プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 中小企業政策などまとめ【中小企業診断士試験対策】
Prev:
prev 頼住光子『道元―自己・時間・世界はどのように成立するのか』―道元の禅は絶対的な真理を追求しないから安心した
2017年05月26日

「製品・サービスの4分類」に関するさらなる修正案(大分完成に近づいたと思う)


カテゴリー

 《参考記事》
 森本あんり『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体』―私のアメリカ企業戦略論は反知性主義で大体説明がついた、他
 【シリーズ】現代アメリカ企業戦略論
 『イノベーション研究 これからの20年(『一橋ビジネスレビュー』2017年SPR.64巻4号)』―「製品・サービスの4分類」に関する修正案

製品・サービスの4分類(①大まかな分類)

製品・サービスの4分類(②各象限の具体例)

製品・サービスの4分類(③具体的な企業)

 相変わらずこのマトリクス図のことを考えているわけだが、以前の記事「『イノベーション研究 これからの20年(『一橋ビジネスレビュー』2017年SPR.64巻4号)』―「製品・サービスの4分類」に関する修正案」で施した修正はやはり解りにくかったと反省した。マトリクスの縦軸は、「人口・企業数によって需要が予測しやすいか?」よりも、「必需品か否か?」の方がやはりシンプルである。よって、元に戻すこととした(表現は少し変えてある)。

 ここで、必需品とは何かが問題になるわけだが、個人の場合は「衣食住と健康・移動に関する製品・サービス」ととらえることができる。ここに+αで、生活の質を高めるための教育とニュースメディア、日常生活のリスクをカバーする金融(保険)を加えてもよいだろう。食品、日用品、白物家電などは、製品に多少の欠陥があっても顧客の生命が脅かされることは稀である(もちろん、ゼロとは言わない)。他方、自動車や住宅、医薬品などについては、欠陥があると顧客が死亡する危険性がある。また、社会的インフラが停止すれば、我々の生活は破綻してしまう。

 法人にとっての必需品は、「経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の調達・活用に関する製品・サービス」である。産業機械はモノを活用する製品である。物流は企業がモノを調達するためのサービスである。IT(BtoBの基幹業務システム)は企業が情報を収集・活用するためのサービスである。先ほど挙げた以前の記事では【象限④】に金融(預金・貸出)を入れていたが、金融機関の預金・貸出機能は必要不可欠な経済的インフラであり、これが停止すると企業はたちまち潰れるため、【象限②】に移動させた。法人にとっての必需品は、いずれもその供給が停止すると事業に甚大な影響が出ることから、【象限②】に該当するものが多い。

 あってもなくてもよい=非必需品は【象限③】と【象限④】である。【象限③】にあった「金融(証券)」は次のように修正した。証券のうち、企業が資金調達のために発行する株式や債券は、企業の事業継続にとって必須であり、かつ株式や債券が思い通りに発行できなければ企業の存続が危ぶまれるため、「金融(資金調達的証券)」として【象限②】に入れた。一方で、【象限③】には「金融(投機的証券)」を入れた。これはその名の通り投機的な目的、より平たく言えばお金儲けのために行う投資のことである。こうした投資は資産に余裕がある人がやるものであり、仮に投資に失敗しても投資家が死ぬことはない(損失額の大きさにショックを受けて自殺する人はいるかもしれないが)。なお、【象限④】に軍事を入れている点は変わらない。

 3つ目の図は、2017年3月末時点での「世界時価総額ランキング」の上位20社をそれぞれの象限にあてはめたものである。同じ金融機関でも、ウェルズ・ファーゴ、中国工商銀行、バンク・オブ・アメリカは【象限②】に入れているのに対し、JPモルガン・チェースは【象限③】に入れている。JPモルガン・チェースは商業銀行部門を抱えているものの、同時に世界最大の投資銀行部門を有しており、事業の中心がどちらかと言うと後者にあるためである。サムスン電子は、【象限①】に該当する家電部門も抱えているが、収益の大半をスマートフォンが稼ぎ出しているので、【象限③】に位置づけた。なお、【象限④】に該当する企業はない。

製品・サービスの4分類(④マーケティング戦略の違い)

