プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2016年05月06日

中央支部国際部セミナー「ここがポイント!中小企業の海外展開―海外案件経験診断士からのメッセージ」に参加してきた


ペルー・マチュピチュ

 (※)ペルーのマチュピチュの写真。プレゼンターの中に、ペルーで仕事をしたことがあるという方がいらっしゃったというただそれだけの理由で選んでみた。

 《お知らせ》
 2005年5月5日から開始したブログは、いよいよ12年目に突入しました。
 いつも読んでくださる皆様に感謝申し上げますとともに、
 今後も変わらぬご愛顧をどうぞよろしくお願いいたします。


 私は城北支部の国際部に所属しているのだが、城西支部の中小企業診断士の先生から紹介されて、中央支部の国際部セミナーに参加するという、訳の解らない(?)ことをしてきた。参加を許可してくださった中央支部国際部の皆様、ありがとうございます。

 中央支部は(一社)東京都中小企業診断士協会の6支部の中で最も会員数が多い。城北支部はつい最近会員数が400名を超えたと喜んでいたところなのだけれども、中央支部の会員は約1,500名である。組織の大きさが違うだけに、セミナーの規模も全然違う。城北支部も先日「中小企業診断士による国際展開支援事例から、支援のあり方、診断士の役割を学ぶ」というセミナーを開催したが、この時の参加者は20名弱だった。それに対し、今回のセミナーは、参加者が50人ほどいたのではないだろうか?会場も、神谷町の機械振興会館という立派な建物であった。

 以下、セミナー内容のメモ書き。

 (1)総合商社出身の中小企業診断士が、タイで誘拐されたという体験をお話ししてくださった。その先生がタイに出張する時、現地法人の社員が車で空港へ迎えに来ることになっていた。ただ、彼はその社員の顔を事前に調べていなかった。さて、空港に到着したが、お迎えらしい車がいない。するとそこに、「○○さんですよね?」と男性2人組が日本語で話しかけてきた。彼はすっかりその2人がお迎えの社員だと思い、2人が運転する車に乗り込んだ。ところが、一向にバンコクのホテルに向かう気配がない。この時点で、この先生は自分が誘拐されたことを悟った。

 彼は2人に歯向かえば殺されると思ったので、2人と仲良くなるように努めた。「日本に行ったことはあるか?」と聞くと、「ある」と答える。「どこに行ったことがあるのか?」とさらに尋ねると、「新宿の歌舞伎町だ」と言う。「歌舞伎町ならオレもしょっちゅう行っているよ」などという話でひとしきり盛り上がった。その後、彼が「すまんが今はこれだけしか持っていないので、勘弁してくれないか?」と言ってなけなしの現金を2人に渡したら、苦笑しながら解放してくれたという。

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 加藤晃他『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』によると、世界では年間約3万件の誘拐事件が発生している。別のリスクマネジメントセミナーに参加した時に聞いた話だが、誘拐犯にとって誘拐はビジネスである。誘拐は絶対に失敗してはならない。だから、下準備を入念に行う。彼らはまず、お金持ちの人物にターゲットを絞る。次に、その人物の行動をつぶさに観察する。どのルートで通勤しているか?家の近所ではどの辺りが行動範囲となっているか?1人になることが多いのはどのような時か?などを徹底的に調べ上げる。そして、確実に誘拐するのである。

 誘拐されないために重要なのは、彼らのターゲットリストに載らないようにすることである。派手な格好をしない、時々通勤ルートを変える、1人での行動をできるだけ控えるなどの対策が有効である。それでも万が一誘拐されてしまったら、この先生のように誘拐犯と仲良くなるのも1つの手である。というのも、誘拐犯は金銭目的で誘拐しているのであって、決して殺すことが目的ではない。だから、彼らも誘拐した人物をあまり手荒に扱うことはない。この点を理解せずに、パニックになって暴れたりすると、誘拐犯が逆上して殺害に及ぶことがある。

 (2)外資系のIT企業を転々としている企業内診断士からは、「ジャパンエントリ」についての話があった。ジャパンエントリとは、海外企業が日本に進出することを指す。その先生の所属企業が日本市場に参入する際、どのような課題に直面し、それをどのように解決したのかという話を期待したのだが、実際には彼の30年近くに及ぶ経歴の紹介や、外国人とのつき合い方などの話が長々と続き、やや取り留めのない講演であったとの印象を受けた。

 この先生は、イスラエルのIT企業、インドのオフショア開発企業、イギリス系のベトナム開発会社などで勤務した経験がある。エリン・メイヤー『異文化理解力―相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』によると、イスラエルは比較的ハイコンテクストの文化である(ハイコンテクストである上に、ネガティブなフィードバックを直接的にするという。イスラエル人に慣れていない人は、あちこち飛躍した話をめちゃくちゃ厳しい口調で言われるような印象を受けるのだろう)。また、インド、ベトナムなどのアジア各国も、日本と同様にハイコンテクストである。

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 米英などのローコンテクストの国では、自分の主張を論理的かつ解りやすく説明することがよしとされる。一方、ハイコンテクストの国では、背景や文脈、他の事象との関係など、様々なテーマと結びつけて話をする。そのため、ローコンテクストの人にとっては非常に回りくどい。だが、エリン・メイヤーによれば、ハイコンテクスト同士のコミュニケーションが最も難しいという。安直な考え方だが、双方がともに理解しづらい複雑な話をするので、余計に話がややこしくなるのだろう。ハイコンテクスト同士が掛け合わさると、スーパーハイコンテクスト状態が生まれるらしい

