プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2016年03月11日

『「慰安婦」戦、いまだ止まず/台湾は独立へ向かうのか/家族の「逆襲」(『正論』2016年3月号)』―朝鮮半島の4つのシナリオ、他


正論2016年3月号正論2016年3月号

日本工業新聞社 2016-02-01

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 (1)
 その呉さんとの対談で何度も議論になったのは、韓国人は自己相対化ができないということである。一方、日本人は自己を相対化する。たとえば何かで他と対立したとき、いったんは自分を捨てて、違う見方があるのではないか、自分が間違ってはいないかと多角的に考える訓練を積んでいる。自分を小さくして外の物事を相対化して見る。それが、宇宙の中の個としての人間の在り方だと考えるのが日本人である。
(西尾幹二「日韓合意、早くも到来した悪夢」)
 日本人には、以前の記事「山本七平『「空気」の研究』―他者との距離感が解らなくなっている日本人」で書いたように、「臨在感的把握」という悪癖があるので、日本人の方が韓国人よりも相対的な見方が上手いかどうかはよく解らない。ただ、日本や韓国のような小国(経済的には大国かもしれないが、国際政治におけるプレゼンスや地政学的な位置から見れば小国である)は、相対的な見方を身につけなければ、大国同士の対立に飲み込まれてしまう危険がある。

 以前の記事「千野境子『日本はASEANとどう付き合うか―米中攻防時代の新戦略』―日本はASEANの「ちゃんぽん戦略」に学ぶことができる」でも書いたが、現在の世界の大国はアメリカ、ロシア、ドイツ、中国の4か国である。大国は、自国の価値観を絶対化し、それを他国にも強要することで、自らに有利な世界を構築しようとする。アメリカは自由主義、民主主義、資本主義の教祖であるし、中国は未だ共産主義は死んでいないと言って権威主義を振りかざす。とりわけ自国と正反対の価値観を持つ国とは激しく対立する。これを二項対立的発想と呼ぶ。

 だが、大国は実に狡猾なところがあって、表面上は対立しながら、裏でこっそり相手を利するという複雑な外交を展開する。すると、対立がより激化するので、軍事産業などは恩恵を享受して国家が成長する。こういうのをマッチポンプと言う。アメリカは中東の盟友サウジアラビアに武器を輸出しているが、同国内のスンニ派過激派組織にその武器が渡るのを知っていた。その結果、ISの台頭を許した。アメリカがアルカイダ系組織から押収した文書には、ISがアラブの春を利用して勢力を拡大する戦略が書かれていた。それなのに、アメリカはアラブの春を支援した。大国は、対立する双方に賭けることで、結果的にどちらに転んでも有利になるよう仕組んでいる。

 日本や韓国のような小国は、そういう複雑な外交を展開するだけの十分な資源がない。だから、何もしなければ、支持基盤の拡大を目指す大国に従って、二項対立の一方に強く肩入れすることになる。しかし、仮に自国の陣営が破れたら、その国は死亡する。これに対して、大国は両方に賭けているため、簡単には倒れない。ソ連崩壊後、周辺の小国は大変な道をたどったが、ロシアは今や再び大国に返り咲くまでになっていることは、これによってある程度説明できる。

 二項対立の双方に賭けることで一定の相対化を図っている大国とは異なり、二項対立の一方に肩入れしている小国は、自国の立場が国家アイデンティティの全てであるから、国を挙げて対立項の小国と血みどろの抗争を繰り広げる。中東では、イスラエルとアラブ諸国、シーア派とスンニ派の戦闘が止まらない(山本七平は、二項対立的な相対化は、もともとセム系民族が得意とすることだと指摘した。セム系民族とはアラブ人やユダヤ人のことである。それなのに、彼らが自己を絶対化してなぜ激しい二項対立に陥ってしまうのかについては、引き続き探ってみたい)。


 《2016年5月5日追記》
 筑波大学教授の古田博司氏は、『正論』2016年6月号の中で、韓国と北朝鮮について次のように述べていた。二項対立の一方に過度に肩入れした小国の運命について示唆的である。
 元々この国々の意味は何だったのだろうか。バッファー(緩衝国)として生きることを周辺の諸大国から期待され促された存在ではなかったか。大国が直接ぶつかり合わないようにバッファーとしてあった。ところがその意味を両者ともに急速に失いつつある。バッファー自体があまりにも騒ぎまくっているからである。泥仕合でなく、もし本当の合戦をするならば、多連装ロケット・ランチャーを十台も集めて撃ち合いをすれば、数分でソウルと平壌は壊滅してしまうことだろう。
(古田博司「南北の泥仕合こそ黙戦の象徴」〔『正論』2016年6月号〕)
正論2016年6月号正論2016年6月号

