プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年03月05日

西濱徹『ASEANは日本経済をどう変えるのか』―ASEANで最も有望な進出国は実はマレーシアではないか?


ASEANは日本経済をどう変えるのか (NHK出版新書 434)ASEANは日本経済をどう変えるのか (NHK出版新書 434)
西濱 徹

NHK出版 2014-05-08

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 いよいよ今年は、「ASEAN共同体」が発足する。ASEAN10か国は、「海のASEAN(ブルネイ、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシア)」と「陸のASEAN(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス)」に分けられる。これまではシンガポールを中心に、海のASEANが経済発展で先行してきたが、今後は陸のASEANが大きく成長すると見られている。

 その大きな要因の1つが、国境をまたいだインフラの整備である。陸のASEANには南北経済回廊、東西経済回廊、南部経済回廊(第二東西経済回廊)という3つの経済回廊がある。これにより、陸のASEAN5か国による緊密な連携が実現する。陸のASEANではタイの工業化が最も進んでいるが、将来的には例えばミャンマーやラオスで部品を製造し、それを東西経済回廊を使ってタイに運んで最終製品化する、といった分業も可能になる。

 さらに、南北経済回廊は中国とつながっているので、巨大マーケットである中国へのアクセスが格段によくなる。また、従来は陸のASEANからもう1つの巨大市場・インドへとアクセスするには、マレー半島をぐるりと回る海路を使うしかなかったが、東西経済回廊ができることで、ミャンマー、バングラデシュを陸路で通ってインドに到達できるようになる(ただし、これには両国内の陸路が整備されることが条件である。両国のインフラは決して十分とは言えない)。

 一方で、海のASEANはどうであろうか?シンガポールやブルネイは1人あたりGDPが日本と同程度かそれ以上に成長して成熟期を迎えている上、人口が非常に少ないので(シンガポール約540万人、ブルネイ約42万人)、ビジネスチャンスを見つけることは難しいかもしれない。

 フィリピンは1億人の人口を擁し、国民の平均年齢も20代と若いので、消費市場としては魅力である。フィリピンは英語圏であることを活かして、欧米企業からのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を受注することで発展してきた。ということは、裏を返せば製造業はそれほど強くない。これは私の勝手かつ乱暴な仮説だが、製造業の厳しい品質管理やマネジメントを経験せずにサービス経済に移行した国は、一部の小国(例えば、金融で栄えるルクセンブルクなど)を除いて、能力の高い経営管理職が不足し経済成長の足かせとなる。だから、フィリピンに製造業とサービス業のどちらで進出するにしても、かなり苦労すると思う。

 海のASEANの中で今最も注目されているのは、インドネシアだろう。2億人を超える同国の市場は、国内市場が縮小する日本企業にとっては、喉から手が出るほど欲しい。海外事業のコンサルティングをしている中小企業診断士の方の話によると、インドネシアのある工業団地では、年間200社の日本企業が見学に来るという。ほぼ1日に1社のハイペースである。

 だが、インドネシアは島嶼国家であり、人口が島々に分散している。また、昔から海上交通の要所として見なされていたにもかかわらず、海上交通のインフラが脆弱である。よって、どこで製造し、どのようにそれを運び、どこで販売するのが適切なのか、その見極めが非常に難しい。

 加えて、インドネシアは汚職・腐敗がひどい。NGO transparency Internationalは、各国の政治のクリーン度合いをランキング化している。2014年の調査結果を見ると、インドネシアは107位で、中国の100位より低い(実は、ASEANの大半は、中国より下である。中国より上なのは、シンガポール(7位)、マレーシア(50位)、タイ(85位)、フィリピン(85位)の4か国のみ。ちなみに、日本は15位。なお、ブルネイ2014年の調査では調査対象外となっているが、2011年の調査では38位だった)。この点もビジネスリスクとなりうる。

 実は、海のASEANの中で最も有望なのは、マレーシアなのではないだろうか?マレーシアと言うと、水曜どうでしょう好きの私などは『マレーシアジャングル探検』(1998年)『ジャングル・リベンジ』(2004年)を思い浮かべて、6年経っても全く変わらないタハン川のオンボロボートから、経済成長が進んでいないのではないか?などと思ってしまうのだが、実はマレーシアは1人あたりGDPが1万ドルを超えており、ASEAN諸国の中でも上位の豊かさを誇る。

 また、「日本を真似せよ」といういわゆる「ルック・イースト政策」を推し進める中で、タイやインドネシア、フィリピンなどに比べて人口が少ない(マレーシアの人口は約3,000万人)ことから、労働集約型の産業では勝てないと判断し、最初から港湾、空港、鉄道などのインフラに投資して、重工業で発展を遂げてきた。前述したフィリピンとは異なり、難しい重工業で鍛えられているから、経営管理職も一定のボリューム層が存在していると推測される。

 マレーシアはインドネシアなどに比べると汚職・腐敗が少ない。前述の通り、マレーシアは50位にランクインしている。さらに、マレーシアはビジネスのしやすさでも高い評価を得ている。世界銀行が毎年発表している"Doing Business"の2014年版によると、1位はシンガポールであるが、マレーシアは18位で、ASEAN諸国の中では2番目に高い(ちなみに、日本は29位)。

 確かに、マレーシアはイスラーム圏なので、イスラームに起因する固有リスクはある。代表的なのがハラル認証であり、マレーシアのハラル認証は世界で2番目に厳しいと言われる(最も厳しいのはサウジアラビア)。ただ、裏を返せば、それだけ厳格で明確な基準が備わっているということであり、ルール通りにやれば認証が通るとも言える。ASEANの他の国では、法律や税制上のルールの解釈をめぐって、担当者によって見解が異なり、ビジネスがちっとも前に進まないことがあるとよく耳にする。それに比べると、マレーシアは大分ましなのではないだろか?

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