 上図は、各象限のマーケティング戦略の違いを簡単に表したものである。まず、アメリカが強い【象限③】から説明するが、【象限③】は以前の記事「【シリーズ】現代アメリカ企業戦略論」でも書いたように一神教的な世界である。【象限③】は必需品ではないから、需要を一から創造しなければならない。よって、伝統的な市場調査は役に立たない。そこで、カリスマ的なリーダーは、自分を世界で最初の顧客に見立て、「自分ならこれがほしい」と強く思う製品・サービスを形にする。そして、自分の信じるイノベーションを世界中に普及(布教)させることを神と契約する。イノベーターは、あらゆる顧客セグメントに対して、単一の製品・サービスを提供する。ただし、神との契約が本当に正しいかどうかは、リーダーには解らず、神のみぞ知る。

 リーダーは、自分こそが神と正しい契約を結んだイノベーターであると自負して、競合相手を激しく攻撃する。また、自分の考えたイノベーションは世界中の人々にも受け入れられるはずだと信じて、ベンチャーキャピタルや株式市場から調達した潤沢な資金を使い、世界中で半ば強引なマーケティングを行う(個人的に、”ごり押し”マーケティングと呼んでいる)。その激しい競争を勝ち抜いたわずか数社が、全世界の市場を制覇する。勝利を収めた企業が、なぜ成功することができたのかと問われれば、リーダーなどの当事者は「自分が並々ならぬ努力したからだ」と答えるだろうが、実際のところは「神に選ばれたから」というのが答えである。つまり、運がよかったということだ。だから、他社が【象限③】の企業を単純に真似をしても、成功することはできない。

 【象限③】の企業は、全世界の人々を顧客にすることを狙って”ごり押し”マーケティングを実施した結果、一部の熱狂的なファンを獲得すると同時に、強烈なアンチも生み出す。世界中の人々にイノベーションを普及させるという当初の目的からは外れてしまうが、【象限③】の企業にとってはこれでよい。一部の熱狂的なファンが貴重な収益源となる。また、アンチから攻撃されればされるほど、熱狂的なファンは企業を攻撃から守るために団結する。つまり、ブランドに対するロイヤルティが高まる。ブランド・ロイヤルティの高い一部の熱狂的なファンは、そのブランドに対する消費を惜しまない。その消費額には際限がないため、【象限③】では市場規模を正確に予測できない。日本の例になるが、AKB48がCDに握手券をつけて販売すれば、熱狂的なファンの中には同じCDを何十枚も購入する人が出てくるため、CDが何枚売れるかは全く読めない。

 【象限③】の企業の課題は、成功するかどうかが神の采配次第であり、非常にリスクが高いということである。だから、【象限③】の企業は、できるだけ自社で正社員を抱えずに、プロジェクトごとに必要な人材を外部から調達し、プロジェクトが終了すれば解散するようなやり方を好む。プロジェクトのメンバーは、企業と雇用契約ではなく、業務委託契約を結ぶ。こうしておけば、企業に不都合なことが生じた際に、すぐに契約を解消することができる。芸能事務所とタレントの関係がまさにこれである。この場合、タレントの地位が非常に不安定なものになるため、最近は日本で俳優の労働組合を作ろうという動きがあるようだ(アメリカには、芸能人やハリウッドの俳優が加入できる"SAG-AFTRA"という労働組合が存在する)。

 【象限③】におけるリスクを回避するもう1つの方法は、自社がイノベーションのプラットフォームになるということである。【象限③】では、成功を夢見て多数のイノベーターが自分のイノベーションを世界中に売り込もうとしている。すると、彼らの中には、自分がお金を払ってでもいいから、自分のイノベーションを世界に広めたいと考える人が現れ始める。プラットフォーム企業は彼らのニーズに目をつけ、イノベーターと世界中の顧客を結ぶプラットフォームを構築する。

 古典的には、出版社のビジネスモデルがこれに該当する。出版社は自社のリスクを低減するために、著者からお金を取る。一般的に考えれば、著者は出版社から見て仕入先にあたるから、出版社から著者に対してお金を支払うはずだ。だが、特に無名の著者の場合は、お金の流れが逆転する(もちろん、本が売れれば出版社は著者に印税を支払う)。AppleやGoogleはスマートフォンを販売しているが、スマートフォンの本質は通話機能ではなく、アプリのプラットフォームにある。AppleやGoogleはユーザからお金を取ると同時に、アプリの開発者からもお金を取る。プラットフォーム企業は、どの製品・サービスが売れるかどうかを気にする必要がない。とにかく世界中からたくさんのイノベーションを集めて自社のプラットフォームに乗せ、あとは世の中の流行り廃りに任せておけばよい。Amazonのマーケットプレイスもこれに似ている。

