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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2016年08月04日

【関東経済産業局主催説明会】「中小企業等経営強化法」、「経営力向上計画」について(メモ書き)


中小企業等経営強化法

 2016年7月1日より「中小企業等経営強化法」が施行された。本法の目的は、労働力人口の減少、企業間の国際的な競争の活発化などの経済社会情勢の変化に対応し、中小企業・小規模事業者・中堅企業の経営強化を図るため、事業所管大臣が事業分野ごとに指針を策定するとともに、当該取組を支援するための措置などを講ずることにある。具体的には、事業分野別に策定される指針に基づいて、自社の「経営力向上計画」を作成し、事業分野別の主務大臣の認定を受けると、固定資産税の軽減や金融支援などの特例措置を受けることができる。

 関東経済産業局が主催する説明会に参加してきたので、その時の内容を整理しておく。

 《受けられる特例措置》
 ①固定資産税の軽減
 2016年7月1日から2019年3月31日までに、生産性を高めるための機械装置を取得した場合、その翌年度から3年度分の固定資産税が1/2に半減される。

 <生産性を高めるための機械装置>
 (1)販売開始から10年以内のもの。
 (2)旧モデル比で生産性(単位時間あたりの生産量、精度、エネルギー効率など)が年平均1%以上向上するもの。
 (3)160万円以上の機械および装置であること。

 <優遇措置を受けるまでの流れ>
 (1)機械装置メーカーを通じて、工業会に対して「証明書」の発行を依頼する(証明書が発行されるまでには、数日~2か月ほどかかる)。
 (2)「経営力向上計画」(実質2枚)を作成し、「証明書」を添付して、自社の事業分野を所管する省庁の窓口に提出する(提出先が不明な場合は、中小企業庁のコールセンター(03-3501-1957)で確認するとよい)。
 (3)担当省庁が計画の内容を審査し、主務大臣名で認定する。認定までの標準処理期間は30日(計画に記載された事業分野が複数の省庁の所管にまたがる場合は45日)である。書類に瑕疵がなければ、おおよそこのぐらいの期間で認定される。ただし、公的機関に提出する書類は、誤字・脱字などがあるだけで突き返されので、慎重に作成すること。
 (4)計画の認定を受けたら、機械装置メーカーから機械装置を取得する。
 (5)機械装置を取得した年度の翌年度から3年間、固定資産税が1/2となる。取得した年度の固定資産税は1/2とはならない。

 <7月1日以降、既に機械装置を取得した場合の救済措置>
 (1)取得日から60日以内に「経営力向上計画」が受理されれば、優遇装置を受けられる。そのためには、取得日から60日以内に工業会から「証明書」を発行してもらい、瑕疵のない「経営力向上計画」を作成して提出する必要がある。

 <機械装置に関する注意点>
 (1)固定資産税の軽減を受けられるのは、「租特税法」の中小企業者および中小企業者である。すなわち、会社および資本または出資を有する法人であれば、資本金または出資の総額が1億円以下、資本または出資を有しない者であれば、従業員数1,000人以下の者が対象となる(通常の中小企業の定義とは異なる)。
 (2)「生産性向上設備投資促進税制」のA類型とは異なり、「最新モデル」要件はない
 (3)「生産性向上設備投資促進税制」のA類型では、機械および装置、器具および備品、工具、建物附属設備、建物、ソフトウェアが対象とされているが、「中小企業等経営強化法」では機械および装置のみが対象である。
 (4)「取得」した時点とは、納品された時点ではなく、検収された時点を指す。
 (5)中古品、設備の修繕は対象外である。
 (6)機械装置メーカーが新事業を開始した場合など、比較すべき旧モデルが全くない新製品の場合は、原則として同一メーカー内における類似製品との比較を行う。それでも難しい場合は、10年以内に販売されたことのみを要件とする。
 (7)自ら製作して固定資産計上する設備やオーダーメイド品も対象となる。ただし、その場合は、機械装置を製作・オーダーメイドした企業が、工業会に対して、当該機械装置が生産性を年平均1%以上向上させるものであることを証明する必要がある。したがって、通常よりも「証明書」の発行に時間がかかると思われる。
 (8)生産性指標については、単一の指標で年平均1%以上の向上が要求される。例えば、エネルギー効率が年平均0.5%向上し、単位時間あたり生産性が年平均0.5%向上するので、合計すれば年平均1%向上するなどと主張することはできない。
 (9)<優遇措置を受けるまでの流れ>では、「経営力向上計画」の認定を受けてから機械装置を取得する場合を説明したが、仮に機械装置を取得してから「経営力向上計画」を提出した場合、「経営力向上計画」に瑕疵があって審査が長引き、認定が年度をまたいでしまうと、固定資産税の減額期間が3年ではなく2年になるため、注意が必要である。
 【例】
 (ⅰ)通常の手続きをした場合=2016年8月に工業会に「証明書」を依頼し、9月に取得。9月に「経営力向上計画」を提出し、10月に認定。その後、機械装置を発注し、12月末に検収を完了。
 ⇒2017年1月(固定資産税上の年度は1月が起点)からの3年間、固定資産税が軽減される。
 (ⅱ)イレギュラーな手続きをした場合=2016年8月に工業会に「証明書」を依頼し、9月に取得。9月に「経営力向上計画」を提出したが、書類に瑕疵があり審査が長期化。その間、機械装置を発注し、12月末に検収を完了。最終的に、計画の認定を受けたのは2017年1月だった。
 ⇒2017年度は固定資産税の軽減措置が受けられず、2018年度、2019年度のみ1/2となる。
 (10)「経営力向上計画」の認定を受けているからと言って、必ず固定資産税の軽減措置が適用されるとは限らない。最終的には、所轄の税務署が判断することとなる

