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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
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所属組織など
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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2017年05月01日

【ドラッカー書評(再)】『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』―非営利組織のマネジメントは本当に難しい

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明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命
P.F. ドラッカー Peter F. Drucker

ダイヤモンド社 1999-03

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 動機づけ、とくに知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。周知のように、ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なければならない。何にもまして、挑戦の機会を与えられなければならない。組織の使命を知り、それを最高のものと信じられなければならない。よりよい仕事のための訓練を受けられなければならない。成果を理解できなければならない。
 ドラッカーによると、アメリカは日本よりも非営利組織の数が多い。そして、企業に勤める人の大半は、1週間のうち一定の時間を、非営利組織での仕事に費やしている。ドラッカーは、非営利組織にも企業と同じくマネジメントが必要であると説いた。特に非営利組織の場合は、メンバーの大部分が無報酬のボランティアであるため、組織の明確な使命によって彼らを惹きつけ、やりがいのある仕事によって動機づけなければならないと述べた。

 ただし、ドラッカーの主張には1つの前提があると思う。それは、非営利活動に参加する人々は、本業の仕事において、ある程度の金銭的報酬を得ているということである。その上で彼らは非営利組織に参加し、自分が勤めている企業ではなかなか得られないようなやりがい、満足度、達成感を期待している。だから、非営利組織での仕事がたとえ無報酬であっても、進んで非営利組織やその顧客のために働くことができる。

 ここからは中小企業診断士の話をしたい。診断士の世界にも様々な非営利組織が存在する。中には会員の親睦が目的の組織もあるが、そういう組織はドラッカー風に言えば「成果が組織の内部にある組織」であるから、勝手に運営してくれればよい。問題は、「成果が外部にある非営利組織」である。具体的には、普段は一匹狼で動くことが多い診断士が集まり、組織としての力を発揮して、顧客企業から大きな仕事を獲得することを目的とする非営利組織のことである。

 こういう組織は、ドラッカーの言うボランティアのような動機づけが通用しないと感じる。具体的なコンサルティングの仕事を受注するという時点で、普通の株式会社とほぼ同じである。株式会社との違いは、非営利組織には出資者がおらず、また利益をメンバーに還元することが許されず、利益の全額を新しい投資に回さなければならないという点である。さらに、診断士から構成される非営利組織のメンバーは、ドラッカーが想定する非営利組織とは異なり、非営利組織からの金銭的報酬に生活の一部を依存している。非営利組織から満足な報酬が得られなければ、株式会社とは違って雇用契約で結ばれた関係ではないため、メンバーは組織から離れていく。

 ブログ別館の記事「諸富祥彦『あなたのその苦しみには意味がある』―他者貢献から得られる「承認」は日本人にとって重要な比較不可能な報酬」で、非金銭的報酬としての「承認」を強調したため、私は金銭的報酬を軽視しているのではないかと感じている方がいらっしゃるかもしれないので、ここで少し補足しておきたい。私は決して、金銭的報酬を否定しているわけではない。むしろ必須である。考えてもみてほしい。皆さんがお勤めの企業から「明日から皆さんの給与はゼロです。ただし、魅力的な仕事はあります。だから出勤してください」と言われて、どれほどの人が素直に出勤するだろうか?金銭的報酬の持つ動機づけの力は強力である。ただし、金銭的報酬は評価システムをどのように設計しても不公平感が残る(※)。そこで、承認という非金銭的な報酬によって、その不公平感を無害化しようというのが私の主張である。

 診断士の非営利組織は、会員に相応の報酬を支払わなければならない。報酬を支払うためには、実際にコンサルティングの仕事を取ってこなければならない。ここからは私が知っているある非営利組織の話になるが、コンサルティングの仕事を受注しなければならないことが解っていながら、そもそも組織としての使命がはっきりしていないことが問題になっている。使命がはっきりしていないため、具体的に誰をターゲットとし、どのような価値を提供するのかも決まっていない。提供価値があやふやであるから、実際に提供可能なコンサルティングのメニューも決まっていない。メニューがないのだから、ソリューションの開発計画も存在しない。

 にもかかわらず、この組織のトップは、とにかく「仕事を取ってこい」と発破をかけるばかりである。営業活動の原資は、所属する会員から徴収する年会費であるが、そんなものは所詮微々たるものである。組織の方向性が曖昧な状態で、かつ営業活動はほとんどボランティアに近いとなれば、メンバーのモチベーションも上がるわけがない。当然、仕事も満足に受注できないので、それに焦りを感じた組織のトップは、営業活動の原資を増やすために、会員から徴収する年会費を数倍に一気に引き上げることを検討している。メンバーは、金だけをいいようにこの組織にむしり取られるのではないかと恐れている。さらに、まだ仕事が取れていないというのに、プロジェクトを受注した営業担当者とプロジェクトに関わったメンバーに対して、受注金額の何割を配賦し、組織にいくら残すかという内部の仕組みの話ばかりに議論が集中している。

