プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年08月03日

『力闘向上(『致知』2015年8月号)』―私が仕事を「楽しい」と思える日は来るのだろうか?


致知2015年8月号力闘向上 致知2015年8月号

致知出版社 2015-08


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 こんなことを書くと関係各所から怒られるかもしれないが、私は社会人になってこのかた、自分の仕事が楽しいと思ったことが一度もない。前職のベンチャー系コンサルティング会社では、以前の記事「ベンチャー失敗の教訓シリーズ(全50回)」で書いたような経験もあってか、楽しい日は1日たりともなかった。4年前に中小企業診断士として独立してからは、自由がきく仕事になってちょっとは楽しくなるかと思ったが、はっきり言って苦しみの日々が今日まで続いている。では、10年続くこのブログを書いている時は楽しいかというと、これもまた苦しいのである。パソコンに向かうと、言葉が思うように出てこなかったらどうしようと不安に駆られて苦しくなる。

 だから、日本旅行で「カリスマ添乗員」と呼ばれ、パッケージ旅行で年間8億円も売り上げる平田進也氏の次のような文章を読むと、不思議で不思議で仕方がない。
 私は誰に頼まれたわけではなく女装や変装をします。場が盛り上がり、お客様が喜んでくださるからです。それにかかる衣装、化粧品代等の費用はすべて自分持ち。「何でそこまでするの?」と思う方もいるかもしれませんが、私は断言します。やり切ったほうが自分が楽しいからです。生きている感が違うからです。
(平田進也「セールスのコツここなりと気づいた価値は8億円」)
 仕事が楽しいということは、仕事で満足感を得ているということである。マーケティングの研究ではしばしば、社員満足度が顧客満足度につながり、業績の向上をもたらすと言われる。私も昔はこの命題を盲目的に信じていた。だが、この命題には重要な問題が潜んでいる。それは、社員満足度と社員のモチベーションが区別されていない、ということである。

 社員満足度というのは、仕事や組織に対する過去の評価である。一方、モチベーションは、将来仕事をどれだけ頑張れるかというバロメータである。どちらが顧客満足度の向上につながるかと問われれば、社員満足度ではなくモチベーションであろう。過去に満足している社員は、もうそれ以上を望まず、将来は仕事を頑張らないかもしれない。その結果、顧客満足度が低下し、業績にマイナスのダメージを与えることも考えられる。そうではなく、将来仕事を頑張ろうとしている社員によって顧客満足度が高まり、業績が向上するという流れの方がしっくりくる。

 (厳密に言うと、社員の満足度とモチベーションを区別するならば、顧客の満足度=製品・サービスに対する過去の評価と再購入意欲=将来その製品・サービスを再び購入したいと思う気持ちも区別しなければならない。ここでは詳しく論じないが、「社員満足度が顧客満足度につながり、業績の向上をもたらす」という命題は、正確には「社員のモチベーションが顧客の再購入意欲につながり、業績の向上をもたらす」と表現すべきかもしれない)

 ただ、そうは言っても、社員満足度をあまりに軽視しすぎるのは、それはそれで別の問題があるように思える(議論がぐるぐる回って恐縮だが・・・)。社員の満足度が製品・サービス品質に強い影響を与える分野は確かに存在しているようだ。平田進也氏の日本旅行が提供するパッケージ旅行はまさにそうである。他にも、例えばディズニーランドは、キャスト自身が心の底から夢の国を楽しんでいるからこそ、顧客に夢を提供できる。リッツカールトンも、社員自身がリッツカールトンを愛し、仕事を楽しんでいるからこそ、顧客が快適に宿泊することができる。

 ディズニーランドなどのように社員が仕事を楽しむことができる分野と、私のように仕事が苦行のように感じられてしまう分野の違いは何であろうか?乱暴だが、世の中の製品・サービスは、顧客の快楽に貢献するものと、顧客の苦痛を取り除くものの大きく2つに分けられる。ディズニーランドなどは前者に該当する。前者の場合は、社員の快楽に共鳴して顧客が快楽を感じる。社員満足度がモチベーションに影響するのか、モチベーションが社員満足度に影響するのかは判然としないが、とにかく社員満足度とモチベーションが一体となって、顧客満足度を左右する。

 一方で、私がやっているコンサルティング業や教育研修というのは、後者に該当する。顧客企業が経営上の課題を抱えて苦しんでいるところに入り込み、その苦しみを共有して、顧客企業にフィットした解決策を地道に組み立てていく。こういう仕事であるから、そもそも楽しいはずがないのである。仮にそれが楽しいと思えるのならば、顧客企業の苦しみを見て楽しんでいるわけであって、何とも不謹慎極まりない。もしそういうコンサルタントがいたら、悪いニュースが増えるほど盛り上がるマスメディアと同様に、私は軽蔑のまなざしを送るに違いない。

 もちろん、こういう仕事であっても、満足感が全くないわけではない。顧客企業から、「君の企画・提案で課題解決の道筋が見えた」などと感謝されれば、この仕事をやってよかったと思える。ただし、苦労が報われるのはほんの一瞬であって、次の瞬間からは再び別の経営課題を背負い苦しむことになる。それでも、私は決してモチベーションを失っているわけではない。顧客の苦痛を取り除く製品・サービスにおいては、満足度とモチベーションは別物である。この分野で顧客満足度に影響を与えるのは、社員満足度ではなく、決定的に社員のモチベーションのみである。

 しかしながら、一生苦しみながらこの仕事を続けるのも、夢がない話だと思われるかもしれない。私も、一生この苦しみが続くかと思うと、うんざりする時がある。だが、苦しみを経た後に仕事が楽しくなる可能性があることを、声楽家・坂本博士氏の言葉に見出すことができた。
 それまで僕は城多先生の厳しい指導のもと、音楽の「楽」が学ぶほうの「学」だけになっていたんです。つまり「音学」ですね。こうなるといつの間にか「音が苦」になっている。いくら音楽学校に入ったからといっても、ドレミファソラシドと音階のことばかり厳しく言われると、誰だって音符恐怖症になってくるんですよ。

 ところがヘッサード先生はそういう指導をしませんでした。代わりに、例えば目の前に山があると想像して、その山に向かって「山、山、山」と日本語で音階を歌わせるんです。そうやっていると、面白いことに音符恐怖症が影を潜め、気持ちよく声を出せるようになりました。まるで心の扉がスッと開くように。音を楽しむ、つまり本当の意味での「音楽」になりましたね。
(坂本博士「見果てぬ夢を追い続けて」)


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