プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2016年01月04日

『リーダーシップの神髄(『致知』2016年1月号)』―リーダーはもっと読書をして机上の空論を作ればいい


致知2016年1月号リーダーシップの神髄 致知2016年1月号

致知出版社 2016-1


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 子供は体だけでなく頭も心もすごいスピードで成長していきます。ところがその成長に親がついていけないために、自分の考えを押しつけてしまう現象が多く見られます。これは何もスポーツの世界だけでなく、受験の世界でも同じような傾向があるようです。(中略)子供への無二の愛情は、親にとってエネルギーの発生源になります。その素晴らしいエネルギーを正しい方向に注ぐためには、親自身も学ぶ姿勢をしっかりと持つことが必要なのです。
(杉山芙紗子「一流選手を育てる親の共通項」)
 最近思うのは、続けることが大事だということです。アスリートは毎日トレーニングしなかったら最高のパフォーマンスを発揮できないように、経営者も心を鍛えるトレーニングを毎日やらないといけないと思います。
(早川宗徳「経営はトップの人間性で決まる」)
 そして、何よりも大事なのは指導者自身が輝いていること。輝いているためには指導者が常に勉強している。そうすると、子供たちもイキイキとしてきますよ。
(藤重佳久、岩倉真紀子「吹奏楽×ダンス 世界の頂点への道」)
 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。2016年1本目の記事では、『致知』2016年1月号より、「人の上に立つ者は、自分が従えている人よりもはるかに多くのことを学習しなければならない」ことを教えてくれる3つの記事を紹介したいと思う。

 リーダーは部下より優秀でなければならない(ただし、全知全能になる必要はない)。学習を怠るリーダーは、知識や能力のレベルが向上しない。一方、現場で必死になっている部下は経験値がどんどん上がり、やがてリーダーのレベルを脅かすようになる。それに耐えられないリーダーは、自分の考えを部下に押しつけることで、部下のレベルを相対的に引き下げる。部下に対して高圧的な態度をとるリーダーは、自分の地位を失うことに対する不安を抱えていると言える。

 リーダーが学習をするためにはどうすればよいだろうか?最も手っ取り早い方法は、現場に行くことである。現場には最新の情報が転がっている。部下はその情報を吸収して成長する。だが、リーダーがあまりに頻繁に現場へ足を運ぶのも、実は考えものだと思う。現場の仕事は部下の仕事である。リーダーは、現場から一歩身を引いて、たくさんの部下の仕事ぶりを俯瞰的に眺めるためにリーダーの職にある。それなのに、リーダーが率先して現場に行ってしまったら、部下の仕事を取り上げることと同じだ。プレイングマネジャーが陥っている罠がこれである。

 もちろん、リーダーは顧客のニーズを知るために重要顧客と会い、部下の仕事ぶりを知るために現場に潜り込むことは重要である。かつて、"Management By Wandering About(MBWA)"(歩き回る経営)という言葉が流行ったことがあるが、これは経営陣があまりに現場を知らないので、少しは現場に出よというメッセージであった。逆に言えば、現場に行くのは少しでよい。現場に行きすぎるのはよくない。部下からは「うちのリーダーは現場のことを全然知らない」と不満が出るかもしれない。だが、リーダーが現場を知らないのは当然なのである。

 リーダーは現場に行かずにどのように学習をするのだろうか?それはやはり、読書に尽きると思う。私の印象にすぎないかもしれないが、優れたリーダーや経営者は大変な読書家であることが多い。蔵書が5,000冊、1万冊に至るリーダーもいる。忙しいリーダーに本を読む時間はなさそうに思えるけれども、彼らは隙間時間を活用して上手に読書をする。1日10時間働く人でも、仕事終わりにあと3時間頑張って読書をすれば、1日1冊のペースで読書することも可能である。これを30年続けると、365冊/年×30年=10,950冊となり、1万冊を超える。

 では、リーダーはどのような分野の本を読めばよいだろうか?現在の仕事に直接関連する書籍は、あまり重要ではない。そういう情報は、いくら本で勉強しても、部下が現場で培った知識にはかなわない。下手に本で知識をかじると、部下に底の浅さを見透かされてバカにされる。それよりも、仕事とは直接関係がなく、今すぐ必要になるとは思えない分野の本を読んだ方がよい。もっと端的に言えば、一般教養(リベラルアーツ)に関する書籍がよい。

