プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2016年05月20日

研修で受講者満足度を上げる細々とした方法をまとめておいた


研修・セミナー

 一応、私は経営コンサルタントということになっているのだが、前職のベンチャー企業はコンサルティング&教育研修の企業であり、在籍期間の半分弱は教育研修プログラムの企画・開発や研修の運営に携わった。また、独立後も何だかんだで研修やセミナーをやらせていただく機会が多い。そんな中で、研修などの受講者の満足度は、意外と小さなことで上下するのだと気づかされた(受講者満足度は、研修を継続受注できるか否かを大きく左右するので、我々にとっては大問題である)。今回は、満足度に影響を与える様々な工夫をつらつらと書いてみたいと思う。中には「こんなことで満足度が変わるのか?」と思われるような、意外なこともあるかもしれない。

 1.講義は1~1.5時間ごとに休憩を挟む
 人間の集中力はそれほど長く持たない。大学の講義は1コマ80分だが、授業が長いと感じたことがある方はたくさんいらっしゃるだろう。他人の話を聞き続けるのは、だいたい90分が限界である。だから、最低でも1.5時間ごとに休憩を入れないと、受講者アンケートで「もっと休憩がほしい」と書かれてしまう。理想は、1時間ごとにこまめに休憩をとることである。

 2.3~4人1グループによるグループワークを多用する
 1日中講義ばかりの研修よりも、グループワークがある研修の方が総じて満足度が高い。そして、ペアワークよりもグループワークの方がよい。これは、受講者が他のメンバーの様々な意見を聞くことができるからであろう。ただし、1グループの人数は4人が限度である。それ以上になると、ワークをさぼる人が出てくる。私が前職で担当した研修の中には、講義:グループワーク=2:8という極端な割合のものがあった。それでも受講者には十分満足していただくことができた。

 3.グループワーク時には講師が積極的に介入する
 グループワークの際には、講師がそれぞれのグループの中に入って、議論のファシリテーションをするとよい。ただし、答えを誘導するような行為は慎むべきである。グループワークは解のない演習であるから、それぞれのグループの意向を尊重し、グループオリジナルの見解が導かれるようにする。すると、講師が想定していた解答とは違う考え方をするグループも出てきて、講師側としても非常に勉強になる。一番やってはいけないのは、グループワークの時間になると講師が後ろの席に戻って、自分のパソコンで別の仕事をすることである。

 4.テキストは穴埋めを作るなど、受講者が書き込めるようにする
 私が研修の運営をしていて気づいたのは、大人になるとメモを取る習慣が激減するということだ。もちろん、熱心に講師の話を書き取っている受講者もいるが、大半は聞いているだけである。そして、残念ながら、聞いただけの話はまず記憶に残らない。そこで、初等教育のような手法だが、テキストに穴埋めの箇所を設けて、半ば強制的に講義内容をメモさせるよう促すとよい。手を動かすと、受講者は勉強した気持ちになって、満足度が上がるようである。

 5.講師のプレゼン資料を配布テキストにしない
 講師の中には、重要なことを視覚的に訴えるため、情報量を極力減らし、アニメーションを多用したパワーポイントをプレゼンで使用する方がいる。ここで問題となるのは、そのプレゼン資料をそのまま印刷して、配布テキストにしてしまうことである。配布資料は、受講者が研修後に持ち帰って、必要に応じて読み返すための資料である。ところが、プレゼン資料をそのまま印刷した配布資料は、情報がスカスカで受講者が中身を思い出すことができない。上記4で書いたように、大半の受講者は講師の話をメモしないのだからなおさらである。

 私の考えでは、受講者が後から読み返しても理解できる内容の配布資料を作り、それをプレゼンでも使用するべきである。ただし、上記4の繰り返しになるが、ところどころに穴埋め箇所を設ける必要がある。よって、配布用テキストとしては穴埋め用の空欄があるものを、プレゼン用資料としては穴埋めをアニメーションで埋めたものを用意するとよい。

