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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年03月23日

中小企業診断士の試験&実務補習とコンサルティング現場の5つの違い(1/2)


 中小企業診断士になるためには、2次試験(論述&口述試験)に合格した後、15日間の実務補習を受講することになっている。この実務補習では、実際の中小企業をチームで総合的に診断し、経営改善に向けた施策を提案する。1社あたりの診断期間は5日間であり、3社分の診断を実施すると、晴れて中小企業診断士として登録される。

 今年に入ってから、その実務補習の副指導員をやらせてもらう機会が増えた。私は診断士になってから何だかんだで8年近くが経過しており、大して診断士らしい活動もしていないのだが、診断士の世界では中堅の部類に入るみたいだ。そのためか、試験に合格した直後の人たちと触れ合う機会がほとんどない。今回の実務補習では、診断士に対するフレッシュな気持ちを持った人たちに触れて大いに刺激を受けた。一方で、試験勉強と実際の現場の違いを改めて認識する場ともなった。今回の記事では、その違いについて5点ほど述べてみたいと思う。

 (1)抽象的な提案よりも、具体的な「バカなる」提案を目指せ
 診断士の2次試験は、論述試験と口述試験に分かれている。論述試験では、中小企業の事例が出題され、その企業の経営課題や、課題を解決するための提案を、限られた文字数の中で文章化するよう求められる。診断士の予備校では、様々な論述試験対策が練られているようだが、共通しているのは、「できるだけキーワードを詰め込んで、部分点を狙え」ということらしい。日本語としてつじつまが合っているかどうかは二の次で、たくさんキーワードを書いておけば、どれかは解答例に引っかかるだろう、という発想である。

 しかし、コンサルティングの現場において、部分点というものは存在しない。経営者から120点の評価をいただけるか、0点だと突っぱねられるかのどちらかである。私が思う「よい提案」とは、最初は「えっ?」と思われるが、こちらがよく説明すると「確かにそうだな」と思い直してくれる提案である。こういうのを「バカな」+「なるほど」=「バカなる」と呼ぶらしい。「バカなる」提案は、観察された事実を地道に積み上げ、経営の原理原則を精緻に組み合わせて、ロジックの深さで勝負する。抽象的なキーワードをばらまいて、ロジックの浅さをごまかすのとは全く異なる。

「バカな」と「なるほど」「バカな」と「なるほど」
吉原 英樹

PHP研究所 2014-08-12

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 余談だが、極端なキーワード重視を貫いていたある予備校では、模擬試験の上位に常にランクインする人が、本番の試験で落っこちるという事態が相次いだ。そのため、方針を転換して、キーワードは少なめで、日本語としてちゃんと筋が通っているかを評価するようになったらしい。

 (2)「話す力」よりも「聞く力」の方が圧倒的に重要
 2次試験は論述試験と口述試験で構成されており、論述試験の合格者が口述試験を受験する。ただ、この口述試験はよほどのことがない限り不合格にならないと言われている(東京では2年連続で不合格になった人がいるらしく、伝説と化している)。口述試験は、論述試験で出題された事例を題材として、面接官からの質問に対し、経営課題や改善提案を述べる。ただし、論述試験の試験問題は持ち込むことができないので、事前に頭に入れておく必要がある。

 ほとんど不合格にならない口述試験で一体何が評価されているのか私も定かではないのだけれども、口述試験で要求されるのは、いわゆる「話す力」であろう。試験対策に詳しい人は、「まずは面接官の質問内容をオウム返しして、質問内容を確認するとともに、オウム返ししている間に自分の気持ちを落ち着けて、回答内容を整理する」という技を披露してくれた。予備校ではそんなテクニックまで出回っているのかと感心してしまった。

 コンサルティングの現場では話す力も大事だが、それ以上に重要なのが「聞く力」である。中小企業の経営者や社員の話をじっくりと聞く。誰が聞いても同じことを答えてくれるような表層的な話にとどまらず、「この人が相手だから敢えて話そう」という本音を引き出したいものだ。そのためには、良質な仮説を持っている必要がある。漫然と「御社の経営課題は何ですか?」と聞くのではなく、「○○というデータから、御社の経営課題は△△だと思うのですがいかがですか?」と聞かなければならない。だから、インタビューには事前の入念な準備が欠かせない。

 ところが、私が実務補習を受けた8、9年前は、初日に経営者にインタビューすることだけが知らされていて、診断先の企業情報は一切教えてもらえなかった。初日にメンバーが全員集まったところでようやく情報が開示されたかと思うと、準備もそこそこに、指導員から「さぁ、インタビューに行きましょう」と言われた。さすがにこれには参った。私の実力不足もあるのだが、表面的なインタビューしかできずに、その後の報告書は、単に社長の話をまとめただけになってしまった苦い記憶がある。実務補習を3回受けても、この点はなかなか改善できなかった。

 それに比べると、現在は随分と改善されているようで、診断先企業の情報を1週間前にメンバーに開示してもよいことになった。よって、メンバーは事前にインタビューの準備ができる。それでも、今年の実務補習では、初日の経営者インタビューまでの時間が足りないと感じてしまった。本来ならば、メンバーが事前に立てた仮説を持ち寄って、仮説の妥当性を協議し、インタビューで確認すべき仮説を取捨選択して、仮説の検証に必要な質問項目を整理する、という手順を踏みたいところだ。どうすればこの作業を効率的に行えるかが、私の中の今後の課題である。

 (続く)

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