日本工業新聞社 2016-04-28

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 だから、小国が生き残る道は、対立する大国の双方に解りやすくいい顔をし(一方にいい顔をして、裏でもう一方にもいい顔をするという策略的なことはできない)、大国の表面から観察される双方の優れた点を上手に摂取して、「ちゃんぽん」にすることである。ASEAN諸国、特にベトナムはこの戦略に長けていると思う。日本も、一応日米同盟によってアメリカ陣営に属するが、歴史的には中国に負うところが非常に大きいことから、中国との関係も無碍にしない。そういう意味では、冒頭の引用文にあるように、韓国に比べて相対化ができているのかもしれない。

 では、韓国はどうだろうか?韓国は、経済的には1997年のアジア通貨危機の後、IMFの管理下に入って経済再生が図られた結果、アメリカ的な資本主義体制となっている。すなわち、非常に限られた大企業だけが業績を伸ばし、格差の拡大が深刻化しているという点でアメリカと共通する。一方、政治に目を向けると、386世代(1990年代に30代(3)で、1980年代(8)に大学生で学生運動に参加した、1960年代(6)生まれの世代)の影響で左傾化が進んでいる。近年の韓国政府が急速に中国にすり寄っているのはそのためである。

 この点だけを見れば、韓国も資本主義と社会主義のちゃんぽんができているように映る。だが、経済はアメリカ、政治は中国という解りやすい図式は、逆に社会を分裂させるリスクをはらんでいるように思える。私が考えるちゃんぽんとは、日本が資本主義と社会主義の間を取って「日本株式会社」や「護送船団方式」なるものを生み出し、一党独裁と多党制(二大政党制を含む)の間を取って「自民党の派閥政治」なるものを生み出すことである(以前の記事「『願いに生きる(『致知』2016年3月号)』―私のブレブレの人材マネジメント論を反省した、他」を参照)。

 つまり、元々の対立項のどちらでもない何かを、日本の社会的文脈に合わせて構築することである。それを社会のあらゆる分野で蓄積することが、大国に対する防御壁となる。大国から見れば、自国の価値観と共通するようでありながら、異質な部分も多く、強引に味方に引っ張り込みにくい。端的に言えば、「何を考えているのか解らない」。これは、日本の外交姿勢が曖昧であることを批判する言葉とされるが、私は日本の外交に対する称賛の言葉だと解釈している。

 (2)大高未貴「挺対協の背信、そして旧社会党との関係」では、女優の東丘いずひ氏が挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)の尹貞玉氏と意気投合し、韓国での慰安婦慰霊碑建立に向けて日本国内で署名・募金活動を行ったにもかかわらず、ある日を境に突然尹貞玉氏が豹変し、署名や募金の受け取りを拒否したというエピソードが紹介されている。
 あれは確か1991年、衆議院議員会館の1階の応接室で尹氏と私、大杉実生氏(元政治家の秘書で東丘さんの署名活動に協力していた)と3人で、打ち合わせをしていた時のことです。いきなり土井たか子氏の秘書の女性が現れ、我々の目の前で尹氏に”いつものです。活動費に使ってください”と封筒に入った札束を渡したのです。5万や10万の薄っぺらいものではなく、厚みがあったのでおそらく数十万から数百万単位だったと思います。
 ちなみに社会党はソ連時代の共産党から多額の政治資金援助を受けたことが判明している。挺対協と社会党の異様な動きが活発化した91年前後は共産陣営が大きく揺らいでいた時期だった。(中略)ソ連という大スポンサーの崩壊で、新たな金づるとして日本にターゲット絞った(ママ)のではないか?
 彼ら(挺対協)のミッションは日韓分断工作であろう。慰安婦問題が解決してしまったら困るのだ。いずれ南北統一の暁には、日本から数兆円に及ぶ賠償金をスムーズに引き出すため、日本人の朝鮮半島に対する贖罪意識を醸成させておく必要がある。
 これらの文章をつなぎ合わせて考えてみると、まず大きな流れとして戦後のソ連による赤化(共産主義化)がある。ソ連は中国、朝鮮半島、そして日本を共産主義化して、アジアを真っ赤にすることを狙っていた(当然、アメリカはそれを非常に恐れたので朝鮮戦争を戦ったし、何十年もの冷戦を経験しなければならなかった)。GHQにはソ連のスパイがいたし(どうやらアメリカは気づいていたらしい)、北海道に共産主義組織を作っていたことも知られている。

 ソ連共産党は、各国の共産党に活動費を出し、各国での革命を期待した。革命には大義名分が必要である。社会主義は理論的には労働者階級が資本家階級を打倒することを理想としているが、現実的にはファシズムという悪に対する勝利を建国の物語に織り込んでいる。ソ連の建国はナチス・ドイツよりも前だが、ナチスに勝利したことが社会主義の正統性を証明したとされている。中国や朝鮮など、日本のファシズムの犠牲となった国も、そうした正統化を行うのは容易だ。では、ファシズムの震源地である日本に自己否定させるにはどうすればよいか?

