プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2016年03月09日

『コーポレートガバナンス(DHBR2016年3月号)』―長期志向であるためには短期志向でなければならない、他


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 03 月号 [雑誌] (【特集】コーポレートガバナンス)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 03 月号 [雑誌] (【特集】コーポレートガバナンス)

ダイヤモンド社 2016-02-10

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○【リスク管理】不祥事への備えはあるか 企業が正しく謝罪する方法(モーリス・E・シュバイツァー、アリソン・ウッド・ブルックス、アダム・D・ガリンスキー)
 第一に、私たち人間は申し訳ないと謝るのを先送りしたい、避けたいと考え、そのための理由(言い訳)を探そうとする傾向がある。謝罪するのは気分が悪く、リスクを伴うように感じられる。権威や面子が失われ、序列が変わり、少なくとも一時的に相手方へ借りをつくってしまう。
 不祥事を起こしたタカタや旭化成建材の経営トップがなかなか謝罪しなかったり、膨れ上がった新国立競技場の建設コストをめぐって誰も責任を取ろうとしなかったりするのを見ると、日本組織のトップは謝罪が下手くそだと思ってしまう。一方で、榎本博明氏が『「すみません」の国』(日本経済新聞出版社、2012年)という本を書いているように、何かあるとすぐに「すみません」と謝ってしまうのもまた日本人である。歴史問題をめぐる謝罪外交はまさにその典型だろう。

「すみません」の国 (日経プレミアシリーズ) (日経プレミアシリーズ 157)「すみません」の国 (日経プレミアシリーズ) (日経プレミアシリーズ 157)
榎本 博明

日本経済新聞出版社 2012-04-10

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 普通の人はすぐに謝るのに、組織のトップになると簡単には謝らなくなるのはなぜだろうか?以前の記事「山本七平『帝王学―「貞観政要」の読み方』―階層社会における「下剋上」と「下問」」で書いたように、日本の組織では下の階層は上の階層から命令を受けることによって、かえって自由に振る舞うことができる。逆に、上の階層はその分自由を制限されるのだが、下の階層がやったことに対しては責任を取らなければならない。だから、組織論で言うところの権限・責任一致の原則ではなく、権限<責任の原則が成立する。他方、下の階層の人間には、自分は自由に行動して、何かあれば上の階層に責任を取ってもらえばよいという気楽さがある。

 だから、下の階層の人間は、何か問題を起こすと簡単に謝ることができる。なぜならば、表面上は謝罪を口にするものの、実際に責任を取るのは上の階層の人間だと解っているからである。そういう意味では、謝罪は一種のパフォーマンスにすぎず、実ははなはだ無責任なのだ。一方、組織のトップには、責任を転嫁できる上の人間がいない。責任は自分が全て背負い込む必要がある。しかし、今までずっと上の人間に責任を押しつけることでやり過ごしてきた人間が、いきなり全責任を抱えるのは無理だ。だから、日本企業の経営トップは上手に謝罪できない。

 ここで、歴史問題をめぐる謝罪外交についても考えてみたい。政治家は日本の政治のトップである。トップであるのに、彼らが中韓の圧力に屈して安易な謝罪を繰り返してきたのはなぜだろか?これまで本ブログでは、日本組織内の多重構造だけではなく、日本全体も個人―家族―学校―企業・NPO―市場―社会―行政―立法―天皇(―神?)という多重構造だと書いてきた。この構図が正しいとすれば、政治家の上には天皇が存在する。実は、政治家の謝罪は、天皇への責任転嫁なのではないだろうか?現在の天皇は、政治的な発言ができない。それをいいことに、天皇に恥をかかせることでその場しのぎをしてきたのではないかという仮説が成立する。

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○企業も投資家を選ぶ時代 【インタビュー】「伊藤レポート」の真意とは(伊藤邦雄)
 その結果、平均の資本コストは7.2%であることが判明しました。つまり、7.3%以上のROEがあれば、海外の機関投資家は日本企業に投資をすることになります。したがって、そういうメッセージでもよかったのですが、半端な数字もインパクトに欠けるのと記憶に残りにくいので、整数「八」を採用し、8%のROEというメッセージにすることにしたのです。
 2014年夏、経済産業省のプロジェクト「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」の最終報告書が発表された。座長の伊藤邦雄氏にちなんで「伊藤レポート」と呼ばれる。日本の株式市場が海外からもっと資金を呼び込むには、ROEが8%以上必要とされた点が注目された。企業はタダで資金を調達することはできない。金融機関からの借入金には利息を支払う。また、株式市場からの投資に対しては配当を支払い、キャピタルゲインの増加という形で株主に報いる必要がある。これらのコストを資本コストと呼ぶ。

