プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年08月05日

『営業のモチベーション(DHBR2015年8月号)』―社員のタイプに応じた報酬制度の使い分けは公平性に反する、他


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 08 月号 [雑誌]ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 08 月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2015-07-10

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【社会的責任】最適な社会的責任を果たす4つのステップ CSRこそ効率化せよ(カストゥーリ・ランガン、リサ・チェイス、ソエル・カリム)
 著者の分類に従うと、CSR(社会的責任)活動には、①いわゆるフィランソロピーやメセナのような慈善活動、②環境・社会へのベネフィットを提供するサステナビリティ・プロジェクト、③ビジネスモデルの抜本的な転換を通じて社会的ニーズの充足を目指すCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)戦略の3つがあるという。しかし、多くの企業ではこれら3つの活動に一貫性がなく、責任者も担当者もバラバラである。そのため、CSRの総合責任者を置いて、彼の下に社内のCSR活動を統合する必要がある、という論文である。

 この論文に限らないが、CSRの議論は色々と錯綜していて、非常に理解しづらい印象がある。そこで、私は次のように理解している。まず、企業活動を「成果が経済的か社会的か?」と「成果を生み出す手段が経済的か社会的か?」という2軸のマトリクスで4つに分ける。成果と手段がともに経済的というのは、通常の企業活動である。成果は経済的だが手段は社会的というのは、環境に配慮したサプライチェーンを構築したり、社員の労働環境、医療、教育に投資したりしながら、一般的な市場ニーズを充足する活動である。多くの企業のCSRはこの象限に該当する。

 手段は経済的だが成果は社会的という象限は具体例を挙げるのが難しいのだが、バングラデシュのグラミン銀行で有名になったマイクロファイナンスが該当するだろう。ファイナンスの仕組み自体は、従来のシステムを拡張・発展させたものであり、経済的である。しかし、そのシステムを通じて多くの小規模起業家(=顧客)を生み出し、彼らが貧困から脱するのを支援している。

 最難関のCSRは、成果も手段も社会的という象限である。この象限に取り組む企業はパッと思いつかない。法政大学・坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズには、障碍者雇用に積極的な企業(日本理科学工業株式会社、株式会社大谷、株式会社協和、株式会社障がい者つくし更生会など)と、障碍者向けの製品を製造する企業(徳武産業株式会社など)が紹介されている。仮に、ある企業が障碍者を数多く雇用し、障碍者向けの製品・サービスで持続的な収益を上げていれば、おそらくそれは究極のCSRと呼ぶことができるに違いない。

日本でいちばん大切にしたい会社日本でいちばん大切にしたい会社
坂本 光司

あさ出版 2008-03-21

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正しいインセンティブ設計を構築する方法 誰が本当に優れた営業なのか(V・クマー、サラン・サンダー、ロバート・P・レオーネ)
営業の研究における第一人者が語る 【インタビュー】インセンティブがすべてではない(アンドリス・A・ゾルトナーズ)
 「正しいインセンティブ設計を構築する方法 誰が本当に優れた営業なのか」では、営業担当者を「トレーニング志向型」と「インセンティブ志向型」に分け、前者は教育研修の拡充を、後者は金銭的報酬の増加を通じて動機づけるべきだとしている。また、トレーニング志向型は小規模だが成長の早い顧客に販売する傾向があり、インセンティブ志向型はより大規模で安定的な顧客にアプローチする傾向があるため(個人的には逆の方がしっくりくるので、この記述は意外なのだが)、タイプに応じた顧客の振り分けをすべきことも示唆されている。

 だが、営業担当者のタイプに応じて動機づけの手法を変えるのは、あまり現実的ではないと感じる。同じ受注金額を獲得した2人の営業担当者について、一方はトレーニング志向型であるからより高度な教育研修の機会を付与し、もう一方はインセンティブ志向型であるからコミッションを高くする、などという企業はないだろう。そんなことをすれば社員の間に不公平感が生まれ、モチベーションはかえって低下するに違いない。それに、社員のタイプをいちいち判別して動機づけの手法を選択しなければならない人事部側も、制度運用の複雑さに悲鳴を上げるだろう。

 「営業の研究における第一人者が語る 【インタビュー】インセンティブがすべてではない」には次のように書かれている。
 営業担当者は普通さまざまな世代にまたがり、仕事への期待も異なります。ミレニアム世代は生活の質を向上させ、仕事にもっと意義を見つけたいと考えるでしょう。彼らはメールなどの電子メディアでたえずコミュニケーションを図ろうとし、自分の仕事ぶりに対するフィードバックを頻繁に求めます。ベビーブーマーは退職後の安心を確保したいと考えます。その中間層の人たちは、経済的な安定のために働いているのかもしれません。成功する報酬制度はこれらすべての目的に対応する必要があります。
 (※太字は筆者)
 先ほどの例で言えば、企業側としては教育研修とコミッションの両方の動機づけ手法を用意し、2人の営業担当者にその両方を与えるべきである。前者の営業担当者にはコミッションが、後者の営業担当者には教育研修が動機づけとして十分に機能しないが、それは仕方ないのである。それよりも、動機づけ手法の公平性を守ることによる利益の方がずっと大きい。

