プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年02月06日

「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(5)


 平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。

 ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)(2)
 平成27年度補正予算「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。

 「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
 《本シリーズを書くにあたって参考にした書籍》
実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)
畑村 洋太郎 実際の設計研究会

日刊工業新聞社 2014-12-26

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 《これまでの記事》
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)

 《申請書作成のステップ》
 1.環境分析を通じたターゲット顧客・製品コンセプトの設定
 2.競合他社との差別化要因の明確化
 3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格
 4.顧客価値から要求機能への展開
 5.要求機能から機構・構造への展開
 6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
 7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
 8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール


 6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
 機構・構造が明らかになったら、その機構・構造に潜む技術的課題を特定し、解決策(案)を整理する。技術的課題は、個別の機構に含まれているかもしれないし、複数の機構を集約する組み立て方に含まれているかもしれない。いずれにしても、前述の思考展開図の中で、どこに技術的課題があるのかを番号などで明示し、図に続いて技術的課題と解決策の文章を記述するとよい(なお、下図には技術的課題の番号は含まれていない点をご了承いただきたい)。

 <図6(再掲):思考展開図(要求機能から機構・構造へ)>
4_思考展開図(要求機能から機構・構造へ)

 簡単な例だが、LANの障害対策における技術的課題と解決策をまとめたものを以下に示す(ちなみに、全て特許が取得されている技術である)。

 【課題①:障害救済】
 ループ方式は伝送路/ノードの一個所でも障害を起こすと、全体システムがダウンする。このため、障害が生じた時に救済できる構成にする。
⇒【解決策】
 ①-1.障害が生じたノードの直前で信号をループバックさせる。一般的には2重ループを構成し、予備ループを介してループバックをさせる。
 ①-2.障害ノードをバイパスする。
 ①-3.あらかじめ、迂回路を設けておき、障害が生じた時信号を迂回させる。
 ①-4.通常時はループ構成とし、異状時はバス構成とする。

 【課題②:複数障害対策】
 同時複数障害の時にも対応できるような構成にする。
⇒【解決策】
 ②優先順位をつけた複数の監視ノード間を再接続し、両者の連携により複数障害個所のループバックを行う。

 【課題③:障害位置の標定】
 障害救済の前提として、障害個所を特定する方法を確立する。
⇒【解決策】
 ③-1.一定時間異常キャリアを検出しない場合、自局アドレスを送出し、制御局で判定する。
 ③-2.擬似信号を用いて障害ノードを検出する。
 ③-3.障害を検出したら予備ループで各局に一斉に指令信号を送出し、各局が応答することにより複数障害ノードを標定する。

 【課題④:制御局の分散】
 障害時の制御等、ネットワーク全体の制御を行う制御局が一つの場合、この制御局の障害により、システム全体がダウンとなる場合がある。これに対処するための構成を行う。
⇒【解決策】
 ④-1.制御局の機能を代行する局を設け、同期制御を行う。
 ④-2.各局にタイマを設け、タイムアウト時に通信制御を行うことで、集中制御局を不要とする。

 以上のような形で、おおよそ3~5個程度の技術的課題を抽出し、現時点で考えられる解決策のオプションを列記する。技術的課題があまりにも多すぎると、審査員に「試作開発のハードルが高すぎるのではないか?」と思われて、点数が低くなる可能性があるから要注意である。絞り込まれた技術的課題に対して、解決策の候補をしっかりと検討していること、さらにその解決策は自社の既存の技術や組織能力を活用すれば実現可能であると示すことが重要である。

 7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
 6で定めた技術的課題を解決し、試作品を完成させるためのプロジェクト全体のスケジュールを立案する。これは下図のような図(ガントチャート)を作成し、縦軸に記載したタスクについて、それぞれ具体的にどんな作業を行うのかを文章で記述すれば十分であろう。

 <図9:製品開発スケジュールの例(分子レーザー法ウラン濃縮技術開発)>
製品開発スケジュール例(分子レーザー法ウラン濃縮技術開発)

 (※ATOMICA「分子法レーザーウラン濃縮」より)

 スケジュールについて注意しておきたいのは以下の2点である。補助金の場合、「補助対象期間」と言って、「その期間に発生した経費について補助金の対象とする」という期間が設定されている。ものづくり補助金の場合はだいたい1年弱である。補助対象期間を1日でも過ぎた支払いに関しては、絶対に補助対象とならない。

 新製品開発プロジェクトは不確定要素が多いとの理由で、プロジェクトの完了を補助対象期間の終了日ギリギリに設定しているケースがよくあるが、これは危険である。人間というのは不思議なもので、余裕を持って完了日を設定したつもりでも、いざやってみると完了日に終わらず、プロジェクトが長引いてしまうものだ(エリヤフ・ゴールドラット『クリティカル・チェーン』を参照)。だから、補助対象期間の終了日ギリギリにプロジェクトが完了する計画ではなく、2~3か月程度前倒しで完了する計画にするとよい。実際にプロジェクトをやると、そのぐらいでちょうど帳尻が合う。

