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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年02月16日

「ものづくり補助金」平成26年度補正と平成25年度補正の違い


 平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」の申請書の書き方に関する記事を、2015年2月2日(月)~6日(金)にかけて順次公開しました。昨年に比べて内容を充実させましたので、こちらもご一読いただければ幸いです。

 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 経済産業省関連の補助金は、エコカー補助金のように、申請が通ればすぐにもらえる補助金とは全く異なります。一言で言えば、事務・経理処理が非常に大変です。主な留意点をまとめましたので、ご参照ください。

 【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【補助金の現実(3)】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【補助金の現実(4)】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある
 【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?
 平成26年度補正予算「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新補助金)」の公募が2月13日(金)から開始された。東京都中小企業団体中央会のHPに掲載されている公募要領に基づいて、過去のものづくり補助金との違いを整理してみたい。

 (1)公募期間の長期化
 公募期間は2月13日(金)~5月8日(金)(※当日消印有効)となっている。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算で実施されたものづくり補助金では、1次公募の中に1次締切と2次締切があり、1次締切がだいたい3月半ばに設定されていた。ところが、今回の1次公募は5月8日の1回しか締切がない。おそらく、採択結果が発表されるのは6月下旬だろう。

 以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」でも書いたように、採択されたからといってすぐに補助事業を始められるわけではない。採択された後、交付申請という手続きが必要となる。これが2か月ぐらいかかるので、補助事業が開始できるのは、8月下旬~9月上旬になる見込みである。補助事業の計画を立てる際には、この点に注意が必要だ。早くプロジェクトを始めたい企業としては、結構もどかしい。

 (2)事業類型の変更
 平成25年度補正予算のものづくり補助金には、以下の6つの類型があった。
 ①成長分野型&ものづくり技術(補助上限額:1,500万円)
 ②成長分野型&革新的サービス(同1,500万円)
 ③一般型&ものづくり技術(同1,000万円)
 ④一般型&革新的サービス(同1,000万円)
 ⑤小規模事業型&ものづくり技術(同700万円)
 ⑥小規模事業型&革新的サービス(同700万円)
 ※⑤⑥以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 一方、今回は以下の4つの類型に再整理されている。
 ①革新的サービス&一般型(補助上限額:1,000万円)
 ②革新的サービス&コンパクト型(同700万円)
 ③ものづくり技術(同1,000万円)
 ④共同設備投資(補助上限額:共同体で5,000万円〔500万円/社〕)
 ※②以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 主な変更点としては、以下の3つが挙げられる。
 ・補助上限額1,500万円の成長分野型がなくなった。
 ・ものづくり技術は設備投資が必須になった。
 ・共同設備投資という新たな類型が登場した(後述)。

 (3)「共同設備投資」という類型の追加
 新登場の「共同設備投資」とは、「事業に参画する事業実施企業により構成される組合などが事業管理者となり、複数の事業実施企業が共同し、設備投資により、革新的な試作品開発やプロセスの改善に取り組む」ケースである。考えられるのは、例えば水産加工業協同組合が、組合員である複数の水産加工会社が共同で使用する加工設備を導入する場合などであろう。もともとは別の補助金がこういうケースを扱っていたが、今回はものづくり補助金に統合された。

 しかも、従来の補助金では5社までの連携体しか認められなかったのに対し、今回は1社最大で500万円、共同体全体で5,000万円まで認められるので、6社以上の共同体も申請が可能になった点がセールスポイントだという。だが、こういう共同設備投資に対するニーズがどのくらいあるのかは、正直なところよく解らない。過去のものづくり補助金でも、連携体による申請は可能であったものの、公開されている採択企業一覧を見ると、連携体は1%もなさそうである。

 (4)「革新的サービス」の重視
 「ものづくり補助金」という名前がついていながら、公募要領に書かれた事業の目的が「国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため・・・」とあり、事業類型も「革新的サービス」が先頭に来ていることから、実はサービスがかなり重視されている。日本のサービス業は欧米に比べて生産性が低く、経済成長の足を引っ張っていることから、サービス業の生産性を何としても上げたいという政府・経済産業省の思惑が見て取れる。

 平成25年度補正予算のものづくり補助金では、言葉は悪いが「サービスなら何でもOK」だった。一方、今回は経済産業省が定める「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に沿ったサービス開発であることが要求されている。確かに、この取り組み自体は私も非常に重要だと思っている。しかし、どうもしっくりこない点が1つだけある。

 本来のものづくり補助金は、経済産業省が定める「特定ものづくり基盤技術」を強化して、中小企業が数多く集まる裾野産業の競争力を上げ、ひいては川下の産業の発展に寄与することが狙いであった。ところが、サービス業の生産性向上は、これとは文脈が全く異なる話である。それを同じ1つの補助金の中で扱おうというのは、ちょっと無理があるのではないだろうか?

 一番危惧されるのは、ガイドラインに挙げられている「サービスの生産性向上」のうち、「効率の向上」ばかりが注目されて、「サービス提供プロセスの改善」、「IT利活用」に該当する補助事業、もっと噛み砕いていえば、業務効率化のためのIT導入という補助事業での応募が殺到することである。これは果たして「ものづくり」と言えるのだろうか?

