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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2017年02月20日

「SDGs(持続可能な開発目標)」を活用した企業支援【城北支部青年部勉強会より】

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SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)

 城北支部青年部(一応、私が部長を務めております)で、「「SDGs(持続可能な開発目標)」を活用した企業支援」という勉強会を開催した。ある大手企業のCSR部門に勤める若手診断士の先生からの持ち込み企画で実現したものである。「SDGs(Sutainable Development Goals:持続可能な開発目標)」とは、国連が2015年9月25日に全会一致で採択したもので、地球規模の社会的課題について17の目標と169のターゲット(サブ目標)を設定し、2030年までに解決を目指すというものである。17の目標は、上記の図にある通りである。

 国連が民間セクターに社会的課題の解決への貢献を要求するようになったのは1999年のことである(やや語弊があるかもしれないが、国連が自ら社会的課題の解決をすることを諦めた年であるとも言える)。1999年には「国連グローバル・コンパクト」が策定され、「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」の4分野において、「人権擁護の支持と尊重」、「組合結成と団体交渉の実効化」、「環境問題の予防的アプローチ」、「強要・賄賂等の腐敗防止の取り組み」など10の原則が掲げられた。その後、2000年に入ると「ミレニアム開発目標」が設定され、「極度の貧困と飢餓の撲滅」、「普遍的初等教育の達成」、「ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上」などが2015年までに解決すべき課題とされた。SDGsはミレニアム開発目標の内容を継承したものである。

 グローバル・コンパクトに関しては、賛同する企業、大学、NPOなどが署名する必要があったが、SDGsは企業などが17の目標から好きなものを選択して自由に取り組んでよいことになっている。だから、冒頭の図も国連が著作権フリーでどんどん配布している。国連は、世界でどの程度の組織がSDGsに取り組んでいるのか正確に把握していない。この敷居の低さが、SDGsの一種の”ウリ”である。ただし、国連は17の目標と169のターゲット(ターゲットの中には数値的目標が設定されているものが多い)の達成度合いについて、定期的にモニタリングしている。

 この企画を持ち込んだ先生の勤務先の企業では、自社の全事業について、17の目標とどのように関わっていくのかを総点検したそうだ。例えば、「4.質の高い教育をみんなに」に関しては、提供するソリューションの中に教育関連のものを増やす、「15.緑の豊かさも守ろう」に関しては、先生の勤務先企業が紙を大量に使用する業種であったことから、紙の原料に責任を持つ、などといったことが合意された。ただし、「14.海の豊かさを守ろう」だけはどうしても自社事業との接点を発見できなかった。そのため、CSR報告書では14だけ触れていない。このように、必ずしも全ての目標をカバーする必要はなく、できることから始めればよいというのがSDGsの特徴である。

 企業がSDGsをマネジメント・システムに取り込んでいくには、例えば環境経営の規格であるISO14000のように、一定の標準化が必要なのではないか?という声が参加者から上がった。現在、CSRのマネジメント規格としてISO26000というものがある。ISO26000は国際標準を示したが、実は認証制度を採用していない。結局、CSRのような活動は認証に馴染まないというのがその理由のようである。同様に、サプライチェーンのCSRに関する規格としてISO20400があるものの、これもISO26000同様、国際標準にとどまり、認証の仕組みを持たない。こういう背景から、SDGsを世界的な標準に落とし込むのは困難であろうというのが先生の見解であった。

 SDGsの認知度はまだまだ低い。SDGsを日本に普及させるために、国としては何をすべきか?という点にも話が及んだ。勉強会のメンバーの間では、SDGsの価値観がどちらかというとリベラル寄りであるから、現在の自民党政権では推進が難しく、むしろ民進党との親和性が高いだろうという見解に至った。自民党は経済成長に躍起になっており、社会的課題には見向きもしていないようである。しかし、実は、SDGsは経済成長を実現する1つのツールとして有効であることに気づくべきだとの意見が出た。また、行政レベルでも、経済産業省のコミットメントがもっと必要だという指摘もあった。現在、SDGsを紹介しているのは外務省のHPであり、経済産業省のHPではSDGsについて一言も触れられていない。これが縦割り行政の弊害というものだろうか?

