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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年05月11日

中小企業支援施策に関して最近感じていること(北区の中小企業施策説明会に参加して)


 先日、東京都北区の中小企業支援施策に関する説明会に参加した際、国・都道府県・市区町村で似たような施策をやっているという印象を受けた。例えば、商店街について、北区では「商店街イベント支援事業」や「商店街環境整備事業」など、様々な施策メニューを取り揃えている。

 これを、東京都の商店街支援施策や、国の商店街支援施策と比べてみると、商店街のイベントや街灯のLED化の支援、買い物難民対策など多くが3者で重複しており、補助上限額もほとんど同じである。私は、補助金というのは、市場の失敗によって苦境に陥った一部の事業者に対する一時的な救済金だと思っている。しかし、商店街の支援がこれだけ手厚いと、全国の全ての商店街が、何らかの補助金の恩恵を受けられることになっているのではないだろうか?こういう批判をかわすために、類似の補助金を国・都道府県・市区町村で分散させているような気がする。

 他にも、北区のものづくり支援策には、新規市場開拓などに向けて、新製品や新技術を開発する場合に、その研究開発に要する経費の一部を助成する「新製品・新技術開発支援事業」(補助率3分の2、補助上限200万円)というのがあるが、東京都レベルは「新製品・新技術開発助成事業」(補助率2分の1、補助上限1,500万円)などが、国レベルでは「ものづくり・商業・サービス革新補助金」(補助率3分の2、補助上限1,000万円)などがある。

 また、産学連携に関しては、北区に「産学連携研究開発支援事業」(補助率3分の2、補助上限200万円)があるのに対し、東京都は「製品開発着手支援助成事業」(補助率2分の1、補助上限100万円)を行っている。さらに、安倍首相が「日本の開業率をアメリカ・イギリス並みの10%台に引き上げる」と躍起になっている創業については、国の「創業・第二創業促進補助金」(補助率3分の2、補助上限200万円)に加えて、東京都が2015年度から創業活性化特別支援事業を立ち上げ、補助率3分の2、補助上限300万円の補助金を開始すると発表した。

 個人的には、3者が同じような施策で張り合っても仕方がないと思う。もう少しお互いの棲み分けを明確にしてはどうだろうか?まず、市区町村は地元に最も近い存在であるから、地域密着型の小規模企業を重点的に支援する。具体的には、市区町村は商店街支援施策に集中し、それ以外は都道府県や国に任せる。北区の産業経済費は約28億円だが、そのうち約20億円は金融機関の預託金であり、自由に使えない。さらに、区職員の人件費や執行残などを考慮すると、実際に使えるのは4億円ほどしかないという。その4億円を効果的に使うことが必要だろう。

 ここで、現在の商店街偏重主義は改める必要がある。中小企業庁「商店街実態調査報告書」(2013年3月)によると、全国の商店街数は約15,000、1商店街の平均店舗数は約53店であるから、商店街に入っている店舗数は約79.5万である。一方、総務省統計局「日本統計年鑑」によると、2012年の小売業の事業所数は約103万、「平成24年経済センサス」によると、サービス業(サービス関連産業B)の事業所数は約152万で、両者を合わせると約255万となる。したがって、商店街支援だけでは、商店街に属さない圧倒的多数への支援が抜け落ちてしまう。

 昨年「小規模企業振興基本法」が成立し、政府は小規模企業(製造業は社員数20名以下、商業・サービス業は5名以下)への支援を拡充する方針である。その一環として、昨年から国が「小規模事業者持続化補助金」(補助率3分の2、補助上限50万円)を実施している。

 ただ、50万円というのはちょっと小さすぎる気がする。以前の記事「【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい」で述べたように、行政に提出する書類作成にはかなりの労力がかかる。加えて、行政側がその書類をチェックするための人件費や、経営支援を行う商工会議所の人件費なども考慮すれば、50万円の補助金を支払うのに、50万円の経費がかかっている疑いがある。これでは何のための補助金か解らない。

 また、この補助金は、販売力強化という目的を掲げれば何にでも使えてしまう。顧客層拡大のためにトイレを和式から洋式にするのも補助対象となるらしい。今やトイレが和式などというのは当たり前品質であり、それを補助金で賄うのはおかしな話だ。トイレを洋式に変えるだけの利益すら上げられない企業は市場から退出すべきであって、補助金で救済する理由がない。この補助金は、1件あたりの金額が小さいので、適正に利用されのたか、補助金の効果があったのかを真面目に検証するのがバカらしくなる。だから、完全なるバラマキで終わる可能性がある。

 国からは小規模企業が遠すぎて、全国に広く補助金を交付しようとするとこういう補助金になってしまうのだろう。よって、小規模企業向けの補助金は、市区町村が主体となるべきだ。その際、補助金の使途をもっと明確にし(例えば、外国人顧客向けの接客スキルのトレーニングや、顧客への付加価値向上のためのIT導入に対する補助金など)、金額を大幅に上げた方がよいと思う。各市区町村が、地元企業の特性を踏まえて、創意工夫を凝らした補助金を設計する。もちろん、市区町村の職員が補助金の投資対効果をモニタリングすることも忘れてはならない。

 都道府県は、都道府県レベルで事業を展開する中小製造業の製品開発や産学連携などの支援に特化する。北区には申し訳ないが、「新製品・新技術開発支援事業」の補助金200万円では、試作開発を行うには全然足りない。米谷雅之「わが国企業の製品開発行動―実態調査結果の検討―(1)」によれば、大阪府下の中堅・中小企業に限定されるものの、製品開発費で最も多かった回答は「1,000~5,000万円」だという。やはり、製品開発の支援には1,000万円単位の補助金が必要であり、この額が出せるのは、市区町村ではなく都道府県になると思う。

 国は、中小企業支援の大まかな方針だけ決めて、具体策は都道府県や市区町村に任せた方がいいのかもしれない。代わりに、中堅・大企業向けの補助金事業をメインとする。以前の記事「「省庁横断的な中堅・中小企業支援パッケージ説明会」と「多府省連携フォーラム」に行ってきた」でも書いたが、国は今まで手薄だった中堅企業向けの施策を拡充する方針を打ち出しているものの、まだまだ十分ではない。この分野の検討と実施にもっと労力を割いた方がいいと思う。

 国が行う中小企業支援策は、その時の政策的課題に対応したものになるだろう。現在ホットなのは海外進出である。安倍首相は「今後5年間で新たに1万社の海外進出を実現する」と明言している。よって、海外進出を支援する施策は国が主体となる(もっとも、本当に海外進出を推進すればよいのかは若干疑問を感じている。以前の記事「『北欧に学べ なぜ彼らは世界一が取れるのか/最新 買っていい株220 買ってはいけない株80/東日本大震災4年 復興よ、どこへ行く(『週刊ダイヤモンド』2015年3月14日号)』」を参照。海外進出を支援するならば、海外からの投資・輸入も促進しないと、国際的な理解が得られないのではないだろうか?)

 今後出てくると予想されるテーマは、女性の活用と事業承継である。女性の活用は大企業でも国際レベルからは程遠いのだが、中小企業ではもっと遅れている。よって、女性の雇用・福利厚生に対する助成金や、女性活用のための人事制度構築に対する補助金などが新設されるかもしれない。事業承継については、現在各都道府県に「事業引継ぎ支援センター」が設置されており、税制の見直しも行われている。また、3月には「承継円滑化法案」が閣議決定され、親族以外の第三者が事業承継する場合の特例が設けられる予定である。ただし、これらはあくまでも始まりにすぎず、今後様々な支援策が出てくると予想される。

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