 (5)補助対象外事業の条件の厳格化
 これは今年からではなく、正確に言えば平成25年度補正予算のものづくり補助金の2次公募から実施されていることなのだが、金額に関するルールが厳しくなっている箇所がある。公募要領のp6を読むと、「『補助対象経費』の各区分など(機械装置費、外注加工費・委託費、知的財産権等関連経費および機械装置費以外の経費)に設定されている上限を超える補助金を計上する事業」は補助対象外であると明記されている。

 これは、①革新的サービス&コンパクト型において、総額50万円(税抜き)以上の機械装置費を計上する、②外注加工費と委託費の補助対象経費(税抜き)の和が、補助対象経費総額(税抜き)の2分の1を超える、③知的財産権等関連経費の補助対象経費(税抜き)が、補助対象経費総額(税抜き)の3分の1を超える、④機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和が、500万円を超える場合には、事業内容に関わらず、一発でアウトになることを意味する。特に④は要注意である。昨年も④に引っかかって不採択になったケースが相当数あったと聞いている。

 (6)機械装置費(設備投資)の重視
 (2)とも関連するが、設備投資が不要なのは、革新的サービス&コンパクト型のみで、残りの類型は全て設備投資が必要となる。設備投資が重視されていることは、公募要領のp8を見ても解る。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算のものづくり補助金では、最初の費目は原材料費であった。ところが、今回は機械装置費が先頭に来ている。

 (5)の④を裏返すと、機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和は500万円以下にしなければならない、ということになる。よって、革新的サービス&一般型とものづくり技術で、満額の1,000万円をもらうためには、機械装置費で500万円、それ以外で500万円の補助金を申請する必要がある。政府・経済産業省は何とか設備投資に誘導しようとしているみたいだ。これは単純に、「民間の設備投資が進めばGDPが上がるから」というのが第一の理由だろう。

 また、中小企業が設備投資をすると、機械メーカーは下請の部品メーカーへの発注を増やし、部品メーカーはさらに下請の部品メーカーへの発注を増やし・・・というふうに波及効果が得られるので、経済が活性化するという考えもあるに違いない(この辺りについては、以前の記事「【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?」を参照)。これが委託費や専門家謝金では、委託先の職員や専門家の報酬に消えて終わりだから、波及効果が少ない。

 (7)特定ものづくり基盤技術に「デザイン」を追加
 経済産業省では、日本の製造業の国際競争力強化に特に資する技術を指定している。ものづくり技術の類型で応募する際には、基盤技術と関連性のある試作開発であることが要求される。この基盤技術は2月9日(月)に見直しがあり、新たに「デザイン」が追加された。デザインにかかる技術は、公募要領のp27で次のように定められている。

 「製品の審美性、ユーザーが求める価値、使用によって得られる新たな経験の実現・経験の質的な向上などを追求することにより、製品自体の優位性のみならず、製品と人、製品と社会の相互作用的な関わりも含めた価値想像に繋がる総合的な設計技術」

 機能だけで製品を差別化することが難しく、これからはデザインが差別化要因になるという傾向を踏まえてのことだろう。だが、デザインにかかる技術だけで今回のものづくり補助金に応募することは多分できない。というのも、公募要領p6の補助対象外事業として、②主たる技術的課題の解決方法そのものを外注または委託する事業、③試作品等の製造・開発の全てを他社に委託し、企画だけを行う事業、が挙げられているからである。デザインだけを自社で行い、開発は外部に丸投げというパターン(いわゆるファブレス)は、補助事業の要件を満たさない。

 (8)「クラウド利用費」という費目の追加
 今回の最も大きな変更点は、これではないだろうか?補助対象経費として、「クラウド利用費」が追加された。公募要領を読むと、どうやら「ソフトウェア会社が、既に市販されているクラウド型のアプリケーションをカスタマイズして、オリジナルのクラウドサービスを開発する」というケースが想定されているようである。その際の、

 ・アプリケーション、サーバの利用料
 ・アプリケーションのカスタマイズ費
 ・専用アプリケーションの利用マニュアルの作成費

などが補助対象となる。マニュアル作成費については、「紙面、CD-ROM、DVD、ネット等の提供媒体の種類にかかわらず、400字につき3,000円を限度とする。また、この金額にはSEなどの人件費相当額を含むものとする」(公募要領p31)など、細かく規定されている。ただ、アプリ開発を外部に依頼する場合に、わざわざマニュアル作成費を別項目で見積もってくれるソフトウェア開発会社は少数派であろう。普段の取引ではそれでも問題ないが、ものづくり補助金に関しては、マニュアル作成費を別項目で切り出すように地域事務局から指導が入る可能性がある。

 「アプリケーションのカスタマイズ費」も「クラウド利用費」に入れてよいということだから、例えばある会社がクラウド型サービスの企画だけをやって、開発は外部のITベンダーに任せたとしても、その費用は全て「クラウド利用費」に計上できてしまう。ところが、(7)の②③で述べたように、技術的課題の解決を外部に丸投げする事業は補助対象外である。技術的課題の解決を自社中心でやっていることを示すためには、直接人件費を必ず計上するなど、工夫が必要である。

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