プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2016年09月16日

『「3分の2」後の政治課題/EUとユーロの行方―イギリス・ショックのあとで(『世界』2016年9月号)』―前原誠司氏はセンターライトと社会民主主義で混乱している、他


世界 2016年 09 月号 [雑誌]世界 2016年 09 月号 [雑誌]

岩波書店 2016-08-08

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 (1)
 近年、天皇の公務負担軽減が図られてきた事実が示すように、現在天皇が行っている「公務」なるものは過剰なほど多岐にわたっているが、そのかなりの部分は現天皇になって増加したのもである。しかし、それらの「公務」は天皇がなさねばならぬ公務、いや、行っていい公務なのであろうか。(中略)

 さてその上で天皇の「公務」をみたとき、「公的行為」を違憲とし「公務」を国事行為に限る説からは、天皇の「公務」は限定され、その多くは署名と押印であるから、「公務」は特に過負担を強いるものではない。また、「公的公務」を容認する説からも、「務」は国事行為だけで「公的行為」はいわば「おまけ」であるから、重い負担になるなら整理すればいいだけの話である。
(横田耕一「憲法からみた天皇の「公務」そして「生前退位」」)
 これを右派が読んだら怒り狂うのではないかと思う。著者によれば、天皇が現在されている公務の大半は、憲法に定めのない公的行為であり、いわば天皇が勝手になさっていることであるから、それが負担になるのであれば減らせばよい、ということになる。以前の記事「『天皇陛下「譲位の御意向」に思う/憲法改正の秋、他(『正論』2016年9月号)』―日本の安保法制は穴だらけ、他」でも書いたように、天皇皇后両陛下が国内外で様々なご公務をされているおかげで、日本は世界各国から高く評価されている。我々日本人は、その恩恵をこうむっており、諸外国で活動する際の助けとなっている。著者はその点を全く軽視している。

 この例えは適切ではないかもしれないが、現在の天皇に向かって公務を減らせばいいと言うのは、労働契約書に書かれていない職務を会社のためと思って一生懸命行った社員が、長めに有給休暇を取得したいと申し出た際に、「会社が命じたわけでもない業務を勝手にやって忙しくしただけなのだから、仕事量を減らして仕事を続ければよい」と上司が言うようなものである(なお、労働基準法では、社員が有給の取得を要求した場合、会社側がそれを変更することは原則としてできない)。左派はそういう管理職や企業を真っ先に批判するのではないだろうか?

 《2016年9月24日追記》
 『正論』2016年10月号を読んでいたら、麗澤大学の八木秀次教授が横田耕一氏の見解にあっさり賛同していて拍子抜けしてしまった。
 九州大学名誉教授の横田耕一氏も同様の考えを表明しているので紹介しておきたい。

 「もし『生前退位』が『公務』の過重負担から出ているならば、法的な解決策は簡単である。『国事行為』に公務を限定するか、『公的行為』を整理するかで話は終わる。もしそれらも負担が重いとするとき、皇室典範は天皇に『精神若しくは身体の重患又は重大な事故』があるならば皇室会議の議を経て『摂政』を置く制度を定めている。皇室典範制定時には、『生前退位』を認めない代わりに『重大な事故』として対処すればいいとの議論もされていたが、摂政設置は天皇に意思能力が欠けている場合の制度だとすれば(46回衆院内閣委員会:高辻正己内閣法制局長官)、意思能力が存在する場合の代行である『国事行為の臨時代行に関する法律』によって摂政就任順位に従って臨時代行を置けばいい。」(横田耕一「憲法からみた天皇の『公務』そして『生前退位』」、『世界』9月号)

 私は今でも横田氏と基本的認識を同じにする。
月刊正論 2016年 10月号 [雑誌]月刊正論 2016年 10月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2016-09-01

