プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年03月14日

『小さくても強い国のイノベーション力(『一橋ビジネスレビュー』2014年WIN.62巻3号)』(2/2)


一橋ビジネスレビュー 2014年WIN.62巻3号: 特集:小さくても強い国のイノベーション力一橋ビジネスレビュー 2014年WIN.62巻3号: 特集:小さくても強い国のイノベーション力
一橋大学イノベーション研究センター

東洋経済新報社 2014-12-12

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 (前回の続き)

 本号を読んだだけの感触でしかないが、イノベーションに対する国家・政府の関与度合いが強い順番に並べると、シンガポール>オランダ>スイス>デンマーク>イスラエルといった感じだろうか?イノベーションに対して国側がどの程度首を突っ込むべきなのかは難しい問題である。

 旧ブログの記事「今さらだけど、エルピーダ破綻の7原因(仮説)を個人的に検証(4)~産活法という縛り」では、マイケル・ポーターの『日本の競争戦略』(ダイヤモンド社、2000年)を参照しつつ、経済産業省がDRAMで世界一になることにこだわり、エルピーダの経営に介入しすぎたことがエルピーダ破綻の一因ではないか?と書いた。

日本の競争戦略日本の競争戦略
マイケル・E. ポーター 竹内 弘高 Michael E. Porter

ダイヤモンド社 2000-04

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 一方で、比較的最近の記事「野村総合研究所2015年プロジェクトチーム『2015年の日本』を2015年の到来を前に読み返してみた」では、製造業の凋落に苦しんでいたイギリスが、政府主導で金融業やクリエイティブ産業を活性化させたことに触れつつ、安倍政権が掲げる地方創生戦略では、日本の各地方がそれぞれどの産業で競争力を磨くのか明確に示すべきだと書いた。自分の中で軸がぶれてしまっていて恥ずかしい限りである。

2015年の日本―新たな「開国」の時代へ2015年の日本―新たな「開国」の時代へ
野村総合研究所2015年プロジェクトチーム

東洋経済新報社 2007-12

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 一般にイノベーションを起こすためには、市場の自由化を進め、不要な規制を撤廃するのが望ましいと言われる。しかし、旧ブログの記事「保護された「公共空間」の重要性―『イノベーション 「曖昧さ」との対話を通じた企業革新』」で書いたように、政府と企業が共同で規制を創造することで、イノベーションの促進と競合他社の排除の両方に成功したという例もある。

イノベーション―「曖昧さ」との対話による企業革新イノベーション―「曖昧さ」との対話による企業革新
リチャード・K. レスター マイケル・J. ピオーリ Richard K. Lester

生産性出版 2006-03

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 政府がイノベーションに介入するという場合、いくつかの選択肢がある。これらの打ち手を、イノベーションの種類に応じて使い分けるというのが、おそらく最も現実的な解なのだろう。

 ・民営化(または、逆の国営化がイノベーションにつながることもある)
 ・規制緩和(または、逆の規制強化がイノベーションにつながることもある)
 ・外資誘致(または、逆の外資規制がイノベーションにつながることもある)
 ・標準規格の策定
 ・税制優遇
 ・経済特区の創設
 ・補助金・助成金の交付
 ・ファンドの組成
 ・人材育成への投資
 ・研究開発の支援
 ・コンソーシアム、異業種連携の推進

 海外では産業化が進んでいるが、自国ではこれからその産業を育てるという場合には、まずは税制優遇と外資誘致によって優秀な外資企業を呼び込み、外資企業に国内需要をまかなってもらいながら、同時並行的に国内企業を育成する。この場合、市場開放的な政策と保護主義的な政策のバランスを取ることが重要となる。現在、多くの新興国がこれを実施している。日本では、明治時代に殖産興業の名の下にこういう手法がとられたが、最近でもカジノ産業を確立するために、欧米のカジノ企業を積極的に誘致しつつ、自国のカジノ企業を輩出しようとしている。

 国内産業がある程度成熟化してくると、今度は持続的イノベーションを目指すために、人材育成や研究開発への投資を手厚くする。前述のように、スイスやオランダが実施している手法である。一方、画期的なイノベーションを目指すならば、コンソーシアムや異業種連携が向いている。それも、同業他社が多く集まるがゆえに利害衝突が起きやすい水平的なコラボレーションではなく、垂直的なコラボレーションや異業種連携、とりわけその産業とは程遠い産業からの参入を促すとよい。これに伴い、異業種からの参入を認める規制緩和も必要になるだろう。

 日本では今後医療分野が間違いなく伸びると言われていながら、医療機器は大幅な貿易赤字である(平成25年度の輸入金額は1兆3,008億円、輸出金額は5,305億円)。輸入超過体質から脱するために、まずは海外の有力な医療機器メーカーを誘致して、当面は外資企業に国内需要を埋めてもらいつつ、その間に国内企業の競争力・供給力を磨くとよいかもしれない。

 ただ、超高齢社会の到来に伴い、今まで全く存在しなかった製品・サービスが将来的には必要になると容易に推測できる。よって、画期的なイノベーションを狙って、異業種連携を進める必要がある。既に医工連携という言葉があるが、今後はこれがもっと増えるだろう。その際、コラボレーションを促進するために、デンマークの参加型デザインに学ぶべきところも多いはずだ。

 基礎研究のように、どういう形で化けるか全く解らないイノベーションの種に対しては、補助金・助成金が適している。それも、少額を広くばらまくのがよい。1,000億円の資金がある場合、全額を大型プロジェクトに投資するよりも、1万人に1,000万円ずつ配った方が、ノーベル賞学者がたくさん輩出されるという研究もあるらしい(旧ブログの記事「ルーズリーフでメモを取る上司に不信を抱くグルジア人部下の話、他―『絆の経営(DHBR2012年4月号)』」を参照)。

 補助金というと国民の税金が原資であるから、適切な使途に使われているかどうかばかりが厳しくチェックされる傾向がある。しかし、個人的には、経理処理が適正かどうかを見るよりも、研究成果をモニタリングした方がいいと思う。そして、「これはいけるかもしれない」という成果があったら、政府はすぐに規制や標準規格を作り、他国を牽制しなければならない。

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