プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2017年02月04日

『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?


正論2017年2月号正論2017年2月号

日本工業新聞社 2016-12-28

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 加藤:デモの原因を作った朴氏に問題の根源があることは否めませんが、韓国の次期政権が北朝鮮寄りの政権になっていくと、反日に加えて北朝鮮に従順で親中国の政権が出来てしまう。それは日本の新たな脅威になる恐れがあると思うのです。

 呉:確かにこのままだと次の大統領は野党の文在寅(ムンジェイン)だと容易に想像がつきます。文在寅はもう強烈な親北朝鮮の政治家です。政策も親北朝鮮的な政策が採られ、そうなれば韓国はもう本当に大混乱に陥ることが避けられない。中国も後ろに控えていてそれをたくみに利用する―という光景が目に浮かびます。
(加藤達也、呉善花「言論弾圧の果てに・・・韓国の自由は死んだのか」)
 以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」で、北朝鮮が朴槿恵問題につけ込んで韓国を攻撃し、朝鮮半島を統一する可能性について触れた。引用文にあるように、もし韓国で親北朝鮮の大統領が誕生すれば、結果的には朝鮮半島に反日、親中の社会主義国家が建設されることになるのかもしれない。朝鮮半島問題を含めて混乱を極める世界情勢を前に、西部邁氏は「慌てるな、落ち着け、自国の保護に全精力を注げ」(西部邁「ファシスタたらんとした者」より)と日本人を鼓舞するが、残念ながら日本には自力で自国を防衛するだけの力がないと思われる。

 以前の記事「山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条』―日本組織の強みが弱みに転ずる時(1)(2)」で、日本社会は「(神?⇒)天皇⇒立法府⇒行政府⇒市場/社会⇒企業/NPO⇒学校⇒家庭⇒個人」と階層が積み重なる多重階層社会であると書いた。だが、このラフなスケッチに私は重要な要素を1つ加えるのを忘れていた。それは、神と同レベルに、「大国」という存在を位置づけることである。日本は常に、大国から影響力を受けることで存続を守ってきた。日本史の大半において、大国の位置にあったのは中国であった。明治維新後の日本においては、当時のヘゲモニーであるドイツやフランスなどが大国の位置を占めた。そして、戦後はアメリカが大国のポジションに収まっている。この伝統を今さら変えることは極めて困難である。

 朝鮮半島が社会主義国家として統一された時、その国家は資本主義国である日本と直接対峙することになる。朝鮮の新国家のバックには中国が、日本のバックにはアメリカがついている。ここで、単純に考えれば、日米同盟をより強固なものにして、朝鮮半島の社会主義国家からの脅威に備えるべきだという主張に至るであろう。しかし、私はこの考えは非常に危険だと感じる。

 本ブログでも何度か書いたが、大国は二項対立的な発想をする。つまり、危険だと解っていながらも常に対立関係に立ち、緊張を保つ。そして、大国は、周辺の小国を自国の味方に引き込み、勢力圏を拡大していく。しかし、大国の真の狙いは、大国同士が直接衝突して甚大な被害を出すのを防ぐために、双方の大国がお互いに囲い込んだ小国同士に代理戦争をさせることにある。中東はまさに、米露の代理戦争の舞台となっている。仮に日本が日米同盟を強固にするならば、中国も朝鮮半島の社会主義国との関係を強化し、かえって日本と朝鮮半島の社会主義国との紛争のリスクが高まるだろう。これは言うまでもなく、米中の代理戦争である。

 小国が、二項対立をする大国の一方に過度に肩入れするのは自殺行為である。そうではなく、(これも決して楽な道ではないのだが、)もう一方の大国の懐にも飛び込んでいくことが重要である。中国には「日本を攻撃すると中国にとって損になる」と思わせなければならない。そのためには、具体的には中国が主導するAIIBに日本が加盟したり、中国も交渉国として名を連ねているRCEPの交渉を日本が後押ししたりすることが必要であろう。RCEPの交渉を前進させるためには、アメリカにTPPに戻ってきてもらわなければならない。ここは日本の正念場である。そして、将来的にTPPとRCEPを連携させることができれば(FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏))、トランプ次期大統領が強く批判している中国の高関税問題は相当程度に解消する。

 中国は、朝鮮半島に新しく誕生した社会主義国家と一緒になって、歴史問題を執拗に取り上げることだろう。現に、南京事件と慰安婦問題をセットにした「アジアン・ホロコースト」なる言葉を中国と韓国が世界中にばら撒いているという(大高未貴「「慰安婦、南京=ホロコースト」のウソに終止符を」より)。中国などが歴史問題にこだわるのは、日本に自虐史観を植えつけるためである。そして、朝鮮半島の社会主義国家が(中国の支援を受けて)日本を攻撃し、日本人に「我が国はかつて、あなた方にひどいことをしました。我が国はとても悪い国です。だから、あなた方は我が国の領土を好きなように持って行って結構です」と言わせるためである。