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 (2)
 前原:私は政治思想的にセンターライトだと言われますけれども、センターライトからセンターレフト、そしてリベラル層まで包容していく懐の広さ、深さが求められていると感じています。(中略)私は友人に、「我われが目指す内政の基本的な考え方は社会民主主義だ」と言っていました。でも、その社会民主主義が今日、さらに日本の状況にそくしたものへとブラッシュアップされた気がします。
(前原誠司、井出英策「”センター”への道は切り拓けるか」)
 自民党はセンターライトからセンターレフトまで広く政治家を揃えていることを国民は知っている(最近の右傾化は憂慮すべき事態ではあるが)。民進党(旧民主党)は、いくら前原氏がセンターライトからセンターレフトまで抱えていると主張しても、実際には「右の皮をかぶった左」であることが前回の政権時に暴露されてしまった。さらに、今回の参議院選挙で、あろうことか共産党と共闘したことにより、「右の皮をかぶった左」はいよいよ左の本性を現してきたように思える。

 ところで、編集部はこの文章を何の疑問もなく掲載したのだろうか?「社会民主主義」とは、「自由競争市場経済や資本主義経済により発生する、労働者の貧困、失業などの問題を、議会や政府の管理と介入により軽減・解決し、実質・実態としての政治的・経済的・社会的な公正や機会平等、人権保護、環境保護、国際協調と国際社会との共生を追求する」もので、社会主義の一形態である。福祉国家が多い北欧ではよく見られる。社会民主主義を採用する限り、センターライト(中道右派)はあり得ない。センターレフト(中道左派)でなければならない。こんな基本的なところで混乱しているようでは、民進党の政権復帰は遠いと感じた。

 (3)
 細切れの何十枚もの田んぼを合わせて計30ヘクタールを耕す日本の最大規模稲作経営が、1枚30ヘクタールの田んぼを計数千ヘクタールも耕す米国の稲作経営に勝てるはずがない。日本の主食用米と競合するカリフォルニア米中粒種の国際価格はトン745ドル(今年3月平均)、1ドル120円としてもトン8万9400円、60キロ当たり5364円だ。日本主食用米の平均生産費(2014年)、1万5416円の3分の1ほどだ。
(北林寿信「農業成長産業化という妄想―「安倍農政」が「ヨーロッパ型」農業から学ぶべきこと」)
 日本の主食で用いられているのは長粒米であるから、カリフォルニアの中粒米とは直接競合しないのだけれども、細かい点はさて置き、規模の面で日本の農業が米仏などに勝てない点については同意せざるを得ない。農林水産省は食糧自給率にこだわるが、肥料の原料を100%輸入に頼らなければならない時点で、実は日本の食糧自給率はほぼゼロである(以前の記事「『自分の花を咲かせる(『致知』2014年7月号)』―「F1種」というタネに潜む危険」を参照)。だから、どうやっても上げられない食糧自給率にこだわるよりも、農林水産物や肥料・飼料などの供給ルートを多角化しておき、政治・外交問題で一部が経たれても、他のルートを通じて安定的に供給が保たれるようにする方が得策である。これが食の安全保障というものである。

 それでも、まだ300万人ほどいる農家という票田を手放せない自民党は、農地の「多面的機能」を守るために農家を保護する(つまり、補助金を出す)と言っている。多面的機能とは、「国土の保全、水源の涵養(かんよう)、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承など、農村で農業生産活動が行われることにより生ずる、食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能」のことを指す(詳しくは農林水産省HPを参照)。

 私などは思考が単純なので、次のように考えてしまう。日本は農業では絶対に世界では勝てないから、差別化された高付加価値製品を作る一部の農家以外は全て淘汰される。しかし、そうなると、農地が放棄され、荒れ地が増える。街中の建物の窓ガラスが割れたまま放置されていると、管理人がいないと思われ、凶悪な犯罪が増えるという「割れ窓理論」の考え方を援用するならば、荒れ地が増えるにつれて、周辺で暮らす人々の生活や精神が蝕まれていく。地方の荒廃は、やがて都市部の荒廃につながる。これは国家として望ましい事態ではない。

 余談だが、今年6月に山形県小国町を訪れた際、東京にはない豊かな自然を見て、やっぱりこういう自然は残したいと素直に感じた(以前の記事「【観光?】「山形県小国町」視察旅行まとめ(1)【写真大量】(2)」を参照)。「多面的機能」などという解りにくい言葉を使わずに、農家の役割を「農作物を作る」ことから「国土を美しく保つ」ことへとシンプルに再定義すればよい。名称も農家ではなく、「国土保全家」などとする。これは一種の公共事業であるから、国からお金を出す。私は、自分が普段食べているものに補助金が投入されているのにはどうしても違和感を感じる。しかし、「国土を守る」という目的で公的資金が使われるのであれば納得がいく。

