プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 自社の強みを分析するのは難しい
Prev:
prev 『人間という奇跡を生きる(『致知』2015年12月号)』―無限性に近づく西洋、無限性を畏れる日本
2015年12月14日

『安保法制、次は核と憲法だ!/「南京」と堕ちたユネスコ・国連/家族の復権(『正論』2015年12月号)』


正論2015年12月号正論2015年12月号

日本工業新聞社 2015-10-31

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 日本人は自分を捨てて多角的にものを見る習性を強いられてきた。例の激動の70年、他者に負けなければ生きていけない国だった。中国も韓国も動き出さなかった時代に近代日本はスタートし、欧米という鏡に自分を映して、自画像をたえず検証しながら、一歩ずつ歩むしかなかった。専断的に抑えこんでくる相手、自分の思い通りにはいかない相手を師表として仰ぎ見て生きるという矛盾に耐えた。
(西尾幹二「戦争史観の転換―日本はどのように「侵略」されたのか」)
 『からごころ』の中心テーマは、日本文化の自己喪失と見えるものが、実は日本文化の本質でもある、という逆説なのですが、それがさっきの、なぜ日本文学を読むべきなのかという話につながる。そこに、西洋の文明と格闘して、自己喪失の危ういせとぎわで、それを自分のものにしてきたというプロセス、日本文化の神髄が詰まっているからだ、ということなんですね。
(長谷川三千子、小川榮太郎「日本語が「終わる」時代に」)
 《参考記事》
 山本七平『存亡の条件』―日本に「対立概念」を持ち込むと日本が崩壊するかもしれない
 安田元久監修『歴史教育と歴史学』―二項対立を乗り越える日本人の知恵
 加茂利男他『現代政治学(有斐閣アルマ)』―日本の政治は2大政党制よりも多党制がいいと思う
 齋藤純一『公共性』―二項「対立」のアメリカ、二項「混合」の日本
 武田修三郎『デミングの組織論―「関係知」時代の幕開け』―日米はともにもう一度苦境に陥るかもしれない
 義江彰夫『神仏習合』―神仏習合は日本的な二項「混合」の象徴

 山本七平が著書『存亡の条件』の中で、セム系民族の物事の見方の本質は「二項対立」だと書いていた。1という事象は1で完結せず、必ず相対立する2つの事象を内包する。その2つの事象をとらえることで、全体を1として把握するという。これは西欧にも見られる傾向である。例えば、男には女を対置する。西欧の言語に男性名詞と女性名詞があるのは、二項対立的な発想の表れである。また、保守に対しては革新を対置する。二項対立的な把握は、政治システムとして、イギリスやアメリカのように二大政党制を選択することが多い。

 二項対立的把握の国家は、一方の事象を強く信じ、もう一方の事象を排斥しようとする。第2次世界大戦の連合国と枢軸国の対立は、自由とファシズムの対立であった。しかし、一方が他方を打ち破った後でも、残った方が全体を表すわけではない。必ず、新たな対立項が出現する。第2次世界大戦の世界は米ソ冷戦に突入したが、これは資本主義と社会主義の争いであった。冷戦は、ソ連の自己崩壊によって終結した。すると今度は、イスラーム過激派が現れてアメリカを脅かしている。アメリカとイスラーム過激派の対立は、国家と非国家の対立と言える。

 ここまでは日本人でも理解できる。だが、日本人に理解できないのは、二項対立的把握をする人たちは、表面上は対立しているように見せかけて、裏では対立する双方に”賭ける”ことでリスクヘッジをしている、ということである。例を挙げると、日露戦争はユダヤ人が日本の戦費を負担してくれたおかげで日本が勝てたと言われる。当時、日本の第1回戦時国債約1,000万ポンドの半分を引き受けたのが、ユダヤ系財閥クーン・ローブ商会の頭取ジェイコブ・シフである。