 【象限①】、【象限②】は多神教的な世界である。多神教的な世界とは、企業や顧客に様々な神が宿る世界である。また、唯一絶対の一神教の神とは異なり、多神教の神は不完全である。企業に宿る神は、自社が何者であるのか、自社の強み、コア・コンピタンスは一体何なのかを教えてくれる。ところが、神が不完全であるがゆえに、その答えもまた不完全である。企業は自社のアイデンティティを深く知るために、学習(修行)を重ねなければならない。最も効果的な方法は、自社とは異なる神を宿しているであろう顧客や企業と積極的に接することである。よく言われるように、良質な学習は、異質との出会いから生まれるからだ。

 【象限①】は、必需品であり、かつ品質に対する要求水準が高くないため、コモディティ化しやすい。コモディティ化が進むと、新興国企業が低コストを武器に参入してくる。新興国の財閥企業は、特定の顧客セグメントをターゲットとして、【象限①】に該当する様々な製品・サービスを提供する。一方で、新興国においても先進国においてもそうであるが、【象限①】は自国の雇用の受け皿となる業種が多いことから、大規模企業や外資企業の参入が規制される場合がある。そのため、世界的な企業が生まれにくい。逆に、中堅・中小企業が乱立している。3つ目の図で、【象限①】に該当する企業が【象限②】や【象限③】に比べると少ないのはそのためである。

 財閥企業は資金力を活かして多角化し、異質な製品・サービスに触れることで学習を進められる。だが、【象限①】の大部分は、特定の顧客セグメントに対し、特定の製品・サービスを提供する中堅・中小企業である。彼らが学習を行う方法としては、同じ顧客セグメントをターゲットとし、自社とは異なる製品・サービスを提供する他社との水平連携が挙げられる。ショッピングセンターや商店街はその典型例である。ショッピングセンターや商店街においては、自社単独の力ではなく、他店舗と協力して全体としていかに魅力を高めていくかを考えることが重要となる。

 【象限①】における企業の課題は、製品・サービス自体の難易度がそれほど高くないことから、自社内に多くの階層を設けることができないという点である。つまり、昇進によって社員を動機づけることが難しい。飲食店であれば、スタッフ、店長、エリアマネジャーぐらいの階層しかない。この課題をクリアするためには、まずは異分野へ進出して、水平異動の道を作るということが考えられる。それが難しい場合は、例えば商店街内で店舗を超えた人材交流を行うという手もあり得る(どれほど実現可能か自信がないが)。要するに、縦への異動で新しいことに挑戦させるのが難しければ、横への異動で新しいことに挑戦させ、動機づけを図ろうというわけである。

 【象限②】では日本企業が強い。あるカテゴリの製品・サービスを、あらゆる顧客セグメントに提供する。トヨタが「いつかはクラウン」というキャッチコピーで、世代ごとに様々な車種を揃えたのが解りやすい例である。まずこの点で、【象限②】の企業は異質との学習を達成している。

 次に、【象限②】の製品・サービスは品質要求が厳しく、自社だけで完成させることが難しいため、多くの下請・協力企業を活用することになる。自動車、建設、IT(BtoBの場合)では多重下請構造が見られる。最終メーカーと下請企業との擦り合わせもまた、異質との学習である。こういう有機的な下請構造を構築できる企業は限られるので、【象限②】では各国において複数企業による寡占が生じやすい。また、【象限③】では”ごり押し”マーケティングで競合他社を激しく攻撃するが、【象限②】においては時に競合他社との協業が起きる。自動車業界では、A社がB社にエンジンを供給するなどの関係が数多く存在する。これもまた、異質との学習と言えるであろう。