 以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―給与・採用に関する2つの提言案(後半)」で、動機づけの手法には、①経済的動機づけ、②社会的動機づけ、③心理的動機づけという3つがあると書いた。①②は外発的動機づけであり、③は内発的動機づけである。このうち、①②についてもう少し詳しく書くと、

 ①経済的動機づけ=給与、賞与、各種手当、コミッション、福利厚生、ストックオプションなど。
 ②社会的動機づけ=命令、昇進、やりがいのある仕事、上司からの叱咤激励、人事考課、顧客からの評価、職場の人間関係、組織風土など。

となる。このうち、給与、福利厚生、昇進、人事考課など、制度というハードで運用されるものは、全社員に全てを公平に与えなければならない。社員のタイプに応じて使い分けることは許されない。ただ、何でもかんでもハードで解決しようとすると、制度構築で苦労する割には、一定の社員にとって機能しない動機づけ手法もたくさん生じることになる。それに、制度運用が組織に浸透するには時間がかかるものであり、その間は社員を上手く動機づけられないという問題もある。

 結局のところ、社員のタイプに応じて柔軟に動機づけられるのは、ソフトな動機づけ手法、中でも上司による叱咤激励に限られる。マネジャーは部下を動機づける様々な言葉を持っていなければならない。旧ブログで「モチベーションが高い人は「ボキャブラリーが多い」」という記事を書いたが、動機づけが上手なマネジャーもまた、ボキャブラリーが多いと思うのである。マネジャーには国語力が必要だ。昔のマネジャーは、部下から提出された日報に赤字でぎっしりとコメントを書いて返していたという。部下はそのコメントを迷惑だと思う反面ありがたく感じて、翌日の仕事にいそしんでいた。最近は、そういうマネジャーが減ってしまったように感じる。

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乗務員のモチベーションを上げる3つの仕組み 日本交通のタクシーはなぜ「選ばれる」ようになったのか(川鍋一朗)
 サービスマニュアルの策定、キャリアパスの設定、各営業所の業績のランキング化という3つの施策によって、日本交通の改革を行ったという論文である。
 そこで実施したのが、営業所や関連会社のランキングだ。チーム単位での競争を促し、チームワークを育むことが目的である。ランキング上位の報奨としては、売上アップに直結する黒タク(※日本交通が新たに設けた「黄タク」、「黒タク」、「EDS」という3段階のキャリアパスで、2番目に位置する。黄タクと黒タクでは料金は変わらないが、黒タクの方が顧客からの指名が多いため、収入が上がる)を活用している。日本交通グループに加盟した企業は、原則として黒タク比率20%からスタートするが、以降、成績に応じて黒タク比率が高まるのだ。
 以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に」で、私の前職の会社では、グループ会社が同じフロアに集まっていながら、壁で不自然に区切られているせいで、コミュニケーションが阻害されていると書いた。人間は不思議なもので、物理的に隔離されると、心理的にも壁を作ってしまう。このことを知ったいくつかの企業では、大部屋方式に改装したり、デスクのフリーアドレス化を進めたり、役員の個室を廃止したりして、社内コミュニケーションの活性化に努めている。

 だが、飲食店・小売店などの店舗では、そもそもこういう施策ができない。各店舗を孤立感から救うには、日本交通のような営業所・店舗間の業績ランキングを作成・共有して、適度な社内競争を促すことが有効かもしれない。加えて、例えば年に1度全店舗の代表者を集めて、業績上位の店舗を表彰したり、セブン・イレブンがやっているような「店舗間学習」(販売ノウハウを店舗間で共有する仕組み。コンビニは基本的に他店舗と商圏が重ならないので、自店舗のノウハウを公開しても他店舗に売上高を食われる心配がない)に取り組んだりすると、より効果的であろう。

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【R&D】なぜ多くの発明、特許が対価を得られないのか 研究成果が事業にならない7つの理由(レディ・コタ、フィリップ・H・キム、オリバー・アレクシ)
 論文のタイトルからして、特許を製品化・事業化するプロセスの途中で直面する様々な課題に対して、どのように対処すべきかを論じたものだと勝手に想像していたのだが、ちょっと違った。特許は出願前に公知の状態であってはならない。ところが、研究成果を早く世に知らしめたい研究者は、勇み足で論文を出したり、仲間の研究者に情報を漏らしたりしてしまう。そこから情報が広がると、特許の要件を満たさなくなってしまうから注意が必要である、という論文であった。

 中小企業、特にベンチャー企業は、新しい技術やアイデアを自力で事業化することが難しい。そこで、資金力のある大企業に話を持ちかける。だが、ここに落とし穴がある。私が聞いた話では、ある大企業の経営者は、中小企業の社長から提案を持ち込まれると、その社長が持ってきた提案書を部下に渡して、「これを使って我が社で特許を取得せよ」と命令するのだという。以前の記事「起業・創業をめぐる3つの勘違いをまとめてみたい」で、ベンチャー企業はいきなり大企業を狙わない方がよいと書いたが、大企業との取引にはこういうリスクもあるので要注意だ。

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