 一言で言えば、この組織は外部に目を向けていない。本来ならば、組織としてのミッションを固め、どこにコンサルティングの機会がありそうかをまずは探索するべきである。そして、その領域に既に参加している競合他社の能力やサービスを研究するとともに、この組織のメンバーの強みを分析して、この組織が競合他社とどのように差別化を図るのかを決めていく。そして、そのポジショニングを実現するための各種ソリューションをメニュー化して、それぞれのソリューションを形にし、販売するための開発計画と販売計画を立案する。さらに、これらの計画に基づいて収支シミュレーションを行い、持続的な成長が可能な計画になっているかを検証する。同時に、資金繰りについてもシミュレーションをし、当面必要な運転資金を算出する。その運転資金は、メンバーの年会費をあてにするのではなく、金融機関からの借入金でまかなうべきである。

 私が知っている診断士の非営利組織の中には、仕事を受注しているところもある。だが、その仕事の中身を見て愕然とするケースがある。ある非営利組織は、行政から中小企業の経営実態調査を受託した。ある市区町村内の中小企業を診断士が1社ずつ巡回し、20問ぐらいからなるアンケートに答えてもらい、経営者が何か相談したいと言えば診断士がその場で相談に乗り、帰宅後にアンケート結果と相談内容を所定のフォームに入力するという仕事である。まともにやると1社あたり1時間以上は時間がかかる。それなのに、1社あたりのフィーは1,000円程度である。移動時間などを考慮に入れたら、間違いなく最低賃金を下回るはずである。私が最初この話を聞いた時、報酬額は桁が1桁間違っているのではないかと耳を疑った。

 行政は、一般の調査会社に依頼したら、予算を大幅にオーバーすることが解っていたのだろう。その点、診断士の非営利組織に依頼すれば、非営利組織と診断士の間の契約は雇用契約ではなく業務委託契約であるから、最低賃金を下回っていようと問題がないことを見抜いていたに違いない。近年、ブラック企業が社会的問題になっているが、私はこれを「行政によるブラック委託」と名づけたい。この手の問題には、「公契約条例」の導入が1つの解になると考える。

 アメリカには、生活賃金(リビング・ウェイジ)条例という取り組みがある。日本においても、例えば東京都が発注する大量の公共事業について、それを請け負う労働者の最低賃金を公契約条例によって時給1500円と定める、といったことが考えられる。時給1500円ならば、月150時間の労働で22万5000円になる。行政には、「行政が発注する仕事だから安い金額で我慢してほしい」と安易な言い逃れをしないでいただきたい。行政は、自分が発注しようとしている業務がどれくらいの仕事量を必要とするのか?その仕事量に適正な時間単価をかけると、人件費としていくら支払うべきなのか?といった観点から、発注額の適正化をお願いしたいところである。

 以上、診断士の世界の生々しい話をしてしまったが、メンバーに対して報酬を支払うことになっており、その報酬がメンバーの生活費においてある程度重要なウェイトを占めているような非営利組織の場合は、大義や達成感といったあやふやなもので乗り切れると考えてはいけない。一定の金銭的報酬を必要条件とし、その金銭的報酬だけでは満たされない満足感を、仕事自体のやりがいや周囲からの承認によって補うようなマネジメントを行う必要がある。

 (※)金銭的報酬を厳密に計算しようとすると、個人のパフォーマンスが企業の成果とどのように結びついているか、新規事業開発やイノベーションに果敢にも挑戦したが失敗した人に対してどのように報いるべきか、短期的には成果が上がったものの、中長期的には企業の業績を蝕む結果になった場合に、既に支払った報酬をどうすべきか、といった様々な問題が生じる。これらの論点に1つ1つ真面目に答えていくと、報酬制度は複雑怪奇なものにならざるを得ない。

 そこで私は、そもそも金銭的報酬が仕事に対する対価であるという考え方を捨てている。金銭的報酬の第一義的な意味合いは、社員の生活費をカバーすることである。社員が安心して生活し、次の世代を再生産する(=子どもを産み育てる)とともに、前の世代の恩に報いる(=親を介護する)ための資金を供給することである。生活費は年齢とともに上昇する。よって、最善ではないが最も公平に近い賃金制度は年功制であると私は考える(以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―給与・採用に関する2つの提言案(後半)」を参照)。

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