 この先生(日本人)は、ハイコンテクストであるイスラエル人、インド人、ベトナム人と仕事をした期間が長い。ハイコンテクスト同士のコミュニケーションに慣れてしまった結果、セミナーの主催者から与えられたテーマに対して、ストレートにコンテンツを用意するという意識が薄れてしまったのかもしれない。この先生の話を聞きながら、私はベトナムでの生活が長い日本人のグループと一緒に仕事をした時のことを思い出していた。彼らはこちらから質問をしても答えがややピンボケであったり、逆に無関係な話を混ぜ込んできたりする。だから、質問すればするほど、話が解らなってしまうのである。これも一種のスーパーハイコンテクスト状態なのかもしれない。

 (3)ベトナムで独立開業した診断士からは、現地のベトナム情報を色々と知ることができた。ベトナム人は家族や友人との時間、自分の時間を非常に大切にするという(だから、残業などはもっての外だろう。これは他のASEANの国でもよく見られる傾向である)。会社から社員に何かプレゼントをする時には、家族で分け合うことができる物をあげると喜ばれる。家族は「お父さんは(こんなプレゼントをくれる)とてもいい会社で働いている」と思ってくれる。

 ベトナム人は日本人と違って、ほとんど本を読まない(VIETJO「年に1冊も本を読まないベトナム人、活字離れ進む」〔2015年4月13日〕という記事のことを思い出した)。また、大学の専攻通りの職種に就くことが多い。そのため、彼らの知識の幅は非常に狭い。そこで、知識や能力の幅を広げるために社内で勉強会や研修を開催すると、現地社員は喜んでくれるそうだ。

 (4)ペルー、アフガニスタン、シリア(今みたいに国家が崩壊する前の時期)で建設コンサルティングの仕事をしたという特異な経験を持つ診断士の話もあった。結局のところ、大切なのは日本人技術者と現地スタッフのコミュニケーションなのだという。「コミュニケーションが大切」と言うと、なぜか日本人は納得する。同じようなことは「コミュニケーション」を「人材育成」や「マネジメント」などに置き換えてもあてはまる。どうしてこんな抽象的な言葉で納得できるのか、私はいつも不思議なのだが、これもまた日本がハイコンテクストであることの証左なのだろう。

 私などは理解が遅いので、「具体的にどういうコミュニケーションをすればよいのか?」と聞きたくなるのだが、そういう時の反応はだいたい予想がつく。「それは個別のケースになってみないと解らない」というものである。日本人には特殊能力が備わっているせいか、具体的な問題に直面しても即興的に対応策を考え出すことができる(以前の記事「竹田恒泰『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』―よくも悪くも「何となく、何とかしてしまう」のが日本人」を参照)。

 ただ、それでは他人に伝える知識としては不十分であろう。仮に個別のケースによって対応が異なるならば、「○○の時は○○する。△△の時は△△する。□□の時は□□する・・・」というルールの束をはっきりさせる必要がある。ITの言葉を借りれば、「IF~THEN・・・文」の条件分岐を分厚くする必要がある。それが重層的であればあるほど、プロフェッショナルと呼ぶにふさわしい。

 (5)最後に、総合商社勤務で中国駐在経験が長い診断士の話があった。中国現地法人では、人事の他に総務、経理、リスクマネジメントなども担当したそうだ。話を単純化するために、中国現地法人の組織ピラミッドが、経営層、マネジャー層、新人・若手層の3層から成り立っているとする。新人・若手層の給与は月10万円、マネジャー層の給与は月15万円であるとしよう。

 ある時、新人を採用しようと面接したところ、同年代の社員よりもはるかに優秀な人がいたため、月15万円の給与で採用することにした。ところが、この先生によれば、「いい人だから採用したい」と言って給与を上げて採用すると失敗するという。なぜならば、月15万円もらえるのはマネジャー層であって、新人・若手層ではない。月10万円の新人・若手層に、月15万円の新人を1人入れると、その企業の賃金テーブルが崩れてしまう。すると、社内では不協和音が生じる

 ただ、これは極めて日本的な考え方だと感じた。仮にこれが欧米企業の中国現地法人であれば、月15万円に見合う能力を持つ人は、新人であってもマネジャー相当として採用し、彼らと同じような仕事を与えるに違いない。逆に、どんなに能力が高くても、新人は組織ピラミッドの一番下からスタートし、順番に昇進しなければならないというのは、日本的な年功序列制の発想である。おそらく、この先生が勤める総合商社は、今も年功序列的な人事制度であろうと推測される。

 ただ、私は個人的に、年功序列を肯定的に評価していることは最後につけ加えておく(以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―給与・採用に関する2つの提言案(前半)(後半)」、「『戦略人事(DHBR2015年12月号)』―アメリカ流人材マネジメントを日本流に修正する試案」などを参照)。年功序列を肯定するには、給与は仕事のパフォーマンスに対する対価であるという考えを大幅に捨て去る必要がある。給与は生活費としての性格が強いため、年齢を重ねて生活コストが上がれば、それと連動して給与も上げる必要がある(以前の記事「ドラッカー「顧客の創造」の意味に関する私的解釈」を参照)。

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