プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年06月17日

坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―採用・給与に関する2つの提言案(前半)


日本でいちばん大切にしたい会社2日本でいちばん大切にしたい会社2
坂本 光司

あさ出版 2010-01-21

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 《本書で紹介されている企業》
 株式会社富士メガネ(北海道)
 医療法人鉄蕉会亀田総合病院(千葉県)
 株式会社埼玉種畜牧場「サイボクハム」(埼玉県)
 株式会社アールエフ(長野県)
 株式会社樹研工業(愛知県)
 未来工業株式会社(岐阜県)
 ネッツトヨタ南国株式会社(高知県)
 株式会社沖縄教育出版(沖縄県)

 (1)ネッツトヨタ南国(高知県)は、120分朝礼などで知られる企業だ。同社は新入社員の採用時に、自社の価値観と学生の価値観が合致しているかどうかを確認するのに時間をかける。
 会社案内パンフレットには、「社員の社員による社員のためのルール10カ条」というものが掲載されています。(中略)さらに、「これらのルールは一例です。私たちは新しい発見に感動し、成長する喜びを分かち合い、これからも創造性を大事にします」と付記されています。

 この10カ条で表現されていることの真意を伝えるために、就職希望者との面談時間を多く取るようにしたそうです。大学生の場合で、平均すると1人20時間以上。会社訪問には5回以上来てもらい、実際に働いている社員と次々に合わせ、面談する社員は15名以上にもなったそうです。
 選考基準として、1.人柄、2.価値観、3.人間力とあります。(中略)興味深いのは、採用パンフレットに、「次のタイプの方には向かない職場です」という表現があることです。やはり10項目で、次の通りです。

 「家族を大切にする気持ちがない方」「仲間を大切にできない方」「笑顔のない方」「夢をあきらめた方」「人の話を聴けない方」「人間が嫌いな方」「可能性を信じない方」「自分が嫌いな方」「言われた仕事しかしない方」「会社のためなら何でもやります!というタイプの方」
 人事部が現場の社員を巻き込んで、採用に多くの時間をかける企業としては、例えばグーグルやゴールドマン・サックスなどが有名である。面接回数は10回、面接した社員は20人以上などということもあるらしい。しかし、ネッツトヨタ南国は、社員数133名(2014年10月時点)の中小企業にすぎない。そのネッツトヨタ南国がグーグル並みの採用活動を行っているのだからすごい。

 能力ではなく価値観をベースとした採用に関しては、私も大いに賛成である。最近は新入社員に対しても即戦力を求める企業が増えており、面接官は学生時代にどういう具体的な成果を上げたかを聞きたがる。しかし、学生時代から企業で通用する能力を持っている人など、ごくごく少数派にすぎない。仮にそういう能力を持っていたとしても、言葉は悪いが学生時代というのは、野球で言うところの2軍である。2軍でいくら高い成績を残しても、球団や世間にほとんど評価されないのと同様、学生時代の成果は大した意味を持たない。

 だから、学生は企業がじっくりと育成するしかない。幸い、ピーター・ドラッカーも述べたように、人間の能力は、適切に訓練すればいかようにも発展する伸びしろを持っている。だが、ここで注意しなければならないのは、人事部の人がよく口にする「3年で1人前」という言葉である。

 人事部は、3年でその道のプロフェッショナル人材になることを期待しているらしい。しかし、ちょっと待ってほしい。プロフェッショナルというのは、そんなに簡単になれるものではないはずだ。3年で極められるほどの”簡単な”仕事ならば、早晩人件費の安い国に取って代わられるだろう。人件費の高い日本国内で働く以上は、もっと高度な仕事でプロを目指さなければならない。そういう仕事では、1人前になるまでに10年単位のトレーニングが必要となる。

 企業が10年単位で付き合い、高額な人材育成の投資を続ける対象者としてふさわしいかを判断する基準は、やはりその人の価値観が企業の価値観とマッチしているか、ということ以外にない。最近はあまり聞かなくなったが、日本には「採用は企業との結婚である」という言葉がある。そして、結婚において双方の価値観の合致が決めてであるのと同様に、学生と企業の価値観が一致していることが望ましい。逆に、離婚の主たる理由として双方の価値観の不一致が挙げられると同じで、学生と企業の価値観が一致していなければ、若手社員の離職率が高まる。

 私の知り合いに、金融機関系のシステム開発会社で新卒採用を担当している人事担当者がいる。彼は、それまでの採用プロセスを抜本的に改めて、価値観ベースの採用に切り替えたそうだ。まず、学生が持っている能力の評価をやめた。そして、これが面白いのだが、彼はエントリーシートから志望動機の記入欄を削除した。

 考えてみれば、志望動機というのはほとんど意味がない。企業のことを何も知らない学生に、企業に入って何をしたいかを考えさせたところで、学生には申し訳ないが大したアイデアは出てこない。それに、何がしたいかなどという夢物語は、いくらでもきれいに描くことができる。それこそ、就職活動アドバイザーなる人の入れ知恵で、何とでも語れる。それよりも、企業と学生の価値観が一致しているかという現実的な問題に目を向けたわけである。

 学生がよく利用する「みんなの就職活動日記」というサイトでは、学生が企業各社の採用活動を評価し、満足度をランキング化している。価値観ベースの採用に切り替えた彼の企業は、ランキングが急上昇した。学生からは、「志望動機の欄が消えたことで、将来のことをあれこれと考えなくてもよくなり、気持ちが楽になった」という声もあったという。学生の満足度が上がっただけでなく、彼の企業では入社後3年以内の離職率が激減した。システム開発会社は平均的に離職率が高いのだが、彼は冗談半分で「最近は人が辞めなさすぎて困っている」と言っていた。

 (続く)

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