プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年05月27日

『選ばれる人材の条件(DHBR2015年5月号)』―潜在能力に頼った採用を止めよう、他


ダイヤモンド・Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2015年 05月号 [雑誌]ダイヤモンド・Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2015年 05月号 [雑誌]

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 『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2015年5月号については、各論文に一言ずつコメントをつける形でレビュー記事をまとめてみたいと思う(かつてはこういう形で書いていたのだが、いつの間にか長々と文章を書く今のスタイルになってしまった)。

○なぜ創業者の精神が生き続けるのか 【インタビュー】リクルートが人材輩出企業と呼ばれる理由(峰岸真澄)
 こうした(優れた)人材を育てようと、組織として人材育成の仕組みやシステムはいくつも持っています。(中略)しかし、それによって社員全体の平均値を上げることは可能ですが、本当に突出した優秀な人材というのは、こうした仕組みやシステムでつくり出せるものではないのだとも思っています。
 優秀な経営者やリーダーは教育によって育てられるのか?という問題は非常に難しい。昔のDHBRに、「ビル・ゲイツはMBAで育てることができたか?」という問いを考察した論文があった(論文の著者はYesと答えていた)。私も多少は人材育成をかじっている人間なので、この問いには自信をもってYesと答えたいが、Noと言わざるを得ない面もあることは否定できない。

 教育とは、標準的な行動様式や能力・マインドを身につけることが目的である。一方、優秀な経営者やリーダーというのは、その標準を突き抜けていくところに優秀さがある。よって、優れた経営者やリーダーは、直接的には教育からは生まれない。しかし、教育によって標準を定義しなければ、標準から外れた優秀さというものを評価することはできない。その意味で教育は必要であり、間接的に優れた経営者やリーダーを生み出すことに貢献していると言える。

 人材育成に関与する身としては、教育によって優秀な経営者やリーダーを輩出したいと思っているものの、それは直接的には叶わぬ夢である。私が望むべきなのは、より高度な標準の教育を通じて、それを否定し、突き破り、より優秀な人材が現れてくれることである。そのために私は、将来的には優秀な人たちによって否定されるべき標準を永遠に磨き上げなければならない。

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○新たな人材の発掘と育成の時代へ 人材は潜在能力で見極める(クラウディオ・フェルナンデス=アラオス)
 あれほど適任に見えた家電販売会社のCEOが悲惨な失敗に終わったのはなぜか。そして、明らかに不適格だったアルゴルタがこれほど見事な成功を収めたのはなぜか―。その答えは”潜在能力”にある。すなわち、日ごとに複雑さを増す職務内容と事業環境にしっかりと適応し、自分を成長させる能力のことだ。
 個人的には、この”潜在能力”という言葉には細心の注意を払う必要があると考えている。野村克也氏は潜在能力という言葉が嫌いであった。スカウトが、「あの選手は潜在能力が高いからドラフトで獲りましょう」と言っても、その言葉を信用しなかった。野村氏にとって重要なのは、その選手がチーム内で具体的にどのようなポジションをこなせるかという現実性であった。

 私も野村氏の考え方に賛成である。採用の時には、ポテンシャルを評価するのではなく(そもそも、今顕在化していないものをどうやって評価すればよいのだろうか?)、明日から何ができるのかを見極めなければならない。引用文にある”潜在能力”は、潜在能力という名前がついていながら、実は「日ごとに複雑さを増す職務内容と事業環境にしっかりと適応し、自分を成長させる能力」という非常に具体的かつ実際的な能力を指している。この点を誤解してはならないだろう。

 ここで、「新卒採用ではポテンシャルを評価するしかないのではないか?」という意見はあるだろう。確かに、企業に適合した実務能力を持つ学生などまずいない。多くの場合、「我が社で将来やりたいこと」を聞き、その熱意の高さをもってポテンシャルを評価する。しかし、「我が社で将来やりたいこと」をやるには長い時間がかかる。それまでモチベーションが保てるだろうか?それに、モチベーションは環境によってすぐに変化する。今日はモチベーションが高くても、明日もモチベーションが高いとは限らない。そんな不確定要素で人材を評価するのは、リスクが高い。

 この問題に直面したある中堅SIerでは、エントリーシートから志望動機の欄を削除した。代わりに、学生の価値観が自社の価値観と合致しているかを確かめるのに時間を使うようにした。価値観とは、仕事や生活で重要な意思決定をする際の判断基準である。モチベーションは乱高下を繰り返すのに対し、価値観はそれほど頻繁に変わらない。価値観ベースの採用に切り替えたところ、このSIerでは新入社員の離職率が10分の1になったという。