 そこで目をつけたのが慰安婦問題である。ナチスが殺害したユダヤ人600万人という数字には遠く及ばないものの、日本が20万人の女性の人権を蹂躙したというストーリーは相当のインパクトがある。ソ連からの活動費で影響力を増した日本社会党は、日本を共産主義化するために、韓国の挺対協に注目した。単なる民間組織にすぎなかった挺対協を、韓国政府とパイプを持つ政治的組織とし、日本への圧力をかけさせた。折しも、ソ連が崩壊して各国共産党の資金が苦しくなったため、日本からの賠償金を新たな財源にしようという目論見も生じたに違いない。

 左派にとって誤算だったのは、(1)とも関連するが、日本が不完全ながらも「ちゃんぽん戦略」の国家であったことだろう。すなわち、慰安婦問題は全く存在しないとも、慰安婦問題でアジアに多大なる迷惑をかけたとも言わず、「20万人という数字は大げさだが、慰安婦に関する資料・証言は一応存在するし、慰安婦として苦痛を味わった女性は一定数いるのだろう」ということで大多数の国民が納得している(『正論』と『世界』を購読している私は両極端の主張を目にするものの、右であれ左であれそれを真面目に信じる日本人は少数派ではないかと考える)。慰安婦問題のみならず、日本は万事こんな具合なので、完全に共産主義化することはなかった。

 朝鮮半島が今後どうなるかに関して、私のような一介のブロガーの意見など取るに足りないものだが、大きく分けると4つのシナリオが考えられる。1つは、韓国も北朝鮮も小国としての「ちゃんぽん戦略」を発揮して、資本主義と社会主義のどちらにも完全にはなびかない、新しい統一国家を形成する、というものである。ただこれは、時折左派が掲げるピュアな理想よりもはるかに遠い理想郷かもしれない。現実問題として、朝鮮半島が統一されるとすれば、資本主義国として統一されるか、社会主義国として統一されるかのどちらかである。

 朝鮮半島が資本主義国として独立した場合、日本から見れば共産主義のラインが北緯38度よりも北に後退するので、望ましいように思える。だが、アメリカがこれを嫌うだろう。なぜならば、朝鮮半島の新しい資本主義国家は中国とまともに対峙せざるを得ず、アメリカの負担が著しく増すことを意味するからだ。アメリカは日本にも、相応の負担増を迫るに違いない。

 逆に、朝鮮半島が社会主義国として独立した場合、日本にとっては最悪である。日本に対しては、中国大陸と朝鮮半島の双方から、共産主義化の波が迫ることになる(そうなればおそらく、沖縄は独立して中国の傘下に入るだろう。また、台湾も中国に統合されるに違いない)。さらに、万が一韓国の資本が北朝鮮の核に流れ込むようなことがあれば、朝鮮半島に巨大な核保有国が誕生する。現在の北朝鮮の核実験やミサイル発射に手をこまねいている中国が、こんな巨大な核保有国をコントロールできるのか?という問題はあるが、ここでは省く。

 だから、日本とアメリカにとって望ましいのは、現状維持という最後のシナリオである。朝鮮半島が南北に分かれている間は、アメリカ対中国という大国間の対立を、韓国対北朝鮮という小国同士の対立に希薄することができる。もっとも、これは日本とアメリカの視点に立った見方であり、韓国や北朝鮮の人たちの利害を全く考慮しない乱暴な話であることは否定できない。両国の視点から見て最も望ましいのは、南北宥和によって、かつて統一されていた頃の歴史の上に新たな国家を再構築するという最初のシナリオ以外にないのだが、相当ないばらの道である。


 《2016年5月5日追記》
 東京基督教大学教授で救う会会長の西岡力氏は、『正論』2016年6月号の中で、朝鮮半島のシナリオについて次のように予想している。
 我が国と東アジア全体の自由民主主義勢力にとって最善のシナリオは、韓国と北朝鮮住民たちが主導する自由統一だ。最悪のシナリオは、金正恩が戦争やテロをしかけて大きな被害が出ることだ。次悪、あるいは長期的に見ると最悪とも言えるシナリオは、中国主導で金正恩政権が倒され、親中政権が北朝鮮地域にでき、韓国でも米国との同盟を破棄して中国と結ぼうという勢力が政権をとり、中国の影響下に入った半島全体が「核を持つ反日国家」となることだ。
(西岡力「北の崩壊はもはや秒読みだが・・・ 「反日核武装国家」出現という半島危機備えよ」)
正論2016年6月号正論2016年6月号

日本工業新聞社 2016-04-28

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