 《受けられる特例措置》
 ②各種金融支援
 説明会では、話がもっぱら①固定資産税の軽減に集中してしまったため、②各種金融支援については項目のみ列挙する。詳細は、それぞれの金融機関などにお問い合わせいただきたい。金融支援を希望する場合は、「経営力向上計画」を提出する前に、まずは金融機関などに相談する。なお、①固定資産税の軽減の場合と同様に、「経営力向上計画」の認定を受けたからと言って、必ず金融支援が受けられるとは限らない。金融機関などによる審査が行われる
 (1)商工中金による低利融資
 (2)中小企業信用保険法の特例
 (3)中小企業投資育成株式会社法の特例
 (4)日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
 (5)中小企業基盤整備機構による債務保証
 (6)食品流通構造改善促進機構による債務保証

 以下雑感。国の狙いは、設備投資の促進にあると考えられる。平成27年度の補正予算で実施された「ものづくり補助金」が、もっぱら設備投資を補助対象としていた流れを踏襲している。設備投資が増えればGDPに反映されるため、政府としては何が何でもGDPを増やしたいのだろう。ただ、思うに、現在の日本は未だデフレを脱却したとは言いがたい。デフレとは、簡単に言えば供給過剰、需要不足である。この状態で安直に設備投資を増やすと、供給過剰を加速させてしまう。需要サイドの手を打たないと、いつまで経ってもアベノミクスは成就しない。

 ただ、私の心配は杞憂に終わる可能性もある。固定資産税の税率は、東京都の場合1.4%である(2016年度)。1,000万円の機械装置に対しては14万円の税金がかかる。「経営力向上計画」が認定されると、固定資産税が半額の7万円になる。軽減措置は3年間続くから、合計で21万円の節税となる。ここで問題になるのは、「経営力向上計画」の作成に要する作業が21万円の節税に見合うかどうか?ということである。計画書は実質的に2枚とされているが、私などは、逆に自社の事業計画を2枚にまとめる方が難しいと思ってしまう。

 近年、経済産業省は、中小企業、とりわけ小規模事業者が補助金や助成金などを利用しやすくするために、申請書を簡素化する方向にある。ものづくり補助金や創業補助金などは、以前に比べて公募書類の枚数が減った。ところが、経済産業省や中小企業庁などが作成したフォーマット通りに書いて採択される企業はほとんどなくて、採択された企業はいずれも、10~20ページの事業計画を作成していると聞く。数百万~数千万単位のお金を動かそうとすれば、どうしてもそのぐらいのボリュームになるのが普通ではないかと考える。

 「経営力向上計画」は節税効果のみなので、ものづくり補助金などと単純比較はできないのだろうが、千万円単位の設備投資をするという点では共通している。その規模の設備投資が妥当であることを説明するには、やはり10~20ページぐらい必要である。だが、説明会で担当者が口を酸っぱくして言っていたのは、「経営力向上計画」は2枚にまとめてほしいということだった。審査でふるいにかける補助金とは異なり、できるだけ多くの企業を認定したいから、数をさばけるように枚数を減らしてくれというのが本音なのだろう。そうすると、企業側には、ただでさえ作成が大変な10~20ページ分の内容を2枚にまとめるという、高度な文書作成能力が要求される。

 先ほど1,000万円の設備投資の例を挙げたが、その場合の節税効果は21万円である。21万円を浮かせるためにこれだけの作業が必要なのであれば、私が社長ならやらない。書類作成に取り組むよりも、設備導入後の事業化に向けて尽力した方が得策であると思う。仮に、設備投資額を5,000万円に引き上げると、節税効果は105万円となる。そのぐらいの効果があれば、ようやく計画書を作ってもよいかもしれないと感じる。しかし、中小企業で5,000万円の設備投資ができるほどの体力があるところは、果たしてどのくらいあるだろうか?

 最後に、「経営力向上計画」を作成するにあたっては、「ローカルベンチマーク」を活用していただきたい、ということであった。ローカルベンチマークのツールを使用すると、自社の主要な財務指標を知ることができる。また、経営者のビジョン、ステークホルダーとの関係、事業を取り巻く環境、社内の管理体制という4つの視点で、非財務情報を入力する欄がある。元々、ローカルベンチマークは、「経営力向上計画」のために開発されたものというよりも、中小企業と金融機関などがより一層対話を深めるために開発されたという要素が強い。

 ただ、公開されているツールの中身を見ると、金融機関の審査担当者であれば、担当する顧客企業に関して絶対に知っておくべきことばかりであるように見えた。それを敢えて「ローカルベンチマーク」という形でツール化しなければならなかったということは、金融機関の審査担当者の目利き力が相当弱っていることの証左なのではないだろうか?

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