 仕事に直結する書籍は、知識の効率的な伝達を目的としているため、シンプルさ、解りやすさが追求されている。言い方は悪いが、頭が弱くても理解できる。ところが、一般教養の本はそうはいかない。1行理解するのに1時間かかることもある。どうして自分はこんなことも理解できないのだろうと絶望する。しかし、そうやって言葉の意味を1つずつ丁寧に拾い、仕入れた知識を順番に結びつけていく訓練を重ねることで、頭は強くなっていくものである。高企業のマネジメント層は、読書量が多く、かつ一般教養に関する書籍が多いのではないかと私は勝手に仮説を立てている。マネジメント層の蔵書と企業の業績の関係を調べた研究があったらきっと面白い。

 リーダーが現場にあまり行かず読書ばかりしていると、部下はおそらく「うちの上司は机上の空論ばかり考えている」と指摘するに違いない。「机上の空論を立てる暇があったら、走りながら考えるべきだ」と主張する人もいる。しかし、私に言わせれば、立ち止まっているという時間的余裕の中ですら考えることができない人が、走りながらという時間的制約の中で考えることなど不可能である。走りながら考えればよいと言う人は、実は考えることを放棄している。

 リーダーは現場から一歩身を引いて、じっくりと机上の空論を作ることを恐れてはならない。たまに観察する現場から入手した断片的な顧客や部下の情報から想像を膨らませて、仕事の全体像をイメージする。そこからあるべき姿をデザインし、それを実現するための課題を特定する。あるべき姿のデザインや課題の特定には、読書で培った一般教養の知識を総動員する。それによってリーダーは、部下が現場で反射的に思いつく課題解決策よりも、はるかに深い洞察に基づく解決策を考案しなければならない。解決策が見つかったら現場にフィードバックし、現場の意見を聞きながら、現場が実行しやすい形に改善する。これがリーダーの仕事である。

 読書量という点に限れば、私の前職(組織・人材開発コンサルティング&教育研修のベンチャー)の社長は合格点だった。社長は大変な読書家であった。オフィスには、社長の本が1,000冊ほど並んでいた。おそらくそれは蔵書の一部で、社長の自宅にはたくさんの書物が保管されていたのだろう。社長が若い頃は、仕事中おもむろに1冊の本を取り出して、パラパラと5分ぐらい読んだ後に「この本のことはもう解った」と言って本をしまったという都市伝説があったくらいだ。

 だが、前職の業績はずっと芳しくなかった。その理由の1つは、社長が現場に行かなさすぎたことである。いや、現場に行っていたのだが、あまりに形式的だった。社長は一応営業活動もしていたものの、表敬訪問ばかりであった。会社案内だけを渡してさっさと帰ってきてしまうのである。顧客のニーズを知りたければ、やはり商談を自らの手で完結させなければならない。

 もう1つは、自分が作った机上の空論を頑固に押し通そうとしたことである。社長はことあるごとに「今年は売上高2億円を目指す」と言っていたが、具体策について聞いても、社長が何を考えているのか、ついに解らなかった。また、社長が研修サービスの開発に関与すると、本の知識を並べ立てるばかりで、現実に即した柔軟性がなかった。そもそも、本と同じ内容であれば、顧客は研修など受けずにその本を買えばよいだけの話である。リーダーはもっと読書をして机上の空論を作るべしと書いたが、リーダーのこの機能はこのように容易に弱みに転ずるので要注意だ。

 最後に。私はコンサルタントの端くれなのだが、コンサルタントは企業経営者が相手の仕事である。その企業経営者は前述のように非常にたくさんの本を読んでいるのだから、コンサルタントはそれ以上にもっと学習しなければならない。何とか1日1冊のペースで読みたいと思うものの、今のところ3日で2冊ぐらいのペースにとどまっている。今日の記事を書きながら、自分に甘えてはいけないと喝を入れ直したところだ。私に対して、「あなたは本を読みすぎで現場のことが解っていない」と批判する人ももちろんいる。しかし、どうせ現場の知識は顧客企業にかなわないのだから、それとは違う次元で勝負したい。つまり、圧倒的な読書量をバックに仕事をしたいと思う。

 (読書量を増やすとしても、やはり限界はある。私が一生のうちに読むことができる冊数は決まっている。あと30年元気に仕事ができるとして、1日1冊のペースで読めば前述の通り1万冊である。この1万冊の枠を有効に使わなければならない。若い時は自分の好きな本を好きなように読めばいいと考えていた。しかし、1万冊”しか”枠がないのであれば話は別である。読んでも無駄な本は極力排除して、有益な本を選択しなければならない)

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