 企業は資本コストを上回る利益を上げなければならないという話は、何も今に始まったことではない。何十年も昔から常識である。少なくとも、ピーター・ドラッカーの『乱気流時代の経営』(ダイヤモンド社、1996年。原著は1980年)にはこう書かれている。
 イギリスの経済学者アルフレッド・マーシャルの初期の研究以来、すなわち今から100年前のころから、市場経済においては、事業継続のためのコストは資金コストを超えることが明らかにされている。したがって、投入した資金から、利子率以下の利益しか生み出すことのできない企業は、赤字であり、未来を収奪していることになる。
「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)
P・F. ドラッカー Peter F. Drucker 上田 惇生

ダイヤモンド社 1996-06

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 だが、資本コストを上回るだけの利益では、現状維持にしかならない。企業は既存製品・サービスの陳腐化に対抗し、また新たな収益源を確保するために投資を行う必要がある。その投資は、過去の利益から供給される。この点を指して、ドラッカーは、「企業には利益は存在ない。利益は将来のコストである」と指摘した。企業が本当に上げるべき利益とは、「将来必要な投資+資本コスト」である。だから、ROEは8%では足りない。ROEではないが、稲盛和夫氏は「どんな業種でも経常利益率が10%以上なければ経営とは呼べない」と述べている。

 《2016年3月13日追記》
 ペプシコのインドラ・ヌーイCEOは、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2016年4月号のインタビュー記事で次のように語っている。
 企業として、やるべきことは2つです。売上げの成長率を1桁台半ばに維持すること、最終利益をそれ以上のペースで伸ばすことです。当社の場合、製品ラインの拡充によって売上拡大を維持しています。と同時に「期待の新星」、つまり特定の国やセグメントで売上げを大幅に伸ばせる2、3のヒット製品を常に模索しています。
(インドラ・ヌーイ「【インタビュー】CEOが語るデザイン思考をもとにした企業変革 ペプシコ:戦略にユーザー体験を」)
ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 04 月号 [雑誌] (デザイン思考の進化)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 04 月号 [雑誌] (デザイン思考の進化)

ダイヤモンド社 2016-03-10

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 全ての大企業がそうだとは言わないが、多くの企業、特に株式市場から強いプレッシャーを受けている欧米の大企業は、売上高と利益を持続的に成長させることを目標としている。それが株主に報いる方法であるからだけでなく、利益を将来のイノベーションの原資とし、常に新陳代謝を図りながら組織を進化させるのに必要であると理解しているからである。大企業がそのような戦略的行動をとっているのに、中小企業がいつまでも節税に明け暮れて利益を自ら放棄しているようでは、大企業との差は広がる一方ではないだろうか?

 私は中小企業診断士なので中小企業のことしか解らないのだが、中小企業の中には、法人税を支払うことにひどく抵抗感を感じているところが少なくない。法人税をギリギリ支払わなくてもよい水準に経常利益を着地させる。つまり、経常利益をほぼゼロにする。損益計算書において、営業利益ベースの赤字を営業外収益で埋め合わせ、売上高経常利益率が0.0何パーセントと低く抑えられている企業は、たいてい税理士が何らかの操作を行っている。

 当然、利益がほぼゼロなのだから、内部留保が蓄積されず、設備投資もできない。そういう企業に限って、補助金が出ると我先に飛びつく。事業計画を見せてもらっても、単に古い設備のリプレースにすぎないということがよくある。そういう設備投資は、過去の利益によってカバーすべきである。補助金は、金融機関による通常の審査は通りにくいものの、アイデアはよく練られており、ヒットすれば面白い成長事業になりそうな計画に対してリスクマネーを供給するものである。決して、2流企業の延命が目的ではない。しばしばこの点が誤解されているような気がする。

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○長期的視野に立った会社運営のために アクティビストを出し抜く方法(ビル・ジョージ、ジェイ・W・ローシュ)
 結局のところ、アクティビストに対する最大の防衛は、自社が公表した目標を達成する安定した業績である。それがない会社は弱みをさらすことになる。(中略)P&Gが外からの攻撃にもろかったのは、マクドナルドの下、2009~2012年の業績がぱっとしなかったからだ。
 アクティビストとは「もの言う株主」である。本論文によると、業績目標の未達を繰り返す企業がアクティビストに狙われやすいという。だとすれば、日本企業はかなり危ういかもしれない。

