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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年01月23日

【補助金の現実(3)】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる


税金

 《前回までの記事》
 【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい

 《2016年11月28日追記》
 この記事が比較的よく読まれているようなので、平成28年度補正ものづくり補助金(革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金)に関連する記事へのリンクを貼っておく。

 「新ものづくり補助金(平成25年度補正)」申請書の書き方(例)
 【シリーズ】「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)
 【平成28年度補正ものづくり補助金】賃上げに伴う補助上限額の増額について

 補助金事務局の確定検査が終わり、無事に補助金が振り込まれても、実は補助金が100%まるまる自社のものになるとは限らない。場合によっては、補助金は税務上益金として扱われ、法人税の対象となる。「法人税法の基本通達」の「第15章 公益法人等及び人格のない社団等の収益事業課税」の「第2節 収益事業に係る所得の計算等」に、以下のような規定がある。
15-2-12 収益事業を行う公益法人等又は人格のない社団等が国、地方公共団体等から交付を受ける補助金、助成金等(資産の譲渡又は役務の提供の対価としての実質を有するものを除く。以下15-2-12において「補助金等」という。)の額の取扱いについては、次の区分に応じ、それぞれ次による。(昭56年直法2-16「八」により追加、平20年課法2-5「三十」、平23年課法2-17「三十三」により改正)

(1)固定資産の取得又は改良に充てるために交付を受ける補助金等の額は、たとえ当該固定資産が収益事業の用に供されるものである場合であっても、収益事業に係る益金の額に算入しない。

(2)収益事業に係る収入又は経費を補填するために交付を受ける補助金等の額は、収益事業に係る益金の額に算入する。
 (1)は施設補助金、(2)は経費補助金と言われる。まずは(2)経費補助金から話を始めよう。経費補助金とは、具体的には、創業や新規事業などに要した原材料費、直接人件費、外注加工費、委託費、マーケティング費、運搬費、店舗・事務所等借入費など、税務上損金として扱われる経費を補助金で賄うケースである。

 ただ、新規事業のために新たに原材料を購入したり、外注加工先を使ったり、マーケティング費用を支払ったりする場合であれば、増えた損金が後から補助金=益金で相殺されるため、法人税は発生しない。問題なのは、補助金を受ける前から恒常的に発生していたコストを補助金で賄った場合である。例えば、あるソフトウェア会社があって、収益がトントンであったとする。この会社が、新たなITサービスを既存の社員で開発するために補助金を申請したとしよう。

 この場合、会社の直接人件費は増えないので、損金も変わらない。しかし、そこに補助金が振り込まれると、補助金の分だけ益金が増えてしまい、会社の課税対象所得が跳ね上がってしまう。仮に1,000万円の補助金を受けたとすると、会社の税引き前当期純利益が0円からいきなり1,000万円になる。よって、350万円ぐらいの法人税の支払いが発生する。補助金を受けたのに、法人税の支払いのために本業が圧迫されてしまうようでは本末転倒である。

 (※1)以前の記事「「うさんくさい補助金申請書」を見極める7つの審査ポイント(その1~3)」で書いたように、直接人件費の割合が異常に高い事業計画書は、補助金の不正受給を疑われやすいので、できるだけ避けた方がよい。原材料や機械装置は買ったモノが目で見て解るのに対し、直接人件費は本当に社員が働いたかどうかを確認することが非常に難しい。よって、不正の温床になりやすいと言われている。とはいえ、上記のソフトウェア会社のように、労働集約的な企業では、どうしても直接人件費の割合が高くなってしまうのは否めない。

 (※2)直接人件費についてもう1つだけ補足。事業計画書を提出して無事に採択され、事業を進めていくうちに、当初の計画通りに行かず、変更が必要になることがある。例えば、社員が行う予定だった作業が、他の業務が忙しくなって社内でできなくなった。そこで、その作業を外注に回したいので、直接人件費を減らして、代わりに外注加工費を増やしたい、といった具合である。これを、経費区分間の流用増減と呼び、一定の手続きを踏めば変更が認められる。

