プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年03月11日

『オフィスの生産性(DHBR2015年3月号)』―前職の会社のオフィスレイアウトはどうあるべきだったか?


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 オフィスのレイアウトに関する特集であり、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの特集としてはかなり珍しいものである。社内のコミュニケーション活性化を図るという名目で大部屋方式を取り入れたり、フリーアドレスのデスクを導入したりする企業は多い。しかし、何のためにコミュニケーションを活性化させるのか?誰と誰とのコミュニケーションを活性化させたいのか?をはっきりさせないと、オフィスレイアウトの変更は失敗に終わる。
 ペントランドは優れたコミュニケーションのカギを握る3つの要素を発見した。それは、探求(自分とは異なるさまざまな社会集団に属する人と交流する)、関与(自分と同じ社会集団に属する人と、できるだけまんべんなく交流する)、活力(全体としてより多くの人と交流する)の3つである。(中略)

 特定の成果を達成するために、探求、関与、活力のいずれかを重視した空間設計をすることができる。たとえばコール・センターの生産性を高めるには、チーム・メンバーの交流が活性化するような、関与を重視した空間にすべきである。一般に、関与が活性化するのは開放的でソーシャルな空間ではなく、壁で仕切られたこじんまりとした仕事場と、それに隣接した小人数向けのコラボレーション・交流スペースだ。(中略)

 イノベーションや変革に挑む、たとえばテレノア(※ノルウェーの通信事業者)のような企業では、関与の活発化が悪影響をもたらすことがある。なぜなら、他グループや社外と交流する貴重な探求の時間が奪われてしまうからだ。テレノアのフレキシブルな空間は、関与よりも探求をより重視した設計である。
(ベン・ウェイバー、ジェニファー・マグノルフィ、グレッグ・リンゼー「オフィスはコミュニケーションの手段 仕事場の価値は多様な出会いにある」)
 部門内の生産性を上げたいのであれば、比較的クローズな空間を構築し、社員をできるだけ密集させると同時に一人一人が作業に集中できる環境を整え、必要に応じて時々社員同士がディスカッションできる場を補足的に設けるのが望ましい。逆に、部門間連携を通じて創造性の発揮を期待するのであれば、オープンな空間を構築して、様々な部門の社員が頻繁にそこに流入しては偶然に衝突する機会を演出するのが効果的である。

 だが、ここでパブリックVSプライベートという問題が出てくる。イノベーションを引き起こすためにオープン・スペースを設けても、社員がなかなかそれを利用してくれないことがある。頻繁にオープン・スペースを使っていると、周囲から「彼は仕事をしていないのではないか?」と疑いの目を向けられる可能性がある。それに、イノベーションにつながる大事な、しかしまだ不十分なアイデアは、いきなり公の場で披露するよりも、気心が知れた人にこっそりと教えたいものだ。
 筆者の研究結果は、オープンな職場環境に関するさまざまな研究結果を補完するものであり、透明性が高ければ高いほどよい環境とは限らないと示唆している。業績向上には、他人の目や干渉から自由になれる「プライバシー」も必須なのだ。
(イーサン・バーンスタイン「4つの境界線の活用方法 『ガラス張りの職場』に潜む罠」)
 会社の中のプライベート空間といえば、喫煙ルームが代表的だろう。喫煙ルームでは、仕事のプレッシャーから一時的に解放された各部門の社員が集まって、面白いアイデアが生まれると言われる(「生まれる」と言い切れないのは、私が喫煙者ではなく、実体験がないためである)。ただし、最近は(私を含め)喫煙者が減っているので、喫煙ルームに代わるプライベート空間を構築するために、コーヒースタンドや自動販売機、オフィスグリコなどの活用が注目されている。

 先ほどコミュニケーションのカギを握る3つの要素を引用したが、探索に比べれば関与の方がまだプライバシーが確保されている。各社員のデスクが固定されており、場合によってはデスクがブースで区切られたりもしている。それでも、突然舞い込んでくる電話やメール、急に仕事の指示にやって来る上司や、相談を持ち掛けてくる同僚によって、仕事が頻繁に中断する。こうした空間においても、プライバシーの確保は重要な課題となっている。
 コラボレーションには自然なリズムがある。まず、単独あるいは2人くらいでアイデアの創出や情報の処理に集中する必要がある。その後、グループで集まってそれらのアイデアを膨らませたり、共通の見解を発展させたりする。そして解散すると再び個々に、次の段階へと移行する。コラボレーションすべき仕事が労力を要するものであればあるほど、1人になって考察したり充電したりする時間も必要になる。(中略)

