プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2015年09月21日

「海外ビジネス進出セミナー」で学んだこと(2/2)


会議

 (前回の続き)

 (7)キーマンを採用した後は、キーマン主導でリーダーを採用する。キーマン主導とはいえ、キーマンに任せきりにしてはならない。キーマンが自分の身内ばかりを採用して、日本本社の言うことを聞かなくなるリスクがあるためだ。よって、リーダーの採用には日本本社も関与する。

 リーダーは日本本社に半年~1年ほど送り込み、仕事のやり方を教えるとともに、日本的経営についても体得してもらう。その際、OJTのやり方をしっかり教えることが重要である。日本人はOJTが上手であるのに対し、アジア人は総じてOJTが苦手である。教える側はどうやって背中を見せればよいのかが解っていないし、教えられる側もどうやって見ながら学べばよいのかが解っていない。タイでは、先生に質問するのは失礼という文化があるから、先生に質問することはむしろ望ましいということを教えなければならない。

 リーダーが日本から戻った後は、リーダーの下でOJTを通じてワーカーを育成する。その際、リーダーに全て任せきりにするのではなく、日本本社から社員を派遣して、リーダーによるOJTをサポートすることも必要である。OJTでは5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)を教える。ただし、このコンサルタントの方によれば、日本人が教えられるのは4S(しつけ以外)までであり、しつけだけは現地社員が教えなければならないという。

 大部分のワーカーは、地方からの出稼ぎ労働者である。彼らの中には、信号というものを生まれて初めて見る人も多い。だから、「赤の場合は渡ってはいけない。青になったら渡ってよい」という非常に基本的なところから教える必要がある(余談だが、カンボジアはポル・ポト政権が知識層を大量に虐殺した影響で、教育システムが破綻している。そのため、色の見分けがつかない人がいる。ピンクを見てもオレンジを見ても、赤としか答えられない。カンボジアに進出した日系企業の中には、色の見分け方の教育を行っているところもある。以前の記事「「カンボジア投資セミナー」に行ってきた(日本アセアンセンター)」を参照)。

 (8)海外進出する主たる目的はコスト削減であり、現地のサプライヤーからの調達比率を上げることで、原材料費の抑制を目指す。しかし、何でもかんでもすぐに現地のサプライヤーに切り替えることはできない。ネジ1本であっても、現地のよく解らない企業から調達すると、製品に組み込んだ際に不具合が生じる可能性がある。よって、日本のようにQCD三拍子揃ったサプライヤーを根気強く探し、時にはサプライヤーを育成しなければならない。

 サプライヤーを探す際には、絶対にサプライヤーの工場を見に行く。5Sが徹底されているか、在庫・仕掛品は適切に管理されているか、品質管理体制は整っているか、といった点を確認する。また、契約後も、年に1回は工場への立入検査を行う。サプライヤーの工場には、現地の購買担当者だけを行かせるのではなく、日本から購買担当者を派遣し、同行させる。そうすることで、サプライヤー評価の方法について、現地の購買担当者とノウハウを共有することができる。

 なお、購買や経理など、会社の資材・資金を扱う担当者は、年に1回配置転換をするなど、長くその職に置かないようにする。仕事に慣れてくると、サプライヤーと共謀したり、伝票を操作したりして、会社の資金を横領する。よって、仕事に慣れる前に、配置転換をしてしまう。作業効率を多少犠牲にしたとしても、会社の資金を守るためにそこまでしなければならない。

 (9)海外販路開拓の重要な手段が展示会である。日本の展示会は、担当者レベルの人が情報収集で来ることが多いため、ブースで具体的な商談が進むことは少ないように思える。しかし、海外の展示会では、業界の重鎮、政府の要人など、日本では考えられないような大物がふらりと訪れることがある。それなのに、日本企業のブースには、現場レベルの社員しか配置していない。せっかく大物がやって来てその場で契約を結びたがっているのに、ブースの担当者は「本社に確認しないと解りません」などと及び腰になってしまい、みすみす機会を逃してしまう。

 ただし、業界の重鎮、政府の要人を装った詐欺師がブースに来ることもあるので要注意である。そういう人から豪華な歓待を受けたところ、後から高額の手数料を請求されたり、現地企業に一方的に有利な契約を結ばされたりした、という被害が発生している。海外で展示会をする際には、政府、顧客企業、競合他社、関連産業などの主要人物に関する情報を押さえておく。

 顧客企業に関する情報は、詐欺防止以外にも重要である。展示会は新規顧客を開拓する場ではあるものの、実は既存顧客にも来ていただき、新製品をお披露目する機会でもある。そのため、展示会には既存顧客をたくさん招待する。ブースに多くの人がいらっしゃることを想定して、本社は営業・マーケティング部門以外に、設計・開発・製造部門などからも助っ人を招集する。

 しかし、普段顧客との接点がない彼らは、ブースの前を通る人のうち誰が自社の顧客なのかが解らない。これでは、せっかく展示会場に顧客がいらっしゃるのに、挨拶の1つもしない非礼を働くことになってしまう。そのため、ある企業では、既存顧客の担当者の顔写真を設計・開発・製造部門などの助っ人にも送付し、ブースでの応対について事前トレーニングを実施したという。

 (10)海外の展示会では、模倣被害が頻繁に発生する。製品そのものの模倣については事前に対策を考えるが、意外と抜け落ちているのが治具・工具の模倣対策である。ブースでは機械のデモンストレーションなどのプロモーション映像を流すことがある。しかし、その映像の背景に映り込んでいる治具・工具の情報が漏れることがあるので注意しなければならない。

 (11)海外ビジネスには様々なリスクがつきものである。当局から許認可が下りない、当局の投資奨励策の方針が変わる、工場がスケジュール通りに建設されない、現地で調達した原材料・機械装置に不具合が多い、急激な通貨安で輸入コストが跳ね上がる、現地法人の社長が病気で倒れる、社員が窃盗・横領などの不正を働く、地震・津波・台風などの自然災害に遭うなど、挙げればきりがない。だが、思いつくリスクについては、事前に対策を練っておく必要がある。

 ただし、大きな政変やテロだけは、起こる可能性があると解っていても、事前に対策の打ちようがない。こういうケースでは、「現地の工場を捨てても本社はつぶれない」という計画を立てるのが最善である、というのがこのコンサルタントの方のアドバイスであった。

 仮に、日本での売上高が30億円である企業が、海外で10億円の売上高を目標とした工場を建設するとしよう。総資産回転率はだいたい1倍であるから、海外法人の総資産は約10億円である。自己資本比率を高めに見積もって3割とすると、残り7割は借入金である。だが、工場を建設してすぐにテロが起き、工場がつぶれたら、7億円の借金だけが残る。その7億円を本社がいきなり負担することになっても、本社は存続できるようにしておかなければならない。ひょっとしたら、日本国内の売上高が30億円では足りないかもしれない。その場合は、海外で売上高10億円を目指すと同時に、国内の売上高も40億円、50億円と伸ばす計画を立てなければならない

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