 一方で、SDGsは、国連が全会一致で採択したとはいえ、西洋のリベラルな価値観の押しつけになるのではないかと危惧する声もあった。地球温暖化のように、それが悪化すれば人類に被害が及ぶことが明らかな課題については、世界的な合意も形成しやすいだろう(その地球温暖化でさえ、アメリカが懐疑的な姿勢を示しているが)。しかし、例えば貧困の問題1つを取って見ても、169のターゲットの最初に「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」とあるが、1日1.25ドル未満で生活すること=貧困と見なすことが適切かどうかは議論が分かれるところである。

 勉強会のメンバーの中に、ハイチで仕事をしたことがある先生がいた。ハイチでは1日1ドル程度で生活する人が多いが、彼らは別に食べ物に困っているわけでもなく、幸せそうに生活しているとのことだった。貧困かどうかは、絶対的な基準ではなく、その国の歴史的・文化的・社会的背景などによって決まる。ところで、17の目標と169のターゲットをよく読むと、歴史、文化、観光遺産といった項目は一切入っていない。これらの項目を入れると、各国固有の価値観の問題が絡んできて世界的な合意形成ができないから、用意周到に外されたのではないかと思われる。

 中小企業がSDGsを取り入れるためにはどうすればよいか?というのが今回の勉強会のメインテーマである。SDGsは自社ができることから取り組めばよいと書いたが、逆に言えば、「自社ができそうもないことには簡単に手を出すな」ということになる。ピーター・ドラッカーは半世紀以上も前から社会的責任について言及していたが、必ず「自社と無関係な活動にまで取り組むのは、むしろ無責任である」と警告するのを忘れていなかった。

 もう1つ重要なのは、「自社が利益を上げた時だけその剰余金でSDGsに取り組むという態度は望ましくない」ということである。フィランソロピー(寄付金)であればそれでよいかもしれない。しかし、SDGsは日本中、いや世界中で社会的ニーズを抱えた多数の人々を巻き込むものである。利益が出なかったからと言って活動を打ち切ると、社会的ニーズを抱えた人々は途端に窮地に陥る。また、自社とともに社会的ニーズの充足に取り組んできたパートナーにも迷惑がかかる。SDGsは自社の事業やサービスの一環として取り組む必要がある。事業やサービスに深くSDGsを組み込めば、一時的に利益が出なかったからと言ってSDGsの取り組みを止めることはできなくなる。そして理想は、経済成長と社会的ニーズの充足を両立させることである。

 中小企業がSDGsに取り組むイメージをつかむために、「日本理化学工業」を題材とした簡単なディスカッションを行った。同社は、坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズの最初に登場する企業である。ダストレス・チョークの生産をメインとしており、何よりも特筆すべきなのは、社員約80名のうち、約60名が知的障害者であるという点である。これだけでも、SDGsのうち「8.働きがいも経済成長も」や「10.人や国の不平等をなくそう」などに取り組む先進的な企業であるが、さらにSDGsに取り組むにはどうすればよいかというお題で議論を試みた(同社の事業環境を十分に理解せず、机上のみで議論したことをご容赦いただきたい)。

 あるグループは、同社が知的障害者でも製造ラインで作業ができるように独自の作業標準化を行っている点に注目した。こうした作業標準化のノウハウを新興国・途上国の中小企業に輸出し、製造ライン立ち上げのコンサルティングを行うことを提案した。これは、SDGsの中で言えば「8.働きがいも経済成長も」や「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」と関連する。また、新興国・途上国で雇用が創出されれば、「1.貧困をなくそう」という目標にも貢献する。

 別のグループでは、国内のチョーク市場が縮小傾向にあることを踏まえ、海外でチョークの需要を創造するために、新興国・途上国で学校の増設・運営に携わることを提案した。これは、SDGsの中で言うと「4.質の高い教育をみんなに」、「5.ジェンダー平等を実現しよう」、「10.人や国の不平等をなくそう」と関連する。さらに、学校で給食を出せば「2.飢餓をゼロに」にもつながる。教育水準が上がるとより賃金の高い仕事に就ける可能性が高まるので、「1.貧困をなくそう」にも貢献するであろう。ただし、同社は学校をマネジメントするノウハウは有していないだろうから、パートナーを探す必要がある(「17.パートナーシップで目標を達成しよう」と関連)。

