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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年05月16日

「ASEAN社会文化共同体:2015年とその後の展望セミナー」に行ってきた


 日本アセアンセンターが主催する「ASEAN社会文化共同体:2015年とその後の展望セミナー」に参加してきた。てっきり、2015年末までに発足するとされている「ASEAN経済共同体(AEC:ASEAN Economic Community)」のことかと思っていたのだが、実際には「ASEAN社会文化共同体(ASCC:ASEAN Socio-Cultural Community)」のセミナーだった。ASEAN事務局次長で社会文化共同体担当のアリシア・デラ・ロッサ・バラ氏の講演を聞くことができた。

 《参考資料》
 2015年3月ASEAN社会文化共同体セミナー 講演資料

 「ASEAN共同体」に向けた取り組みは、2008年に制定された「ASEAN憲章」からスタートした。2009年には「ASEAN共同体に向けたロードマップ(2009~2015年)」が定められ、

 ①ASEAN安全保障共同体(APSC:ASEAN Political Security Community)
 ②ASEAN経済共同体(AEC:ASEAN Economic Community)
 ③ASEAN社会文化共同体(ASCC:ASEAN Socio-Cultural Community)

という3つの共同体が設立されることが決まった。そして、2010年には「ASEAN連結性(Connectivity)マスタープラン」が立案され、3つの共同体の設立に向けた動きが具体化された。

 3つの共同体は、それぞれ以下の目的を有している。

 ①ASEAN安全保障共同体(APSC:ASEAN Political Security Community)
 ASEAN諸国ならびにASEANの国民が、正義に満ち、民主主義的で調和のとれた環境において、相互の平和ならびに世界の他国との平和を目指す。
 (Eusures that the peoples and Member States of ASEAN live in peace with one another and with world at large in a just, democratic and harmonious environment.)

 ②ASEAN経済共同体(AEC:ASEAN Economic Community)
 公平な経済発展と、貧困や経済社会的な不平等の低減を通じて、ASEANに高い競争力を持たせ、ASEANに安定と繁栄をもたらす。
 (Transforms ASEAN into a stable, prosperous, and highly competitive region with equitable economic development, and reduced poverty and socio-economic disparities.)

 ③ASEAN社会文化共同体(ASCC:ASEAN Socio-Cultural Community)
 ASEAN諸国ならびにASEANの国民が、辛抱強く連帯と結束を固めることで、人間中心で責任あるASEAN共同体を実現することに貢献する。
 (Contributes to realizing an ASEAN Community that is people-oriented and socially responsible with a view to achieving enduring solidarity and unity among the peoples and Member States of ASEAN.)

 講演では、ASEAN社会文化共同体の設立に向けて、ガバナンスの原則に基づいて様々なイニシアチブを実行すること、人間の権利を保護し機会の平等を実現すること、社会的な発展と持続可能な環境を両立させること、気候変動や紛争など様々なリスクに対応できる能力を獲得すること、オープンでイノベーティブな人々や組織が生まれる環境を提供すること、などが示された。

 講演で繰り返し用いられていたのが、”Centrality(中心性)”と”ASEAN identity”というキーワードだった。市場だけではなく、価値観も統合していこうというわけだ。だが、ASEAN10か国は実に様々であり、Centralityを持たせるのが非常に難しい。

 人口は、2億人を超えるインドネシアから、40万人ほどのブルネイまでバラバラである。1人あたりGDPも、シンガポールが5万ドルを超えるのに対し、ミャンマーやカンボジアは1,000ドルほどしかない。また、フィリピンがキリスト教国、マレーシア、インドネシア、ブルネイがイスラム教国、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーが仏教国と、世界3大宗教が全て揃っている。民族構成はどの国も異なっており、さらに1つの国の中でも多くの少数民族を抱えるところが多い。この10か国をどのように1つにまとめていくのだろうか?

 その1つのカギが”ASEAN identity”の確立ということなのだろう。ASCCは、学校教育や芸術・スポーツの交流を通じて、青少年がASEAN identityを共有することを目指しているという。また、その他にもASEANの文化遺産の保存などにも努めているそうだ。しかし、肝心のASEAN identityとは一体何を指しているのだろうか?西側諸国をつないでいるのは、自由、平等、民主主義、市場主義などといった価値観である。では、ASEAN諸国が共有できる価値とは何なのだろうか?この辺りが講演でははっきりしなかった。

 将来的には、EUが「欧州共通歴史教科書」を作成したように、ASEAN共通の歴史認識を醸成する狙いもあるようだ。だが、欧州共通歴史教科書ができたのは1992年であり、EUの前身であるECが発足した1958年から実に34年が経っている(しかも、欧州共通歴史教科書の活用度は低いらしい)。EUがたどった苦難の道に、ASEANも足を踏み入れようとしているのだろうか?

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