プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2016年06月06日

『迷走するアメリカ、日本を守るのは誰か/日本共産党「平和の党」の裏の顔(『正論』2016年6月号)』―左派だから非暴力というのは幻想


正論2016年6月号正論2016年6月号

日本工業新聞社 2016-04-28

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 5月号の正論は共産主義が特集だったが(以前の記事「『共産主義者は眠らせない/先制攻撃を可能にする(『正論』2016年5月号)』―保守のオヤジ臭さに耐えられない若者が心配だ、他」を参照)、内容的には6月号の方が共産主義(と日本共産党)を強く意識した内容になっていると感じた。共産党は、強固な護憲派であり、憲法9条の改正を絶対に認めない立場を貫いている。昨年、安倍政権が推し進めた安保法制にも明確に反対を唱え、「日本がアフリカへ戦争に行くようになる」、「徴兵制が復活する」などと国民を煽り立て、SEALDsのデモ活動を支援した。

 だが、共産党員が街中で政治ビラを配っているのを時々見かけると、彼らは皆高齢者である。しかも、年齢が相当上であるように見受けられる。若者がビラ配りをしているのを私は見たことがない。SEALDsの活動も、表向きは学生などの若者が多数参加していると言われるが、実際のところは中高年のプロ左派が運動の中心であるという指摘もある。以前の記事「小川榮太郎『約束の日 安倍晋三試論』―朝日新聞のネガキャンで潰された首相」でも触れたが、こういう人たちは若い時代を強烈な反米・反戦争の空気の中で過ごし、それがアイデンティティの中心をなしているため、今さら自己否定的な行動に出ることができないのだろう。

 共産党は戦争に反対する。単純に言い換えれば、暴力による問題解決を拒む。しかし、左派だから暴力を否定するというのは幻想にすぎない。確かに、インドではマハトマ・ガンディーが非暴力・不服従によって独立を成し遂げた。しかし、ガンディーが非暴力にこだわったのは左派だからではなく、ヒンドゥー教の古典である『バガヴァッドギーター』(ヒンドゥー教の『新約聖書』と言われる)などから続く「不殺生(アヒンサー)」の伝統思想を受け継いだためである。

 左派と非暴力は無関係である。左派も、目的を達成するためには暴力を用いる。沖縄では、普天間基地の辺野古移設に反対する市民団体が毎日座り込みを決め込んでいるが、中には警備隊と衝突する人もいる。福島原発事故の後処理には多くの人員が投入されており、随時求人広告が出ている。左派の中には、求人広告に応募して作業現場に潜り込んだ上で、「こんな危険な場所で作業をさせるのは人権侵害だ」と騒ぎ立てて作業を妨害する者がいると聞く。

 SEALDsなどのデモ運動は、憲法で集会・結社・表現の自由(21条)が認められているから合法ではある。しかし、仮に私が永田町近辺に住んでいて(そんなお金はないのだが・・・)、毎週末あの規模のデモ行進の大合唱を聞かされたら、ノイローゼになるかもしれない。声や音も十分暴力になりうる。刑法の暴行罪(208条)は、物理的に暴行を加えることだけが処罰の対象ではない。例えば、自動車のクラクションも、鳴らしすぎると暴行罪で訴えられる可能性がある。

 本号では、共産党が「平和の党」という仮面をかぶりながら、「暴力の党」という歴史を覆い隠していることが複数の論者によって指摘されている。元々、マルクス主義は「暴力革命」を目指すイデオロギーであった。その後、暴力に頼らない修正主義が現れたが、レーニンはこの修正主義を激しく批判した。したがって、マルクスの社会主義とは本質的に暴力的なのである(藤岡信勝「「共産党は暴力革命維持」政府見解の正当性 戦後の日本で「戦争をした」唯一の政党」)。

 日本の共産党は、ソ連のコミンテルン(戦後はコミンフォルム)の指示と資金援助によって動く。戦後、共産党はコミンフォルムの意向に従い、全国各地に革命組織を張りめぐらせ、武力闘争を引き起こす方針を確認した。徳田球一はこれを「51年綱領」という形でまとめた(山村明義「驚愕!「事実歪曲」「歴史書き換え」の技法」)。1952年には、東京、名古屋、大阪で共産党が大規模な暴動を起こした。これを「3大騒擾事件」と呼ぶ。しかし、暴動は3件にとどまらず、警察庁刑事部犯罪捜査課がまとめた記録によれば270件にも上る(安部南牛「朝鮮戦争参戦、旧通産省で火炎瓶実験、ヘロイン、売春、内部監視、秘密党員・・・ 日共、暗黒の地下活動」)。