 我々の研究によれば、仕事に没頭するためだけでなく、近頃の仕事の激烈さに対応するためにも、人々は再びプライバシーの必要性をより切実に感じている。
(クリスティン・コンドン、ドナ・フリン、メラニー・レッドマン「行きすぎた職場オープン化への警告 協働スペースと個人スペースの絶妙なバランスとは」)
 本号を読んで、私の前職の会社ではどういうオフィスレイアウトにすればよかったのか、改めて考えてみた。私の前職については「シリーズ【ベンチャー失敗の教訓】」で散々書いたので詳しくは触れないが、以下のようなオフィスに、X社(教育研修&組織・人材開発コンサルティング:約25名。私はX社に所属していた)、Y社(人材派遣、ヘッドハンティング:約10名)、Z社(戦略コンサルティング:約15名)の3社が入っていた。

座席表


 《「シリーズ【ベンチャー失敗の教訓】」より》
 【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に
 【ベンチャー失敗の教訓(第43回)】じりじりと生産性を阻害するオフィスレイアウト

 本来はこんな使い勝手が悪いオフィスを使っていること自体が問題なのだが、合理的なデザインのオフィスなどそうそう借りられるわけではないから、与えられた環境の中でいかに最善を尽くすかを考える必要がある。3社の経営陣はシナジーを期待していたものの(「【ベンチャー失敗の教訓(第11回)】シナジーを発揮しない・できない3社」を参照)、実際には各社とも独り立ちするのに精一杯で、とても他社のことは考える余裕がなかった。そのため、コミュニケーションの目的を、企業間の創造性の発揮ではなく、各企業内の生産性の向上に置くこととする。

 まず、3社の中で最も関連性が薄いY社は、左下の「中央部屋」に集める。この部屋に入れられるとどうしても隔離された感じになるのだがやむを得ない。人材紹介やヘッドハンティング事業を行っていたY社は、顧客企業や転職希望者、ヘッドハンティング候補への電話が非常に多かった。この電話が、1人で集中して作業をしたいX社とZ社のコンサルタントにとっては煩わしかった。コンサルタントに静かな作業環境を確保するという意味でも、Y社は中央部屋に配置する。

 X社とZ社は右側の「大部屋」に入れる。図にあるような4人島だとデッドスペースがたくさんできるため、普通のオフィスのように、2列で向かい合わせになったデスクを並べる。図には描かれていないが、4人島の机の間には1.5メートルほどの間仕切りがあり、半ブースのようになっていた。ところが、この高さでは、座るとお互いの顔が見えなくなる程度で、プライバシーを確保するには不十分であった。そこで、間仕切りを高くして、完全なブース形式にする。

 こうすることで、コンサルタントが集中して作業できる環境を整える。コンサルタントと言うと、いつも会議をして激しい議論を戦わせているイメージがあるかもしれない。しかし、実際には、1人で調べ物をしたり、報告書を作成したりする時間の方が圧倒的に長い。とにかく、X社とZ社の生産性向上に寄与するレイアウトにする。あわよくば、業態が似ている両社の間で何かシナジーが生まれればよい。それよりも、各々の会社がちゃんと利益を出すことが先決である。

 左上の「小部屋」には、社員のデスクは置かない。ここに入れられた社員は、中央部屋以上に疎外感を味わう。そこで、その性質を逆手にとって、小部屋はプライベートな空間とする。具体的には、大部屋にある書籍を全部この部屋に移動させ、自動販売機やコーヒーメーカー、オフィスグリコを置いて、資料室兼休憩室にする。私のオフィスレイアウト変更案は、創造性よりも生産性を重視するものであるから、この小部屋はおまけのようなものだ。3社の社員間で何か面白い創造的なアイデアが生まれれば御の字である。

 大部屋に集められたX社とZ社の社員にブースが与えられたとしても、前述のように完全なプライバシーは保障されない。仕事の邪魔をされたくないコンサルタントの中には、耳栓をしたり、「今は集中して作業をしたい時間帯なので話しかけないでください」というプレートをブースに掲げたりする人もいた。そういうことが行われるのであれば、いっそトリンプの「がんばるタイム」みたいなものを設けるとよかったのかもしれない。これは、昼休みが終わってからの2時間、しゃべらず、電話にも出ず、机にしがみついて、集中的に仕事を行う制度である。こういう制度で無理やりにでもプライバシーを確保すると、両社の生産性は向上したかもしれない。

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