 「充足するニーズが経済的ニーズか社会的ニーズか?」、「ニーズを充足する手段が経済的か社会的か?」という2軸でマトリクスを作ると、企業を4つのタイプに分けることができる。最も数が多いのは、「経済的ニーズを経済的な手段で充足する」というタイプである。ここから企業のCSRの度合いを高めていくには、「経済的ニーズを社会的な手段で充足する」もしくは「社会的ニーズを経済的な手段で充足する」に移行していくことになる。

 「ニーズを経済的な手段で充足する」とは、製品・サービスを製造・販売するために必要な資源(ヒト、モノ、カネ、情報、知識)を、より安く、より早く調達することである。さらに、これらの資源について、よりよいものをよこせと注文をつけることである。端的に言えば、QCDを短期的に追求することだ。経済性を求める企業がQCDにこだわるのは当然である。ところが、あまりに近視眼的な調達を行うと、資源が再生産されるスピードを資源を消費するスピードが上回ってしまい、中長期的には資源の調達が不可能になる。そこで、資源の消費と再生産のスピードのバランスを取る必要がある。これが「ニーズを社会的な手段で充足する」の意味するところである。

 「経済的ニーズを社会的な手段で充足する」というタイプの代表例としては、ダノンとグラミン銀行の提携が挙げられる。ダノンは、グラミン銀行のマイクロファイナンスの仕組みを活用して、新興国・途上国でヨーグルトを販売した。具体的には、マイクロファイナンスによって、現地の乳牛飼育者の経営を支援し、ヨーグルトの戸別訪問販売員を育成した。こうして、とかく新興国・途上国で課題となりがちな、原材料の安定供給と販売チャネルの開拓をクリアすることができた。さらに、ヨーグルトの生産を現地化することで、雇用の創出にも貢献した。

 「経済的ニーズ」とは、先進国に住む我々が一般的に「あれがほしい」と思う時のニーズのことである。これに対して「社会的ニーズ」とは、先進国の一般人のレベルから見て、人間らしく生活するのに十分なニーズが満たされていない人たちが求める根源的なニーズのことであり、衣食住、健康、医療、教育に関連するものが多い。「社会的ニーズを経済的な手段で充足する」タイプの代表例としては、住友化学の「オリセットネット」がある。オリセットネットとは、マラリア対策の蚊帳である。アフリカではマラリアを治療する十分な医薬品を得ることができない。そこで、マラリアを媒介する蚊をいかに排除するかが課題となる。オリセットネットは、網に蚊よけの薬品が練りこんであり、家に取りつけるだけで十分である。そして、医薬品よりはるかに安価である。

 最も進んだCSRとは、「社会的ニーズを社会的手段で充足する」というタイプである。もちろん、経済的な成長を犠牲にして社会性を優先しているわけではなく、企業としての利益も確保する。この時、マイケル・ポーターが言うCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)も達成される。今後、このような事例が増えてくるに違いない。
 【城北支部青年部のご紹介】
 東京都中小企業診断士協会 城北支部には「青年部」があります。主に支部入会後間もない先生(概ね5年以下)を対象に、2か月に1回のペースで勉強会や懇親会を行っています。「支部に入ったものの何をすればよいか解らない」という声をよく聞きますが、まずは青年部の活動を覗いていただければと思います。ここで人脈作りをして、支部内の各部に入部するもよし、研究会や各区会に入るもよし、「城北プロコン塾」に入塾するもよし、青年部をきっかけとして支部内での活動領域を是非広げてください。

 青年部では、他の勉強会や研究会と異なり、若手診断士にとって興味のありそうなテーマや、今回のように若手診断士からの持ち込み企画で勉強会を実施しているのが特徴です。ご興味のある方は、城北支部メーリングリストで配信される青年部のお知らせをご参照いただくか、本ブログのお問い合わせフォームよりご連絡ください。


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