 共産党の一連の暴力革命が契機となり、破防法(破壊活動防止法)が1952年に制定された。2016年3月22日、政府は日本共産党が破防法の調査対象であるとの答弁書を閣議決定した。これに対し、共産党は「憲法違反の破防法の適用になるようなことは、過去も現在も将来も一切ない。極めて厳重な抗議と撤回を求める」と猛反発した。確かに、一連の暴力革命は破防法施行前のことであり、法の不遡及に従えば、共産党は破防法に引っかかるような暴力行為はしていない。だが、共産党の綱領には今でもはっきりと「共産主義の実現を目指す」とある。そして、共産主義の本質が暴力革命である限り、破防法による調査対象となるのは当然である。

 共産党は、1950~1953年の朝鮮戦争の時も、日本を出撃拠点とするアメリカ軍を後方から攪乱したことが解っている。共産党は中国や北朝鮮からヘロインを入手し、売春婦を通じてアメリカ兵にヘロインを売っていた。売上は、共産党の資金源となった。1952年、国連の麻薬委員会でアメリカ代表が「中国共産党と北朝鮮は、日本共産党の活動資金を賄うため麻薬取引を行っている」と非難した。これに対してソ連代表は、「日本における麻薬密売はアメリカ兵が行っている」と反論した。実は、どちらの主張も正しいのである(安部南牛「朝鮮戦争参戦、旧通産省で火炎瓶実験、ヘロイン、売春、内部監視、秘密党員・・・ 日共、暗黒の地下活動」)。

神・人間の完全性・不完全性

 以前の記事「崎谷博征『医療ビジネスの闇―”病気産生”による経済支配の実態』―製薬業界を支配する「国家―企業複合体」」で用いた図を再掲する。唯一絶対の神を信じ、神に似せて作られた人間は完全な合理性を有するとする立場(右上の象限)は、共産主義や全体主義につながる。全ての人間が自由で平等であり、1人1人が全体を構成する個人であると同時に全体そのものであるという世界では、完全なる均質性が要求される。将来に向かって人間があらゆる方向に進歩する可能性を持つという考え方はない。全ての人間は、現在というこの1点に押しとどめられている。この現在という時間は、前後に長く伸びる時間軸から切り取られた有限の時間ではなく、現在という1点でありながら、時間軸を無限に覆い尽くしている。

 しかし、実際には先天的・後天的を問わず、人間には様々な違いがある。伝統的な保守派は、人間の多様性を前提として、1人1人の人間に対し、その人が有する性格・価値観・能力・資産などに応じた地位と役割を与えることを目指す(ピーター・ドラッカー『産業人の未来』を参照)。一方、前述のように均質で絶対で無限な集団を志向する立場は、2通りの反応を見せる。

 1つは、特定の属性を持つ集団のみを絶対視し、それ以外の集団を徹底的に排除することである。第2次世界大戦中に約600万人ものユダヤ人を殺害したナチス・ドイツはその最たる例である。社会主義も、資本家階級を打倒し、労働者が支配する世界の実現を目指す。最近で言えば、ISが該当する。彼らはクルアーンに従わない者を攻撃する。クルアーンを極度に重視するので歴史を重んじているのかと思いきや、各地で歴史的遺跡の破壊を繰り返している。これは、ISには現在という時間しか存在せず、歴史の概念がないためである。

 もう1つは、差異があったとしても、無理やり差異がないものとして扱うことである。古典的な共産主義者は1つ目の方法をとるのに対し、最近の共産主義者はこちら側に流れている。ジェンダーフリーはその一例だ。男性は絶対に子どもを産めるようにはならないのに、完全なる男女平等にこだわる。小学校では、体育の時間に男女を同じ部屋で着替えさせる。また、子どもたちに桃太郎の演劇をやらせる時は、役割分担という概念を否定して、全員に桃太郎を演じさせる。運動会でも、競争を通じて順位をつけるのは悪だとして、皆が手をつないで同時にゴールする。同性婚の合法化も、同性婚と一般の婚姻を法的に等価値とみなす動きの表れである。

 1つ目は明確に暴力を用いる。だが、2つ目も立派な暴力である。なぜなら、本当は個々人にもっと別の生き方あるかもしれないのに、彼らを強制的に平準化するからである。物理的な暴力は用いないかもしれないが、思想・制度・権力を用いて暴力を振るう。左派の人々は、ISなどの極右の行動を見て、自分は彼らとは全く違うと思っているかもしれない。しかし、私に言わせれば、極左と極右は根っこではつながっていて、どちらも暴力に頼るという点で共通している。実際、北朝鮮はISと協力して韓国でテロを計画しているという情報もあるくらいだ(西岡力「北の崩壊はもはや秒読みだが・・・ 「半日核武装国家」出現という半島危機に備えよ」)。

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