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○人材を外部から招くのではなく、輩出する企業へ 経営人材は企業内で育てられるのか(菅野寛)
 内部人材でも擬似的に外部経験を積んで外の視座・視点を養うことは可能なのである。Which(外部人材か内部人材か)よりも、How(外部人材・内部人材であろうが、いかに外の視座・視点を養う経験を積むのか)のほうが本質的な論点である。
 外部招聘の経営者が増えていることを受けて書かれた論文である。経営者は外部人材であるべきか、内部人材であるべきか?という問いは、実はほとんど意味がないと思う。外部から招聘される人材は、その人が最初に経営者となった企業ではほぼ例外なく内部昇格している。どこかの企業に勤めていて、いきなり他の企業の経営者に抜擢されることは(仮にMBAホルダーや大手コンサルティングファーム出身者であっても)まずあり得ない。内部昇格で経営者になった企業で成果を上げたから、他の企業から声がかかったわけである。

 よって、どんな外部人材であっても出発は内部人材なのであり、経営者は外部人材であるべきか、内部人材であるべきか?と聞かれれば、内部人材が基本であるという答え以外にない。

 次にこの論文で問われているのは、経営者に要求される能力は先天的なものか、後天的に学習可能か?という点である。これについては、先天的な能力もあるだろうが、大部分は後天的に学習が可能である、という至極当然の答えとなる。競争環境が時々刻々と変化し、かつその変化が予測不可能であるならば、その変化に組織を適応させる、あるいは変化を先取りして組織を変化させる経営能力は、その時々に応じて学習するしかない。

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○2万人以上の調査が明かす総合力の重要性 真のリーダーは6つのスキルを完備する(ポール・J・H・シューメーカー、スティーブ・クラップ、サマンサ・ハウランド)
 これまでに2万人以上を対象に調査を実施し、6つのリーダーシップスキルを特定した。その6つとは、先を見通す力、疑問を投げかける力、読み解く力、意思決定力、1つの方向にまとめる力、学習する力である。
 ディシジョン・ストラテジーズ・インターナショナル(DSI)のHPで自己診断テストを受けることができる。本論は、リーダーに必要なスキルを列挙したという、リーダーシップ論によくある論文である。リーダーシップ論に限らないが、人材要件を論じる際に、いきなり能力をいくつかのカテゴリーに分けるアプローチはあまり感心しない。このアプローチだと、能力のカテゴリーが抽象的になりすぎることがほとんどである。この論文でも、「先を見通す力」や「1つの方向にまとめる力」などが具体的に何を指しているのか、いまいちピンとこない。

 人材要件を考える上では、その人に期待する仕事・業務の中身を具体的に記述することを心がけるとよい。リーダーシップであれば、リーダーにどんな成果を期待するのか?その成果を上げるために具体的にどのような行動をとってほしいのか?を明確にする。抽象的な言葉できれいに整理するのではなく、多少とりとめのない表現や長ったらしい言葉が混じってもいいから、具体的で生きた文章に落とし込むことが重要だ。その長い文章があれば、人材要件はでき上がったも同然である。それを敢えて抽象的な能力の名前でまとめ直す必要は、実はそれほどない。

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○デジカルなビジネスを生む5つのルール リアル店舗はネットの力で成長する(ダレル・K・リグビー)
 ほとんどの企業は消費者が実践しているように、デジタルとフィジカルの世界を融合させなければならないと気づくはずだ。自社の事業を考えてほしい。フィジカル、すなわち物理的な部分は本当に消え失せるだろうか。デジタルとフィジカルを融合させるイノベーションは、新たなビッグチャンスのきっかけにならないだろうか。
 論文には明確に書かれていないが、オムニチャネルに関する論文である。営業やコールセンターといったリアルのチャネルの時代は終わりだ、これからはインターネットというバーチャルなチャネルの時代だと考えている人がいるが、実はそんなに簡単な話ではない。確かに、Web通販やソーシャルメディアによって、販売の可能性は広がった。しかし、その可能性をものにできている企業は、実はもともとリアルのチャネルにおける販売力が高い企業であるような気がする。

 バーチャルなチャネルは顧客の顔が見えないし、双方向のやり取りが制限される。そのため、限られた情報から顧客の潜在的なニーズを推測するという高度な能力が必要になる。リアルのチャネルで顧客との綿密なやり取りから顧客ニーズを確実に拾う能力さえ十分でない企業が、バーチャルなチャネルで顧客の要望を先読みできるとは思えない。バーチャルなチャネルは販売活動を省力化するという通説に反して、リアルのチャネルよりも難易度が高いのである。

 だから、Web通販の売上高が伸びないと悩んでいる企業は、Webサイトにてこ入れするのではなく、リアルのチャネルをもう一度見直した方がよいのかもしれない。

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