 ただし、多くの補助金では、直接人件費の増額だけは禁止されている。これには理由がある。例えば、原材料費、機械装置費、直接人件費を合わせて、1,000万円の補助金を申請していたとしよう。しかし、事業を実際にやってみたら、原材料がそれほど必要ではないことが解り、機械装置も想定より安く調達できてしまった。このままだと、700万円ぐらいしか補助金が申請できない。しかし、本来1,000万円の権利を持っているのだから、このままではもったいない。

 さて、この場合、あなたが経営者ならばどう考えるだろうか?たいていの経営者は、恒常的に発生する直接人件費を300万円分増やして、満額の1,000万円をもらおうとするに違いない。週報などを無理やり作成して、あたかも補助金の対象事業に従事していたかのように見せかけるのである。だが、直接人件費は不正の温床になりやすいと書いた。こういう不正が起こりうるため、直接人件費への流用が禁止されているわけである。

 話を元に戻そう。(1)の施設補助金とは、工作機械などの固定資産の購入費を補助金で賄うケースである。この場合、購入物は固定資産に計上され、ただちに損金とならない。よって、補助金がまるまる益金となり、多額の法人税が発生してしまう。これでは何のための補助金か解らないので、税務上は圧縮記帳という方法が認められている。これは、簡単に言えば、補助金で固定資産を購入した場合、その購入価額から補助金の額を控除して購入価額とすることである。

 例えば、国から1,000万円の補助金を受け、1,500万円の備品を買ったとする。この場合の仕訳は以下の通りである。

 (借方)
  当座預金 10,000,000
  備品 15,000,000
 (貸方)
  国庫補助金受贈益 10,000,000
  当座預金 15,000,000

 このままでは、補助金1,000万円がまるまる益金となり、法人税の対象となってしまう。そこで、受贈益分については、次のような損金処理を行って、固定資産の減額を行う。

 (借方)
  固定資産圧縮損 10,000,000
 (貸方)
  備品 10,000,000

 これにより、資産には500万円の備品が計上されることになる。なお、圧縮記帳には圧縮限度額というものがあり、圧縮後は最低でも1円以上の固定資産を資産計上しなければならない。

 圧縮限度額=補助金をもって取得した固定資産の帳簿価額
   ×(返還不要の補助金の額/固定資産の取得のために要した金額)
 (これらの計算によって固定資産の帳簿価格が1円未満となる場合は、1円以上とする)

 圧縮記帳の効果は、あくまで「課税の繰り延べ」である。圧縮記帳で固定資産の価額が減った分、次年度以降の減価償却費(損金)も減ることになり、益金が増えて法人税が増加する。簡単な例で見てみよう。下図の2つのケースは、1年目に1,500万円の機械装置を購入し、5年で定額償却することを想定している。ただし、下の表では、1,000万円の補助金を受けているとする。両ケースとも、各期の減価償却費を除いた経常利益は500万円とする。

 上の表は通常の会計処理の結果である。下の表は圧縮記帳により、減価償却対象の機械装置費が500万円となる。その結果、各期の減価償却費(損金)が減少し、経常利益が増加する。5年間の累積経常利益を見ると、上の表と下の表では1,000万円の差が生じる。これは補助金の額と等しい。よって、結果的には、補助金が将来にわたって益金となっていると言える。条文では「収益事業に係る益金の額に算入しない」となっているが、あくまでも補助金を受けた年度の益金として計上しないという意味であり、実質的には将来の益金が補助金の分だけ増える。

補助金_圧縮記帳


 《2015年8月24日追記》
 「施設補助金」については、「法人税法の基本通達」に「収益事業に係る益金の額に算入しない」と規定されている。施設補助金は、圧縮記帳によって固定資産の価格を減ずるため、直接益金として計上されるわけではない。しかし、上記シミュレーションで見たように、固定資産の価格が下がった分だけ、将来に渡って減価償却費が少なくなり、補助金の額と同額の益金が発生する計算となる。したがって、施設補助金についても、事実上は益金と同等になる。


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