 《2016年11月16日追記》
 『世界』2016年12月号より、海外の農業政策について引用。
 農業の持つ社会的役割を正当に評価すべきです。ヨーロッパでは農家の所得補償を「公共財供給」や環境貢献への評価という明確な形で農業政策の中に入れ込んでいますし、実質的な不足払い政策(市場価格が基準を下回った場合に不足分を生産者に支払う価格補償)を行なっているアメリカの方が、よほど農業保護に力を入れています。(※太字下線は筆者)
(舟山康江「TPPが地域を破壊する―農政は本来の責務に立ち戻れ」)
世界 2016年 12 月号 [雑誌]世界 2016年 12 月号 [雑誌]

岩波書店 2016-11-08

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 (4)
 子供には、保育園のお友達で強い子にやられないようにあなたもいつもやりかえせるように準備しておきなさい、なんて教えませんよね。仲良くするんだよって教えますよね。だけど基地が来てこの状況をどう教えるのか、想像できません。

 ごまかして教えるのか・・・ちゃんと教えるのか・・・。あれは中国や韓国や北朝鮮がせめてきたらいつでもやり返せるように、毎日訓練しているんだよって教えるの?そうしたら子供は中国や韓国や北朝鮮の人たちは悪い人たちなんだと思います。(中略)

 この戸惑いは、同じ母親としてよく理解できた。私も子どもが小さいとき、「知らない人に気をつけなさい」と教えることが嫌で、どうすればよいかと戸惑った。知らない人に気をつけろ=人間は信用できない、ということだから。判断力のない子どもに人間不信を刷り込んでよいものか、と。
(島本慈子「国防と憲法に直面する人びと 宮古島への自衛隊配備をめぐって」)
 中国や韓国や北朝鮮の人たちは悪い人たちだと考えるのは間違っていると言うわけだが、それならば逆に聞きたい。こういう主張をする人たちは、中国や韓国や北朝鮮の人たちと仲良くするために何か具体的なアクションを起こしているだろうか?日本国内にいて、中国や韓国や北朝鮮の人たちは本当はいい人だと願っているだけではただの自慰行為である。

 中国、韓国、北朝鮮を一まとめにしている点に、日本を取り巻く軍事環境に対する理解不足が見て取れる。まず、韓国や北朝鮮が日本をいきなり攻撃する可能性は限りなく低い。彼らは日本の領土をほしがってはいない。韓国がほしいのは北朝鮮であり、北朝鮮がほしいのは韓国である。だから、考えられるのは、韓国と北朝鮮の間で戦争が勃発して(正確に言えば、1953年に停戦した朝鮮戦争が再開して)、韓国の同盟国であるアメリカが日本を前線基地とし、その日本に対して北朝鮮ないしは北朝鮮のバックにつく中国が攻撃をしてくる、というシナリオである。

 中国に関しては、日本と直接衝突する恐れがある。尖閣諸島の接続水域で中国が軍艦を航行させており、危険は迫っている。尖閣諸島は、中国が主張する第一列島線上に位置する重要な島々である。中国は元々、尖閣諸島付近で採掘できる石油が目的であった。しかし、近年は尖閣諸島を奪取して第一列島戦上に中国の軍事拠点を作り、さらに東にある第二列島線へと勢力を広げて日本を飲み込み、アメリカと直接対峙するつもりでいる。こうした事態を防ぐために、日本は第一列島線上に穴をあけてはならない。私は、北方領土と竹島問題については柔軟な解決策があり得ると考えているが、尖閣諸島に関しては、日本が絶対に譲ってはならないと思う。

 中国や韓国や北朝鮮の人たちは本当はいい人なのだと考えるのはもちろん問題である。しかし同時に、中国や韓国や北朝鮮の人たちは皆悪い人たちなのだと思い込むのもまた、リアリズムを全く欠いており問題である。親としては、何が起きているのかをできるだけ正確に教えること、これから何が起きうるのか可能性を示すこと、そして自分たちの常識が時には通用しない世界もあることを子どもに教えることが重要なのではないだろうか?

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