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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年05月20日

「フィリピン投資セミナー」に行ってきた(日本アセアンセンター)


 最近、日本アセアンセンターにお世話になりっぱなしだが、「フィリピン投資セミナー」にも参加してきたので、その時のレポート。フィリピンからは貿易産業省大臣グレゴリー・L・ドミンゴ氏、公共事業道路大臣ロヘリオ・L・シンソン氏、フィリピン経済区庁長官リリア・B・デ・リマ氏が来日した。また、駐日フィリピン共和国特命全権大使マヌエル・M・ロペス氏の歓迎挨拶もあった。

 《参考資料》
 フィリピンの投資環境|日本アセアンセンター
 フィリピンの投資ガイド|日本アセアンセンター

 (1)フィリピンの経済成長率は、2012年6.8%、2013年7.2%、2014年6.1%となっており、アジアでは中国に次いで高い数値となっている。2015年の成長率は7~8%台と予測されている。特に、製造業の成長率は2014年から2年連続で9%台となる見込みである。

 2014年の経済成長率6.1%を産業別に見ると、第1次産業0.2%、第2次産業2.5%、第3次産業3.4%となっている。フィリピンは先進国からのIT-BPO(Business Process Outsourcing)で成長した国であることから、製造業のウェイトが相対的に低い。この点がフィリピンへの進出を検討している製造業にとって悩みの種となっているようで、JETROの「2014年度在アジア&オセアニア日系企業実態調査」によると、「裾野産業の集積」という点でフィリピンは非常に評価が低くなっている(逆に、自動車産業の進出が進んでいるタイは評価が高い)。

 (2)フィリピンは他のASEAN諸国と違って賃上げが緩やかであり、労働ストライキが少ない。2013年のストライキ・締出し件数は、中国656件、インドネシア239件、ベトナム327件、タイ11件に対し、フィリピンはわずかに1件である。

 また、フィリピンの労働力は量・質ともに充実している。インドネシアよりも25年ほど人口ボーナスが続くため、労働供給力は非常に高い。前述の「2014年度在アジア&オセアニア日系企業実態調査」によれば、フィリピンはベトナム、インドネシア、タイ、マレーシアに比べて、現地社員を採用しやすい、社員の質が高い、離職率が低いといった評価を受けている。フィリピン企業の年間離職率は、製造業で2%未満であり、比較的離職率が高いIT業界でも10~12%にとどまっている(中国では旧正月が終わると3分の1が工場に戻って来ない、などということがあるらしい)。

 《参考》ラオス、カンボジアでは最低賃金が大幅に上昇している。
 「ラオス投資セミナー」に行ってきた(日本―ラオス外交関係樹立60周年)
 「カンボジア投資セミナー」に行ってきた(日本アセアンセンター)

 (3)フィリピン全土には現在317の経済特区がある。産業別に見ると、産業および輸出加工区(=製造業)が68、ITパークが43、ITセンターが166、観光経済区が19、医療観光区が2、農産産業パークが19となっている。IT-BPOで成長したフィリピンらしく、IT関連の経済特区が多い。逆に、製造業向けの経済特区の割合は、他のASEAN諸国に比べると低い印象を受ける。

 経済特区への投資促進を担うのが、「フィリピン経済区庁(PEZA:Philippine Economic Zone Authority)」である。リリア・B・デ・リマフィリピン経済区庁長官は、「PEZAブランド」という言葉を頻繁に使って、PEZAのサービスレベルの高さをしきりにアピールしていた。PEZAを通じてフィリピンに進出すると、以下のようなメリットを享受できるという。

 ①法人税の免除。
 -パイオニアプロジェクト(フィリピン初の製品を製造する、またはフィリピン初の技術を用いる事業)の場合、6~8年間免除。
 -非パイオニアプロジェクトの場合、4~6年間免除。
 ※企業単位ではなく、プロジェクト(事業)単位で免税が受けられる。
 ②法人税免除期間終了後は、全ての国税・地方税の代わりとして、「(総収益-控除対象額)×5%」が税金(特別税)となる。
 ③資本設備、スペア部品、補給品、原材料の輸入にかかる関税はゼロ。
 ④総売上高の30%までは国内販売が可能。
 ⑤電気通信費、電気代、水道代を含む全ての国内購入品に対する付加価値税の支払免除。
 ⑥地方交付税、手数料の支払免除。
 ⑦外国人の雇用は、総雇用の5%まで認められる。

 リリア・B・デ・リマ長官は、「PEZAは1日24時間、1週間7日フル稼働しており、長官および幹部も毎日24時間待機しているため、何か困ったことがあればいつでも連絡してほしい」と呼びかけた。お役所仕事や賄賂・汚職の撲滅にも力を挙げているとのことだった。

 (4)とはいえ、フィリピンに対する外国からの直接投資は、実は減少傾向にある。2012年は2,895億4,400万ペソだったのに対し、2013年は2,740億1,400万ペソ、2014年は1,869億4,300万ペソとなっている。これには以下の3つの理由があるとされる。

 ①優遇措置を受けていない投資は統計に含まれていない。
 ②近年は優遇措置を受けられるのに、敢えて優遇措置を受けない企業が増えている。労働集約型のIT-BPOは、安い人件費が命である。だが、優遇措置を受けられる地域は都市部に集中している。そのため、IT-BPOは安い労働力を求めてダバオなどの地方に進出し始めている。
 ③タイやインドネシアに進出する製造業は内需志向型であるのに対し、フィリピンに進出する製造業は輸出志向型が多く、輸出先である香港やシンガポールの景気に左右される。ここ数年、香港やシンガポールの需要が落ちているため、フィリピンへの進出企業も減少している。

 (5)ロヘリオ・L・シンソン公共事業道路大臣は、今後インフラへの投資を積極的に進めていく意向を示した。フィリピン政府のインフラ投資は、ここ数年うなぎ上りで上昇している。2010年には1,650億ペソだったのだが、2016年は7,872億ペソと、5倍近くに増加する見込みである。GDPに占めるインフラ予算の割合も、2010年の1.8%から2016年には5.0%となる。シンソン大臣は、多くの日本企業がフィリピンのインフラ開発に関与することを強く望んでいた。

 しかし、裏を返せば、現在のフィリピンのインフラは、多額の投資を必要とするほど脆弱である、ということなのだろう。「2014年度在アジア&オセアニア日系企業実態調査」によれば、「インフラの充実」という点に関して、フィリピンはインドネシアと並んで非常に低い評価となっている。どちらも同じ島嶼国家であり、特に陸路の整備はなかなか進んでいないのが現状のようだ。

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