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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年03月20日

『トランプと日本/さようなら、三浦朱門先生(『正論』2017年4月号)』―米中とつかず離れずで「孤高の島国」を貫けるか?


正論2017年4月号正論2017年4月号

日本工業新聞社 2017-03-01

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 筆者は、2月12日付産経新聞のコラム「極言御免」で次のように書いた。「トランプ米大統領は安倍晋三首相を通じて国際社会を学び、各国首脳は首相を通してトランプ氏を知る―。大げさに言うのではなく、こんな構図が生まれつつあるのではないか」
(阿比留瑠比「こんなときでも、政権批判しか頭にないダメ野党」)
 安倍首相自身も、2月14日の衆院予算員会ではこう語っている。「トランプ大統領は就任してわずかで政治的経験もない。既定の概念がないときこそ、日本の考えをインプットできるチャンスだ」「トランプ氏とどんな対話をしたのか、ぜひ聞かせてほしいという要望は(各国から)たくさん来ている」「米新政権に様々な不安を持っている国に大統領がどう考えているかを伝え、彼らの不安も大統領に伝えていきたい」(同上)
 不安定な国際社会の中で日本がどのようなポジションを確保するかは重要な課題である。以前の記事「小川榮太郎『国家の命運―安倍政権奇跡のドキュメント』―日本は「仁」の精神で世界の均衡を実現する国家」では、「仁」や「和」の精神で、対立する諸国の間に入り、バランサーとしての機能を果たすべきだといったことを書いた。冒頭の引用文も、アメリカと他国との間に日本が入って、橋渡しをすることができると述べている。確かに、日本は地政学的に見て、西洋と東洋のちょうど間に挟まれた孤独な島国である。地政学の決定論的な見方に必ずしも従うべきではないと思うが、日本はこの地政学的な位置を活かして、西洋と東洋の間を取り持つべきだという主張が出てきても不思議ではない。事実、私もそうであった。

 だが、(右派は怒るだろうが、)所詮は極東の辺境国家にすぎない日本に、そこまでの積極的な役割が果たせるのかどうか、最近は疑問に感じるようになった。かつて日本は、西洋と東洋のバランサーになろうとして失敗した過去がある。明治維新の際、日本は「東洋道徳、西洋芸術」、「和魂洋才」という標語を掲げて、東洋の精神の上に西洋の技術を接ぎ木した。そこから転じて、日本は東洋の精神を西洋に伝える役割を担うべきだという主張が現れた。ところが、その結果起きたことと言えば、真っ先に西洋化に成功した日本が東洋の後進性にしびれを切らし、西洋と同じような帝国主義で東アジアを踏みにじるという一種の反転であった。

 小国である日本は、大国同士の対立に飲み込まれないように、自国を守ることを第一とする必要がある。それが、本号の言う「ジャパン・ファーストの精神」であると考える。力のない小国が自国を守る手っ取り早い方法は、力のある大国の庇護下に入ることである。現在で言えば、日米同盟を強化することだ。しかし、個人的に、最近の日米同盟強化の動きは危険だと感じる。

 本ブログで何度も書いているように、大国は二項対立的な発想をする。別の言い方をすれば、大国は常に、自国と対立する大国を必要とする。アメリカにとっての敵は中国でありロシアである。しかし、アメリカと中国やロシアは、お互いに本気で対決する気はない。そんなことをしたらどちらも壊滅的なダメージを受けることが解っているからだ。だから、大国は自国に味方する、あるいは自国と同盟を結ぶ小国に代理戦争をさせる。最近、朝鮮半島の動きがきな臭いが、仮に韓国で次に親北政権が誕生し、朝鮮半島が共産主義国として統一されるようなことがあれば、アメリカ対中国の代理戦争の場として、日本対朝鮮半島が選ばれるだろう。そうすれば、アメリカも中国も、自国への被害を減らせるし、国内の軍需産業が潤うのでいいことずくめである。

 日本は、二項対立の一方に過度に肩入れすると自滅する可能性がある(以前の記事「山本七平『存亡の条件』―日本に「対立概念」を持ち込むと日本が崩壊するかもしれない」を参照)。鈴木宗男氏は、「橋本龍太郎政権から森嘉朗政権までの日ロ関係が良好な時代には、中国や韓国は日本に対して大人しかった。中韓がかしかましくなったのは、小泉政権で米国一辺倒になってからである」と述べている(『週刊ダイヤモンド』2016年12月31日・2017年1月7日合併号)。だから、日本は対立する双方の国から程よく距離を保つことが重要である。

週刊ダイヤモンド 2016年12/31 2017年1/7合併号 [雑誌]週刊ダイヤモンド 2016年12/31 2017年1/7合併号 [雑誌]
ダイヤモンド社 週刊ダイヤモンド編集部

ダイヤモンド社 2016-12-26

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 ただ、これだけでは十分な処方箋にならないため、もう少し積極的な策を提案したい。それは、以前の記事「安田元久監修『歴史教育と歴史学』―二項対立を乗り越える日本人の知恵」などでも書いた「二項”混合”」というやり方である。具体的には、対立する双方の国のいいところどりをして国内でごちゃ混ぜにする。これを別名「ちゃんぽん戦略」と呼ぶ(以前の記事「千野境子『日本はASEANとどう付き合うか―米中攻防時代の新戦略』―日本はASEANの「ちゃんぽん戦略」に学ぶことができる」を参照)。アメリカと中国に挟まれた日本は、アメリカからは自国の陣営に引き込む力が働き、中国からはアメリカと日本を分断させようとする力を受ける。その両方のアプローチをちゃんぽんにするのである。そうすると、アメリカにとっても中国にとっても、日本は自国の味方なのか敵なのか解らず、下手に手を出せない存在となる。