 シフはドイツのフランクフルト出身で、同郷のユダヤ人財閥・ロスチャイルド家のアメリカにおけるパートナーであった。ユダヤ人は、ロシア帝国がユダヤ人を迫害していたから日本に同情的だったと説明されるが、実情はもっと複雑である。当時、ロスチャイルド家はロシアのバクー油田(カスピ海油田)に莫大な投資をしていた。この状態で公然と日本を支援すれば、ロシア政府から制裁を受けてしまう。そこで、パートナーのシフに日本国債を買わせて、二股をかけたのである。ロスチャイルド家は、日露戦争でどちらが勝っても儲けることができるようになっていたわけだ。

 そのユダヤ人の国家をパレスチナに作ろうとしたのがイギリスである。イギリスは第1次世界大戦末期の1917年に、バルフォア宣言を出してイスラエル建国を約束した。だがその2年前には、フサイン・マクマホン協定によって、ユダヤ人と対立するアラブ人がパレスチナに居住することを認めている。これがイギリスの2枚舌外交である(アラブ地域の分割を決定した1916年のサイクス・ピコ協定と合わせて、3枚舌外交とも呼ばれる)。イギリスの2枚舌外交は、つい最近も顔を出した。イギリスはアメリカの同盟国でありながら、中国が主導するAIIBに対し、アメリカの反対を振り切って参加を決めた。これにはアメリカも、イギリスに対する憤りを隠さなかった。

 アメリカは二項対立の一方に強く固執する国であるかのように見える。だが、そのアメリカでさえ、二項対立の双方に上手に賭けていることがある。中東では、イスラーム・スンニ派のサウジアラビアを同盟国とする一方、フセイン政権崩壊後のイラクではスンニ派と対立するシーア派の政権を樹立した。アメリカは自ら対立をあおり、陰でその双方に賭けることで、どちらが勝っても自分が儲かる状況を作り出す。これは一種のマッチポンプである。もしかすると、冷戦期にはソ連に対し、現在はイスラーム過激派に対し、裏で何らかの支援をしていた可能性がある。これは世界的に見れば非常に不都合な事実だが、アメリカにとっては日常なのかもしれない。

 二項対立的な発想をし、自身は一方を標榜しながら、裏では対立する双方に賭けるような行動は、大国に特有のものである。アメリカ、ドイツ(現在のヨーロッパの大国の地位は、イギリスからドイツに移行した)はもちろんのこと、ロシアや中国もそういう発想をしているのではないかと思われる(排他的なイデオロギーに染まっているように見える両国が、果たして本当に二項対立的な発想をしているのかどうかは、引き続き調査したい)。では、これらの大国に挟まれた大多数の小国は、どのような行動を取るべきだろうか?

 最もリスクが高いのは、二項対立の一方に過度に肩入れしてしまうことである。大国は、自国の影響範囲を拡大するために、小国を自国の陣営に引き込もうとする。言い換えれば、同盟関係を構築する。小国は、大国のように二項対立の双方に賭けてリスクヘッジできるほど、体力も資本力もない。すると、大国から誘われるがまま、二項対立の一方の色に染まってしまう。だが、仮に自国が味方についた大国が敗れれば、それはそのまま自国の死を意味する。

 一方で、二項対立の双方に賭けていた大国は、自分が敗れても生き残ることができる。ソ連が崩壊してもロシアはなくならなかった。それどころか、最近ではむしろ強いロシアが復活しつつある。中国でも共産主義政権が崩壊すれば、国家が分裂する可能性はある。しかし、一時的に小国が乱立することはあっても、それが常態化することはないだろう。中国は王朝が何度も交代しているが、中国自体が消滅したことはないし、これからもないと思われる。

 日本の歴史を振り返ると、日本はずっと中国に肩入れしてきた。江戸時代には、中国王朝の理想は、中国本家よりも日本の方がよく体現しているとさえ言われた。山本七平は、著書『日本人と中国人』の中で、日本が日中戦争で南京を攻撃したのも、1972年に田中角栄が土下座外交をして中国と国交を回復したのも、同じ理屈だと述べた(以前の記事「イザヤ・ベンダサン(山本七平)『日本人と中国人』―「南京を総攻撃するも中国に土下座するも同じ」、他」を参照)。

