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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年06月03日

「ASEAN経済共同体(AEC)2015に向けたタイ政府の取組み」セミナーに行ってきた


 日本商工会議所の日本メコン地域経済委員会と、東京商工会議所貿易部会が主催する「ASEAN経済共同体(AEC)2015に向けたタイ政府の取組み」に参加してきた。タイからは、アーコム・トゥームピッタヤーパイシット運輸副大臣兼国家経済社会開発庁(NESDB)長官をはじめ、関係者が20名ほど来日していた。

 (1)タイには現在5つの経済特区があり、新たに5つの経済特区を設置する予定である。タイの経済特区で受けられるメリットを以下に示す。

タイ経済特区

 <共通>
 ■借入金:
  ①1件につき1~20百万バーツの利息を減額する。

 <BOIの投資奨励事業の場合>
 (※BOI=The Board of Investment of Thailand、タイ投資委員会)

 ■法人所得税:
  ①8年間免税(土地代・運転資金を含まない投資額の100%を上限とする)。
  ②投資による純利益について、法人所得税免税期間終了後5年間、通常の税率より50%減税する。
 ■その他恩恵:
  ①事業収入発生日から10年間、輸送費、電気代、水道代の費用を2倍まで控除できる。
  ②通常の減価償却費以外に、施設・設備の設置および建設のために投資した場合、投資額を25%控除できる。
 ■輸入関税:
  ①機械の輸入関税を免除する。
  ②輸出目的の製品の生産用原材料および必要資材にかかる輸入関税を5年間免除する。
 ■外国人労働者雇用:
  ①投資奨励委員会の定める指針に従い、被奨励プロジェクトで外国人単純労働者を使用することを許可する。

 <BOIの投資奨励事業に含まれない事業の場合>
 ■法人所得税:
  ①10会計年度の間、税率を20%から10%に下げる。

 (2)上記の地図を見ると解るように、10の経済特区は全て、タイ周辺国との国境付近に設置されている。この点に関して、豊田通商の出席者からは次のような懸念が示された。すなわち、周辺国もタイと同様に経済特区の開発を進めており、経済発展で先行するタイが国境付近に経済特区を作れば、タイばかりに外資が集まり、さらに周辺国の労働力を吸収してしまうため、周辺国との間に軋轢が生まれるのではないか?ということである。

 個人的には、これはそれほど大きな問題にならないと感じた。そもそも、タイがわざわざ周辺国の利害を考慮して協調的な行動をとらなければならない責務はない。国際政治や国際経済の舞台では、自国の利害が最優先されるのが常である。それに、逆説的だが、タイが自国の利益を優先すると、結果的には外資にとっても周辺国にとってもメリットが生まれる。

 通常、経済特区は、経済発展が遅れた地方に設置される。そのため、タイの経済特区は国境付近に集中する。また、カンボジア、ラオス、ミャンマーといったタイの周辺国も、同じように自国の国境付近に経済特区を作る。その結果、タイの国境付近には多数の経済特区が集まる。

 タイに進出する企業は、少しでも製造コストを抑制しようとする。そこで、労働集約的な工程については、人件費の安い周辺国に分散させる。これを、タイプラスワン戦略と呼ぶ。この戦略をとる場合、タイの工場とプラスワンの工場は近くに立地していた方がよい。国境を挟んで2つの工場を持てば、タイプラスワン戦略を効率的に実現することができる。このことから解るように、タイが国境付近に経済特区を作ることは、必ずしも周辺国の利害に反しない。

 豊田通商の人はなぜこんな質問をしたのだろうか?豊田通商は今年4月、カンボジアで工業団地を開発することを発表した。この点だけを見れば、タイの経済特区に企業と人材を取られることを危惧した発言と考えられなくもない。ところが、豊田通商は、既にインドネシアとタイで工業団地の開発を行っている。実は豊田通商のタイ事業があまりうまく行っておらず、全社的な戦略として周辺国へのシフトを進めようとしていた矢先に、タイが新たに5つの経済特区の設置を発表したため、内心非常に焦っているのではないかと勘ぐってしまった。

 (3)運輸副大臣の講演とあって、タイ政府がいかにインフラ整備に注力しているか、現在進行中の道路・鉄道プロジェクトを次々と紹介しながら力説していた。タイが位置するメコン地域は、東西経済回廊、南北経済回廊、南部経済回廊の3回廊が有名である。また、今年4月には、カンボジアとベトナムの国境付近を流れるメコン川に、日本の円借款で建設された「つばさ橋」が架かり、タイ―カンボジア―ベトナムが1本の道路で結ばれた。

 ただし、道路がつながったからといって、交通の便の改善に直結しているわけではない点には注意が必要だ。マレー半島の国は、左ハンドルの国と右ハンドルの国に分かれている。日本と同じく右ハンドルで左側通行なのがタイ、マレーシアである。これに対し、左ハンドルで右側通行なのがカンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオスである。この違いがあるため、国境を越える際には、トラックを乗り換える、すなわち荷物を積み替えなければならないケースがある。タイ政府は、積み替えなしで越境できるよう、周辺国と交渉を続けているという。

 (4)参加者の中に、タイの報道に妙に詳しい経営コンサルタントの方がいて、次のような質問をしていた(私も最近は結構アジア各国のニュースを読んでいるつもりなのだが、恥ずかしながらどれも知らないことばかりだった)。

 ①タイ南部のパクバラ港とソンクラー港を結ぶような形で石油パイプラインを建設する計画があるとの報道があったが本当か?
 ②タイ西部に製鉄用の高炉を作る計画があるとの報道があったが本当か?従来、タイでは重化学工業は難しいとされていたが、報道が本当だとすればタイの産業政策の大きな転換だと考える。この点についてはどうか?
 ③タイ南部のクラ地峡に運河を作る計画があるとの報道があったが本当か?

 運輸副大臣の回答は以下の通りである。

 ①パイプラインの建設を検討しているのは事実である。ただし、パクバラ港付近の住民の反対運動があるため、現在環境アセスメントを実施している。将来的には鉄道を通すことも検討している。ただし、工業団地までは作らないかもしれない。
 ②政府は、タイの製鉄企業サハビリヤ・スチール・インダストリーズ(SSI)と協力して、ミャンマーのダウェーに製鉄所を建設する意向を表明している。これと合わせて、タイ西部に製鉄所を作り、製鉄団地を形成したいと考えている。将来的には経済特区にもしたい。ただし、現地住民の反対運動には配慮しなければならない。
 ③運河建設プロジェクトを推進したがっているグループがあるのは事実だが、今のところ、政府としては考えていない。


 《2015年7月20日追記》
 タイのクラ地峡に運河を作る計画については、様々な憶測が飛び交っているようだ。

 琉球新報「中国とタイ、クラ運河建設合意 東西航路の短縮へ」(2015年5月25日)
 Record China「中国とタイ、「アジア版パナマ運河」建設へ=「完全に中国の世界になってきた」「韓国も中国にこびを売らないと」―韓国ネット」(2015年5月21日)
 新華ニュース「タイとのクラ運河開削を中国は否定」(2015年5月20日)
 THE PAGE「中国がタイで「クラ地峡」運河を建設? 実現可能性はあるのか」(2015年6月23日)
 THE WALL STREET JOURNAL「タイ300年越しの夢、インド洋と太平洋結ぶ運河」(2015年7月16日)


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