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2015年02月03日
「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(2)
平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。
ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)|(2)
平成27年度補正予算「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。《本シリーズを書くにあたって参考にした書籍》
「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書) 畑村 洋太郎 実際の設計研究会 日刊工業新聞社 2014-12-26 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
《これまでの記事》
「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)
まず、製品開発プロセスの全体像を押さえておく必要がある。以下は冒頭の書籍からの引用である(本来であればパワーポイントできれいに書き直すべきだが、時間の都合上、スキャンした画像をそのまま用いている。そのため、画像に汚れが目立つ点はご容赦いただきたい)。
<図1:製品開発プロセスと各プロセスにおける決定事項>
「商品企画」とは、市場のニーズや競合他社の製品を調査し、ターゲット顧客を設定して大まかな製品コンセプトや顧客への提供価値を固めるフェーズである。「事業企画」では、開発しようとしている製品の潜在的な市場規模はどの程度か?競合他社は何社ぐらいいるのか?などといった情報から、目標とする市場シェアや売上高を設定する。同時に、試作品開発にかかるコストや量産コストを試算し、投資回収点と将来的に確保できそうな利益の額を推計する。
事業計画が経営層に承認されたら、製品の構想設計に入る。まずは「構想設計」において、事業計画の中で定義した顧客価値を製品の機能へと展開する。その上で、その機能を実現するための機構や構造を明確にする。この「価値⇒機能⇒機構」への展開図のことを、本書では「思考展開図」と呼んでいる(詳細は後述)。ここまで来ると、製品のイメージがはっきりしてくるので、ポンチ絵で製品を可視化する。思考展開図とポンチ絵が完成したら、「開発計画」を策定する。具体的には、製品開発プロジェクトにおけるタスクやスケジュール、体制など実行計画を定める。
ものづくり補助金に応募するにあたっては、ここまでの作業を実施する必要がある。「商品企画」や「事業計画」だけでは、解決すべき具体的な技術上の課題が不明確であるため、応募できない。逆に、詳細設計などを終えて量産に入ってしまうと、既に試作開発ではないから、これもまた補助金の対象外となる。ごく稀に、既に製品化されている製品について、あたかもこれから試作開発するかのように見せかけて、量産用の原材料や機械装置などを申請するケースがあるらしいが、これは虚偽申請にあたるので絶対にやってはいけない。
繰り返しになるが、ものづくり補助金の申請書には、「商品企画」と「事業計画」の要素を十分に盛り込まなければならない。前回のフォーマットを見ると、実は「その1:試作品・新サービスの開発や設備投資の具体的な取組内容」、「その2:将来の展望(本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)」という2つの欄しかなく、2~3枚程度で応募できるかのように錯覚してしまう。これは、中小企業庁が「人的リソースに限りがある小規模事業者でも容易に補助金に応募できるよう、申請書を簡素化する」という方針を出していたためである。
だが、最高で1,000万円という大きな金額がもらえるコンクールに、たった2~3ページで入選しようと考えるのはあまりにも虫がよすぎる。もちろん、たくさん書けばよいとは限らないことは、私も重々承知している。しかし、自社で1,000万円の稟議を通そうと思ったら、何枚ぐらいの稟議書を書く必要があるかを考えてみれば、ものづくり補助金の申請書もどのくらいのボリュームにするべきか、自ずと明らかになるはずだ。
個人的には、「その1:試作品・新サービスの開発や設備投資の具体的な取組内容」、「その2:将来の展望(本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)」という順番も、あまり適切ではないと考えている。この順番は、「技術的な課題をクリアしてそれなりの製品を作れば、自然と売れるはずだ」というプロダクトアウト的な発想に立っている。理想的には、製品開発プロセスは、「商品企画」⇒「事業計画」⇒「構想設計」⇒「開発計画」という順番で、マーケットインの発想で進行する。だから、私に言わせれば、「その1」と「その2」は逆である。
私が考える申請書作成のステップは以下の通りである。
1.環境分析を通じたターゲット顧客・製品コンセプトの設定
2.競合他社との差別化要因の明確化
3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格
4.顧客価値から要求機能への展開
5.要求機能から機構・構造への展開
6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール
4~6の関係をまとめたものが下図である。下図にもあるように、多くの設計者はいきなり機構・構造の話から始めてしまう。その結果、技術的にはすごいけれども、市場には受け入れられない製品ができてしまう。そうではなく、機構よりも前に、機能の話をしなければならない。さらに、機能の話をするためには、必然的に顧客が要求する価値にも思いをめぐらせる必要がある。真の設計とは、価値⇒機能⇒機構という一連の流れを全体的にデザインすることである。
<図2:価値⇒機能⇒機構への展開>
(続く)