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
エリヤフ ゴールドラット 三本木 亮

ダイヤモンド社 2003-10-31

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 もう1つの注意点は、補助金で実施する製品開発プロジェクトは、思ったほど早く始められないということだ。まず、応募が締め切られてから採択企業が発表されるまでに、だいたい1か月ぐらいかかる。しかも、採択されたからと言って、すぐに原材料や機械装置などの発注をかけられるわけではない。採択後に「交付申請」という手続きが必要であり、これが最長で2か月ほどかかる(交付申請については、以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」を参照)。

 よって、仮に3月末が公募の締切だとすると、結果発表は4月末、そして、交付決定が下りるのは下手すると6月末ということになる。交付決定が遅くなれば、その分補助対象期間が短くなる。1つ目の注意点で、プロジェクトの完了予定日が2~3か月ほど繰り上がるから、それと合わせて考えると、製品開発スケジュールは初めから相当タイトに組まなければならないことになる。

 プロジェクト体制図のイメージを下図に示した。ただ、この手のプロジェクト体制図は、多くのメンバーが関与するシステム開発の現場では一般的であるものの、人数が限られている中小製造業では、図にせよと言っても図にならないことがほとんどだろう。

 ものづくり補助金の申請書が要求する体制図で重要なのは、社内の人員の情報というよりも、協力してくれる外注加工先や委託先、技術指導者や専門家に関する情報であると思う。外部ノウハウの活用予定について明記すれば、プロジェクトの成功確率の高さを審査員に印象づけることができる(ただし、あまりに外部関係者が多い場合は、技術的課題の解決を丸投げしていると思われて、補助金の応募要件を満たさなくなってしまうため、やりすぎには要注意である)。

 <図10:プロジェクト体制図>
プロジェクト体制図

 (※ZDNet Japan「MindManagerで「見える化」実践! スマートなプロジェクト管理(3)--仲間と仕事の地図を共有しよう!」〔2007年11月12日〕より)

 8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール
 申請書には、試作品が完成して補助事業が終了した後、どのように事業化まで持っていくのか、そのスケジュールも記述が求められる。このスケジュールは、3で設定した目標シェア、顧客数、顧客単価、売上高と整合性が取れていなければならない。

 とはいえ、試作品開発プロジェクトでさえ何が起こるのか解らないのだから、その後の中長期的なスケジュールを書くのはなかなか難しい。最低限書くべきタスクとしては、追加で実施する市場調査、追加で実施する試作開発、量産試作、生産ライン立ち上げ~量産実施、営業・販売活動などであろう。これらのタスクをいつ実施するのか、7と同様にスケジュール表を作成する。下図は、プロモーション活動に関するスケジュールの例である。

 <図11:事業化スケジュール(プロモーション活動)>
事業化スケジュール

 (※「東京広告専科〔アイムアンドカンパニー株式会社〕」HPより)
 【POINT】審査項目の【技術面】②試作品等の開発における技術的課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。③技術的課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか。④補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか。【事業化面】①事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業が適切に遂行できると期待できるか。とも関連。
 (終わり)

《2015年4月17日追記》
 申請書のフォーマットには、補助事業終了後の5か年計画を記入する表がある。「「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(4)」の「3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格」に従って将来の目標売上高を設定し、コストを見積もって利益を算出するわけだが、経常利益が「営業利益-営業外利益」で定義されている。これはフォーマットのミスではなく、ものづくり補助金における経常利益は、「本業での利益」に近い概念でとらえられていることを意味する。

 中小企業の中には、営業損益を営業外収入で補って経常利益を出しているケースがある。しかしながら、営業外収入は本業以外の収入であるから、それによって経常利益が出ていても本業が強いとは言えず、そのような事業計画を審査の段階で高く評価することはできない。よって、ものづくり補助金における経常利益からは、営業外収入が除外されている。

 一方、営業外費用の大部分は支払利息である。事業を行う上では借入金が必要であり、借入金があれば支払利息は不可欠である。借入金にかかる支払利息は、実質的に本業での費用と考えることができる。そのため、ものづくり補助金における経常利益の算出にあたっては、営業外費用を差し引く。以上のような操作によって、より実態に近い「本業での利益」を算出しようというのが、このフォーマットの意図であると考える。


ものづくり補助金_5か年事業計画

 【POINT】審査項目の【事業化面】④補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか。(【革新的サービス】においては、3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する取組みであるか。【共同設備投資】においては、事業実施企業全体の3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する取組みであるか。)とも関連。
 《2018年1月8日追記》
 上記の説明では、会社全体の5か年計画をどのように作成すればよいかについて触れていなかったと今になって反省している。「ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(2)」では5か年計画の作成方法も解説しているので、そちらをご参照ください。


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