プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年07月06日

起業・創業をめぐる3つの勘違いをまとめてみたい


 日本は1991年以降、廃業率が開業率を上回る状況が続いている。特に、2000年代に入ってからは廃業率と開業率の差が大きくなっており、その結果として、中小企業の数が急激に減少している。2009年には約420万社あった中小企業は、その後たった3年間で約30万社も減少し、約390万社となった。これに危機感を抱いたのか、安倍首相は日本の開業率を現在の5%台から、アメリカやイギリス並の10%台に引き上げる目標を打ち出している。その影響で、我々中小企業診断士も、起業・創業を支援させていただく機会が増えた。今回の記事では、そういう仕事をする中で感じた、「起業・創業をめぐる3つの勘違い」をまとめてみたいと思う。

(1)競争戦略
 競合他社と明確に差別化するために、新規性のある分野へ参入しなければならないと考える人は多い。これは、起業を目指す人だけでなく、起業を支援する行政側にも見られる。例えば、国の補助金である「創業補助金」(起業時や起業直後の経費の一部を補助)では、審査ポイントの1つに「新規性」が掲げられている。安倍首相の方針に合わせて、都道府県や市区町村も独自に創業補助金を設けるケースが増えているが、やはり新規性が審査基準に入っている。

 確かに、競合他社と全く異なる戦略で成功すれば、シンデレラストーリーになる。シンデレラストーリーは解りやすいから、万人受けしやすい。しかし、シンデレラは1人しかいないのと同様に、そこまで明確に差別化された事業を最初から構想できる人はほとんどいない。また、仮にそういう人がいたとしても、アイデアが市場に受け入れられず、事業化しないケースが大半である。事業アイデアの目利きであるベンチャーキャピタルでも、90%以上の案件は失敗している。

 個人的には、そういうハイリスクの案件には責任が持てないので、あまり積極的には支援できない。また、そういう案件に税金を投入することにもやや懐疑的である。それよりも、既に市場があり、競合他社がたくさん存在する領域に参入する事業計画の方が安心する。その場合、大きな差別化を狙うのではなく、ちょっとした差別化をたくさん積み重ねるとよい。競合他社よりちょっとだけ使い勝手がよい、ちょっとだけ品揃えがよい、ちょっとだけ納期が速い、ちょっとだけ安い、ちょっとだけ店員のサービスがよい・・・その「ちょっと」を数多く作るプランを私は推奨したい。

(2)オペレーション
 ベンチャー企業は人手不足である上、早く黒字化しないとつぶれてしまう。そこで多くのベンチャー企業は、製品・サービスを標準化して、少ない人数で多くの顧客を相手にし、効率的に利益を稼ごうとする。製品設計や部品を共通化したり、サービスマニュアルを策定したり、ソリューションをパッケージ化したり、ITで効率的に販売する方法を考えたりする。

 ここで、標準的な製品・サービスを受け入れやすいのは大企業や一般人に限られること、さらに大企業や一般人は、信用度のないベンチャー企業を選択しないことに注意する必要がある。大企業は、自社業務を効率化するために、様々な企業から標準的な製品・サービスを導入する。その際、自社の業務が変な方向に標準化されることがないように、名もないベンチャー企業を避け、既に実績のある有名企業に頼る。一般人も同様である。一般人は自分の購買意思決定を効率化したいと考えるが、よく解らない企業から製品・サービスを購入しようとはしない。

 ベンチャー企業が相手にできるのは、中堅・中小企業や、新しい物好きの消費者が中心となる。こうしたターゲットは、標準化とは無縁である。中堅・中小企業は独自の価値観で経営されているし、新しい物好きの消費者は自分らしさを追求している。彼らに対して、標準化された製品・サービスというのは無力である。中堅・中小企業の経営のやり方に合わせたソリューションを組み立て、新しい物好きの消費者の特殊なニーズをくみ取って製品・サービスをカスタマイズしなければならない。要するに、ベンチャー企業は最初から楽をしようとするな、ということである。

(3)人材採用
 ベンチャー企業は慢性的な資金不足であるから、できるだけ少ない人件費で優秀な人材をかき集めたいと考える。ここでいう優秀な人材とは、様々なスキルを合わせ持った人材のことである。製品設計も製造も営業もマーケティングもクレーム対応もできる人がいたら、ベンチャー企業はもろ手を挙げて歓迎するだろう。しかし、そんな人が転職市場に出てくることはまずない。それほどまでに優秀な人を、既存企業が手放すわけがないからだ。

 ややトゲのある言い方になるが、ベンチャー企業に転職したいと申し込んでくる人の大部分は、既存の中堅・大企業には拾ってもらえなかった、何らかの”ワケあり”人材である。一部の業務はそれなりにこなせるが、それ以外の大半の業務については能力がないと考えた方がよい。

 例えば、法人営業担当を採用する場合、飛び込み営業には全く心理的抵抗はないものの、飛び込んだ後商談化する能力がない人が応募してくるかもしれない。また、商談までは持ち込めるけれども、自分で提案書が書けない人が応募してくるかもしれない。本当は、法人営業担当を1人採用すれば十分であるところを、飛び込みをする人、商談化する人、提案書を書く人といった具合に、3人採用しなければならない。ベンチャー企業はこの現実を受け入れた上で、飛び込みしかできない人が商談化や提案書作成ができるよう、採用後に根気強く育成する必要がある。

 起業する時には、将来の目標売上高に合わせて人員計画を立てるが、想定よりも多くの人材を採用しなければ、企業の業務は回らないと思った方が賢明である。当然のことながら、その分だけ人件費が必要となる。その人件費をカバーできる事業計画になっているかが重要だ。また、限定的な能力しかない社員を中長期的に訓練し、能力の幅を広げる計画も合わせて立案しなければならない。これらの点をおろそかにすると、経営者は社員に足元をすくわれる。

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