 【象限②】の課題は、異業種との接点が少ないことである。前述の通り、【象限②】の企業は既に多くの面で異質との学習を達成していることから、異業種から学ぶインセンティブが低いのかもしれない。今までは自社が得意とする製品・サービスに特化していればよかった。だが、これからは異業種とのコラボレーションが重要課題となる。トヨタはグーグルと提携して自動運転車の開発をしているし、金融機関はIT企業と提携してFintechの研究を進めている。IT業界は他の業界との協業が比較的やりやすい業界なのかもしれないが、今後は例えば自動車×建設、医療×金融といった、一見どういう点で結びつくのか解らないような業種の組み合わせでのコラボレーションを追求することが重要な課題になると考えられる。

 これで、「製品・サービスの4分類」は大分完成に近づいたと思うが、それでもまだ私の頭を悩ませる例外がいくつも存在する。まずはMicrosoft(MS)である。パソコンは、発売当初はあってもなくてもよい【象限③】の製品であったが、今や日常生活に欠かせない【象限①】の製品となった(WindowsやOfficeは頻繁にフリーズするが、ユーザの生命を脅かすわけではないため【象限①】だと言える)。通常、【象限①】では前述の通り中堅・中小企業が乱立する。だが、MSは未だに圧倒的なシェアを占めている。本来であれば、【象限③】から【象限①】に移動するにつれて、様々なOSが登場し、OS間の互換性を担保するソフトウェアも開発されてしかるべきである。しかし、MSは(EUから何度も独禁法違反で訴えられているのに、)その道を巧みに封じている。

 コカ・コーラとマクドナルドは【象限①】なのか【象限③】なのかも難しい問題である。個人的には、いずれもあってもなくてもよいものだとは思う。【象限③】に位置づけた方が、両社の特徴を説明しやすい。コカ・コーラはライバルのペプシコと市場を二分しており、お互いに相手のことを広告で激しく攻撃する。マクドナルドはショッピングセンターや商店街の中にも入っているが、「アメリカのハンバーガー文化」を世界に普及させることを目的としており、他社との連携には消極的であるように見える(その点、日本マクドナルドはよくドコモと提携したと思う)。

 だが、炭酸飲料の中でコーラだけを【象限③】として扱うのは無理があるから、やはりコカ・コーラは【象限①】に該当するのだろう。日本コカ・コーラは、コカ・コーラ以外にも、消費者にとってより必需性が高い様々なジャンルの飲料水を発売して、水平方向に拡大している。マクドナルドも、マクドナルドだけを飲食店の例外とする合理的理由が見当たらないので、【象限①】に入れるべきなのだろう。とすると、近年業績が安定しないマクドナルドが今後も持続的に成長するには、【象限①】の特徴である水平連携をいかにして実現するかが課題となるように思える。

 プラットフォーム型ビジネスは【象限③】の特徴であるが、最近は【象限①】や【象限②】でもプラットフォーム型ビジネスが見られる。一例としてはクレジットカードが挙げられる。VisaやMasterCardなどは、そのブランドを全世界に浸透させることを狙い、最初は一部のお金持ちだけが使っているものであった。また、決済システムにもさほど高度な要件は求められなかった。システムに障害が起きても誰も注目しなかった。つまり、典型的な【象限③】のサービスであった。

 だが、現在のクレジットカード会社は、高額決済をする従来の加盟店に加えて、少額決済の加盟店をどんどん増やしている。また、今や誰もがクレジットカードを所有しており、個人会員向けには、会員の収入に応じて様々なステータスが用意されている。クレジットカードは、オフラインの世界のみならずオンラインの世界においても、必要不可欠かつ高度な決済プラットフォームを提供する。システム障害は世界中の取引に影響を及ぼすため、絶対に避けなければならない。この点で、クレジットカードは、【象限③】から【象限②】に移動したサービスであると言える。

 Amazonは書籍のECからスタートしたため、私は【象限③】に位置づけたのだが、近年は食品や日用品、雑貨など製品カテゴリーを拡充して【象限①】に進出している。【象限③】で培ったプラットフォーム型ビジネスのノウハウを、【象限①】でも存分に活用している。また、Amazonはソフトウェア開発者向けにAWS(Amazon Web Service)というPaaS/IaaSのプラットフォームを開発しており、誰でもクラウド型のWebサービスを開発することができる。AWSは個人が趣味でアプリを開発するだけでのものではない。企業が基幹業務用システムとして使えるほどの十分な信頼性とセキュリティを実現している。つまり、【象限②】への進出を果たしていると言える。

  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like