 6.昼食には十分配慮する
 遠方からの参加者で、研修会場周辺の地理に詳しくない方がいらっしゃる場合には、昼食時に会場周辺の飲食店マップを渡してあげると非常に喜ばれる。会場近くに飲食店がたくさんある場合は問題ないのだが、会場によっては周辺に飲食店がほとんどないことがある(これは地方に限った話ではなく、東京でもありうる。例えば、神谷町の近辺には飲食店が思いの外少ない)。その場合は、必ず業者から弁当を調達するべきだ。しかも、その弁当代をケチってはならない。昼食がおいしくないと、午後は受講者のモチベーションが下がってしまうからだ。

 7.複数日研修では、1日目の終わりに懇親会を行う
 研修が複数日にわたる研修では、1日目の終わりに懇親会を行うとよい。当然、講師も参加する。講師と受講者、そして受講者同士の心理的距離がぐっと縮まる。すると、2日目以降のグループワークの雰囲気ががらりと変わる。受講者同士が打ち解けるために、初日の最初にアイスブレイクを行うことが多いが、懇親会の方がアイスブレイクよりもはるかに効果的である。逆に、研修最終日に懇親会を行うのは最悪だ。「もっと早く仲良くなっていればグループワークもやりやすかったのに」と言われるのがオチである。第一、最終日は受講者も早く帰りたがっている。

 8.遠方からの参加者がいる研修は金曜日に実施する
 研修を企画する段階で、東京での研修であっても、群馬、山梨、静岡といった遠方からの参加者を想定することがある。この場合は、実施日を金曜日にした方がよい(複数日研修の場合は、最終日を金曜日にする)。なぜならば、遠方から参加した人が金曜日は東京に泊まって、翌日ゆっくり東京観光をした後に、地元に帰ることができるからだ。たとえ金曜日の宿泊代が会社から支給されなくても、である。逆に、金曜日以外の平日に設定してしまうと、遠方からの参加者はその日のうちに帰らなければならず、それだけでも研修に参加するのがためらわれるそうだ。

 9.会場の室温に注意する
 会場が暑すぎても寒すぎても、受講者からクレームが出ることがある。グループワークが熱気を帯びてくると室温が上がる。よって、講師はファシリテーションと同時に室温にも気を配らなければならない。冬は寒すぎると受講者の集中力が切れてしまうため、どうしても室温を高めに設定しがちだが、あまりに高くすると今度は受講者が寝てしまう。この点も要注意である。

 10.アンケートは簡素なものにする
 研修終了後には、受講者満足度を把握するためにアンケートを取るのが一般的である。ただし、受講者は早く帰りたがっているので、アンケートはできるだけすぐに書き終わるものにしなければならない。個人的には、①研修には満足だったか?(5段階評価)、②よかった点・改善すべき点は何か?(自由記述)、③今後取り上げてほしいテーマは何か?(自由記述)の3つだけを尋ねれば十分であると思う。そうすれば、アンケート用紙はA5(A4ではない)1枚に収まる。

 以前、私がある公的機関の研修を受講した時、アンケート用紙がA3両面2枚、つまりA4換算すると8ページもあってげんなりした記憶がある。お役所らしく、受講者の属性情報や研修の各パートに対する満足度、講師の評価、研修が今後の仕事に役立つかどうかなどをこと細かく質問してくるのである。受講者の満足度を把握するためにアンケートを取っているのに、アンケートが原因で満足度が下がるというのではないかとこちらが心配になってしまったぐらいだ。

 最後に、アンケートを匿名式にするか記名式にするかという問題がある。私の経験上、匿名式にすると回収率が下がる。ただ、アンケートを書いてくださった方は、本当に書きたいことがあって書いているわけだから、より突っ込んだ内容の記述(その多くは批判)をしてくださる。逆に、記名式の場合はほぼ100%回収できる。しかし、研修や講師のことを悪く書くと、誰がそれを書いたかすぐにバレることに遠慮してしまうせいか、当たり障りのない感想が中心となる。

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