 野村総合研究所が東証一部の100銘柄に含まれる製造業54社の中期計画の達成度合いを調べたところ、目標を達成したのはわずか9%、未達が59%であった(野村総合研究所「中期経営計画に潜む落とし穴と処方箋 グローバル製造業における成功・失敗例を踏まえて」)。やや古い記事になるが、日経ヴェリタスが時価総額の上位企業から中期経営計画を発表している100社を抽出し、実績を検証すると、4割の企業が目標を達成できていないことが判明した(日経ヴェリタス「中期計画4割守れず 上場会社100社「公約」の信頼度」2008年2月17日)。

 もっとも、中期経営計画は不確定要素が多いため、未達が多くなるのだろう(それを嫌うアメリカ企業の多くは中期経営計画を発表していない)。同じような検証を、四半期予想や通期予想と実績のズレでやってみたら、興味深い結果が導かれるかもしれない。とにかく、業績目標の未達はアクティビストがつけ入るスキを生じさせる。彼らは「御社は業績が芳しくないですよね?我々は業績を向上させる方策を持っています」と経営陣に迫るわけだ。

 アクティビストを遠ざける第一の方法は、引用文にあるように、業績目標を達成して安定した経営を続けることである。もう1つは、「戦略をシンプルにしすぎない」ことではないかと考える。これは、巷で流行っている戦略論のトレンドとは逆行すると思われるかもしれない。戦略をシンプルにすると、事業、製品、資産、組織、人材をパズルのように分解したり組み替えたりすることが容易になる。そして、そのような操作によって株価を釣り上げるのは、アクティビストの得意技だ。「この事業を2つに分割せよ」、「あの資産を売却せよ」というのは彼らの決まり文句である。

 だから、経営者は自社がモジュールの組み合わせで成り立っているのではなく、全体が1つのシステムとして相互作用しながら機能していると示すことが重要である。これは、(自戒を込めて言うが、)コンサルタントに対する防衛策にもなる。コンサルタントは戦略をシンプルにせよと助言する(私も言ったことがある)。戦略がシンプルでなければ、社員がそれを理解できないなどと、もっともらしいことを言う。しかし、戦略をシンプルにするのは、企業のためというよりも、短期間でアウトプットを出さなければならないコンサルタント側の都合であると言った方がよい。

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○競争優位の源泉となる コーポレートガバナンスの3つの原則(グーハン・サブラマニアン)
 おそらく今日のコーポレートガバナンスの最大の欠陥は、短期的業績を重視しすぎることだ。1株当たり利益のわずかな目標未達が株価急落を招きかねないと知っているため、経営陣は四半期利益の目標達成に向け絶え間ないプレッシャーを感じて消耗している。
 しばしば、短期志向の経営は長期志向の経営を犠牲にする、と言われる。だが、果たして本当にそうなのか、ちょっと考えてみたい。アメリカでは、短期志向の経営、別の言い方をすれば財務諸表の数字を偏重する経営に対する反省として、バランス・スコア・カード(BSC)が考案された。企業が追求すべき目標を、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点という4つの視点で定義する。そして、学習と成長に関する目標⇒業務プロセスに関する目標⇒顧客に関する目標⇒財務に関する目標という因果関係で目標が達成される。

 BSCは、財務の視点という短期的な視点に、業務プロセスの視点、学習と成長の視点といった長期の視点を持ち込んだという点で、「バランス」が取れていると説明される。しかし、先ほどの因果関係を素直に紐解けば、短期的に達成されるのは学習と成長、業務プロセスに関する目標であり、その結果として財務の目標が達成される。つまり、財務の目標の方が長期的なのである。短期的な目標を犠牲にして長期的な目標を達成すべきとも言われるが、所詮それは美辞麗句にすぎず、短期的な目標を達成しなければ、長期的な目標も達成できない。

 BSCの説明を使わなくても、長期の利益は短期の利益の積み重ねであることは自明である。短期志向が問題になるのは、過剰なリストラや事業再編、資産売却など、一時的な利益増にしかならず、組織能力の減耗につながる場合である。そうでなければ、短期的な数字を追求することには十分な意味がある。将来的にもっと大きな仕事を行うために、目先の利益を蓄積することは全くもって正当である。仮に、短期投資家がそれを解った上で経営陣に圧力をかけるならば、彼らの声にも耳を傾けなければならない。「短期投資家を否定するなど、天につばを吐く行為とすらいえる」(松本大「自分の弱さを受け入れ、打ち勝つ仕組みをつくる 上場企業の覚悟」)。

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