析のフォーカスが非常に絞りにくいのである。

 そのフォーカスを絞るのは、私は戦略だと思っている。戦略とは、「誰(=ターゲット)に、何(=顧客価値)を、競合他社とどのように差別化しながら提供するのか?」という問いに対する答えである。戦略がはっきりすれば、ターゲット市場における機会や、競合他社の出現による脅威を捉えることができる。また、ターゲット顧客に価値を訴求するにあたって、自社の強みとなる組織能力や、逆に足かせとなる弱み、競合他社に劣る弱みをはっきりとさせることができる。

 SWOT分析は、診断士が思っているような戦略立案のツールではない。戦略そのものは、別の手法によって明らかにする必要がある(現在、この辺りの方法論を個人的にまとめている最中である)。では、SWOT分析から導かれるのは何なのかというと、戦略を実現するための業務プロセスや組織構造上の課題であると私は考える。

 講師の診断士が紹介した3つのSWOT分析には、全て強みに「社長の強いリーダーシップ」という項目が入っていた。これも診断士が中小企業のSWOT分析をやると、必ずと言っていいほど登場する項目である。私は、これには意味がないと断言できる。確かに、中小企業の経営の命運は、社長が握っている部分が非常に大きいのかもしれない。だが、仮に社長のリーダーシップで全てが決まるのならば、他の項目は分析する意味がないことになってしまう。

 それに、「社長の強いリーダーシップ」などというのは、強みなのか弱みなのか、非常に曖昧である。社長のリーダーシップが強いということは、裏を返せば社長がワンマンである、ということだ。だから、本来は弱みに書くべきことなのかもしれない。社長の顔色をうかがいながら、厳しいことを言っても大丈夫そうならば、弱みに「社長がワンマンである」と書き、社長のご機嫌をとる必要があるならば、強みに「社長のリーダーシップが強い」と書くようなご都合主義がまかり通るのが、この「社長の強いリーダーシップ」という要素なのである。

 (続く)

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