プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 「ものづくり補助金」平成26年度補正と平成25年度補正の違い
Prev:
prev ハーブ・カチンス他『精神疾患はつくられる―DSM診断の罠』―精神疾患は科学ではなく政治で決まる
2015年02月13日

西村隆志『絶対再生―中小企業の事業再生に必要な基礎知識』―この本の再生方法は楽観的すぎる


絶対再生 -中小企業の事業再生に必要な基礎知識-絶対再生 -中小企業の事業再生に必要な基礎知識-
西村 隆志

ギャラクシーブックス 2014-12-22

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 今後は国内市場の縮小による事業再編や、後継者への事業承継を機とした事業再生に踏み切る中小企業が増えて、我々中小企業診断士も再生案件の仕事が増えるだろうから、一から勉強しようと思って買った本である。

 ただし、この本は著者が弁護士であるためか、事業面の評価やチェンジ・マネジメントにはあまり強くない印象を受けた。ビジネスモデルキャンバス、PEST分析、ファイブ・フォーシズ・モデル、バリューチェーン分析、SWOT分析、マーケティング・ミックス、バランス・スコア・カード(BSC)など、経営学で使われるフレームワークをたくさん詰め込んではいるものの、どれも概要レベルの説明にとどまっており、どのフレームワークをどういう順番で用いて、どのような示唆を導くのか?という発想が見られなかった。”フレームワークマニア”にありがちな罠である。

 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)やアンゾフの成長ベクトルを用いて、既存事業だけでなく新規事業も検討すべきだといったことも書かれていた。しかし、瀕死の状態にある企業が新規事業に打って出るのは博打以外の何物でもない。そのお金があるならば、株にでも投資した方がまだリスクが低いだろう。そもそも、それだけの資金があるならば事業に困っていない。

 なぜ、こんな”呑気な”内容になっているのか不思議だったのだが、本書の最後の方でその理由が解った。いわゆる「不良債権」を抱えた再生対象企業というのは、金融機関の債務者区分で言うところの「要管理先」と「破綻懸念先」である。要管理先とは、債権の中に貸出条件を緩和した債権、3か月以上の延滞債権が含まれており、債務償還年数の長期化と初期延滞が見られる企業である。「破綻懸念先」とは、経営難の状態で、経営改善計画などの進捗が芳しくない企業であり、赤字、債務超過、債務償還年数の長期化、相当期間の延滞が見られる企業である。

 破綻懸念先の下には「実質破綻先」という区分がある。赤字、債務超過、債務償還年数の長期化、6か月以上の延滞が見られる企業は、この区分に該当する。私の前職の企業は、金融機関からの借入こそ少なかったものの、代表者が個人資産を億単位で貸し付けていた。ところが、営業利益率が毎年▲30~40%(!)などという惨憺たる業績だったので、債務超過が常態化し、代表者貸付の返済めどは全く立っていなかった。

 そういう状況だったので、毎年決算が迫ってくるたびに、債務超過を消すために、代表者の債権放棄をしたり、代表者から追加の借入金を受けたり、増資をしてもらったりしていた。おそらく、金融機関が前職の企業を評価したら、実質破綻先に区分していたに違いない。

 実質破綻先の企業の殺伐とした雰囲気を知る私からすると、とてもではないが「会社立て直しのために新規事業に打って出ましょう」などとは言えない。それにもかかわらず、危機感が薄かった当時の社長は、この期に及んで「新サービスを開発する」などと息巻いていたので、私は必死で止めようとした記憶がある(結局止められなくて、余計に社内が混乱したのだが・・・)。

 ここまでひどくなったら、まずは製品・サービスを思い切って絞り込まなければならない。不採算の製品・サービスは、代表者の思い入れがあろうと、創業時に屋台骨を支えてくれたものであろうと、バッサリ切る必要がある。次に、絞り込んだ最低限の製品・サービスを製造・販売するために、業務プロセスを再構築し、余計な業務は全て切り捨てる。そして、新しい業務プロセスに人員を配置し直す。最後に、それでもどうしてもあふれてしまう人員をリストラする。利益を出せる製品・サービスで顧客を深耕し、まずは借金を返せる水準まで業績を戻すことが肝要だ。

 私の前職の企業は、2つの意味でリストラに失敗した。1つ目は、最初に製品・サービスを”リストラ”せずに、人員だけカットしたことである。残った社員は、不採算の製品・サービスまで抱え込み、士気が下がってしまった。2つ目は、社員のリストラを何度も繰り返したことである。前職の企業は、私がいた5年半の間に3回リストラをしている。その結果、全体で50人以上いた社員は、私が退職する時には10人程度にまで減っていた。リストラは残った社員に動揺を与える。「次は自分が切られるのではないか?」と疑心暗鬼になり、モチベーションに悪影響を与える。

 リストラをするならば、そうしたマイナスを最小限にするために、一発で絞り切るところまで絞り切らなければならない。「これでは逆に人員不足だ」と感じる水準まで削減するぐらいでちょうどよい。ところが、前職の企業は、1回目の首の切り方が甘かった。当時の社長は、1回目のリストラをした際に、「もうこれ以上はリストラをしない」と残った社員の前で明言していた。にもかかわらず、わずか1年後にもう一度リストラを行った。社員はひどく裏切られた気持ちだっただろう。

 要管理先、破綻懸念先はここまでひどくないから、新規事業も検討しましょうなどという”呑気”なことを著者は書いてしまったのかもしれない。ただ、私が思うに、要管理先も破綻懸念先も、借入金の返済めどが立たないくらいに事業が弱っているという点では同じである。したがって、前述の荒治療ほどではなくとも、似たような基本方針で再生に臨む必要があるのではないだろうか?

 中小企業が要管理先や破綻懸念先から外れる、すなわち金融機関から不良債権とみなされなくなるためには、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)」を作成する必要がある。実抜計画は非常に保守的な計画であり、一発逆転を狙った計画ではない。私なりに解釈すれば、「実現可能性の高い」=利益が出る製品・サービスに絞り込むこと、「抜本的な」=それ以外の不要な製品・サービス、またはそれに付随する業務や資産は切り捨てること、である。

  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like