プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2016年05月31日

「MSCマレーシア・ステータス」の概要(「マレーシアにおけるICT分野での投資・ビジネス機会セミナー」より)


マレーシア ペトロナスツインタワー

 (※)マレーシアの「ペトロナスツインタワー」。日本の建設会社ハザマがタワー1(左)を、韓国のサムスン物産建設部門がタワー2(右)を建設した。サムスン物産が建築を急いだせいか、タワー2には建築上の問題が発生した。最終的にはハザマの協力で解決したものの、「タワー2は傾いている」という噂が消えず、未だにタワー2のテナント入居率はタワー1を下回ると言われる。

 マレーシアでは、1996年にマハティール首相(当時)が国家プロジェクトとして「マルチメディア・スーパーコリドー(MSC)計画」を立ち上げ、自国をITハブにしていくべく、海外先進国から関連産業の誘致を積極的に行っている。「MSCマレーシア・ステータス」は、ICT企業ならびにICTを利用して各種サービスを提供する企業に対し、マレーシア政府により認定、付与されるものである。ワールドクラスのサービスの提供者であるという認証であると同時に、MSCマレーシアに規定された各種インセンティブ、権利や優遇策を受けることができる。

 「マレーシア・マルチメディア開発公社」は、MSCマレーシアを推進・実行するために設立された、マレーシア通信・マルチメディア省(日本の経済産業省と総務省の情報通信部門を足し合わせたようなもの)傘下の政府機関である。同公社が開催した「マレーシアにおけるICT分野での投資・ビジネス機会セミナー」で、MSCマレーシアの要件などの話を聞いてきた。

 <MSCマレーシア・ステータス適格要件>
 ①IT・マルチメディア関連の製品・サービスの提供者またはヘビー・ユーザーであること。
 ②多数の知識労働者を雇用すること。
 ③MSCマレーシアの発展に寄与することを示す明確な提案があること。
 ④MSCマレーシアの要件に適合する業務を目的とした、独立の法人を設立すること。
 ⑤MSCマレーシアが認定したサーバーシティないしサイバーセンターに活動拠点を持つこと。
 ⑥環境ガイドラインを遵守すること。

 <MSCマレーシアの10のギャランティー>
 ①ワールドクラスの物理インフラならびに情報インフラ。
 ②マレーシア人ならびに外国人知識労働者の無制限雇用。
 ③マレーシア資本要件を免除することにより、自由な企業所有形態。
 ④海外からの資本金導入ならびに海外からの借入れ自由。
 ⑤最高10年の100%法人税免除、または最高5年の投資減税。
  マルチメディア機器の輸入税免除。
 ⑥知的財産権の保護およびサイバー法。
 ⑦インターネットの検閲なし。
 ⑧グローバルに競争力のある通信料金。
 ⑨主要企業にはMSCマレーシア関連のインフラ・プロジェクトへの入札権。
 ⑩マルチメディア開発公社(MDEC)によるワンストップ・エージェンシーサポート。

 以下所感。ギャランティー②は非常に魅力的であると感じた。通常、新興国は経済成長のために積極的に海外から投資を呼びもうとするが、同時に自国の雇用を守り、技術水準を上げたいとも考える。よって、外国人雇用には厳しい規制がかかることが多い。例えば、ワーカーは全員自国民にせよ、知的労働者に占める外国人の割合を一定以下に抑えよ、最初はある程度外国人の知的労働者を雇用してもよいが、徐々にローカルスタッフに置き換えよ、といった規制である。インドネシアには、人事部長を外国人にしてはならないという変な(?)規定もある。なお、各国の詳しい規制は、JETROの「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」が参考になる。

 ギャランティー⑦については、逆に普段はインターネットの検閲をしているのかと突っ込みたくなった。国境なき記者団は、下図の通り、各国のインターネット検閲状況をレイティングしている(青:検閲なし、黄:多少検閲あり、赤:国境なき記者団の監視対象(厳しい検閲を実施)、黒:大変厳しい検閲を実施、Wikipedia「ネット検閲」より)。

インターネット検閲の状況(世界)
 
 ASEAN10か国に関して見てみると、
 黒:ベトナム、ミャンマー
 赤:タイ、マレーシア
 黄:シンガポール、ラオス、インドネシア
 青:ブルネイ、フィリピン、カンボジア

 となり、マレーシアはASEANの中で検閲が厳しい方の部類に入るようだ。

 ギャランティー⑧に関しては、マレーシア・マルチメディア開発公社の担当者も本音をこぼしていたが、マレーシアの通信コストは必ずしも安くない。JETRO「第22回アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較(2012年4月)」を基に、ブルネイを除くASEAN9か国に日本を加えた10か国のインターネット接続料金(ブロードバンド)の比較表を作成してみた。月額費用に関しては、下限金額と上限金額の両方が記載されている国(シンガポールなど)と、金額が1つしか記載されていない国(日本など)がある。後者については、グラフを作成をする上で便宜的に「月額費用(上限)」に記入しているが、実際には平均費用ととらえて構わないと思う(金額:ドル)。

ASEAN通信費比較(2012年)

 <インターネット接続料金(初期費用)>
 初期費用をグラフ化すると以下のようになる。ミャンマーが飛びぬけて高い。
ASEAN通信費比較(2012年)(初期費用)

 <インターネット接続料金(月額費用)>
 月額費用のグラフは次のようになる。棒グラフが宙に浮いている国は、上限額と下限額のデータがあった国である。通常の棒グラフの国は、金額が1つしか記載されていなかった国であり、平均費用を意味していると考えられる。こうして見ると、マレーシアのインターネット接続料金はASEANの中では高い方である。ただ、上記の表で補足したように、インターネット接続料金に関しては、国によって通信速度などの前提条件が異なるため、単純に金額だけを比較することが難しい。そのせいか、JETROも2013年5月以降の報告書ではこの金額を掲載しなくなった。
ASEAN通信費比較(2012年)(月額費用)

 現在のマレーシアは、通信インフラへ積極的に投資を行っているそうだ。現在、マレーシアからシンガポールを経由して日本へと至る通信ケーブルが敷かれているが、現在これに加えて、マレーシアと日本を直接結ぶ通信ケーブルを開発中であるという。さらに、マレーシアの西側についても、マレーシアからスリランカを経由してインドへと至る通信ケーブルの工事が進んでいる。これらの通信ケーブルが完成すれば、マレーシアの通信コストが下がることも期待できる。

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