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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
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 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2015年12月07日

『戦略人事(DHBR2015年12月号)』―アメリカ流人材マネジメントを日本流に修正する試案

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 年功主義の正しさを説くことも、管理職標準年齢や滞留年数の必然性も、論理的に説明できないはずだ。にもかかわらず、多くの企業がそれを続けている。運用主体である人事部門ですら必要性を感じられない制度がなぜ存在するのか。私には大いに疑問である。
(八木洋介「日本企業は「継続性のマネジメント」から脱却せよ 守りの人事から攻めの人事へ」)
 著者の八木洋介氏はLIXILグループ執行役員副社長で、GEの人事部門の経験もある。そのためか、引用文のように日本的な人材マネジメントには懐疑的であり、逆に欧米的なやり方を称賛している。事実、LIXILではGEに倣って「9 Blocks」という人事評価制度を導入しているという。

 アメリカ流の人材マネジメントでは、企業業績に対する各社員の貢献度を算出し、給与や賞与に反映させる。また、社員の能力を厳密に評価し、年齢に関係なく実力主義で出世させる。いずれの場合も、貢献度の算出や能力の評価が論理的であるほど、人事制度の公平性が保たれると信じられている。人事コンサルティング会社(私もその一人と言えばそうなのだが)は、いかに精緻な制度構築ができるかをお互いに競い合っている。

 しかし、私の限られた経験での話になってしまうが、どんなに論理的に設計したつもりでも、どこかに穴は生じる。業績に対して社員1人1人がどの程度貢献しているかを特定することは容易ではない。この点を認識しているアメリカの経営学者やコンサルタントは、個人ではなくチームに報酬を与えるべきだ、とアドバイスする。ところが、チームの報酬も最終的には各個人に配分しなければならない。その配分方式を説いた論文は、私が知る限り存在しない。

 営業部門であれば、売上高に対する貢献度が明快であると言われるかもしれない。だが、その場合でも、営業担当者を陰で支える営業事務や技術支援担当者などの貢献度合いを差し引いて考えることは至難の業である。また、製品・サービスが売れたのは営業担当者の努力の賜物なのか、製造部門が高い品質を担保してくれたおかげなのかを特定できる人はいないだろう。

 イノベーションを重視するアメリカでは、社員の失敗に寛容な企業文化を醸成することが重視される。イノベーションの大半は失敗に終わる。社員が失敗するたびに減点主義で処罰を下していれば、誰もイノベーションに取り組まなくなる。だから、失敗をむしろ奨励せよ、というわけだ。ここで、社員が失敗した場合の報酬をどう算定するかという問題が生じる。失敗しているのだから、企業に対する貢献度はゼロどころかマイナスだ。その失敗が後に別のプロジェクトで活用されれば金銭的価値を生むかもしれない。しかし、その場合に、プロジェクトメンバーの貢献度と、失敗した社員の貢献度を切り分けることはほとんど不可能である。

 社員の能力評価も同じような問題を抱えている。客観的な知識に関しては、テストのような形で得点化することができる。しかし、能力のほとんどは可視化できないため、評価の段階で何かしらの恣意性・主観性が混じることは避けられない。人事コンサルタントは人事制度の公平性を担保するためという名目で、どんどん指標を追加していく。しかし、その結果でき上がるのは、何とも複雑怪奇な制度である。そして、困ったことに、人事制度が複雑になればなるほど、社員は制度の穴を探し出して抜け駆けをするものである。

 そう考えると、日本の年功序列制は非常によくできた制度かもしれない(以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―給与・採用に関する2つの提言案(後半)」を参照)。年齢は誰が見ても文句が出ない指標である。また、多く給与をもらいたいから、早く昇進したいからと言って、年齢を水増しすることもできない。そういう意味で、最も客観的な人事制度である。

 仮に私が今起業して人事制度を構築するとしたら、年功序列制をベースとするに違いない。給与にリンクするのは年齢のみである。どうしても成果に応じた差をつけたいのならば、例えば社長賞として旅行に招待するなど、金銭以外の報酬で調整する。また、年功序列制の下では、一定の年齢になるまでは昇進できない。昇進を急ぐハイパフォーマーには、まだ現在のポジションで極めるべき分野があると言って説得する。逆に、一定の年齢になれば有無を言わさず昇進させる。最近は管理職になりたがらない人が増えていると言われるが、重責に耐えられない人は残念だが辞めてもらう(私がベースとしているのは年功序列制であって、終身雇用制ではない)。
 新興企業、特にハイテク分野の企業は、レイオフや昇進が頭打ちになったなどの理由で大企業を去った幹部クラスの人材を、必要に応じて採用できた。マイクロソフトは、人材の育成管理スキルにほとんど投資することなく、時価総額ベースで世界最大の企業へと成長した。他の企業も同社に倣った。当時、あるCEOは私にこう言った。「なぜ私が人材を育成しなければならないのでしょう。ライバル企業が代わりにやってくれようとしているのに」
(ピーター・カッペリ「求められるのは経営戦略を支えること なぜ人事部は嫌われるのか」)
 アメリカ企業は、自社が必要とする能力を持つ人材を労働市場から自由に調達すればよいと考える。経営幹部ですら、外部からの招聘をいとわない。元来、日本企業は新卒採用を重視し、内部昇格で経営幹部を登用してきたのだが、最近はアメリカの影響が強くなったと感じる。