 日本は中国を理想としてきたが、中国の現実がその理想からかけ離れていることを知った時、どういう反応をするか?1つは、日本こそが理想であると主張し、中国の現実を正すという目的で中国を攻撃することである。これが南京総攻撃であった。もう1つは、中国の現実を現実として受け止めて、それに追従することである。田中角栄の土下座外交がそれだ。つまり、どちらの行動も、中国という理想を絶対視しすぎるがために生じたという点では共通しているのである。

 日本は、二項対立の一方に過度に肩入れすると、過剰反応によって自滅する傾向があるようだ。現在の日本は、アメリカを理想としている。だが、日本がアメリカの自由、平等、基本的人権、民主主義、資本主義の現実に失望すれば、アメリカを攻撃する可能性もゼロではない気がする。

 日本のような小国が、大国同士の争いの中で自国を保全するにはどうすればよいか?そのヒントが冒頭の引用文に表れていると思う。つまり、自己を捨てて「空(くう)」になる。二項対立のどちらに味方するとも明らかにせず、双方に賭けるという積極的な姿勢も見せず、双方のいいところだけを受動的に摂取しながら消極的に、しかししたたかに生きながらえる。この態度は外国からすると非常に解りにくい。日本の外交は曖昧だとしばしば批判される。だが、日本が態度を明らかにするのは、二項対立の渦中に身を投じることであり、小国としては自殺行為なのである。

 現在は日米関係を重視している日本も、中国を敬遠してばかりはいられない。かつて民主党が日米中正三角形構想を持ち出して笑いものになったことがあったが、今になって考えてみると、あながち間違いではないように思える。民主党が間違っていたのは、正三角形と言いながら、アメリカとの関係をないがしろにし、中国にべったりくっついていたことである。

 日本の外交態度をより「空」に近づけるには、日本の周辺にある小国からも学び続けることが重要となる。日本の周辺にある小国も、日本と同じように、二項対立の双方から理想を取り込んで、曖昧な態度を形成している。その曖昧さを日本が取り込めば、二項対立の双方からの流れに加えて、小国からの流れも獲得できることになる。こうして、諸外国にとってはますます解りにくい日本の外交態度が形成される。「日本人は一体何を考えているのか解らない」という批判は、日本の戦略が上手く行っていることの証左である。

 日本は何だかんだ言っても、韓国との関係を断ち切ることはできない。最近の韓国は中国に傾倒しているようだが、実は中国は(北朝鮮ではなく)韓国を使って朝鮮半島の統一を狙っているのではないかと疑っている。もちろん、そんなことをすれば韓国の同盟国であるアメリカが黙っていない。しかし、中国がアメリカを黙らせるほどの経済力と軍事力を身につけたらどうだろうか?

 中国は、韓国と密接な関係にある日本を切り離すために、歴史問題を使って中韓合同で日本を攻撃する。そして、「韓国は日本にとって必要ない」と日本人に思わせる。この取り組みはかなり高い成果を上げている。『週刊ダイヤモンド』のアンケートによると、韓国人は今でも日本人をある程度必要としているのに対し、大部分の日本人は韓国人を必要ではないと考えていることが明らかになっている。こうなると中韓の思う壺である。

 仮に、中国の力で朝鮮半島が統一された場合、日本には共産主義の脅威が間近に迫ることを意味する。しかも、韓国の資金で北朝鮮の核兵器が強化されるようなことがあれば、日本にとって最悪である(ここに、沖縄県の独立と中国による沖縄の囲い込みが加わると、さらに最悪な事態となる)。逆に、日本にとって最高のシナリオは、アメリカの力を借りて、韓国を中心に朝鮮半島を統一し、共産主義のラインを北西へ退行させることである。だが、これは相当難しいだろう。最低でも、現状の南北分裂状態を維持できるよう、韓国との関係を冷ましてはならない。

  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like