 彼らには、いくら真実を主張しても通らない。中国などのプロパガンダを信じていた諸外国は、多少は認識の誤りを正すだろうが、肝心の中国はより一層プロパガンダに力を入れるに違いない。だから、歴史問題を処理するには、東アジアの外交で時折使われる「棚上げ」という技法を使うしかない。以前、韓国との間で「慰安婦問題の不可逆的解決」という合意がなされたが、これも一種の棚上げである。棚上げをするには何か条件が必要となるものの、あいにく私には妙案がない(日本のAIIB加盟が条件となる?)。また、棚上げもおそらく一時的なものに留まるであろう。慰安婦をめぐる韓国との合意も、大統領が代われば反故にされると言われている。それでも、中国の攻撃の手を緩めるために、韓国と同様の棚上げを検討するのは無価値ではないと思う。

 つまり、日本が生き残る道は、依然としてアメリカを神と同レベルに位置づけ、アメリカの(軍事的、経済的)影響力を受けつつも、同時に中国の(経済的)影響力も受けるという選択を取ることである。これを私は本ブログの中で「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる。ちゃんぽん戦略は、対立する双方の大国の顔色を常にうかがい、キョロキョロする日和見主義的な戦略である。

 このように書くとみっともない戦略のように思う方もいるだろう。しかし、小国が大国の圧倒的なパワーに押しつぶされずに生き残るには、これ以外に有効な手だてが思いつかない。事実、世界の小国はちゃんぽん戦略を駆使してしたたかに生き延びている。ベトナムはロシアとの関係が深いが、同時にかつて戦争で自国をめちゃくちゃにしたアメリカとも合同軍事演習を行う仲である。フィリピンでは、ドゥテルテ大統領がアメリカをこき下ろし、中国にべったり寄り添う姿勢を見せたものの、結局は本鞘に収まった。賢い小国は大国を手玉に取っている。

 朝鮮半島をめぐっては、もう1つ重大なシナリオを検討しておかなければならない。それは、アメリカと中国が手を組んで、日本がはしごを外されるという事態である。本号でもその可能性について言及している箇所がある(西尾幹二、中西輝政「歴史問題はなぜ置き去りにされているのか」)。もっとも、米中が手を組んだ世界とは一体どんなものなのか、想像力が貧困な私には予想がつかない。米中は本当に、太平洋を二分割して統治するつもりなのだろうか?また、南シナ海のシーレーンを米中で共同管理するとでも言うのだろうか?

 日本は、神と同レベルに位置していたアメリカという存在を失う。そして、現実問題として、米中が朝鮮半島の社会主義国家を巻き込んで日本を包囲したら最悪である。前述の通り、日本は神と同じレベルで何らかの大国を崇めないと生き残ることができない。米中を失ったとすると、日本が頼ることのできる残りの大国はロシアしかない。以前の記事「『非立憲政治を終わらせるために―2016選挙の争点(『世界』2016年7月号)』―日本がロシアと同盟を結ぶという可能性、他」では、日露同盟があり得るのではないかと書いた。日露同盟が成立すれば、択捉島、国後島にロシア軍の駐留を認める代わりに、4島一括返還をさせることができるかもしれない。

 現在、安倍総理はロシアとの関係構築に熱心であるが、日本はオプションの1つとしてロシア研究にもっと投資することを真剣に検討した方がよい。もちろん、ロシアから学ぶのは忌まわしき共産主義ではない。ソ連から共産主義を取り除いた時に残る純粋なロシアである。ソ連から共産主義を吸収した時代を除けば、日本がロシアから熱心に学んだ時代がもう1つある。それは江戸時代後期である。ロシアから通商を求めて使節が度々訪日していた頃、例えば平田篤胤はロシアとの外交機密文書を大量に収集してロシアに学ぼうとしていた。篤胤は、ロシア語学習ノートを自分で作成するほどの熱の入れようであった。ロシアは帝国主義的で領土拡大に余念がないが、一方では仁徳ある国王が統治する国であるというのが篤胤の見方であった。

 18世紀末に大黒屋光太夫が帰国してからは、ロシアに対する日本人のイメージが大きく転換したという。従来の脅威としてのロシア、潜在的貿易相手国としてのロシアというイメージに加えて、憧れの国としてのロシアイメージが生まれた。同時に、ロシアを理想化し、畏怖することで新たな脅威のイメージも出てきた。江戸時代後期のロシア研究は、それほど長く続かなかったと思われる(明治時代に入るとプツリと途切れた?)。しかし、今回のロシア研究は、東アジアの情勢次第では、相当に腰を据えて行う必要が出てくる可能性がある。

 《参考》川久保剛、星山京子、石川公彌子『方法としての国学―江戸後期・近代・戦後』(北樹出版、2016年)

方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)
川久保剛 星山京子 石川公彌子

北樹出版 2016-04-08

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