 ここからは私の全くの思いつきであり、これで日本が本当に「孤高の島国」になれるかどうか自信がないのだが、その点はご容赦いただきたい(以下ではアメリカと中国の対立を念頭に置いているが、アメリカとロシアの対立においても概ね同じであると考える)。まず、政治面では、アメリカは二大政党制の国であり、中国は共産党の一党独裁の国である。日本は両方の間を取って、多党制を採用するのが望ましい(以前の記事「加茂利男他『現代政治学(有斐閣アルマ)』―日本の政治は2大政党制よりも多党制がいいと思う」)。ただ、現実問題として、現在の日本の野党はどれも小規模であまりに頼りない。そこで私は、多党制の代わりに、自民党による派閥政治を復活させるべきだと思う。そうすれば、”疑似”多党制を実現することができる。

 経済面では、アメリカは自由主義に基づく資本主義国である(軍産複合体のように、政府と産業界が密着している例もあるものの、ここでは一旦目をつむる)。中国は、共産主義に修正を加えて資本主義を導入したとはいえ、それは国家が投資を主導する形での資本主義である。日本が取るべきその中間の道というのはなかなか難しいのだが、敢えて言えば行政が需要創造を主導するような資本主義ではないかと思う。デフレ下にある現在の日本では、行政、特に経済産業省が、過剰な供給を抑制するために、業界の再編を促すレターを乱発している。そうではなく、行政が新しい市場のルールを形成し、消費者が新しい製品・サービスを購入するためのインセンティブを与えることの方が、デフレ脱却のためには重要ではないかと考える。

 社会面では、アメリカは自由、平等、基本的人権を普遍的価値として信じる国である。一方の中国には、基本的人権がほとんどなく、国家が国民を統制している。日本はその間を取って、国家が国民に対して恩賜的な権利を与える国になるべきだというのが私の案である。これは、基本的人権を否定することになるから、大いに異論もあることだろう。しかし、基本的人権というのは、そもそも国家がなければ成立しえないと考える。例えば、言論・出版の自由は、国家が検閲をしないと約束することによって成り立っている。仮に、左派が好む世界同時革命が成立して、世界から国家が消滅した時、基本的人権はどのような形で担保されると言うのだろうか?

 基本的人権は、人間が生まれながらにして有する権利であり、対応する義務を持たない。これに対して、日本人が国家(天皇)から与えられる権利には、義務が伴う。具体的には以下①~⑤のような義務である。そして、これらの義務を遂行する日本国民を統合する存在として、天皇が象徴される(以前の記事「『混迷するアメリカ―大統領選の深層(『世界』2016年12月号)』―天皇のご公務が増えたのは我々国民の統合が足りないから、他」を参照)。

 ①歴史や伝統を重んじること。過去の遺産を引き継ぎ、生きている間に価値を加えて、よりよい形で次世代に引き継ぐこと。
 ②日本は天然資源に乏しい国である。そこで、限られた天然資源を有効に活用すること。
 ③一方で、日本人の能力は多様であり、様々な可能性があると信じること。学習によって個々の能力を伸ばし、適材適所を実現すること。
 ④集団・共同体・和を重んじ、仁の精神を実践すること。平時の際も危機の際も他者を助け、他者に奉仕し、秩序を守ること。
 ⑤③で日本人の能力の可能性を信じると書いたが、日本は西欧のように飛び抜けた天才に恵まれた国ではない。そこで、他国のよいところを積極的に取り入れることで能力を補うこと。その代わりに、他国に対する恩返しを忘れないこと。

 軍事面では、アメリカは復仇を基本的戦略としている。復仇とは、相手国の国際違法行為に対して、外交交渉やその他の平和的手段で救済を求めても解決が得られない場合に認められる自力救済行為であり、違法性が棄却される。イラク戦争はその一例である(ただし、復仇の範囲を明らかに超えているという議論はある)。一方、中国はスプラトリー諸島の埋め立てに見られるように、先行的に軍事力を行使して現状を変更しようという意図を持っている。

 日本が取るべきこの中間の戦略というのは構想しがたいが、結局は専守防衛に徹するということに尽きるのではないかと思う。それも、アメリカにおんぶにだっこの防衛ではなく、自力で防衛できるようにならなければならない。世界で第7位の防衛費を使っておきながら、自分で自国を守れないというのはいかにも恥ずかしい話である。さらに言えば、アメリカとていつまでも日本の味方であるという保証はない。アメリカが寝返って日本を攻撃するようなことがあっても、日本を守り抜くだけの防衛力を身につける必要がある。

 以上は私の思いつきであるから、唯一絶対の解ではない。いやむしろ、小国は唯一絶対の解を求めてはならない。基本的に、大国はベースとなる戦略を変えない。その大国に挟まれた小国は、双方の戦略をうかがいながら、自社のポジションを常に調整する必要がある。ある時はアメリカの味方であるかのように見せ、ある時は中国の味方であるかのように見せる。このカメレオンのような変幻自在なポジションが、小国を大国の脅威から守る。ベルギーのマンテス元首相は、「大国は好き勝手に(政策・立場を)変えられる。小国の唯一の力は変わらないことだ」と述べたが、私は、小国こそ柔軟に態度を変えるべきだと言いたい(以前の記事「『死の商人国家になりたいか(『世界』2016年6月号)』―変わらない大国と変わり続ける小国、他」を参照)。


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