 だが、あまりに中途採用を重視しすぎると、困った事態になる。中途採用重視の企業は、引用文にあるように人材育成に投資しなくなる。競合他社が育成した人材を高い給与で引き抜けばよいと考える。仮に、全ての企業が同じように考えるとどうなるだろうか?既に高い能力を持つ社員はヘッドハンティングによって流動化し、各企業の能力を最適化する。一方で、能力ギャップが大きい社員は転職できない。まして、学校を卒業したばかりの人間はほとんど就職できない。

 その後、企業の戦略が変化すると、社員の能力ギャップが生まれる。企業は再び、高い能力を持つ他の企業の社員をヘッドハンティングする。だが、その社員は他の企業にとっても重要度が増しているから、ヘッドハンティングにはより高いコストがかかるようになる。他方、能力ギャップが大きい社員は相変わらず転職できない。学生はますます就職が難しくなる。これを繰り返していくと、ごく一部の優秀な人材だけが転職を繰り返して非常に高い報酬を手にする一方、企業はあまり能力が高くない社員を抱え込み、社会には就職できない学生があふれ返ることになる。

 企業が短期的な視野に立って自社の能力を最適化すると、社会全体では非常に大きな人材のミスマッチが生じる。それどころか、企業にとっても、長期的に見ればだんだんとヘッドハンティングできる優秀な人材が減少することを意味し、最終的には自社が求める人材が市場に誰もいなくなる。こういう事態を避けるために、企業はたとえ手間がかかったとしても新卒採用を行い、人材育成に投資しなければならないと考える。
 素直で一生懸命頑張れて、責任感が強ければ、やらせれば何とかなると考えています。経験させなければ成長はないので、そのリスクは引き受けるべきです。新卒で「ズバ抜けて」優秀そうな人材がたまにいますが、その人が最終的に有能になるかどうかはわかりません。むしろ、素直で一生懸命頑張れて責任感がある程度で十分だと思います。もちろん頭の回転が速い、決断力があるという最低限のスペックが必要なのは、言うまでもありません。
(藤田晋「【インタビュー】サイバーエージェントはなぜ終身雇用にこだわるのか 人材が先、事業は後」)
 「人材が先、事業は後」という考え方は、藤田氏が起業前にジェームズ・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』の影響を強く受けたという点がよく表れていると感じた。コリンズは同書の中で、「最初にバスが向かう先を決めるのではなく、バスに誰を乗せるかを決めよ」と説いた。企業の戦略は二の次であり、最初にやるべきことは、自社の価値観(起業直後は経営者個人の価値観と同じ)に一致した人材を採用することである、という意味である。

 先に、企業は新卒採用を行うべきだと書いたが、これは決して中途採用を否定しているわけではない。企業に不可欠な能力をどうしても早期に補完したい場合に限って、中途採用を最低限にとどめるべきだ、という意味である。以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第37回)】最初に「バスに乗る人」を決めなかったがゆえの歪み」でも書いた通り、中途採用は能力重視が基本となる。面接では、応募者のこれまでの経験を掘り下げて、応募者が持つ能力が企業の要求する能力とどの程度合致しているかを判断する。だが、両者が完全に一致することは滅多にない。

 そこで次に、応募者と自社の価値観が一致しているかを評価する。価値観とは、仕事の重要な局面で意思決定のよりどころとなるルールである。企業文化、組織風土と言い換えてもよいだろう。これも、応募者と企業で完全に一致することは稀である。能力評価を価値観評価で補うと、「能力はある程度一致するが価値観が一致しない人」と、「能力は一致しないが価値観がある程度一致する人」に分かれることがある。この場合は、後者を採用すべきである。能力は入社後の訓練でいかようにも伸ばせる。これに対し、価値観は変化しにくく、不一致の人を入社させると企業風土を破壊することがある。こういう考え方は、冒頭で触れたGEの「9 Blocks」にも見られる。

 これは中途採用の場合である。新卒採用の場合は、応募者には評価できる能力がない。そのため、新卒採用は価値観重視となる。新卒採用では志望動機が重視されることが多いが、学生の限られた経験と能力の中で想像できる将来展望などたかが知れているし、絵空事なら誰でもきれいに描くことができる。私の友人が新卒採用を担当しているあるシステム開発会社では、エントリーシートから志望動機欄を削除し、価値観重視の面接に切り替えた。その結果、新卒採用者の離職率が大幅に下がったという(以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―採用・給与に関する2つの提言案(前半)」を参照)。

 ここまでの内容をまとめると、中途採用は能力重視、新卒採用は価値観重視となる。だが、中途採用では、価値観が合致していなければ絶対に採用されることがない。そういう意味では、中途採用こそ価値観重視と言うべきである。人事部門は、いかに応募者の能力を面接で明らかにするかに苦心しており、「コンピテンシー面接」のような手法に飛びつく。だが、能力評価は実はそれほど重要ではなく、価値観を評価できる手法を開発する必要がありそうだ。

 新卒採用は価値観重視と書いたが、人生経験が浅い学生に確固たる価値観があるのかどうか、最近は疑問に感じるようになった。私自身、自分の価値観を明文化できるようになったのは30歳前後になってからである。となると、新卒採用において評価のよりどころとなるのは、引用文にあるような「素直で一生懸命頑張れて、責任感が強い」といった、基本的な性格だけなのかもしれない。だから、新卒採用ではあれこれと評価項目を設定せずに、社会に順応できる性格を持っているかというその1点に絞って、評価を行った方がよいように思える。

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